梨木香歩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ難しいのだが、"f植物園の巣穴"と合わせて読んで、どうにもしっくりこない感触が有る。おそらく、"f植物園"の話が、主人公とその妻、そして会えなかった息子のそれぞれが過去に区切りをつけて進んで行けるような話と読めたので、それをもう一度蒸し返し、不完全な解決であった、とされてしまったのが納得行かないのだろうと思う。
"f植物園"では、家の治水を成すべき、と言われ、自分はいま生きている妻を大事にしたいのだ、という思いから「それは私の任ではない」と答えたはずと思う。過去の事はあっても、いま生きている人を大事にする、という姿勢が共感出来たのだ。 -
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Posted by ブクログ
読み始め、主人公は女性なのかと勘違いした。化粧品会社の研究職で、丁寧な書かれ方にてっきりそう思ったんだが。
しかし、三十肩からヘルニアやらの痛みに耐えがたくなる話なのだが、軽やかなおかしみのある文章でその後はスラスラ読み進められた。
(引用)
「佐田さーん、佐田さーん」
亀シが突然屋敷の奥に向かって叫び始めた。その大音響にぎょっとする。もしも誰か出て来たらどうするのだ。
誰も住んでいない実家を訪ねたシーン。誰かって誰だよと思って笑ってしまう。
山幸彦、海幸彦神話やご先祖様たちや古い因縁話や怪しげな治療師などグイグイ引き込まれたんだけど、宙幸彦との手紙のやり取りで話がすっと胸に落ちたかと -
Posted by ブクログ
梨木香歩(1959年~)氏は、鹿児島県出身、同志社大学卒の児童文学作家、小説家。児童文学関連はじめ、多数の文学賞を受賞している。
本書は、季刊誌「考える人」に連載された「ぐるりのこと」をまとめて2004年に出版され、2007年に文庫化されたものである。
私は小説をあまり読まないため、著者については、小川洋子のエッセイ集に引用されていたことで初めて知って、少し前にエッセイ集『不思議な羅針盤』を読んだのだが、その時にも、著者が、身近で起こったひとつひとつの事柄をとても深く考え、それを慎重に言葉に表す作家であると感じた(作家とはそもそもそうした能力・性格を要する職業とはいえ)のだが、本書からは、それ