あらすじ
天測を学び、犬を育て、海象に襲われた
本屋大賞ノンフィクション本大賞、大佛次郎賞をW受賞した超話題作『極夜行』。その「エピソード1」といえる350日のすべて。
ノンフィクション界の話題をさらった『極夜行』。この旅を遂行するには3年の準備期間があった。何度も北極を訪れ、重ねた試行錯誤。これもまた命懸けの探検だった。この準備行がなければ極夜の探検は成功しなかったのかと思うと、起こった全ての試練が命を繋いだとも言える。『極夜行』と併せて読みたい。 特別寄稿・山口将大
※この電子書籍は2019年2月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
はじめの方はなかなかページをめくる手がすすまなくて、少しずつしか読めないでいたけど、しばらくすすめると話にどんどん惹き込まれて、かわいそうと思ったら、次は笑い、その次は手に汗握るような緊張、同情、読んでる方の感情もいそがしく展開するような作品だった。あとがきでは、泣いちゃいました。そして極夜行に引き続き、私の人生では絶対に見ることのない景色を伝えてくれてありがとうございます、これが読書の醍醐味です!って思うのです。
そしてこんな生活をしてる角幡さんは、日本に帰ってきたときにどのような生活、感情になるんだろう。家族がいて、お風呂に入って、ご飯をたべて、冷暖房のある部屋で暮らすときに何を思うんだろう、とそういうことも読みながら同時に考えています。
Posted by ブクログ
太陽が1日中登らない極夜期間の北極圏冒険の準備段階の話。
馴染みのない地名ばかりなので、Googleマップで画像を見ながら読み進めた。
一般人からするとイカれてるしか思えないこも挑戦が、なぜこんなに面白く感じるのか自分でも不思議に思うぐらい夢中になった。
最後が衝撃、早く極夜行を読みたい
Posted by ブクログ
長い時間をかけて読んだ。
そうするとこの冒険を追体験しているような感じがしてすごく面白かった。本を開けばそこには、何もかもを凍らせる極寒の大地が広がっていて、不思議と児童書を読むようなワクワクがあった。
「極夜行」が面白くて手に取った本だったが、準備期間でもトラブル続きでヒヤヒヤする。もう、極夜が来るなと警告してるような、運命めいたものも感じる。それを跳ね除けて極夜行を遂行、達成した著者の行動力や知識力はもちろん、運命力にも人並み外れたものを感じた。
セイウチに襲われたり、(ズボンのチャックが開いてたせいで危うく死にかけた場面は思わずニヤッとした)ウヤミリックを厳しくしつけたらスレた中学生みたいになったり、たくさん面白くて好きな場面がある。でもなぜか第1章の天測がうまくいかなくてあくせくする場面が印象に残っている。大きなドラマも他の章に比べたら少ないのに不思議だ。専門的な用語だらけで、上手くいってるのかいってないのかも体感的に分かりづらいのになぜか印象的だった。不思議。
この極夜行シリーズは自分の中の大事なところに確実に食い込んできた。
Posted by ブクログ
角幡唯介『極夜行前』文春文庫。
傑作ノンフィクション『極夜行』の前日譚となる準備期間を描いたノンフィクション。
言わずもなが、面白い。男の冒険心をいたく擽ってくれる。
『地図上の空白地帯が無くなった現代に於いては、もはや未知の状況下で過酷な自然に挑むしか探検を行う術は無い。』ということからGPSや衛星携帯電話を持たず、一匹の犬と太陽の昇らない冬の北極に挑むことを決意した著者は過酷な旅への準備を進める。
六分儀を用いた天測を学び、極北カナダで実地訓練を行うが、極夜の世界では思うように自分の位置を知ることが出来なかった。メーカーの協力を得て六分儀に改良を加え、来たる『極夜行』に備える。そして、次なるグリーンランドでの予行演習を兼ねたデポ旅行も苦難の連続だった。
本体価格930円
★★★★★
Posted by ブクログ
少しずつ極夜行に向けての準備が整っていく過程がワクワクさせられた。デポ設置旅行で次々と降りかかってくる問題などノンフィクションならではのリアリティーのある世界で興味深く読み進められた。
当たり前だがすごい世界を探検してるので、非日常感が小説からも味わえる。これから極夜行を読むのがすごく楽しみ。ここからメインが始まる序章の段階なので4点かなといったところ。でも充分に面白かった。
Posted by ブクログ
文章が好き ◯
作品全体の雰囲気が好き ◯
内容結末に納得がいった ◯
また読みたい ◯
その他
本をひらけばそこはもう極地。
いっきに果ての地に飛び込むことができる。
絶対に行くことはないであろう世界の人々の息遣いを感じているような没入感は、久しぶり。
白夜の世界において「われわれの行動を支配するのは太陽ではなく月だった」
すごい世界だ。
橇の相棒、ウヤミリックとの鬼気迫るやりとりにはハラハラしました。
さあ、次は『極夜行』。
Posted by ブクログ
極夜行の、その準備すら壮大だってことは、本編を読んで十分想像できていたけど、その通りでもあり、それ以上のスケールでもあって、ある意味こちらの方が読み応えがあったかもしれない。
Posted by ブクログ
極地にて太陽の出ない季節である極夜を旅された「極夜行」。その準備段階を描かれています。準備段階といっても、しなければならないことが多く、それ自体が旅であり、命の危険にもさらされる大きな物語となることを知ることができます。極夜を旅するための道具にしても、その選び方、入手方法、使い方の訓練など、課題と解決だけでも途中で投げ出したくなるほどの試練が待ち受けます。六分儀、犬、橇をそうやって時間をかけて準備して、事前に白夜の季節に旅をしてデポを作り、下見をする。それだけやっても、本番では・・・と、先に読んだ「極夜行」を思い出しながらため息をついてしまいました。これだけ準備してもそれが無駄になっても、旅をやり遂げたという著者の姿を読むと、人生の困難等というものに対しての耐性が付くと思います。準備は大切だけど、それが失われても生きていけるレジリエンスをどう担保するのかも重要だということを改めて学びました。
Posted by ブクログ
太陽の出ない漆黒の冬季の北極圏を、1匹の犬だけを連れて4か月間にわたり旅をするというプロジェクトを描いた「極夜行」。本書はその準備として著者が実行した北極域での行動を記録したノンフィクションです。
冒険を「現代システムからの脱却」と位置付ける著者は、冒険において最も重要な”現在位置の確定”をGPSに頼らず、天測(星や太陽を観測して位置を求める方法)によって現在地を確定させようとします。天測にはある程度の誤差は避けられませんが、誤差が大きくなると命取りです。吹雪で視界の限られる極寒の下で天測の技術を習得するプロセスが第1回目の準備工程です。
食料やその他各種装備は犬橇(いぬぞり)を使い、1匹の犬と人間(著者)が協力して装備を運びます。この犬の選定と、犬との信頼関係の構築がが2回目の準備工程です。北極圏における犬と人間との関係は”お互いに協力し合わなければ共倒れになる”という非常にシビアなものです。地元民が犬を手なずけるプロセスでは、甘えを見せる犬は容赦なく捨てられる(すなわち死を意味する)厳しさです。言葉を介さない犬と人間との信頼関係の構築の様子は、日本の普通の環境では想像できない厳しさでした。
本書は上記2回に加え、ルート上への食料、燃料などの仮置き(デポ)に要した3回目の準備工程の描写もあります。3回目はカヤックを使っての工程で、巨大なセイウチに襲われる事態に巻き込まれるのですが、それは普通の人間だったら、その時点で計画を中断しても当然なぐらいのインパクトです。このような描写ももちろん本書の魅力ではあるのですが、印象的であったのは著者と家族との関係に触れた部分です。著者にはこの準備中に娘さんが生まれました。それまで「死を感じる環境に身を置くことで、生きることを感じることができる。冒険を通じて生きる意味を探ってきた」著者が、娘という存在が誕生することで全く違った形で生きる意味を突き付けられ、戸惑っているように思われる部分は、探検家としではない普通の父親としての著者の一面が表出している印象でした。
是非、著者による「極夜行」とセットで一読をお勧めします。
Posted by ブクログ
凡ゆる事に想像が及ぶというのは所詮幻想だ。寧ろそれは逆に情報が過多になった事による想像力の貧困を示す証拠に他ならない。 身も蓋もない言い方をすれば、極夜等単に暗いだけの世界である。だから極夜の本質は、外界の自然状況より経験する人間の内面に表れる。つまり極夜は客観的事象ではなく主観的経験なのだ。 闇の中で六分儀で星を観測し、星を眺め、星に導かれ、星と直接繋がりながら、私は極夜世界を彷徨しようと考えた。 日中になると空には薄紫のしょこう曙光が広がり 立派な装丁そうてい 知識が自分の確実な血肉になっているという手応えだ つまり北極点では極夜という冬の夜が半年続き、年に一度の日の出があり、次の日から逆に太陽の沈まない白夜が半年続く訳だ。 そう言ってグレンはテリブル(酷く悪い)…と肩を竦めた 海豹あざらし がいぜん蓋然性の高い推測位置から得られたことに心底ホッとするのだ グリーンランド単独縦断を成功させ そこには生殺与奪の論理を超越した、荒野で生きていく為に必要な目に見えない信頼が実現している。 しょこう曙光 らひょう裸氷の凹凸帯 さいじ採餌 深雪に埋まる橇 ちょうせき潮汐線 さくとう昨冬 ていちゃくひょう定着氷 遠大で計画 あなたは所詮、生き物なの。二重螺旋構造に規定された有機化合物の集合体にすぎないの。その有機化合物的限界から、あなたの肉体を構成する細胞群はじわじわ死滅していき、まもなく運動能力系のパフォーマンスが衰えていく。そして同様に脳内シナプス結合も弱まり、感受性が低下し、今までみたいに外の刺激にビビッドに反応できなくなる。その結果、二十代から三十代のときのように生きてる意味とか考えなくなるし、言葉からも力が失われる。そう、これからのあなたの人生は泥水が低地に溜まるように老いに向かって傾斜していくのよ。 狼のように色の薄い眼球の虹彩こうさい じゃこううし麝香牛の皮を鞣し 私は内臓ごと海象に吸い尽くされていたと思う 深くて美しい暗緑色の水 突然死に接近した人間に特有の、認識が事態に追いついていない状況を示している気がして、戦慄を覚えたのだ。 はなずら鼻面を出して潮を噴き上げるだけで しんおう深奥 こしょう湖沼 波頭から白い飛沫が弾け飛ぶ 焚き火を熾して あいろ隘路をぬって船を進め うすずみいろ薄墨色の細く棚引く千切雲を引き摺り ぶな山毛欅材が橇には一番適している 私は自分の過去の全過程を回収し、それを元手にして極夜探検という未知なる新しい可能性の扉を開くことができるだろう。 恐らく発想や思考と体力が釣り合った調和のとれた状態は、三十代後半から四十代頭迄の五年間だろう。 極限的に膨張したこの世界形成感が失われてしまう 冬から春にかけての半年はシオラパルクに滞在し、夏から秋にかけて日本に戻るという、今流行りの二拠点生活みたいなことを続けている 文化的エートス(習慣)を抽出した言葉 若さと、精神の内側で燃え盛る自己実現の炎の勢いが、過程の辛苦を凌駕する。 対象への自己投影的な憑依感覚 エクスペディション(遠征) 空腹と疲労に倦んであぐんで へさき舳先