角幡唯介のレビュー一覧
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著者の言う43歳頂点論に初めて接したのは『狩りと漂泊』だった。40代前半で体力と経験のバランスが微妙に齟齬をきたし、冒険家が命を落としてしまうという考察。その時も激しく同意したが、本書はさらにその周辺を深堀りしている。
43歳までの膨張期、43歳の頂点、43歳を過ぎて迎える減退期と、大きく3期に分けて論じているが、どれも面白い。取組んでいるアクティビティや、活動レベル、本業の有無等により、程度の差は大きくなるだろうが、みんな感じてきたことと思う。著者はまた、43歳を過ぎると、今まで考えもしなかった引退後の生活を考えるようになったことも43歳を頂点と考える要因雄一つに挙げている。家庭を持っ -
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極域の極夜単独行など、独自の視点で探検を行い、その体験を文章化してきた角幡氏。結婚を機に「なぜ結婚したんですか」という質問に向き合うなかで、それは「なぜ冒険をするのか」という問いと同じ構造で捉えられると考察します。
「なぜ結婚したんですか」という問いの背景には、”冒険家として生きるなら結婚は邪魔なのでは”という質問者の思い込みがあり、だからこそ”合理的に判断すれば結婚しない”という結論に行き着くはずなのに、”なぜ結婚したのか”という問いが発せられると著者は分析します。それに対し、著者が思索の末にたどり着いたのは”結婚を思いついたら、それをしない選択はあり得なかった”というものでした。一見、飛 -
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最近、自分がこれからどう生きていくのか考えるようになった。無論、結婚もそれに含まれる。
自分はいつ結婚するのか、結婚しようと思ったら早いうちに行動すべきなのではないか、そのためにはどんな相手を求めるのか、自分がどんな人間であるべきなのか、結婚を合理的に進めるための行動を考えていた。
自分はいつも誰かを好きになる時、相手は恋人として合理的でない人ばかりだった。つまり相手(=私が)を恋人して見ていなかったり、そもそも恋人という存在を必要としていなかったり、恋人に対して歩み寄ったり関係を進めるための行動を起こさなかったり、という具合である。
合理的に考えればそんな相手よせばいいのに、どうしたって -
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東野圭吾の「白夜行」に対しての「極夜行」なのかわからないが、太陽が昇らない季節のグリーンランド冒険譚。
写真の一つでもあると、自分の貧困な想像力を補うことができるのだが、それでも凄まじい冒険だったことは分かる。
時に軽いタッチの筆、特に犬を表現するときのそれご、逆にどれだけこの冒険が大変だったのかを語っているようにも思えた。
生還したからこそこの本が出版されてる訳だが、そもそも極夜をなんと読むのかわからないぐらいだったが、アラスカでオーロラを見た時の夜の暗さは覚えている。
都会の夜とは違う夜の暗さ、黒さ。そこから太陽のある世界に戻ってきた時の感動は凄かっただろうなと思う。
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原始的体験としての極夜行。すごいこと思いつく人だなあ。
ストイックだけど、いろんな意味での人間味が面白い。現代の部分も、原始の部分も。
天体との関わり方は、羨ましいに尽きる。とてもじゃ無いけどこんな旅はできないので、羨ましいとハンカチ噛むしか出来ない。本当の夜も、頭の上で泰然と導くポラリスも、美女ベガも、愉快犯みたいだけど見放さないでいてくれる月も、やがて昇る本物の太陽も。
あとがきにドッグイヤーしたのは初めて。
口悪いし下ネタ放ってくるし、でも物はちゃんと整備して、死生観を持っていて、こうゆう人じゃ無いとこうゆう世界で生きていけないんだろうな。
そしてこの世界で生きていける人でも、人の世界 -
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タイトルで勘違いしていたが、本書は足掛け4年、4回にわたる山行記録で、1回の山行で49日間日高山脈に入り浸っていたわけではない。日高山脈はそこまで広い山域ではないということか。また、地域を手の内化しようとする試みは、北極圏でも実施している著者の一貫した行動原理の一つと感じる。
無目的に漂泊する指向の中でも、沢を遡行し、とりあえずの目標をいただきに求めることや、地図を持たず歩く中でも現地で出会った人からの情報を取り込み歩き続ける様も、今回の活動の原理として破綻なく読むことができた。著者の北極行に比べるとひりひりした感覚は感じられないものの、日本の山が持つ豊饒さの中漂泊する様子は、読み手の心 -
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地図なし登山の追体験ができる。
最初は未知のことが多すぎて、危険に満ちた山行と思っていたが、だんだん既知の領域が増えていくとパッと世界がひらけた感じで旅を続けられる。
本を読み進めるに従って、あたかも自分も未知の領域を冒険しているかのごとく感じられる。
また、ところどころで挟む著者の思想もおもしろい。
例えば出立に際し、近代アルピニズムに求められる困難とは?について語っているが、選ぶべき困難と選ぶべきではない困難があるということは登山以外でも同様のことが言えるのではないかと思う。
冒険の追体験、そしてところどころに挟まる思想。
この2点がこの本の魅力なのではないかと思う。