あらすじ
一頭の犬と過酷な徒歩狩猟漂泊行にのぞんだとき、探検家の人生は一変し、新たな<事態>が立ち上がった(『裸の大地 第一部 狩りと漂泊』)。百年前の狩人のように土地を信頼し、犬橇を操り、獲物をとりながらどこまでも自在に旅すること。そのための悪戦苦闘が始まる。橇がふっ飛んで来た初操縦の瞬間。あり得ない場所での雪崩。犬たちの暴走と政治闘争。そんな中、コロナ禍は極北の地も例外ではなく、意外な形で著者の前に立ちはだかるのだった。裸の大地を深く知り、人間性の始原に迫る旅は、さまざまな自然と世界の出来事にもまれ、それまでとは大きく異なる様相を見せていく……。
<目次>
泥沼のような日々
橇作り
犬たちの三国志
暴走をくりかえす犬、それを止められない私
海豹狩り
新先導犬ウヤガン
ヌッホア探検記
「チーム・ウヤミリック」の崩壊
*巻末付録 私の地図[更新版]
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Posted by ブクログ
「狩りと漂泊」のあと、犬ぞりを始めた著者の悪戦苦闘の日々を書いた続編。
写真を見ると犬たちは正直本当にかわいいのだが、著者は一年目は犬をかわいいと思ったことがない、と断言する。それもそのはず、30~40キロ程の大きな犬たちが10匹程度も集まると権力争いの喧嘩による流血沙汰(場合によっては死に至る)が絶えないため棒で必死に殴ってそれを止めなくてはならず、犬ぞり初心者の著者の言うことを全然聞かず飼い主を引きずって暴走したりするというのだから恐ろしい。犬ぞりに乗ってらくちんな旅、とは全くの幻想で、犬ぞりは他力ではなく自力である、と語る著者の実感を読者も嫌というほど感じられるようになる本である。
走れなくなった犬は飼い主が処分しなければならず、実際に著者が飼い犬を殺す場面が2度ほど出てきて辛くはあるのだが、イヌイットの生活と犬の厳しくも分かちがたい密接な関係をこの本を通じて理解できたから、ひどいとは思わない。
犬ぞりという世界のシビアな現実、そしてその壮絶なしんどさを引き受けた上でついに築き上げた犬たちとの関係、相棒犬を中心とした「チーム・ウヤミリック」の完成…という到達点はとても面白かった。犬たちの闘争の果てにボスが決まる過程、様々な犬同士のやり取りも良い。まあこのままで終わらないのが、犬ぞりの現実の更なる厳しさを実感させられるのだが…。ぜひこの続きも読んでみたいと思う。続巻は出るのだろうか。