姜尚中のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「したがって、「愛国心」を、与えられた環境への情緒的(感性的)な依存とみなすことは国民の原理そのものを蔑ろにすることですし、ましてや「愛国心」を強制することなど自家撞着と言わざるをえません」
ちょっと前までにあーだこーだ言われてた、「愛国心」を分析している。
その歴史の流れのところでは、過去の資料などをたくさん用いて、著者の引き出しの多さを物凄く納得。
そして、講義ならうとうとしてしまうような分かり難い箇所も多々・・・。
ですが、後半以降、この著者の考えが明確に論じてあるところに関しては明快!非常に分かり易かった。
そして、巷で溢れる愛国心論に対して自分自身が持ってた違和感を言葉にしてもらえ -
Posted by ブクログ
R25で宣伝されていて、著者の文章が分かりやすく、内容にも興味があったため、購入。
10の項目に分かれており、それぞれについて著者が意見を述べる形式。
平易な言葉を使っていて、とても理解しやすくすらすら読める。
特に、10章「どうしたら『幸せ』になれますか」に共感。
人格と結びつかない幸せはない。
快・不快は幸福の基準ではない。
現代は幸せの求め方が他者志向型になっているが、人間のパーソナリティを少しずつ強くしていかなければ、幸せには結びつかない。
そうすると、初めて、不確実性に伴う不安というものを抱きしめて生きていける。
不安のない自由はないのだから。
他にも、「知性」の章が面白か -
Posted by ブクログ
当世流行の「愛国心」には主語がない。述語だけが異様に肥大化したような感情の暴走である。それは醜悪で身勝手なナルシシズムであり、そこには決定的に知性が欠けている。とまあ、そういう警鐘から始まり、民族共同体と国民共同体、愛国心と愛郷心、パトリアとナショナリティなど、まさに"知性"をフル動員して「愛国」の本質を明らかにしてゆく。この点、ついに情緒表現の域を脱せなかった現宰相の著書とは格段の違いである。「ただ日本の美しい伝統や国土、その情趣をナルシシズム的に吹聴する『愛国』」ではなく、「時には生身を引き裂くような激しい相克と葛藤を自我の内面の中に抱え込んでしまう」ことすら辞さない「
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Posted by ブクログ
日本人としての民族アイデンティティは近代の想像物・捏造物にすぎず、フィクションであるのだから、これを捨て去ればよい、と考えるのであれば、在日韓国朝鮮人の民族アイデンティティも「ただの共同幻想」であり、「われわれus」と「かれらthem」の間に想像上の境界線を引いた「タチの悪い病」ということになる。しかし、これでは具合が悪い。日本人の民族アイデンティティは否定したいが、在日韓国朝鮮人の民族アイデンティティは肯定したい。で、どう折り合いをつけるかというと、「排除され差別されてきた人々は民族概念をもつべき」(p.182森巣氏)であるが、多数者である日本人には民族概念はない、と考える。どうやら日本人も
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購入済み
戦後の日本の保守派と韓国の軍政は満洲国との連続性を持った存在であり、その代表が岸信介と朴正煕だった。日韓の「和解」は共通の満洲体験のもとに可能だったとする論考です。視点はとても面白いが、最後の方はただの韓国政治史っぽくなってて少し冗長でした。まあとはいえこの辺りの日韓の保守派の繋がりは有名な話でもあるし、それが一昨年の安倍晋三の銃撃事件まで繋がっているので、現代の日本を理解する上ではこの辺りの掘り下げはもっと行うべきだろう。
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「在日二世」の観点から、アジアにおける日本の立ち位置を論じている。筆者の人生が色濃く反映されていて、大局的観点だけでなく韓国人と日本人双方の視点が入っているのはこの筆者ならでは。
話は過去の思想家やそこから繋がる現代の状況、世界各国まで広がるので少し難しい。しかし筆者が述べている通り教科書でほんの数行だけ「韓国併合」などと触れられていても実態を理解できるものではなく、世界中の過去からの流れがあってその歴史が刻まれていくということを考えれば、古今東西まで話が広がるのは当然だろう。
筆者自身の生い立ちを歴史に絡めた知的エッセイのようなテイストの本。 -
Posted by ブクログ
悪とは何かに対する一つの答えであるが、あくまで筆者の考える悪の形であるから、これが正解というものでは無い。だがカラマーゾフの兄弟や過去に発生した悪魔的とも思える殺人事件などを例に挙げ、悪の形を明らかにしている。
「魔が刺した」とか、「他人の不幸は蜜の味」など我々の周りには小さな悪もたくさん潜んでいる。確かにニュースから流れてくる戦争やテロ、犯罪の報道を見ていると時に目を覆いたく、耳を疑いたくなるような凄惨な出来事が世界中で起きている。それを見た大半の人は、許せない気持ちや、被害者への「可哀想」という感情を抱くだろう。だが一方で身近な悪を成敗するような正義ぶったユーチューバーの動画を見てきっと恐