あらすじ
「この道を行こう――」 歴史の悲しみを乗り越えて
集英社創業95周年記念企画『アジア人物史』総監修・姜尚中による未来社会への提言!
【おもな内容】
新たな戦争と、覇権国家の台頭を前に、「アジア的な野蛮」に対する警戒心が強まっている。
だが、文明vs野蛮という図式を相変わらず持ち出しても、未来は暗いままだ。
単なる「アジア回帰」でも「アジア主義」の復権でもない突破口は、果たしてどこにあるのか?
朝鮮戦争勃発の年に生まれ、「内なるアジア」と格闘し続けてきた思想家が、自らの学問と実人生の土台を根本から見つめ直した一冊。
この世界に生きるすべての者が、真の普遍性と共存に至る道は、「アジア的なもの」を潜り抜けることしかない。
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Posted by ブクログ
西洋一神教に基づく善悪二元論とは異なる新しい世界秩序とはどうあるべきか、それはかつてアジアにあった思想と根底で通じるものはないか、考えさせられる。少なくとも西洋文明こそが理想であり到達点であり、総ての人類はそこに向かうべき、という思想を今更信じる人は居ないのだろうが、さりとてその代わりが安易なナショナリズムである筈も無い。
「理解は出来ないが受け入れる(梨木香歩先生)」という考え方を持ちつつ、相容れない思想を抱きつつも最後の一線だけは越えないように出来ないか。相手が攻めてきているのにそんなナイーブな事は言っていられない、というのはその通りである。防備は必要だろう。だがそれは話し合いが無くて良いという事では無いはず。防備しつつも話し合いを絶やさないこと、決して分かりあえない事を知りつつも努力を続ける事が求められるのだろう。
中国の和平が打算に基づくと知りつつも、その打算が成立しないようにしつつ、なお平和を達成することが出来ないか。相手が変わらなくても良い、こちらに従わなくても、同じ考え方をしなくても良い、互いに理解は出来ないが共存は出来る、となるのが、現状、ベストであり最も難しい道なのだろう。だとすれば、「東アジア」といった緩い枠組みの中で、鍔迫り合いながら同床異夢のまま過ごす、というのは、意外と最も有効なのかも知れない。
Posted by ブクログ
「在日二世」の観点から、アジアにおける日本の立ち位置を論じている。筆者の人生が色濃く反映されていて、大局的観点だけでなく韓国人と日本人双方の視点が入っているのはこの筆者ならでは。
話は過去の思想家やそこから繋がる現代の状況、世界各国まで広がるので少し難しい。しかし筆者が述べている通り教科書でほんの数行だけ「韓国併合」などと触れられていても実態を理解できるものではなく、世界中の過去からの流れがあってその歴史が刻まれていくということを考えれば、古今東西まで話が広がるのは当然だろう。
筆者自身の生い立ちを歴史に絡めた知的エッセイのようなテイストの本。