【感想・ネタバレ】裸の大地 第二部 犬橇事始のレビュー

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Posted by ブクログ

カクハタ君の話はこれまでも共感する話が多かったんだけど、そこに犬との話が加わったことで話にも広がりが更にできて、更に面白くなった印象。

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2023年08月24日

Posted by ブクログ

極夜行、極夜行前夜、裸の大地と犬ぞり関連の本を書いてくれましたが、これは完全に犬ぞりの犬について書いた力作です。
巻頭の犬たちの写真を見ながら読むと次第に感情が入って来てしまいます。使役犬なのでいたしかた無いのですが、役に立たないと生きている資格が無いのがやはりとても悲しい・・・。ウヤミリックー!(泣)

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2024年04月09日

Posted by ブクログ

植村直己を角幡唯介が明確に上回っているのはやはり文章力だと思う。旅のスケールは植村より小さくても文章の素晴らしさで惹き込まれる。
相変わらず退屈な思想の部分は読み飛ばせば良い。今回はそれが少なかったのもよかった。次巻からもこの調子でお願いします!

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2023年11月03日

Posted by ブクログ

どこの世界でも、昔からの伝統が継承されにくくなっていると実感しました。また、犬の生態についても、認識を改にしました。

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2023年09月28日

Posted by ブクログ

 大冒険譚が書かれているわけではない。

 言わば冒険に出掛けるための準備譚で、犬ぞりチームを仕立てていく工程が書かれている。

面白い。

 漂泊シリーズの第2弾で、クライマックスがあるわけではないけれど、ワクワクしながら読み進めていく。たぶんこんな風に著者の漂泊旅をず~っと読ませてもらうことになるんだろうな。

 何より、ご安全に。

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2023年12月27日

Posted by ブクログ

裸の大地 第二部
犬橇事始

著者:角幡唯介
発行:2023年7月10日
集英社
初出:「すばる」2021年9月号~2022年11月号

昨年(2022)に出版された「裸の大地 第一部 狩りと漂泊」で、探検家の角幡唯介がそれまでとは違う漂泊という旅を始めた。目的地や期間を決めず、一定量の食料のみを橇に積み、狩りをしながら食料調達しつつする冒険旅行である。2018年3月にスタート。場所はグリーンランド北極圏。人力橇という、犬を1頭だけ連れ、犬の助けを借りながら自分が橇を引きつついくスタイルだった。その時、次は犬橇にしたいと感じ、第一部にも書いていた。

犬橇とは、橇を犬たちに引かせ、自分も乗っていくスタイル。犬の頭数が増えるため、食料も多くなり、人も乗るので橇も大型になる。今回は、それを使ってチャレンジした漂泊の旅だった。もちろん、海豹(あざらし)などの狩りをしつつである。狩りに失敗し、食料が尽きたら死をも意味する。本書では、2019~22年までを振り返ってはいるが、旅の詳細は2019年と2020年の2年分を書いている。どちらも、春のこと。

犬橇の旅は、犬集めと橇づくりからスタートする。前年の漂泊、その前の極夜行のときからいた犬は1頭のみ。ウヤミリックという名の犬だが、これを含めて2019年は10頭に、2020年は12頭に増やして漂泊を行った。犬はすべて現地のイヌイットから購入する。といっても、ペットショップやブリーダーがいるわけではなく、犬橇を使って狩りをして暮らしているイヌイットに相談し、わけてもらう。もちろん、簡単にはわけてくれない。自らも必要なため、ああだこうだといって勿体をつける。そこには、犬の年齢などいい加減な情報もある。騙すというより、いい加減なのかもしれない。

拠点にしているシオラパルクの村から出て、他の村でも探す。同時に、犬橇を作る材木なども調達した。犬橇を造り始めると、イヌイットの知人が訪ねてきて、細かく造り方を教えてくれる。細かな点まで含めて、すべてイヌイット流。中には意味が分からないことも。角幡流で改造すると、それではだめだと言うが、おれたちは前からこうなんだ、としか説明しない。そして、気に食わないのか、ぷいと行ってしまう。最後に書いているが、人力橇のころは、地元の親しい人たちとの関係において、どこかよそよそしさのようなところがあった。ところが、犬橇を使うと言い出してからは、その造り方を教えてくれるなど、真から仲間だというような感覚になってきた、と。

最も大変なのは、犬の訓練だった。ペットとしてしか犬が存在しない我々からすると、感覚的に分かりづらいのだが、イヌイットの犬にとって何百キロもある橇を引くことは苦痛ではなく、著者が最後に感じていたのは「天分」だということ。春になり、旅に出ることを感じると、犬たちは非常にテンションがあがって早く行きたいとウキウキしている様子が伝わってくる。イヌイットの人たちと犬とは、とてもクールな関係で、年老いたり、病気や怪我で橇が引けなくなったりすると、迷うことなくその犬を処分する。雌犬には、子犬を産ませて〝補充〟していく。

右だ、左だ、止まれ、進め、といった号令を犬がきくようになるまで、かなり訓練が必要なようだ。形の上で言うことをきいても、なにか他の要素が入るとまったく無視したりして、勝手に進んでいく。どうやら、3年以上かかって、やっとコントロールできているという実感がわいてきたようである。犬もまた、派閥をつくる。著者の犬たちは、3派閥を形成したようだ。親玉の犬もいる。もちろん、喧嘩が強い犬であるが、普段、威張り腐っているだけに、なにかきっかけがあると他の犬たちから集団リンチを受けたりもする。時にそのリーダーが変わるが、三日天下でまた戻ったりもする。

犬橇は、先導犬が前に出て、それにつられて他の犬たちがついていき、橇を引っ張っていくことになる。どの犬を先導犬にするか、人間が決め、リードを少し長くする。リーダーが選ばれることが多いが、著者はそうではない犬を先導犬にしたくなり、そうしてみた。そうなると、やはりリーダーは腹に据えかねる点があるようで、もめ事が起きたりする。

著者も、1頭だけ処分することになる。最後にその場面も書かれていた。かつて、先導犬もつとめた長老の犬(ウンマ)だった。認知症になり、体も衰え、もう橇が引けない。一緒に連れて行っても、後からついてくるだけだった。著者にとって、二冬もすごした、お世話になった犬だから、銃を向けて処分することはできなかった。8キロほどでかけて、そこに置きざりにして自然死させようとしたが、少しすると戻って一緒に餌を食べていた。仕方なく、頸動脈にかかるように首に縄をかけ、締めて吊り上げた。どこか分かっているかのように著者を見つめ、完全に体が浮き上がった後、尻尾をふりながら息絶えていった。著者は「ありがとうな」と思いながら、つらい仕事を終えた。

漂泊をする場合の大きなポイントは食料。狩りをしながら調達していくので、もし狩りがうまくいかず、旅を断念したとしても、そこから帰るまでの食料がなければ帰れない。犬の暴走も同じく死を招きかねない。人間が1人取り残され、犬橇がどこかに行ってしまうと、食料もなにもなく、それはすなわち死を意味する。2019年の漂泊では、それを何度も経験した。ひとつは大きなクレバスがある方向に向かって犬橇が暴走し、消えていった。犬橇ごと落下していると、もうそこで人間にとっても死の宣告。行ってみると、奇跡的に直前で犬たちが止まって、何かに引っかかっていた。なんとかすくい上げてギリギリセーフだった。

前年の人力橇による漂泊では、麝香牛2頭と兎が1羽。狙っていた海豹(あざらし)は50センチほどの子だけだった。2019年は、イヌイット流に倣い、白いついたてを持っていって少しずつ近づき、100メートルほどのところまで来たらライフルを放つ。海豹は春になると氷から上がり、日光浴をしながら昼寝をしていて、それを狙う(ウーット狩り)。しかし、少しでも危険を感じるとすぐに横の氷の切れ目から下に飛び込んで逃げる。最悪は、急所を外して怪我をさせ、海の中に逃げられること。無駄死にさせてしまうことになるため。しかし、何頭かに逃げられながら、最初にそれをやってしまう。次も、仕留めたと思ったけど、やはり逃げられた。ところが、行ってみると死んでいて、なんとか海から引き上げて食料にできた。

2年目の2020年は、カナダまで犬橇で行く予定が、コロナによって入国許可が突然、取り消された。グリーンランドの3月では、世界中で起こっているパンデミックの様子が分からず、理不尽極まりない思いにかられた。カナダには入らなかったが、漂泊の旅では、麝香牛を仕留めた。54日間、1200キロあまりの旅となった。

北極圏での美味な肉は、狼と白熊だそうだ。狼は、なんども多数に後をつけられた。橇の上にあるドッグフードを狙っている。狼の肉は、人にとっては美味だが、海豹など動物の肉にはむさぼりつく犬たちは寄りつかない。どうにも食料がなくて空腹に耐えられない時のみ、口にする。やはり同類だからだろう、と。


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イヌイット式の犬橇は、使えない犬を殺処分することを前提に成立している。5、6歳を超えると処分される犬が多い。一方、雌は半年に一度発情し、交尾から2ヶ月で5~10頭程度の子供を産む。その中から身体の大きな数頭が選抜され、訓練を受け、チームの一員となる。処分されるのは年寄りばかりではなく、喧嘩っ早い犬、すぐ噛みつく犬、落ち着きのない犬、他の犬からやたらと苛められて溶け込めない犬、規律を乱す犬なども。

犬が、腹が減ったと感じるタイミングで餌やりをすると、この人は自分の意のままになる存在にすぎないと感じるため、毎日やるのはよくない。もうもらえないのだろうかと諦めたタイミングで与えて恩に着せる。

とはいえ、大変な難関を越えたときには、よくやった、と1頭ずつ頭をなでてやる著者。

サスツルギ:氷河と氷床の境目は、風が一気に強まるポイントで、硬い雪面がギザギザにえぐられる。それをいう。

グリーンランドにおける人類の移動史は、おそらく3段階に分けられる。
1.約4600年前、北米からやってきた「インディペンデンス/サカック」と呼ばれる文化の担い手
2.3000年ほど前に渡来し、海獣の猟にたけた「プレ・ドーセット」および「ドーセット」と呼ばれる文化の人たち。このドーセント文化までの人々は「パレオ・エスキモー」と呼ばれ、今の極北狩猟民とは直接つながりがない
3.約1000年前、ベーリング海方面から東進してきた「チューレ文化」の人たち。大型のボート、捕鯨中心、800年前にグリーンランド北部に到着。現在の極北狩猟民はこの子孫。

犬同士も教育しあう。ナノックにかわり、若いウヤガンを先導犬に。長老のウンマを20センチほどさげる。著者の号令に従わない時、ウンマが横から体を押して教えている。

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2023年12月26日

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