角幡唯介のレビュー一覧

  • 極夜行

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    『空白の五マイル』依頼の角幡作品。圧倒的な冒険譚。GPSや期せずして使用することが叶わなかった六分儀などから『脱システム』することで、否応のなく外界との接触点が増え外界を自分の中に取り込み世界化されている角幡さんのリアルな語り口で極夜探検を疑似体験することができた。その角幡さんですら、冒険の最終盤のブリザードのなかで天候確認として利用した衛星電話、一度使うとシステムに組みこまれてしまうという下りに、便利だ、便利だとスマホだキャッシュレスだと浮かれる現代人の不自由さを思った。

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    2023年10月12日
  • 裸の大地 第二部 犬橇事始

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    カクハタ君の話はこれまでも共感する話が多かったんだけど、そこに犬との話が加わったことで話にも広がりが更にできて、更に面白くなった印象。

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    2023年08月24日
  • 裸の大地 第一部 狩りと漂泊

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    極夜行と比べたらゆるいのかと思って読み始めたけど今回もグイグイと引き込まれて一気読みでした。次作が楽しみ

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    2023年08月15日
  • 極夜行

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    最高に面白かった。
    私はどこかで冒険者や探検者に理解を示そうとしていなかった。
    スリルを求めて旅をするなんて意味がわからない、無くて済むなら無いままでいいものが危険で、人間というのは安心安全に対する欲求が強い生き物なのだとマズローも言っているではないか!
    それを現状に満足できず、刺激を求めすぎるからなのか、あるいは他人に自慢したい「俺はお前と違うぜ」的な何かを求める傲慢なやつだなとさえ思っていた。
    けれど角幡さんは私が思い描いていた探検家とは全く違う人物だった。

    生か死か、その二択の中で生きることなど、ごく普通に生きていれば起こることはない。
    それをわざわざ体験しに行く著者は好奇心の塊だった

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    2023年06月25日
  • 極夜行

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    グリーンランドから月の明かりもなくなる期間があると言う「極夜」を探検したノンフィクション。
    犬と橇を引き旅をする。ツンドラの果ての果て氷と一瞬にして豪風の世界。
    どんな旅にしようと計画しても、天気には逆らえない多くの変更を経てたどり着く。
    何を考えどう行動したか、最悪の事態をシミュレーションしながら旅は終わる。

    星野道夫、椎名誠、いくつかの極地の旅を読んではきたが、角幡唯介さんの旅も違う世界の扉を開きパズルのピースをもらった気分。
    この著書の前に、極夜行前と言うものがあると言うのでこちらもこれから入手したいと思う。

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    2023年06月12日
  • 裸の大地 第一部 狩りと漂泊

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     「四十三歳の落とし穴」という一章から始まる。旺盛な体力の勢いのまま冒険行を重ね経験値をあげていき、降下し始める体力と、積み上げていくことが可能な経験値が、いつか逆転を起こしてしまう。スポーツであればその帰結先は競技としての「敗北」だが、冒険行においてそれは「死」だ。

     本書では実例として河野兵一さんと植村直己さんをあげている。著者はどうだ。ぎりぎりの冒険旅行を生還し、さらに狩猟を通じて価値観が転換する経験をすることにより、これからも大丈夫なようだ。

     著者は価値観の転換を、狩猟を通じてと描かれているが、私はまさにその思考こそ四十三歳の転換点だと思う。『狩猟』ではなく、四十三歳という年齢が

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    2023年04月07日
  • 裸の大地 第一部 狩りと漂泊

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    白夜に極地を漂泊することでひとりの人間に芽生えた「思いつき」を辿るようなストーリーとなっていて読後感がよかった。極限状態で食い繋ぐ狩猟が筆者に哲学的な命題を突き付けたかと思いきや、間髪入れず陽気なJPOPの鼻歌に展開する表現力に脱帽した。

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    2023年03月19日
  • 極夜行前

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    素晴らしい行動と 素敵な文章表現能力
    「極夜行」を読んでから読むべき
    あとがき も 特別寄稿 も 最高

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    2023年01月28日
  • 空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む

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    ★なじみのないものを読ませる技術★グーグルアースで地球上のどこもが見られる時代に冒険の意義を求めるのが難しいことは著者が一番分かっており、現在の探索と歴史を交互に記して時間軸により深みを持たせる。冒険に過度な意味を持たせるの慎重に避けながら、独りよがりにならない読み物に仕立てるのがうまい。
    最初の探検だけでも十分にノンフィクションになりそうなものだが、これだけの回数を重ねるまで待った心意気にも感服する。

    それにしても単純に人間業とは思えない日々に圧倒される。20日以上も一人で山を歩きぬけるという苦難は想像がつかない。藪をこいで崖を上り下りする技術の詳細や、せっかくなので写真をもっと見たくなる

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    2022年12月29日
  • アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極

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    アグルーカと呼ばれた男たちは、一人ではなかった。そのことが、さまざまな憶測と伝聞を生み、真実が靄の中に包まれていく。
    最後まで息も吐かせない冒険の数々とミステリー。
    角幡さんの極地行の初期作品なので、珍しく同行者がいるのも面白い。そして、後の『極夜行』につながる、GPSや衛星電話への疑問なども盛り込まれていて、読み応え満点。
    あと、ツンドラの夏は蚊が酷い、と亡くなった祖父(遺骨収集のためにシベリアに行ったことがある)が言っていたのを思い出した。極地は季節を問わず、人を寄せ付けない所らしい。

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    2022年11月15日
  • 極夜行前

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    角幡唯介『極夜行前』文春文庫。

    傑作ノンフィクション『極夜行』の前日譚となる準備期間を描いたノンフィクション。

    言わずもなが、面白い。男の冒険心をいたく擽ってくれる。

    『地図上の空白地帯が無くなった現代に於いては、もはや未知の状況下で過酷な自然に挑むしか探検を行う術は無い。』ということからGPSや衛星携帯電話を持たず、一匹の犬と太陽の昇らない冬の北極に挑むことを決意した著者は過酷な旅への準備を進める。

    六分儀を用いた天測を学び、極北カナダで実地訓練を行うが、極夜の世界では思うように自分の位置を知ることが出来なかった。メーカーの協力を得て六分儀に改良を加え、来たる『極夜行』に備える。そし

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    2022年11月07日
  • 裸の大地 第一部 狩りと漂泊

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    2022/08/07
    ギリギリの時のウヤミリックとのやりとりが好きです。ネタバレになるので書けないのですが。

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    2022年08月07日
  • 空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む

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    ネタバレ

    ほぼ死が確定している中、生存の希望となる橋を発見するシーンは夢中になって一気に読んでしまった。
    ツアンポー峡谷に敗れ、死が近づいてくる描写は文学的でありながら、リアリティもある本当に引き込まれた。

    自分も探検部に属しており、角幡唯介や高野秀行のような探検は一つの理想であるが、この探検のように死が隣り合わせな状況は自分には耐えられないだろう。
    しかし、角幡唯介の本を読む度に自分も探検がしたいと強く思う。

    この本のあとがきで、角幡唯介が「読み手を意識していない。自分の欲求のために探検して、この本を書いた。」とあった。
    「探検という行為は社会に還元するためにある。」というのが、探検部の上の年目の

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    2022年05月12日
  • 裸の大地 第一部 狩りと漂泊

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    ネタバレ

    ーーあらゆる細密な情報が書きこまれた、私以外のすべての人にとっては完全に無用な地図。でもだからこそ、そこに書きこまれていることが私という存在そのものであるという、そういう地図。…そういう地図を、私はつくろうと思った。(p.284)

    時系列的には『狩りの思考法』の前段にあたる極地行。角幡さんとウヤミリックの1人と一匹で旅するのは、確かこれで最後だったはず。この後、犬橇という新しい旅行法に舵を切る、そのきっかけとなった出来事が語られる。
    冒頭で引用したのは、その末尾の部分。
    角幡さんは足と文字の両方で物語を語る人なんだなと思った。地図の上に自分の足跡を残し、そして残した足跡が如何なる意味を持つの

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    2022年03月28日
  • 空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む

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    未踏地や未踏峰がほぼ無くなりつつある今の地球で、それでも冒険をするとすればどういう形が可能なのか?
    20世紀までの冒険は、功名心や功利心、あるいは知的好奇心に駆動されて、人跡未踏の地に踏み込みさえすれば冒険と見做された。とてもシンプルで、わかりやすかった。
    文明の発展とともに地図の空白地帯は消えていき、一見、わからないことなど何も無いかのようにさえ思えてしまう。だから21世紀の冒険は「今、どこに行けば冒険になるのか」「どのような旅をすれば冒険になるのか」という、冒険の定義から始まらなければならないらしい。とても、知的な作業だ。単なる命知らずの冒険野郎では、もう、本当の冒険には辿り着けないのだ。

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    2022年03月17日
  • 探検家とペネロペちゃん

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    物事を小難しくも面白可笑しく捉えて、父親としての若さ故の筆の勢いも相まって勢いと著者の感覚の深さがどちらもリアリティを持って読めた。
    父性とは?女児も既に女性である。といったトピックについて真摯に考察している。タブーや思春期にまで成長した娘ちゃんに臆することなく真っ向から書いているので示唆に富む。良書。
    18歳の私に少しだけ子供が育つことへのイメージが湧いた。

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    2022年03月05日
  • 探検家とペネロペちゃん

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    最後の、少し大きくなったペネロペちゃんの頑張りが爽快な感じだった。

    普段の探検、冒険を書いた作品よりも冒険のような感じがする。

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    2022年02月05日
  • 探検家の憂鬱

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    角幡唯介『探検家の憂鬱』文春文庫。

    探検家という稀有な職業を選択した著者による初のエッセイ。

    先に読んだ高校を中退し、渡米してから歯痛で僅か8ヶ月で帰国したにも関わらず、アメリカにかぶれ、サブカルチャーの周辺を漂っている松浦弥太郎のエッセイ『最低で最高の本屋』の100倍は面白い。

    探検とノンフィクションとのジレンマに悩み、探検に付きまとう死の影に怯えながら何度も死線を乗り越えた著者ならではの面白いエッセイ集であった。やはり、全うに真っ直ぐに真面目に己れの人生を切り開こうとしている方の主張には共感するところが多々ある。終盤に傑作ノンフィクション『極夜行』に描かれたデポ計画にも少し触れている

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    2022年01月06日
  • 探検家の日々本本

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    ネタバレ

    身体も心もよわよわでヘタレの私の、中学生の頃の夢は探検家でした。
    国語の教科書でスヴェン・ヘディンがロプノール湖の謎を追ったのを読んで、内田善美のマンガ『時への航海誌』を読んで、将来は探検家になりたいと熱く思った女子中学生は、ただの夢見る夢子さんです。
    でも、ものすごく憧れました。

    それで今も、探検家が読む本に興味津々なんですの。
    死と背中合わせの状況で、一体どんな本を読むのか。

    この本を読んでわかりました。
    死と背中合わせの最中に本は読まないことを。
    でも、悪天候などで身動きが取れない時(そしてそれは結構な時間あること)、本を読むのだと。
    だってほかにすることないから。

    そんな状況で読

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    2021年10月12日
  • 探検家の日々本本

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    冒険家の筆者の読書録。いろんなジャンルの本をめっちゃ読んでるのには脱帽。

    「人生をつつがなく平凡に暮らしたいなら本など読まないほうがいい。しかし、本を読んだほうが人生は格段に面白くなる。」の文章にやられた。そして読んでる本が、私の既読本とか読みたい本と被ってるのにやられた。こういう本って、紹介されてる本が自分の心に響くかどうかよくわかんないものが多いんだけど、この本は「うわあ、読みたい…」と純粋に思わせてくれる本で感動した。
    筆者の文章力もすごく自分好みで、好きな筆者がまた増えたのも喜びだった。

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    2021年07月25日