あらすじ
首都圏の住み慣れた自宅を引き払い、これまでの生活をリセットして東京近郊の高原へと移住した著者は、それをきっかけに、今までとは違った眼差しで世界や同時代を眺めるようになった。慣れない土いじりや野菜作りに精を出していると、悲喜こもごもの思い出が、やさしい風や、やわらかな雨のように心を撫でていく。今は亡き、母、父、息子、叔父、先生、友達。今なら言える。すべての愛すべき人たちの思い出こそが私の故郷であり、私の先生だったのだと――。初めての「田舎暮らしエッセイ」という器に載せて、これまでになく素直な気持ちで来し方行く末を存分に綴った、姜尚中流の“林住記”。累計130万部の、『悩む力』シリーズ第3弾。 【目次】まえがき/序章 「山」に棲もう/第一章 空を見上げれば、いつでも/第二章 人は、歩く食道である/第三章 花の色/第四章 我々は猫である/終章 故郷について/あとがき
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Posted by ブクログ
悲しさのあまり、一滴の水も、一粒の麦も喉を通らないと思っていたのに、気がつけば、私は食べていたのだ。生きる気力を無くしながらも、確かに口を動かし、歯で噛み切り、硬い繊維質のものすら喉の奥に流し込んでいたのだ。
「人間はどがん時でも食べんと。生きとるなら食べるとたい。食べたら尻から出すとばい。どがん辛かこつがあっても、生きとる限り、そがんするとだけん。」
「どんなことでも何とかなるとよ」
Posted by ブクログ
姜尚中さんの日々の暮らしを綴ったエッセー集。
軽井沢に引っ越して、季節の移ろいを感じて、畑を耕して、
もちろん大学のお仕事もされているでしょうが、
穏やかな日々の暮らしの中でも、お母さんの教えをその都度思い起こし、息子さんのことも折々に思い出し、
丁寧な丁寧な暮らしぶりが伺えます。
ゴルフにのめり込むようになったいきさつや、奥様とのやり取りなど、普段のお姿からは想像できない人間らしさがにじみ出て親近感を持ってしまうのです。
今、大河ドラマにも先生役で御出演中ですね。
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私は、母の手作りの、旬の素材を生かした料理を通じて、心身を形作ってきた。食は単なる食べ物のことではなく、人間の体、そして心の筋力を形作っていくと、彼女は、不変の真理のように固く信じていたのである 夫婦と言うものは、その一緒にいる歳月を通じて、それらの違いを感じとりつつ、いつの間にか、同じものを分かち合うようになってしまうらしい 日本と朝鮮半島とが抱え込んだ歴史の葛藤や桎梏も、それを一刀両断に断ち切ることができるわけではない 慇懃で、どこか腹に一物があり、すれっからしで、何かにつけて皮肉交じりのウィットを楽しんでいる
Posted by ブクログ
借り物本。著者のことを知らないうえ、自身が無知なため度々挟まれる政治の話は頭に入らず。が、著者は犬派なのに奥様が猫を飼う口実を作りそれを許容していき猫好きとなり、言葉ではなくこれが夫婦ってやりとりと、母と奥様と両方を愛している著者の人柄が伝わった。
Posted by ブクログ
20190309 在日とか意識しなくても普通に周りにいた世代としてはその苦しみや悩みについてなんて鈍感だったのだろうと思った。今、動き出した流れがどうなるかは分からないが皆が笑える世界の実現に向かっていればと思う。