梨木香歩のレビュー一覧
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ネタバレ地名に関する葉篇集
掌編ではなく~の理由が梨木さんらしくて好き
論文のように堅くなくてあくまでこうかな?そうだったらおもしろい、というスタンスなのが読みやすい。
実際にその土地に訪れたからこそわかる空気感が伝わる。行ってみたくなる。
子音+yuuの音
古代、使われていた言葉の発音は、今の日本語のようにかっちりしたものではなく、もっと風の吹く音のような、小鳥のさえずりのようなものだったのではないかと思うと、そういう言葉が飛び交う日常を想像して楽しい。
叱る声さえ、鳥の声のように流れていく、そういう日常。会議や怒号になると、大風が吹いているような感じなのだろうか。 -
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中盤から終盤までは、物語の根源風景がなかなか見えず、
少々読みあぐねたが、
文章自体はグングンと飛翔していくので、とにかく追いかけた。
終盤に「ぬか床」や「沼地」についてやっとこ入り込み、
「解き放たれてあれ」という名言に光を感じながら、
森を歩き、抜けていけた。
最終的に、自分の中でこの物語の世界観が心に定着したので安心した。
生命に問いかけ、根源を悟り、孤独と他者を知り、また始まっていく。
解説の一文
「個を超えた反復であり、同時にその場にしか生まれえないオリジナルでもある。」
のように生命の二律背反を感じつつ、時にそれを飛び越えていく物語だった。
にしても、このような物語を成立さ -
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いい本を読んだなあ…と思った。
著者とその周りの人々の交流とかその景色が、外国の小説を読んでいるようで、エッセイという感じがしなかった。
その一方で、人が何かを考えている時、こういう風にするすると思考って流れていくよなあ…と思えるような、頭の中を覗いたような文章だった。
「理解はできないが受け容れる」ことって、理想ではあるけど体現するのは難しいことだと漠然と思っていた。
けどウェスト夫人のような人がいると知れて、人との交流は新しい価値観をもたらすものだと思ったし、人との交流をもっと広げていきたいと思った。
外国の風景も魅力的だった。この本自体が、英国の田園風景を想像させるような雰囲気を持 -
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旅に出られない日々に、こんな一冊もいい。
筆者が旅した土地とその名まえに引き寄せられた思いを書き綴ったエッセイだ。
旧街道の宿場、岬、島、峠。
国境、湖川の側の地名。沖縄やアイヌ語由来の地名。
心がざわつく地名なんていうくくりもある。
土地を訪ね、人々の暮らしを垣間見、時に歴史をさかのぼって調べる。
そんな営みを繰り返すエッセイだ。
取り上げられる土地は、知っている場所もあるし、全く知らないところもある。
なのに、この本を読んでいると、なぜか懐かしい気持ちになってくる。
私の生まれて3歳までを過ごした家も、旧街道の小さな宿場町であったせいだろうか?
谷戸と迫、そして熊。
いずれも地形に -
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ネタバレりかさん、の主人公のようこが大人になった蓉子としての新たな物語。
祖母が亡くなって、かつて祖母が住んでいた家を下宿にすることになり集まった若い女性たち。
孫の蓉子は染色、アメリカ人のマーガレットは鍼灸師を目指し、紀久は機を織り、与希子は機と図案の研究。
4人とも手仕事を共通にしながらの共同生活。
蓉子の大切な市松人形のりかさんは
祖母の喪にふしたまま、ひっそりとしたままだった。
4人で協力しながらの生活
紀久の故郷で墓の中から見つかったりかさんそっくりの人形。
それを辿っていく中でわかる与希子の家系と遠い親戚だったという事実。
紀久が必死に書いた機織りの原稿を大学教授に横取りされそうに -
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旭川で買った『炉辺の風おと』(梨木香歩著:毎日新聞出版)をじっくり読む。読む量が一日10頁に満たなかったのは家事の隙間で開くからだが、「器用でもなく、意識をある深さに集中させる職人的な姿勢」(本書あとがき)で作られた文書を味わいたいからだ。『西の魔女が死んだ』の作者が、「人生の終焉近くなって、結局何がしたかったのかと問われれば『山の深みに届いた生活』と、心の中であこがれを込め、呟くだろう」と、八ヶ岳で山小屋暮らしを始めたことを「そうなんだ」と思って読んだ。
立ち止まるのは『言葉』について言及しているところだ。言葉への強い信頼と軽んじる者への痛烈な批判は、根本的な人間らしさを吟味する切れ -
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ネタバレ中学生のコペル、叔父と一緒に野草をとりに、ユージンの家を訪れる。
かつて子供の頃、何度も訪れたユージンの家。
広大な庭に広がる草木とのふれあい、不登校になったユージンに、そのわけを聞ける勇気もなく核心には触れずに接する二人。
ユージンの従姉妹のショウコも加わって、食べられる野草を探し、料理して食べる。
ショウコが話してくれたのは、この庭に人生に休憩を必要として一人でキャンプしている傷ついたインジャの存在。
迫害されたユダヤ人たちの過去と、自分が当事者だったとき集団の正義に目をくらましていたかもしれないという不安。
ユージンが不登校になるきっかけになった出来事。
教師がかざした教育の間違