角幡唯介のレビュー一覧
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「極夜行」の著者で知られる探検家、角幡
唯介氏のエッセイ集です。
内容は当然アウトドア系が中心ですが、自身
の探検にこだわりや、日常生活のちょっとし
た出来事など多岐に及んでいます。
特に、よく世間で言われる自己責任という
言葉に対しての著者の主張は非常に筋の通っ
たものであると共感させられます。
本人も遭難に見舞われれば、たちまち自己
責任と言われかねない立場にあるにもかか
わらず、毅然とした考えは立派です。
自己責任が伴わない行動など、今の社会に
はほとんど成立しない。
その上で救急車などの公の助けを受けること
に対して「自己責任だからほっとけ」となら
ないのだから、「公」の関与 -
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ネタバレ空白の五マイル
チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む
角幡唯介(かくはたゆうすけ)著
集英社
2010年11月22日発行
面白い本だった。まだ2月半ばだけど、今年読んだ中では一番。ただし、2010年の本(2010年、開高健ノンフィクション賞受賞作)。
チベットの首都、ラサから東へ500キロほどのところにある(ヒマラヤ山脈)ツアンポー渓谷は、“世界一大きな”渓谷と言われ、謎とされてきた。数々の探検家をはねつけ、その命を奪ってきた。1924年、英国のウォードがついに1000メートルの岸壁を越え、探検家としては初めて渓谷の無人地帯を突破。それでも最後に入れなかった区間がある。そこは「空白の五 -
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辺境作家高野秀行氏との対談集『地図のない場所で眠りたい』にて、本著者がこの作品の裏話を語っており興味を持った。
自己の挑戦に過去の冒険家との記録を交互に重ねる構成が効いていて、それがどれだけすごいことかをただ説明されるより深く理解できた気がする。
ツアンポー峡谷の最狭部にある巨大な岸壁「門」こそ越えられなかったけれど、ほとんど踏破できていたのでは?
少なくとも過去の探索者が複数人でも中途で挫折していたのを、著者は単独で全体像の把握までこなすという偉業は達成している。
それでも納得できず、二度目に挑戦した際、不運に見舞われ峡谷踏破より生きることに舵を切った場面からはもう一気に読まざるを得ず。
死 -
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1994年に37日間の漂流ののちに生還した沖縄のマグロ漁師・本村実が、その8年後に再びマグロ漁に出漁し行方不明になっている。本書は、本村の漂流の足取りをたどった旅の記録。
早大探検部出身の角幡唯介は、19世紀に129人が全員死亡した探検をたどって単身で北極を踏破するなど、常人とは異なる好奇心のスイッチを持つ人物。本書においても、彼の好奇心は本村の軌跡をたどるどころか、沖縄・日本・南太平洋の島嶼エリアの戦後近代史や、遠洋漁業の隆盛の歴史といったテーマも深く掘り下げるにいたっている。
本村の出身地である伊良部島・佐良浜の漁民が、日本の遠洋漁業成立にいかに貢献したか、という視点は特に面白い。沖縄 -
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これこそ読書の醍醐味だと感じた。
エッセイなので簡単な感じで書いてあるものの
人生で私が経験することがないであろう世界、
私の生活とは全然違う世界、
読むことで少しは想像できるように
なる、そんな感じ。
とはいえ生活感のある話や下ネタもあったりして
著者自身にも興味がわいた。
旅が好きなのもすごく伝わってきた。
また別の本も読むと思う。
人生における新しい局面は、向こうから
やってきた偶然とリスクを受け入れたときに
はじめで開けるわけで、さらにいえば偶然を
受け入れないかぎり、それまでと変わり映え
しない日々しかつづかない。
偶然を拒否する人生は、結果的にはつまらない
ものになるだろう。十 -
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ネタバレ筆者が述べるとおり、完全な自己満足の世界。通常人には理解されないことに命懸けでトライした男の話。
なぜ仕事も捨ててまで、チベットの奥地に、捕まる危険性、死ぬ危険性まで背負って行くのか?
それについて筆者はエピローグで「リスクがあるからこそ、冒険という行為の中には、生きている意味を感じさせてくれる瞬間が存在している。あらゆる人間にとっての関心ごとは、『自分は何のために生きているのか、いい人生とは何か』という点に収斂される。(中略)冒険は生きることの意味をささやきかける。だがささやくだけだ。答えまでは教えてくれない。」と述べている。
本当に心を打たれた。
普通の人からすれば、登山家や冒険家、探検家 -
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【ノンフィクションは事実を積み上げていって真実に近づければいいものだと思うんですけど、小説は事実の積み上げもなくて真実を書かなくちゃいけないというイメージがあるんですよ】(文中より引用)
探検家と作家という二つの顔を持つ高野秀行と角幡唯介による対談録。早稲田大学探検部での活動に加え、ソマリアや北極への渡航、そして自身の経験を書き記すことの意義について語り尽くした一冊です。
思った以上に「書くこと」論やノンフィクション論にページが割かれている印象を受けました。ただそれが、探検というテーマを目的として読み始めた人にも「なるほど」と思わせてくれるほどに興味深い点が嬉しい驚き。結果としては幅広い楽 -
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探検家としてとんでもないことを成し遂げていることに加えて、ライターとして非常に優秀。
フランクリン隊はなぜ全滅したのか、アグルーカたちはどこへ行ったのか、それを自分たちの冒険とパラレルに見せていく演出はすごく上手い。
ただ歴史を順に語っていくのではなく、自分の足で実際に足跡を辿っているだけに、その経験から生まれる言葉に説得力がある。
巻中の写真には、過去の探検家がともに歩いているような臨場感さえ感じた。
同行者の荻田氏とのやり取りがライトに描かれているだけに、大変だった苦労しただけではない、冒険の過酷さがよりリアルに感じられたように思う。
空白の5マイルの次に読んだのがこの作品だが、本作 -
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1840年代、英国のフランクリン隊が北極圏の北西航路を開拓するために、129人、2隻の軍艦で旅立つが、行方不明となり出発後10年近く経ったのちに全滅したことがわかる。その後の調査や隊員に遭遇したイヌイットの言質より、隊員の無数の白骨や墓、遺品などが発見された。しかし、最後の隊員が、どこまで辿り着き、志半ばで力尽きたかはいまだに謎である。
本書では実際に北西航路を歩きながら2ヶ月かけて踏破する過程を経てその仮説を提示する。
過去と現在を交互に描く手法、極地探索におけるGPSの意味合い、なぜ危険な旅を続けるのか。
読み応えのある、非常に面白い本でした。船戸与一、高野秀行、そして角幡さんと、早稲田の -
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ネタバレ早稲田探検部出身でUMA探しで思い浮かぶのは高野秀行氏ですが、本著はヤルツァンポ峡谷の空白の5マイルを踏破した角幡唯介氏。
フィリピン・ルバング島で旧日本兵小野田少尉を発見して、一躍時の人となり、その後ヒマラヤ・ダウラギリ山域で6回の雪男捜索を行い、雪崩で亡くなった鈴木紀夫氏や、日本有数の登山家で、雪男を目撃した芳野満彦氏など、雪男という存在はそれを目撃した人を引き付けてやまないらしい。著者自身イエティー・プロジェクトに半信半疑ながら参加し、だんだんと雪男捜索の魅力に引き付けられていっていますが、これは雪男に限らず、UMA全般や伝説的なもの一般に当てはまる事かも。
いかにもキワモノ的になりそう -
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19世紀半ばに「北西航路」発見を目指してイギリスを出発し、北米大陸の北部、北極圏で全員が死亡したとされるフランクリン隊。本書は、このフランクリン隊がたどったルートとほぼ同じルートを徒歩で踏破する冒険の記録となっている。
北極圏のとんでもなく厳しい自然環境の描写に加え、フランクリン隊の生き残りの行方について様々な資料を照らし合わせて分かったことや現場に立って考えたこともそのつど織り込まれている。一種のミステリーとしての趣きもあると思う。
淡々とした内省的な描写ながら、どんどん先を読みたくなる。とくに中盤の麝香牛のエピソードには、激しく心を揺り動かされた。冒険とは何か、なぜ人は生命を賭し -
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『もし私が今度の旅で何か分かったことがひとつだけあったとすれば、それはあの時に感じた、ある種の生きることに対する罪悪感であった』
北西航路発見の探検で死んでいったフランクリン隊の足跡をたどりながら1600kmの道のりを歩き続けた冒険・旅
とても面白かった
”自分の体から出る水分の多さにうんざりした”
”通信手段として、岬や丘など目立つ場所にケルンを積み上げ、中に記録を残すのが連絡手段であった”
”山岳地帯の探検で重要なのはGPSが教えてくれるデジタルデータではなく地形図から読み取れるアナログデータだ。極地では緯度と経度という厳密な数字によって把握するしかない。”
”フランクリン隊と私たちの大