梨木香歩のレビュー一覧
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梨木香歩さんシリーズ。
3つの短編からなる本です。
一つ前に読んだ「からくりからくさ」の前後譚で、これも女性の世界の物語ですね。
最初の2編は、主人公ようこ(まだ「蓉子」ではない)が少女で、日本人形の「りかさん」と出会う頃のお話。
寄せ集めの雛飾りを始め、なかなか難しい人形たちの固く絡まった人生?を、ようこがりかさんの力を借りながら解きほぐして行きます。
人形と話をするというのは、ファンタジー、またはスピリチュアルに思えるけど、感じやすい女の子には普通にできることなのかもね・・・と、読んでて思った。
りかさんと、ようこの祖母・麻子さんがことのほか魅力的。
若い女じゃなくてやっぱおば -
Posted by ブクログ
昭和初期に南の島に調査に訪れた学者が主人公。
島はかつて修験道の聖地で、死人からの伝言を伝えたりするモノミミという民間宗教も存在した。
主人公の調査は、特に南西諸島からの流れと思われる住居の構造。
章立てごとに地名と植物や動植物、虫の名前が並べられている。民俗学的道具立てや海に見える蜃気楼も相まって、著者のど真ん中の直球勝負か。
失われた寺院や宗教の痕跡、恋人達の悲恋の跡。豊かに自然を背景に、最初から失われていた事物。許嫁や両親を失ったばかりの主人公自身の心情にも同調しているように感じる。
冒険譚とも思える、島の調査行。濃密な自然と宗教の営みの遺物の記述に引き込まれる。
そして、登場人物 -
Posted by ブクログ
本のオビに「初の短篇集」とある。
そうか、そういえば梨木果歩さんの短篇集って読んだことがなかったな、と気が付く。
まぁ、あの「家守奇譚」なんかは連作短篇だったけど。
全9篇の短篇で構成されている。
短いものは数頁、最長で100頁の作品が収められている。
古くは1994年、新しいもので2011年に発表され、2篇は未発表作品。
最初の「月と潮騒」「トウネンの耳」は現実と非現実が混淆としている、少しとらえどころのない不思議な作品。
「カコの話」も似たような作品だが、ユーモアやシニカルな味が加わっている。
既婚の男性が読んだら、思わず考え込んでしまうかも。
この「月と -
Posted by ブクログ
ものすごく、重たいテーマの話でした。
私も、「軍隊で生きていける」「愛すべきやつ」の一人なのだろう。
少しの違和感があっても、社会的な、そして多数決の持つ正義という「正しさ」の前に、自分を誤魔化し、守り、「正しさ」を刷り込んで、卑怯に、あたかも善人の様に生きていくのだろう。
心が痛すぎる、一生気づかない方が完全な利己主義な考え方として、幸せなのではないかと思うエピソードがいくつかあり、本当に難しいし、入り込んでいて、答えは無いと思う。
でも、考え続ける事が、ちゃんと向き合って、見ないふりをせずに、考え続ける事が何よりも大切なのだ。
僕は、そして僕たちはどう生きるか
すごい -
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マイ癒しその③、と、軽率に書くことを少々躊躇う。
梨木さんのエッセイは、私にとって大きな安心である。乱雑にくくればやはり「癒し」が該当するのだが、よく一般に言われるような手軽なそれでは決してない。
機械や文明に頼りきりの人間たちによる想像などより、はるかに過酷な生きかたをしているいきものたち(そのことを、かれら自身は過酷とは思っていないだろうが)を思うと、背筋がいつしか、すっと伸びていることに気付く。また、自然の持つ要素から、ありがちな、安心やセラピー的なものだけではなく、険しさ厳しさも拾い出してくれていて、さらには人間(同じ人間に対してさえ、どこまでも非道になれるもの!)が環境を変異させてい -
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作家梨木香歩によるエストニア紀行。さてエストニアとはどこにあったっけ? それくらいの知識しかもたずに読み始めましたが、すぐにその地に引き寄せられました。
梨木さんの目を介してエストニアの文化と自然を見る。きっと自分がその地に立った時には気付きもしないものに気付かされ、エストニアの魅力に心を寄せます。
人の営みである文化や歴史。それは侵略を受けそれでも守り通したもの。僻地であり境界であるが故に生まれた世界。過去から連綿と続く人々の息吹を感じさせます。そして人が介しなかったが故に残った自然。人が人の理屈で離れた土地だから動植物がそれぞれの様相を成す。しかし人が介することによって姿を現す自然もまたあ -
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ネタバレ短編集
『月と潮騒』
ごく短い、冷蔵庫のお話。梨木さんのイメージとちょっと違うな、と思いつつ、でも読み終わると梨木さんの紡ぐ世界だなと。
『トウネンの耳』
これもごく短いお話で、梨木さん鳥が好きだからね、と思いながら読んでいる間に終わってしまう。この本の中ではあまり印象に残っていない。
『カコの話』
ようやくこの短編集の流れに慣れてきたのか、大好きな家守奇譚あたりに雰囲気が寄ってきたからか、この話あたりから引き込まれ始める。過去は人魚の姿をしていたりするのだ。
『本棚にならぶ』
部分の欠損。独特で、印象には残っている。抽象的すぎてちょっとなー。
『旅行鞄のなかから』
これも独特。ずっ