梨木香歩のレビュー一覧
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段飾りの雛人形が印象的な表紙。
主人公のようこは、自分と同世代くらいだろうか。
1970年前後に生まれた女の子が、小学生の頃のお話だ。
いわゆるリカちゃん人形が欲しかったのに、おばあちゃんがくれたのは、日本人形のりかさん。
ちょっとガッカリしたけれど、このりかさん、なんとようこと意思疎通ができるのだ。
雛祭りの頃、大きな蔵のある登美子ちゃんのおうちに、りかさんを連れて遊びに行くと、登美子ちゃんの段飾りの雛人形や古いお人形達の声が聞こえてくる…。
人形たちとその持ち主たちとの思い出が、人形の中に宿っている、ようこは、りかさんを通して人形たちの声を聞き、そこにある障りを解決していく。
りか -
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ネタバレ「喪失」「再生」「修験道」「島」
喪失を抱えた私は、廃仏毀釈により、元々の信仰を喪失した島を巡る。
そして、50年後に再度島を訪れ、喪失と向き合う。
前半は、「私」の旅の理由は朧げにしか分からないものの、この旅は「私」にとって特別な意味があることなのだろうなと思いながら読み進めました。
自然や信仰の残骸から、独特の神秘的な雰囲気を感じました。
一転し、後半は、その慣れ親しんだ情景や交流した人々との繋がりが失われている様に、喪失感を感じました。
「私」は最後、喪失を超え、前向きになりますが、自分は島の雰囲気に入り込みすぎていたのか、最後まで喪失感から抜け出せず、もの悲しかったです。
読み手に -
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地名譚には手を出すなと指導教官がよく言っていた。あんなものは大抵眉唾で、なんの証拠もないのだと。別の機会に、国文学の教授も似たようなことを口にしていた。手を出さないほうが無難だと。
学術的にはそんなものなのかもしれない。そう思って梨木さんの本書を読むと、確かに、…だろう、…気がする等、文章の末尾が歯切れの悪いものが多い。しかし、地名譚には、郷愁にも似て人を引きつけるものがある。真実はどうであれ、その土地に住む人が、自らの土地をどう語り、伝えてきたのか。その思いに引きつけられるのだろう。自然や土地に根付く声なき声に耳を傾けられる人になりたい。
本書は短い断片の寄せ集めのような作りなので、一気 -
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「ウド仕事」のくだりが印象的。
ウドは下処理が大変だけど、それをしている時間が落ち着くらしい。
食材の音や調理の匂い、こっそりつまみ食いする楽しみは料理をする人だけのもので、食べるだけの人に対して申し訳なくなる、と。
めんどくさい、めんどくさいと思いながらする毎日の料理時間に、ちょっとだけ光を灯すフレーズだ。
日常生活は便利になっているはずなのに、私たちの時間は刻みに刻まれ各タスクにとられていく。
私が料理の時間がめんどくさいのは、その時間に寝たりテレビ見たりしたいと思っちゃうからなのだ。感覚がすっかりマヒしていて、他の何かに機嫌をとってもらわないと楽しくなれないのかもしれない。
でも料理の -
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八ヶ岳の山小屋で過ごす日々を書いたエッセイとして読み始めたけれど、後半はお父さんの最期の日々に寄り添って考えたり感じたことや、コロナ禍で考えたり感じたことが主になっていた。もちろん、それはそれでとても興味深かった。
鳥や植物など名前を聞いてもわからないのがほとんどではあったけれど、読んでいると自分もひんやりとした木の匂いのする森の中にいるような清々しい気持ちになれて、夏の暑さも少し忘れられた。
私にとって人生の一冊ともいえるのが「赤毛のアン」なのだけれど、首都圏で生まれ育った私はやっぱり都会が好きで、都会以外では暮らせないと思っていた。でも数年前に「赤毛のアン」の舞台となったプリンス・エドワー