姜尚中のレビュー一覧
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吾輩は過去である
人類は科学の進歩によって物質的に幸福を満たしてきたが、3.11の原発事故でその神話が崩れたという。また人類は文明の発達によって心の幸福が満たされてきたかというと否だという。だから我々はいま、ターニングポイントに立っているそうだ。
自分探しのために未来ばかり見ることは、市場経済の考え方であり、もう時代環境にそぐわなくなってきている。人間にとって本当に尊いのは過去なのだから、過去をしっかり見つめようという。なるほどと思う。
NHKのプロフェッショナルの主題歌に、そんな歌詞がある。「ずっと探していた理想の自分って もうちょっとカッコ良かったけれど 僕が歩いてきた日々と道のりを 本当 -
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ネタバレ日本の美しい「形」や「情緒」という言葉は、ぼんやりとしていて包括的なイメージである。しかしそれらの言葉は、日本人の心の琴線に触れることも確かだ。
姜氏はこの本の中で、日本の文化をナルシシズム的に吹聴するとして『国家の品格』の著者を批判している。
自分は以前『国家の品格』のレビューに、「『野に咲く一輪のスミレを美しいと思う心』を大切にしていきたい」と書いた。今もその気持ちは変わらない。しかし同時に盲目的・陶酔的にならぬよう、常に自己批判する目が必要だと再認識した。
また姜氏は「『愛国』や『愛国心』という言葉が氾濫している割には、内面から突き上げてくるような理想がほとんど消え失せているのではな -
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「アメリカ」、「暴力」、「主権」、「憲法」、「戦後民主主義」、「歴史認識」、「東北アジア」の7つのキーワードをもとに戦後の日本と世界の関係を説いている。
「政治学入門」とあるが、学生時代に歴史の授業を真面目に受けてこなかった私にとっては難解な用語が多く、読むのに時間がかかったし、一度読んだだけでは半分も理解できなかった。
しかし、著者が伝えたいことはあとがきで述べていることが全てなのだろう。私なりの解釈も加わるが、大まかには以下の通りである。
百聞は一見にしかずと言うけども、全ての判断材料を見ることは不可能で、時にはメディア等を通して偏った情報のみを目にすることもある。結局のところ決断時に頼り -
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姜氏が司会をしていたNHK教育の“日曜美術館”は欠かさず観ていた。小一時間、姜氏の独特の雰囲気に浸りたいという不純な動機もあったけれど、画家や一枚の絵画に対する彼の感想には、必ず彼独自の見方や感じ方が紹介され、その内容はとても興味深く、かつその姿勢を好ましくも感じた。今回、とりわけ思い出深い芸術作品をとりあげての著作ということで、期待して購入。
姜氏の日本語にはどこか切ない美しさがある。そこはかとなく官能的といってもいい。在日という出自を背負った彼の淋しさや苦悩、自分自身への問いかけの日々が、時を重ねて熟成し、独特の芳香を放ち得ているのだろう。
いずれの作品の記述も興味深く読んだけれど、とりわ -
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11年ぶりの再読。悩みから逃げずに、悩んで悩んで、そして突き抜けろ。著者のメッセージは11年たった今の世の中でも新鮮な響きを持ちうると感じます。
(2011/10/22)
出自、家庭、仕事、人間関係。生きている限り悩みは尽きないが、それへの対処についてこそ、人それぞれの個性が現れるのではないだろうか。逃げる人、かわす人、他の事柄に目をむけてやり過ごそうとする人。本書では、著者が影響されたという、夏目漱石とマックスウエーバーの、悩みを真正面から受け止め、作家として学者としてそれを乗り越えようとする姿勢を紹介する。
最も気に入ったのが最終章。高齢化社会を迎える日本では、高齢者が悩みを突き抜けない