姜尚中のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
悪とは何かに対する一つの答えであるが、あくまで筆者の考える悪の形であるから、これが正解というものでは無い。だがカラマーゾフの兄弟や過去に発生した悪魔的とも思える殺人事件などを例に挙げ、悪の形を明らかにしている。
「魔が刺した」とか、「他人の不幸は蜜の味」など我々の周りには小さな悪もたくさん潜んでいる。確かにニュースから流れてくる戦争やテロ、犯罪の報道を見ていると時に目を覆いたく、耳を疑いたくなるような凄惨な出来事が世界中で起きている。それを見た大半の人は、許せない気持ちや、被害者への「可哀想」という感情を抱くだろう。だが一方で身近な悪を成敗するような正義ぶったユーチューバーの動画を見てきっと恐らく「ザマアミロ」という感情も抱いた事はないだろうか。そこには筆者が言うように、同じ感情を抱く者同士の共感性があり、言ってみれば悪の感情によって繋がれた社会が存在する。
普段真面目で清廉に見える人が、スーパーマーケットで万引きする事がある。本人は魔が刺したとか、スリルを味わいたかったと言う事であろうが、側から見ると理解し難いことの一つだ。良い人間であろうとする反動が表に出る事を完全には防ぎ切れないと言う事なのだろうか。私なんかも、勿論他人に対して、怒りや嫉妬の感情を持つし、場合によっては嘘だってつくこともある。そんな風に普段の生活の中で小さな悪を小出しにしているからか、幸いにも万引きや痴漢などに手を染める事はないし、殺人などもやろうとは思わない。
悪が何故生まれ、悪に染まる人が現れてしまうのは何故か。そもそも悪とは一体何か。難題ではあるが自分なりの悪に対する考えを持つきっかけにする様な内容である。 -
Posted by ブクログ
今日は令和4年8月15日だ。正午少し前から毎年の様に戦没者への哀悼を示す番組が国営放送(NHK)で流れ、武道館には天皇皇后両陛下だけでなく岸田首相も訪れ、正午の時報がなれば1分間の黙祷が捧げられる。1945年8月15日は昭和天皇による玉音放送が流れた日であり、ラジオで初めて聞く天皇の言葉の前に、何やら難しい事を言っている様だが、日本が戦争に負けた事だけは確からしい、と膝をついて泣き出すもの、心の中では生き残れたと安堵するもの、様々な感情が渦巻いた日でもある。特に戦争遂行の最前線にいた軍部には腹を切って自決するものも多数いた。
終戦記念日と呼ばれるこの日は、この様に先の大戦において国民が戦争に負けた事を実感した日というのが正しいところであろう。実際に世界を見渡せば韓国は抗日戦争の終結は、日本支配が終わって独立した事を祈念する日だ。当然の事ながら中国もそうである。あれから78年の月日が過ぎた。
日本では長く「戦後」という言葉で一括りにしている今に至る時代を果たしていつまで戦後と呼ぶか。これについて「本と新聞の大学」と題して朝日新聞社と集英社が共同で実施した講義が本書の内容となっている。本書が記載されたのは2016年であるから、当時はちょうど戦後70年の節目にあたり、果たして後10年、戦後80年は訪れるかを大きなテーマとしている。
戦後に対して「戦前」という言葉がある。戦争に至るまでの歴史の経緯を辿った時、いつからが全然と呼ばれるかは、対象となる「戦争」を何にするかにもよる。石原莞爾がアジア・太平洋戦争のきっかけが何かと問われた際に、ペリー来航こそが外国からの侵略の始まりと捉えたのは有名な話であるが、海外からの侵略的行為に対して、国力をつけ国防を整備する、その流れの中から西洋と同じ様に外地に資源や労働力を求めて戦争に突入するという対極的な観点からは当たっていると感じる。本書はまずはそうした日本と海外との交戦の歴史に触れながら、先の大戦以降の「戦後」の具体的な話に入っていく。
戦後は次の戦争が始まるまでの一時的な呼称であるから、日本が戦後80年より前に再び戦争をする可能性があるのか。この観点が本書の軸となっている。戦後の平和な時代を支えてきた平和憲法、在日米軍の抑止力、そして日本自体の国力となる経済および喫緊の最大の課題とも言える少子高齢社会の問題などを一つ一つ講義形式で読むことができるため非常にわかりやすい内容となっている。
特に多額の借金を抱えながらも異次元の政策を取り続けた当時の黒田総裁下の日銀の施策などは、それから8年近く経った今、答え合わせもできる。実際には株価は上がったが、本書予測通り円の価値は下がり、本書執筆時点では存在しなかった新型コロナやウクライナ侵攻などが再び日本をはじめとする世界経済に大きな影響を及ぼしている。
日本の周辺東アジア情勢を見てみれば、親日的な政策に舵を切った韓国に対して、相変わらずの嫌韓振りから目が覚めない日本、中国の脅威に晒されて、沖縄独立も現実味を帯びてきている。国を動かすのは非常に難しい事であるのは百も承知であるが、相変わらずの選挙投票率の低さを見ていると(直近の埼玉県知事選挙も30%を切っていた)、先ずは幼い頃から政治に参加するのが当たり前になる様な教育改革が必要ではないかと感じる。勿論長い目で見なければ成果がわからない様な施策を政治家が好むはずはない。株価を上げる様な目先の利益に囚われ、国債を乱発し将来にツケを残し、尚且つそれが原因で利上げもできずに円の価値暴落を引き起こすのが政治ではない。勿論、国家百年の計を意識しない政治家は皆無だろうから何らかの意図がある事は信じている。ただ持ち前の日本人らしさである、黙して語らずでは国民の「不安」は払拭できない。子供に苦労をさせる様な未来への懸念は、人々の心にいつも不安と壁を作っていく。
開かれた政治を期待するとともに、自分からドアを開いて政治の中に入っていくような双方歩み寄りに必要なのは、本書の様なテーマの投げかけ(戦後80年は来るのか)になるのかもしれない。本書を出版する経緯に、人が集まって座談会形式で一つのテーマについて語る世の中にしたい、という意図がある。正にその通り、将来的に今の時期を戦後と見続けられるか、戦前になるのかは私たち一人一人が政治に参加して決めていかなければならない。 -
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「見抜く力」という題については、ちょっとずれていると思います。
前半は身の回りでおきていることについての考察。後半は、北東アジアによる地政学的考察となっています。
■はじめに
人生を見抜き、時代を見抜く、これが、本書のねらいです。見抜く力のガイドブックです。
・自分のまわりの、小さな事実の世界と、世界で起きている、大きな事実の世界とは、実際には同時並行的に起きているのです。
・とすれば、それらを別々の世界として切り離すほうがむしろ不自然なはずです。
■人生を見抜く
距離をおく
・匿名の烏合の衆によってあっという間に世論もどきのものが形成され、それが一挙に拡散してしまうネット社会の危うさを考えれば、距離を置くということがどれほど重要であるかがわかるはずです。
・「見抜く力」は、こうした形骸化した客観性や数の勢いに翻弄される俗情的な世論に対して距離を置き、あくまでも「誠実に」自分と時代を見つめる洞察力を示している。
・過去は消えていくのではなく、無意識の世界の中に沈殿し、繊細な感覚的軽々をきっかけに生き生きと蘇ってくる
・まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思いけり 島崎藤村「初恋」より
・人たらしの声 ジェットストリーム 城達也
■時代を見抜く
・地政学的に九州が、東北アジアのダイナミズムを日本を引き込むゲートウェイになるからだ。
・残念ながら、北朝鮮という国家は存在しているのだ。そして今後も、当分、崩壊することはないと考えたほうがいい。
・ドイツ取材であらためて驚いたのは、原発が日本のように過疎地域の、ほとんど人の目に触れない場所に設置しているのとは違って比較的目につきやすい場所になることだ。
・リーダーの条件。ひとつは、ビジョンが不可欠だ。もうひとつは、コミュニケーション的権力である。国民多数の民主的な合意という正当性を獲得する必要がある。そして、最も重要なのは、国民の大多数が嫌がるような決定でも、それを拒否する多数者を獲得することでやり遂げるという実行力をもっているかどうかである。
・政治の要諦とは、取り組みべき問題の優先順位を定めることである。
・北朝鮮はどんなに厄介な隣国でも、中国にとって、死活的に重要な「緩衝地帯」なのである。
目次
はじめに
第1章 人生を見抜く
第2章 時代を見抜く
おわりに
ISBN:9784620324555
出版社:毎日新聞出版
判型:新書
ページ数:224ページ
定価:1000円(本体)
発売日:2017年08月05日 -
Posted by ブクログ
難しかった。
前提となる知識が足りなさすぎた。読むのが早すぎたか。
もうちょっと色々と読んで知って、また読み直すと色々とわかるようになる気がする。
p200
「聖と俗の、楕円というふたつの中心のダイナミズムがなくなった時に、皆カプセル化されて、狭い範囲のアイデンティティでしか人と交われなくなり、排他的になってゆく面があるんじゃないこと思います。」
今の世界は、まさしくこれで、多様性といいながら、一つの円の中に取り込んでいこうとしているところに違和感を感じる。
ここ何年かでよく聞くようになった「インクルーシブ」も、正直あまり好きではない。
別々の土俵で、お互いにそこにいることだけを許容しあえばいいのに、無理やり相手を自分の土俵に引き摺り込もうとしている感じがして、全然優しくない世界だなと思っている。
この本が言っていることとは違うのかもしれないが、多様性って円がいっぱいあって、ぶつかることもあるけど、そこには何かしらの反応が生まれ、エネルギーが生まれ、何かを生み出すきっかけになる可能性があるってことなのかなと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読書中のメモ
●独裁制の反対は民主制ではない。民主制はいとも簡単に独裁制に転じてしまう悪い面を持っている。みんなが難しいことを考えるのに疲れたとき、シンプルな政策を提示する者に政治をゆだねてしまう
●独裁制の反対は共和制。共和制とは、法の制定者と実行者が別ものである統治形態ー立法権と行政権の分離
●共和制の統治機構は様々。条件は重大な決定は立場や判定基準の異なる複数の審級を経由し結論までに長い時間をかけること
●倒産したら終わりの会社経営と国政を同様に考えてはならない。独裁で迅速な判断ができることを至上命題としてはならない。国政は会社経営と違って間違えたら取り返しがつかないのだから。
●憲法22条「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」。自民党の憲法改正案では、「公共の福祉に反しない限り」を削除しようとしている。(他の条項とは逆の動き)これは自民党の人々が都合が悪くなったらいつでも日本を捨てる権利を確保すること。自由と言う概念はいつのまにか機動性(モビリティ)概念に置き換えられ、機動性の高い、グローバルに活躍できる人材だけが高く各付けされる現状は奇妙だ
●機動性が高い人間というのは周囲にその人がいなくなっても困る人が誰もいないということ。なんでそんな人間の評価を高くしないといけないのか
●独裁を目指す行政府は立法機関の威信の低下をめざす。ゆえに、自民党は議員候補には無能なイエスマンをわざと選んでいる。そして議会不要論が蔓延する
●自民党新人議員はイエスマンばかりで党の言うなり、派閥を作る力を持つ者はもちろんいない。議員はとにかく拍手喝采してればいいという独裁の典型へ近づく。中国や北朝鮮と変わらない
●日本の司法権は弱すぎる。高裁で国に不利な判決は出ない。高度に政治的な問題は裁判の範疇外とされる
●日本の自衛隊員 インド洋の補給活動、イラク復興支援にあたった56名は帰還後に自殺した
感想
世界の自国ファースト主義化、日本の政治や社会のあれこれに対する考察と批判、なかなか勉強になるところあり、なるほどと思うところあり。
2017年出版の本だから、コロナで世界が大きく変わったため古く感じる面もある。
しかし、これからの日本は韓国台湾と協力すべきというアジア主義については、今ひとつピンとこなかった。
基本的にはいい話なんだけど、学者っぽい理想的なものの見方に鼻白む論がそこここにあった。
現実ではなく楽観的な目で印象や見通しを立ててしまってるのでは……と疑問が湧いた。
いい話、聞いて賛成してくれる人が増えるといいね
としか言えない。