姜尚中のレビュー一覧
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ネタバレ「悩む力」という本書のタイトルに興味を感じ読んでみた。
ふつう、我々は「できるならば悩みたくない」と感じていると思う。悩むような出来事からはできるだけ避けたいと思う。
しかし、著者は「悩むこと」を推奨する・・・というよりも、悩む先に幸福がある。悩むことを喜びとさえとらえようという、ある意味発想の転換を促す本だろうかと思う。
おそらく、在日であることで、子どものころから得体のしれない偏見などと闘いながら、葛藤の人生を歩んでこられ、そうした中で強い母の姿に励ましをもらいながら、様々に悩み、そして自分なりの方向性を見出されてきたことを本書にまとめられたのではないかと思う。
学者としてマックス -
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ネタバレ「悩む力」の続編。夏目漱石とマックス・ウェーバーに心酔する著者が、その哲学的思想を存分に披露するのは前作と同様。ただ、東日本大震災のわりとすぐ後に書かれたものであり、著者の悩みがより一層深まっているようだ。
まず、とにかく「暗い」。思考が非常にダークである。そもそも哲学的思考が強い人は、楽天的・楽観的な思考を蔑み、深く思考することが善という考え方であり、血を吐くような苦しみで精神を病むほど悩み、そこから復活を遂げる「二度生まれ」という概念を非常に重視している。しかし、そこまで苦しんでまで人生の真理を追い求めるよりも、何も悩まずに楽に一生を終えることができればそれはそれで幸せなのではないだろうか -
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この本の存在を知った時、自分は疲れていたのかも知れない。それでも、死の事を考える程ではなかった。ただ、状態を言葉に変換できず、だからこそ行動にも繋がらず、モヤモヤとした嫌悪感を抱えたまま、救いを求めていた。本を読む事が救いであり、その世界から、また新たに姜尚中の心という本を知った。佐藤優の本だったと思う。佐藤優の紹介から、この著書がその時の自分とシンクロしたような気がしたのだ。
著書は、生と死を見つめた内容で、一人の青年と姜尚中自身のやりとりを通じ、生きる意味を考えさせられる内容だ。自分のモヤモヤした気持ちを少しシフトさせるに、読んで良かったと思う。そんな風にしか、折り合いがつけないような事 -
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著者自身がモデルと思われる大学教授の「わたし」が、西山直広(にしやま・なおひろ)という大学生から手紙を授かります。そこには、友人の恋を踏みにじったのではないかという彼の悩みが綴られていました。「わたし」は彼の真剣な悩みに向き合いながら、現代の日本が直面している問題と、その中で苦しみながらも前を向いて歩んでいく青年の姿に感銘を受けます。
西山青年は、白血病で死んでいった「与次郎」というあだ名で呼ばれていた親友の長与次郎(ながよ・じろう)から、一通の手紙を託されていました。それは、西山や与次郎と同じ演劇部に所属する黒木萌子(くろき・もえこ)という女性への恋文だったのですが、与次郎と同じく萌子に心 -
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保坂正康氏と姜尚中氏が2011年10月30日に北海道新聞ホールで行った講演会の講演録。
歴史は、記録者の都合の良いように記憶される。
勝利者の記録のみが正しい記録として、後世に伝えられる。
歴史は改ざんされ、記憶はねつ造されるという内容を、第二次世界大戦、広島長崎の原爆から、福島原発事故までを例にとり説明される。
米国では、ヒロシマ、ナガサキ、フクシマと列挙することにより、意図的な大量殺人と(人災の側面を除いて考えれば)事故である原発事故の区別をつきにくく、そして大量殺人の罪を薄めて考えるように仕向ける傾向がみられる。
両名の講演のあと、学生参加による質疑応答が掲載されているが、そ講演の -
- カート
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試し読み
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ジュニア新書なので本来は中学生向きだが、大人にもさくっと読める。これから夏目漱石を読もうという際の予習となる。漱石は読みどころがよくわからなかったので、参考になった。
次の5冊を紹介している。
吾輩は猫である
ユーモアの影に、明治の社会に対する漱石の批判が書かれている。
三四郎、それから、門
前期三部作、年代を引き継ぎながら、登場人物は違うが続きの話のようにテーマがつながっている。愛と友情、その結果の姦通がテーマ。
こころ
上中下の3編からなり、先生と私、両親と私、先生と遺書 。
多くの死が登場するデスノベルである。
死にゆく者から次の世代への魂の相続の物語と読める。 -
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「悪の力」
姜尚中の悪に対しての考察である。
古くは聖書から、その他古典的な文学から考察した悪に対しての考察である。
キリスト教的な考えが強く、ベルゼハブやヨブ記についての考察が印象に残る。
そして、資本主義が悪を生み出す根源ととらえているようで少々行きすぎのような気もする。
しかしながら、空虚に悪が忍び寄るというのはわかるような気がするが、人間はそれほど高潔なものでも悪魔的なものでもないだろう。
むしろなぜそういう悪の考えや行動が生まれるのかの科学的な知見が必要なように思える。原罪だの心の闇などと言っても何も解決にはならないし、そもそも解決できる問題なのだろうか。 -
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ネタバレ東日本大震災後に見られる社会に対する問題について書かれている。主に、夏目漱石などの文学作品から読み取れる社会問題を切り口に、現代社会に対する警告を示している。
大筋に関しては、同感できる内容で考えさせられた。
ただ、原子力発電の問題については、疑問の残る内容だった。震災で起きた原子力発電の問題は、原子力発電そのものではないように思う。それを覆う建造物の耐久性や放射能漏れ対策が問題だと思う。
原子力発電は震災後であろうと、それを支える科学自体には、間違えがあったわけではない。それを使う人間や使う判断をした人間に問題がある。
という面で原子力発電問題の議論自体に問題ありだと思う。
ただ、 -
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著者が若い頃に大きな影響を受けた5冊の本についてのエッセイです。取り上げられているのは、夏目漱石『三四郎』、ボードレール『悪の華』、T・K生『韓国からの通信』、丸山真男『日本の思想』、そしてマックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』です。
『三四郎』について語った章では、熊本から上京して絢爛たる消費文化が花開く大都会・東京のありようを目にして著者が屈折した気分を抱くことになり、そうした気分と漱石のメランコリーと重ね合わせた著者の青春時代の思い出が語られます。
T・K生の『韓国からの通信』という本についてはまったく知らなかったのですが、「在日」でありつつ「反共」の立