梨木香歩のレビュー一覧
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本のオビに「初の短篇集」とある。
そうか、そういえば梨木果歩さんの短篇集って読んだことがなかったな、と気が付く。
まぁ、あの「家守奇譚」なんかは連作短篇だったけど。
全9篇の短篇で構成されている。
短いものは数頁、最長で100頁の作品が収められている。
古くは1994年、新しいもので2011年に発表され、2篇は未発表作品。
最初の「月と潮騒」「トウネンの耳」は現実と非現実が混淆としている、少しとらえどころのない不思議な作品。
「カコの話」も似たような作品だが、ユーモアやシニカルな味が加わっている。
既婚の男性が読んだら、思わず考え込んでしまうかも。
この「月と -
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ものすごく、重たいテーマの話でした。
私も、「軍隊で生きていける」「愛すべきやつ」の一人なのだろう。
少しの違和感があっても、社会的な、そして多数決の持つ正義という「正しさ」の前に、自分を誤魔化し、守り、「正しさ」を刷り込んで、卑怯に、あたかも善人の様に生きていくのだろう。
心が痛すぎる、一生気づかない方が完全な利己主義な考え方として、幸せなのではないかと思うエピソードがいくつかあり、本当に難しいし、入り込んでいて、答えは無いと思う。
でも、考え続ける事が、ちゃんと向き合って、見ないふりをせずに、考え続ける事が何よりも大切なのだ。
僕は、そして僕たちはどう生きるか
すごい -
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マイ癒しその③、と、軽率に書くことを少々躊躇う。
梨木さんのエッセイは、私にとって大きな安心である。乱雑にくくればやはり「癒し」が該当するのだが、よく一般に言われるような手軽なそれでは決してない。
機械や文明に頼りきりの人間たちによる想像などより、はるかに過酷な生きかたをしているいきものたち(そのことを、かれら自身は過酷とは思っていないだろうが)を思うと、背筋がいつしか、すっと伸びていることに気付く。また、自然の持つ要素から、ありがちな、安心やセラピー的なものだけではなく、険しさ厳しさも拾い出してくれていて、さらには人間(同じ人間に対してさえ、どこまでも非道になれるもの!)が環境を変異させてい -
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作家梨木香歩によるエストニア紀行。さてエストニアとはどこにあったっけ? それくらいの知識しかもたずに読み始めましたが、すぐにその地に引き寄せられました。
梨木さんの目を介してエストニアの文化と自然を見る。きっと自分がその地に立った時には気付きもしないものに気付かされ、エストニアの魅力に心を寄せます。
人の営みである文化や歴史。それは侵略を受けそれでも守り通したもの。僻地であり境界であるが故に生まれた世界。過去から連綿と続く人々の息吹を感じさせます。そして人が介しなかったが故に残った自然。人が人の理屈で離れた土地だから動植物がそれぞれの様相を成す。しかし人が介することによって姿を現す自然もまたあ -
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ネタバレ短編集
『月と潮騒』
ごく短い、冷蔵庫のお話。梨木さんのイメージとちょっと違うな、と思いつつ、でも読み終わると梨木さんの紡ぐ世界だなと。
『トウネンの耳』
これもごく短いお話で、梨木さん鳥が好きだからね、と思いながら読んでいる間に終わってしまう。この本の中ではあまり印象に残っていない。
『カコの話』
ようやくこの短編集の流れに慣れてきたのか、大好きな家守奇譚あたりに雰囲気が寄ってきたからか、この話あたりから引き込まれ始める。過去は人魚の姿をしていたりするのだ。
『本棚にならぶ』
部分の欠損。独特で、印象には残っている。抽象的すぎてちょっとなー。
『旅行鞄のなかから』
これも独特。ずっ -
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私には、梨木香歩さんの文章について
語れるほどの何も持ってはいない。
それでもちょっぴり
この本で分かったような気がすることを
かいつまんで紹介してレビューとしたい。
渡りの足跡を追う、梨木さんの立ち位置に
背筋が伸びる思いがする。
筆者は、種としての生きものを
きちんと意識しつつ、しきりに「個体」と
いう呼称を用いている。様々な鳥たちは
彼女にとって、個々に向き合い、自分という
人間の、生きものとしての品格を証明しようと
試みる相手なのかもしれない。
人もまた、渡る。
知床開拓団の1人だったあや子さんの言葉や
身振りを再現してみせる筆者の文章の、
それはそれは饒舌なこと。あや子 -
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短編集でした。
草壁皇子が主役の長編小説と思っていたので、ちょっとびっくり。
しかも、少し川上弘美っぽい不思議系の話。
それはそれで好きなのだけど、思っていたのとはちょっと違うので慣れるまで少し時間がかかりました。
でも、「コート」「夏の朝」辺りから、しみじみといいなあと。
慈しみという言葉が自然と思い起こされる。
で、「丹生都比売」
飛鳥時代、奈良時代は結構権力争いに負けて命を落とす皇子がたくさんいたけど、草壁皇子は圧倒的な後ろ盾をもって皇太子になったのに、天皇にならないで亡くなってしまった。
病弱だった草壁皇子の少年時代を書いたお話。
悲劇の皇子と言えば有間皇子や大津皇子が有名だけ -
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矛盾を抱えて、生きていこう。考え続けて、生きていこう。
梨木香歩が好きだ、と思った。この前読んだ『沼地のある〜』を構想していた頃のエッセイ。あの話に至るまでの思考の流れ、渦巻きを知って、より『沼地のある〜』が気になってきた。
単純には割り切れない。違和感を感じる。だからといって、それを声高に叫ぶこともない。物語の力とは。「心を動かす」ことの危険性。「泣ける話」「全米が泣いた」という文句が嫌いなので、梨木香歩のとまどいが自分のことのように感じられた。梨木香歩の描く、「優しい冷たさ」は、私にとって心地よい。全員がわかってくれるなんて、怖い。でも、閉じこもらず、理解を得られるよう、働きかけること