梨木香歩のレビュー一覧

  • 沼地のある森を抜けて(新潮文庫)

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    中盤から終盤までは、物語の根源風景がなかなか見えず、
    少々読みあぐねたが、
    文章自体はグングンと飛翔していくので、とにかく追いかけた。

    終盤に「ぬか床」や「沼地」についてやっとこ入り込み、
    「解き放たれてあれ」という名言に光を感じながら、
    森を歩き、抜けていけた。

    最終的に、自分の中でこの物語の世界観が心に定着したので安心した。

    生命に問いかけ、根源を悟り、孤独と他者を知り、また始まっていく。
    解説の一文
    「個を超えた反復であり、同時にその場にしか生まれえないオリジナルでもある。」
    のように生命の二律背反を感じつつ、時にそれを飛び越えていく物語だった。

    にしても、このような物語を成立さ

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    2022年04月09日
  • エンジェル エンジェル エンジェル(新潮文庫)

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    「さわちゃん、もし、このモーター音がうるさかったら、水槽、私の部屋にもっていくけれど……」
    私は、ゆっくりと、言葉を切りながら言った。ばあちゃんはちらりと私を見遣ると、やはりゆっくりと、
    「でも、そうしたら、私、コウちゃんとこうしてお話し出来なくなるかもしれない。私、消えてしまうかもしれない」
    と、視線をそらしながら言った。

    「……コウちゃん、神様もそう呟くことがおありだろうか」
    「え?」
    「神様が、そう言ってくれたら、どんなにいいだろう」
    「え?」
    「私が、悪かったねえって。おまえたちを、こんなふうに創ってしまってって」

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    2022年04月01日
  • 春になったら莓を摘みに(新潮文庫)

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    いい本を読んだなあ…と思った。

    著者とその周りの人々の交流とかその景色が、外国の小説を読んでいるようで、エッセイという感じがしなかった。
    その一方で、人が何かを考えている時、こういう風にするすると思考って流れていくよなあ…と思えるような、頭の中を覗いたような文章だった。

    「理解はできないが受け容れる」ことって、理想ではあるけど体現するのは難しいことだと漠然と思っていた。
    けどウェスト夫人のような人がいると知れて、人との交流は新しい価値観をもたらすものだと思ったし、人との交流をもっと広げていきたいと思った。

    外国の風景も魅力的だった。この本自体が、英国の田園風景を想像させるような雰囲気を持

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    2022年03月31日
  • 鳥と雲と薬草袋/風と双眼鏡、膝掛け毛布(新潮文庫)

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    旅に出られない日々に、こんな一冊もいい。

    筆者が旅した土地とその名まえに引き寄せられた思いを書き綴ったエッセイだ。
    旧街道の宿場、岬、島、峠。
    国境、湖川の側の地名。沖縄やアイヌ語由来の地名。
    心がざわつく地名なんていうくくりもある。

    土地を訪ね、人々の暮らしを垣間見、時に歴史をさかのぼって調べる。
    そんな営みを繰り返すエッセイだ。

    取り上げられる土地は、知っている場所もあるし、全く知らないところもある。
    なのに、この本を読んでいると、なぜか懐かしい気持ちになってくる。
    私の生まれて3歳までを過ごした家も、旧街道の小さな宿場町であったせいだろうか?

    谷戸と迫、そして熊。
    いずれも地形に

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    2022年03月31日
  • 鳥と雲と薬草袋/風と双眼鏡、膝掛け毛布(新潮文庫)

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    再読。気がつかないうちに失われていく地名。それに対して無知であり、関心を持たない自分。その事実と大切さに気づかせてくれる本だった。これ以上失うことがないように祈ることしかできないけれど。

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    2022年03月14日
  • りかさん(新潮文庫)

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    「りかさん」
    誕生日におばあちゃんがくれたのが、欲しかったりかちゃん人形ではなく、市松人形の「りかさん」だったことから始まる。雛人形、賀茂人形、這子、紙雛、ビスクドール、色々な人形の思いや持ち主の思いををりかさんから教えられる。戦争中の日米親善大使としての人形の悲劇を改めて思い知ることもできた。

    「ミケルの庭」
    赤ん坊の命を預かるということは、覚悟をもってやらなければと思った。ミケルの眼にまた景色が広がったときは心からよかったと思った。

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    2022年03月07日
  • からくりからくさ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    りかさん、の主人公のようこが大人になった蓉子としての新たな物語。

    祖母が亡くなって、かつて祖母が住んでいた家を下宿にすることになり集まった若い女性たち。

    孫の蓉子は染色、アメリカ人のマーガレットは鍼灸師を目指し、紀久は機を織り、与希子は機と図案の研究。
    4人とも手仕事を共通にしながらの共同生活。

    蓉子の大切な市松人形のりかさんは
    祖母の喪にふしたまま、ひっそりとしたままだった。

    4人で協力しながらの生活
    紀久の故郷で墓の中から見つかったりかさんそっくりの人形。
    それを辿っていく中でわかる与希子の家系と遠い親戚だったという事実。
    紀久が必死に書いた機織りの原稿を大学教授に横取りされそうに

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    2022年03月06日
  • ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

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    よく鳥を飼ったことがない人に、鳥は表情が無くて面白くない。と言われるけど、嬉しい時には喉の奥で甘えたように小さく鳴くし、羽はふわふわに広がりほんのり足が温かくなる。怒ったり驚いたときには体が流線形に引き締まり目がキリッと丸くなる。犬が友達なら鳥は恋人と言われるくらいパートナーとして甘えてくれるし、意思疎通もできる賢い生き物だと思います。いつ空襲に遭うかもしれない戦時下において、動物は今も昔も変わらず愛情に応えてくれる愛おしい存在。あらゆる生き物、幸せになってクラレンス。

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    2022年02月06日
  • りかさん(新潮文庫)

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    子どもの頃に初めて読んだ時も優しいお話だなと感じたが、今読んでもじんわりと暖かくなる感覚があって、時々読みたくなる。

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    2022年01月14日
  • 炉辺の風おと

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    旭川で買った『炉辺の風おと』(梨木香歩著:毎日新聞出版)をじっくり読む。読む量が一日10頁に満たなかったのは家事の隙間で開くからだが、「器用でもなく、意識をある深さに集中させる職人的な姿勢」(本書あとがき)で作られた文書を味わいたいからだ。『西の魔女が死んだ』の作者が、「人生の終焉近くなって、結局何がしたかったのかと問われれば『山の深みに届いた生活』と、心の中であこがれを込め、呟くだろう」と、八ヶ岳で山小屋暮らしを始めたことを「そうなんだ」と思って読んだ。



    立ち止まるのは『言葉』について言及しているところだ。言葉への強い信頼と軽んじる者への痛烈な批判は、根本的な人間らしさを吟味する切れ

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    2021年12月31日
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか

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    2007年から2009年にかけて掲載された本書は震災やコロナ禍を経てもその問題意識が古びることがない普遍性を持っている。
    思考停止しないことの大切さ、
    集団で生きるしかない人間どおしの思いやり、
    まごころ、素直さの大事さを改めて考えた。
    ユージンの家のマップを写真付きで作りたくなった。
    植物の描写が豊富で興味が湧いた。

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    2021年12月23日
  • 海うそ

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    ネタバレ

    一行目から 島の温度とかにおいとかが感じられる
    標高によって植物や虫や鳥 動物の種類が変わって
    それぞれの生活があるんだなぁ~って…感じられるなんて素敵すぎます!
    しかし、五十年たって変わってしまった島…
    変わらされてしまった島…
    泣きそうでした でも、生きていくって変わっていくことなのかもしれないとおもいました。

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    2023年08月30日
  • からくりからくさ(新潮文庫)

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    高校生で読んだ際は、自分の好きなワードがたくさんあるはずなのに、どうしてか内容が頭に入らずもやもやしていました。
    再読してみて、紀久の心情を通し物語にすんなり入り込めるようになっていました。
    物語がゆったりと進行しているので、一読してから長い時間を置いてみて、また読んだのが良かったのかもしれません。自分の中で上手く消化できた気がします。
    古民家、人形、染織といった日本的なワードが散りばめられていますが、マーガレットの存在や中近東の話題、クルドのことが違和感なく語られていて、織物の縦糸と横糸を丹念に編んでいくような小説です。

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    2021年11月29日
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか

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    ネタバレ

    中学生のコペル、叔父と一緒に野草をとりに、ユージンの家を訪れる。

    かつて子供の頃、何度も訪れたユージンの家。
    広大な庭に広がる草木とのふれあい、不登校になったユージンに、そのわけを聞ける勇気もなく核心には触れずに接する二人。

    ユージンの従姉妹のショウコも加わって、食べられる野草を探し、料理して食べる。
    ショウコが話してくれたのは、この庭に人生に休憩を必要として一人でキャンプしている傷ついたインジャの存在。

    迫害されたユダヤ人たちの過去と、自分が当事者だったとき集団の正義に目をくらましていたかもしれないという不安。

    ユージンが不登校になるきっかけになった出来事。
    教師がかざした教育の間違

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    2021年11月28日
  • りかさん(新潮文庫)

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    人形にも草木にも想いがあって、それぞれの物語があるっていう梨木さんの考えが優しくってとっても好きだ。何度も読み返すと、そのぶん物語の深みを感じられるところも好きなところ。なんだかうまく言えないけれど、小さい頃のわたしがこの物語を好きでいてくれて良かったなあと改めて。

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    2021年11月27日
  • 沼地のある森を抜けて(新潮文庫)

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    壮大なスケールの話を、淡々と書いた小説。
    表紙の螺旋状の何かの様に、現実から、想像へ、一歩ずつ、気づかないうちに踏み込んで行って、今がどちら側なのか、わからなくなっていくような。(境目なんてないのかもしれないけど)
    生と死と、それはごく普通で、当たり前のこと。

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    2021年11月23日
  • 不思議な羅針盤(新潮文庫)

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    ネタバレ

    いるかさんの本棚で見つけました

    梨木果歩さん
    濁りのないその目差しにとても憧れる
    だけど遠いなあ
    だけどとても近く感じる

    ふとした動植物、土や風景、人、食べ物にに注がれる見識と愛情が素敵だ
    やっぱ遠いなあ

    澄み切った秋空のようなエッセイ集でした

    ≪ 生きていく その羅針盤 すぐそこに ≫

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    2021年11月11日
  • りかさん(新潮文庫)

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    最初の読み初めはなんだ?という感触だったが、途中から世界観に一気に引き込まれた。
    我が家の雛人形もこんな感じ?と少し見る目が変わった

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    2021年09月19日
  • 不思議な羅針盤(新潮文庫)

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    この本は2010年刊行。人との繋がり、時を満たすことの大切さ・・・コロナ禍にこの本を読む事は、何とも胸が苦しくなるが力づけられる読書ともなった。人と触れ合える時を取り戻してから必ず再読したい。

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    2021年08月14日
  • f 植物園の巣穴

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    夢の中の迷路に迷い込んだような荒唐無稽な不思議なお話。
    途中から主人公のように理屈で物を考えるのを放棄し、この世界観にどっぷり嵌まると、なんと心地よいことか。
    物語は過去へ過去へと遡り、当時味わいきらなかったため膿のように溜まっていた感情を思い出し、知らぬ間に書き換えられていた真実があきらかになっていくにつれ、本来の自分を取り戻す。
    それは癒しの旅となる。

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    2021年08月13日