姜尚中のレビュー一覧
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一人の人間、一つの出来事、一冊の本、そして一枚の絵が、人生に計り知れない影響を与えることがあります。
私の場合、そうした一枚の絵をあげるとすれば、それはアルブレヒト・デューラーの自画像でした。彼は何の予告もなく突然、目の前に姿を現し、そしていきなりわたしを叩きのめすほどの衝撃を与えたのです。
そう語る著者は、在日であるという出自、将来への不安など、とらえようのない憂鬱な気分を抱えていた学生時代にドイツの美術館で出会った500年前の青年画家の自画像から「わたしはここにいる、お前はどこに立っているのだ」
というメッセージを受け取ったそうです。
私たちが見るもの、そのすべては私たちの心が外の世界 -
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組織を経営するリーダはそこで生きる人の生命を維持し
彼らの暮らしが成り立っていくことを第一義にする。
ただ儲ける、株主重視、そんなキーワードが合わない時代。
人は、どのような動機で行動するかは
1)恐怖、2)利害関心、3)共感の三つという。
共感が今の日本の原動力になるような気がする。
これからのリーダーは7つのことが必要だという。
「先見力」、「目標設定力」、「動員力」、「コミュニケーション力」
「マネージメント力」、「判断力」
潮をみる魚の目。その感覚を鍛えないと、時代に乗り遅れていく。
そういえば、数か月前に、タイの洪水は予想できたとの話もある -
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アメリカは、世界にとっての超越的な「参照系」になっているのです。p14
フランス革命を経た世界が脱却しようとしたのは、少数者による専制支配でした。しかし、民主主義がめざす人民(多数者)による政治は、見方を変えれば、マジョリティによるマイノリティの専制支配と背中合わせでもあります。p35
親密圏と公共圏の往来をさらに豊かなものとし、先述の共存・共生関係をベースとした公共空間がふたたび編成されたならば、暴力や権力の問題に対する新たな局面が見えてくるのかもしれません。p58
「すべての国家は暴力の上に基礎づけられている」by トロツキー p60
今、なぜ「帝国」なのか、また、国連なのかと問わ -
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著者が伝えたいことは?
東日本大震災、その後の放射能汚染の恐怖が重なり、多くの人々がこれまで経験したことのない心の動揺や空虚感に苛まれている。
人間というのは、理由さえわかれば、相当つらいことにも耐えられるのですが、意味のわからないことには、耐えられない。あまりにも意味不明な打撃をこうむると、人は、虚脱上達に陥ってしまう。
そんな中でわたしたちが解放されるのは、著者が、一枚の絵をみた時の衝撃、つまり、感動のようなものこそが、まさにカギになるのではないか…
迷路の中で方向感覚を失った人間にとって、最後の切り札になるのではないか…
著者は、当時、それまでの自分から、日本から、そして在日から逃げる -
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ネタバレショーヴィニズム(排外主義)、ジンゴイズム(好戦的愛国主義)ではない愛国心の在り方について模索した本。著者は東アジア論で著名な在日コリアンの教授。
今まで日本を支えてきた政治・経済の体制が揺らぎ、社会が断片化・液状化する中で再ナショナル(保守)化が進む。その中で、自己責任論に見られるような社会の矛盾やリスクを個人に押し付ける傾向が見られる。
そうして見捨てられた人々は十五年戦争時の日本や『国家の品格』や『美しい国へ』といった著書に見られるような祖国の盲信、反知性主義に走る。ここでは「愛国心」がそうした人々の接着剤になっている、と。
著者の言うことはごもっともである。ただ、「 -
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ネタバレ[ 内容 ]
ほんとうに国を愛するとはどういうことか。
その先にあるのは希望か絶望か。
「改革」で政府によって打ち捨てられた「負け組」の人々ほど、「愛国」に癒やしを求めるのはなぜか。
日本と韓国、ふたつの「祖国」のはざまから鋭い問題提起を続けている注目の政治学者が、「愛国心」という怪物と真正面から格闘する。
[ 目次 ]
第1章 なぜいま「愛国」なのか(なぜいま「愛国」なのか 「愛する」とはどんなことか)
第2章 国家とは何か(国家と権力 国家と国民 国家と憲法 国家と国家)
第3章 日本という「国格」(「自然」と「作為」 「国体」の近代 戦後の「この国のかたち」 「不満足の愛国心」)
第4 -
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ネタバレ[ 内容 ]
夏目漱石、ボードレール、丸山真男。
悩める少年・永野鉄男が、政治学者・姜尚中になるまでに、いったい何があったのか。
だれもが読んでおきたい5冊の古典でたどる、注目の論客の、青春の軌跡。
[ 目次 ]
第1章 TOKYOが何だ!―夏目漱石『三四郎』(龍田山と三四郎池 「東京は太かねぇー」 ほか)
第2章 光栄ある後衛になる―ボードレール『悪の華』(魔の季節十七歳 「死」を垣間見る瞬間 ほか)
第3章 歴史は後戻りしない―T・K生『韓国からの通信』(命がけの記録 日本とアジアが動いた一九七〇年代 ほか)
第4章 すれっからしはブレない―丸山真男『日本の思想』(唯一の「入門書」 『日 -
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ナショナリズムの作用は内外の二方向を持っている。
外側に向けては、当該ネイションの範疇に含まれない存在を他者化=非人格化することで自己の所属する集団のアイデンティティを確認しようとする。外的境界の画定が、逆説的に、当該ネイションをアイデンティファイすることになる。逆に言えば、ネイションとは、その程度の相対的な非本質的構築物でしかない。
内側に向けては、当該ネイションの構成員の差異を捨象して矛盾分裂を一切含まない「国民」なるノッペラボウ集団に同一化し、『国民の物語』に組み込んでしまう。そこでは個人の実存は、国家の意思の下で抹消されてしまう。権力に抗おうとする者は、直ちに「非-国民」化され