[1]ようこが祖母の麻子さんからもらった市松人形のりかさんは手続きはなかなか面倒だが馴染むとコミュニケーションもとれるようになった。
[2]りかさんと麻子さんは人形たちとのつきあい方、この世との接し方などの道しるべとなってくれ、ようこの世界は拡がってゆく。
[3]お祖母ちゃん語録いろいろあります。《人形の本当の使命は生きている人間の、強すぎる気持ちをとんとん整理してあげることにある。木々の葉っぱが夜の空気を露に返すようにね》p.76。
■りかさんについての簡単な単語集
【麻子】ようこの祖母。りかさんの元の持ち主。若い頃、理科の先生だったらしい。《年をとってありがたいのは、若いころ見えなかったことがようやく見えるようになることだ》p.100
【アビゲイル】日米親善使節として贈られたママードール。「ママー」と声を出し横にしたら目をつむる。
【因縁】けれど、因縁も結局、縁だからね、なにがどう翻って見事な花を咲かすか分からないもの(p.190)
【恨まない】恨まない、っていうのは、人形にはとてもめずらしい資質だ。美徳と言っていい。(p.14)
【男】そうだよ。男ってしようがないね、登美子ちゃんのところのおじいさんにしろ。考えが肝心のとこまでは及ばないんだよ。でもそれを責めちゃだめだよ、そんなもんなんだからね。こっちがそれと心づもりしていればすむ話だ(p.194)
【価値観】ようこと麻子さんは価値観が近いようだ。
【加代】麻子さんの友人。りかさんの前の持ち主。箪笥問屋の娘。身体が弱く早く亡くなった。
【がらくた】《人の思いのがらくたのようなものが詰まっているんだねえ……。》《―――そりゃあ、きっと、それが人間さまの拠りどころってんだヨ……。》p.56
【かわいい】《かわいい、という温かなどこかくすぐったくなるようなほんわかした気持ちがどんどん、心いっぱい拡がって行くようにした。それはだんだん、ようこの体の隅々まで、髪の先から手足の爪の先まで満ちて来た。両の手のひらを開けるとその間の空間までかわいい温かさでいっぱいになるようだ。》p.180。《ようこがりかさんから学んだこういう方法は、やがて大人になるまでに彼女独特のものとなり、不思議なムードメーカーと周りから見なされるようになるのだった。》p.181
【銀じいさん】三月三日に麻子さんちの雛人形を愛でに来る幽霊のような存在。りかさんはどうも銀じいさんが苦手。
【啓介】ようこの父。麻子さんの息子。合理主義的なところがある。
【桜の老木】ようこをつかんで離さなかった。
【汐汲/しおくみ】何かしら秘めたことがあって黙っている、登美子ちゃんちの人形。
【澄んだ差別】まず、自分の濁りを押しつけない。それからどんな「差」や違いでも、なんて、かわいい、ってまず思うのさ(p.203)
【食事】人形たちの食は人と同じ。ただし量は減らずその気配だけを食す。気配の去った抜け殻を食べるのは持ち主の義務?
【植物染料】植物のときは、媒染をかけてようやく色を出すだろう。頼んで素性を話して貰うように。そうすると、どうしても、アクが出るんだ。自分を出そうとするとアクが出る、それは仕方がないんだよ。だから植物染料はどんな井路でも少し、悲しげだ。少し、灰色が入っているんだ。(p.202)
【背守】昔、子どもたちの着物の背につけたお守りのような細工物。
【角】りかさんは大人に抱かれるとときどき角が生えてくることがあるが、それを兎の耳にして去らせる方法を会得した。
【登美子】ようこの友人。《ようこちゃんってときどき変なこと言うから好き。》p.61。《世の中のものみんな、ふりしてるだけなのかなあって思い始めたの》p.127
【登美子の家】立派な家。蔵もある。恐ろしげな人形がいる。家の大きな冠木門が開くと何かの結界が壊れてしまう。
【泣く】人が本当に悲しくて悲しくて泣くときは、顔が、バラバラになるのだ。(p.182)
【名前】名前を正しく呼びかけるって、魔法のようだ。(p.16)
【人形】お人形って、年齢を問わず女の子を夢中にさせる何かがあるみたいだ。《人形の本当の使命は生きている人間の、強すぎる気持ちをとんとん整理してあげることにある。木々の葉っぱが夜の空気を露に返すようにね》p.76。《人形遊びをしないで大きくなった女の子は、疳が強すぎて自分でも大変。積み重ねて来た、強すぎる思いが、その女の人を蝕んで行く》p.78。《人形に性格を持たせるのは簡単だ。人形は自分にまっすぐ向かって来る人間の感情を、律儀に受け取るから。》p.163
【雛人形】普通、お雛さまは、セットでやって来ることが多いので、セットで、一つの、ぼんやりした思いを醸し出しているものなの。(p.28)
【雛祭り】ようこのいるあたりでは三月から四月上旬頃まで雛人形をだしておきその家を訪ねるときは「お雛さま、ごはいけーん」と声をかける。
【マーガレット】アビゲイルが作られた頃、東ヨーロッパからアメリカに来たユダヤ人一家の女主人。まだ英語がよくわからない。いずれ生まれるだろう我が子を愛せる自信がない。
【待子/まちこ】ようこの母。
【ようこ】おばあちゃんからりかさんをもらった孫。ふしぎなことに馴染みやすいタイプなのかもしれなかった。染色に興味をひかれた。
【りかさん】性格のいい市松人形。同居するにはいろいろ面倒な手続きが必要だが馴染んでしまえばコミュニケーションも取れるしあっちの世界の案内もしてくれるしちょっとした能力も見せてくれる。《りかちゃんは祈る力のある人形なのだ。》p.14。《だって、おまえがりかさんを要り用だったじゃないか》p.75
【リカちゃん人形】みんなが持っている。
■ミケルの庭
【紀久/きく】マーガレットからミケルを預かっている。美大の大学院に籍を置いている。
【染色工房・f】紀久、与希子、蓉子、マーガレットで運営している。以前の下宿が焼失し、アトリエとして再建。大家は蓉子の父。
【マーガレット】米国人。「りかさん」の話に出てきたマーガレットとの関係は不明。夫は日本人。中国に短期留学中。
【ミケル】マーガレットの子ども。《未だこの世界のどことも馴染まずに、あるいは馴染めずに、ただ自分が此処にあることに戸惑っている》p.213
【蓉子/ようこ】「りかさん」の話の「ようこ」だろうとおもわれる。マーガレットからミケルを預かっている。草木染めが専門。《蓉子の手は確かさに満ちて力強い。まるでその上から、何世代もの女たちの手がふわりと重なっているかのように。》p.246
【与希子/よきこ】マーガレットからミケルを預かっている。大学を卒業後作家として活動しつつ染色講座を蓉子とともに開いている。