姜尚中のレビュー一覧
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在日2世で政治思想史の研究者として知られる姜尚中と、オーストラリア在住の賭博師・森巣博の2人が、ナショナリズムについて語り合った対談を収録しています。
第一部では、姜の著書『ナショナリズム』(岩波書店)の内容を振り返りながら、近代・現代の日本のナショナリズムの歴史と現状について考察がおこなわれます。第二部では、コスモポリタンとしての生き方を選んだ森巣の人生に、姜が切り込んでいます。
「民族」のアイデンティティに関する屈折した悩みを語る姜の、ともすれば重くなりがちな思索が、「無頼」に生きる森巣の自由闊達な立場に通底していることが示されています。 -
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金曜日の仕事帰り、ちょっと寄り道した串焼き屋で、この本を手にぼんやり考えてみる。
著者は20世紀は心の病が発見された世紀である、としている。生きとし生けるものは何がなんでも生きようとするのが本能であるのに、自分から生きることをやめようとするのは不自然なことであり、そのような自殺が多発する現代は人類史を俯瞰するに大変不穏な時代である、と言う。その異常性は近代化と共に漱石の時代に始まったのだ、とするのが筆者の近現代観になっている。
しかし本当にそうだろうか。
心中という言葉が浄瑠璃と共に市民権を得たのは江戸時代のこと。そして支配者階級である武士には切腹を一種美化するカルチャーがあり、「ここ -
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「半歩」というキーワードに心惹かれて、
読み始めた一冊。
高度に情報化が進み、人びとが個性を
発揮し始めた現代においては、数歩先を行くリーダーではなく、
常にフォロワーに対して、半歩を行くリーダーが求められる、
と韓国の金大中大統領を例にして、リーダーシップ論を説いた本。
納得することが多く、
また、読みやすく、特に「自分はリーダーに向いていない」
という人にお勧めです。
☆Key Point
・何かをしようとするときは、3度考えろ。
・長い歴史をよく対照して、自分たちがやった誤りを見つめることが、政治家には必要。
・「昨日の敵」は「今日の友」
・リーダーのスマートパワー=ハードパワー+ -
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ネタバレ著者について:姜尚中(カン サンジュン)さんは、田原 総一朗さんが司会を務める「朝まで生テレビ」などにコメンテーターとして出演している方です。他のコメンテーターが熱くなって論点がわからなくなっている状況でも、冷静に問題の本質を明確にしたり、新たな視点を提示したりする気になる存在でした。
本書は、夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。とのこと。久し振りに手ごたえのある本に出会いました。
◆姜尚中さんの心にしみる言葉・・・
「信じる」ということは、「何かを信じる」ということではなく、「自分を信じる」ということになると思 -
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ネタバレこの本の中で一番ぐっと来たのは「過去を大事にする」という訴えでした。「『可能性』だとか『夢』だとかいう言葉ばかり発して未来しか見ようとしないのは、人生に対して無責任な、あるいはただ不安を先送りしているだけの態度」との指摘でした。
私もどちらかというとこの性質で、自分の人間関係も焼き畑農業的だなぁ、と反省したこともあったので、ぐっと来た。
この未来ばかり見てしまうのも市場経済にどっぷりはまった現代人の一つ特徴であるらしいが、それにしても自分はひどいもんなぁ、と。
いい言葉に出会えましたわ~。
ちなみに、この「過去を大事にする」ということは裏返せば「今を大切にして、いい過去をつくる」ということで -
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政治学に関するいくつかのkeywordを取り上げ、どのような解釈や問題が起きてきたのかを概説している。
アメリカの共和制や理念や東北アジアなどの国や地域に対する考察と、暴力や主権・憲法などのトピックに分かれる。
彼は東北アジアはエネルギー問題や民主主義政策のスピードを根拠に、地政学的に朝鮮半島を中心にしてアジアを囲む4大国(中国、日本、ロシア、アメリカ)をまとめることこそが、今後の姿だと考えているため、日本の昨今の憲法改正議論や領土問題は危険だと考えている。そもそも戦後体制についても天皇の人間宣言は明治期のナショナリズムへの回帰だと言っていて、あまり感覚的にピンとこないというかモヤモヤした。 -
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前作の『悩む力』が刊行されたのは2008年。こちらは2012年5月に刊行されているので、当然ながら3.11を踏まえた上で改めて「悩む」ことについて、そして「幸福である」とはどういうことかについて、考えていくための構成になっています。
今回はこの「幸福」を考えるため、前作でも取り上げていた夏目漱石とマックス・ウェーバーに加え、『それでも人生にイエスと言う』で有名なフランクル氏の著作も何カ所かで取り上げられています。
前作もそうでしたが、生きていく上での悩み方を学ぶヒントとして読む以外に、漱石作品を著者の視点を通じて概観する、という目的でも読めると思います。というのも、この本は別に漱石作品の書評 -
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「美しさ」を感じた一冊。
私は美術館が好きで、年に数回ほど足を運んでいるのですが、鑑賞した作品を語る言葉を持ち合わせていませんでした。
なので、どんな風に、感じたことを言葉に置き換えて伝えることができるのかを知りたくて、この本を手に取りました。
感想は、
ただただ、美しい。
姜さんの表現に、世界観に、惹き込まれました。
こんな風に、世界に触れることができたならば。
こんな風に、芸術作品に触れられたならば。
どんどん「満たされていく」感じがしました。
文字による紹介が多い本書ですが、読後、姜さんのサポートのもと芸術作品を味わったかのような、充実感と満足感が心に残りました。
美術館に、ま