梨木香歩のレビュー一覧
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八ヶ岳の山小屋で過ごす日々を書いたエッセイとして読み始めたけれど、後半はお父さんの最期の日々に寄り添って考えたり感じたことや、コロナ禍で考えたり感じたことが主になっていた。もちろん、それはそれでとても興味深かった。
鳥や植物など名前を聞いてもわからないのがほとんどではあったけれど、読んでいると自分もひんやりとした木の匂いのする森の中にいるような清々しい気持ちになれて、夏の暑さも少し忘れられた。
私にとって人生の一冊ともいえるのが「赤毛のアン」なのだけれど、首都圏で生まれ育った私はやっぱり都会が好きで、都会以外では暮らせないと思っていた。でも数年前に「赤毛のアン」の舞台となったプリンス・エドワー -
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ネタバレ本当に大好きな梨木香歩さんなんだけど、最近の作品は政治的思想をまったくオブラートに包まずに書くようになってきて、しかも自分には理解できない価値観なので読んでいてぐったり疲れる。これは新聞の連載だからしょうがないんだろうか。「非暴力民衆一揆」という謎の言葉で原発をなくそうとか、ちょっとびっくりする。原発は電力確保のいち手段なのだから、本当になくしたいなら現実的に利用可能な代替手段の開発を援助するとか、そういう方向性で実現に向けた努力を確実に踏み出してほしい。
戦争だって政治だってつまるところただの手段だし、そう扱うことで御すべきではないかと思うのだが、コロナ対策についてでさえ、政府に従うことは民 -
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エストニア旅行をお膳立てした編集者、通訳、カメラマンに土地ごとの現地ガイドも絡んでの旅行記。慌ただしい日本人の旅行の印象。ちょっとらしくないと思う。
確かに、この編集女史は有能な人なんだなというのは、判るんだけど。
エストニアと云われて、頭にイメージが沸かない。解説に「境界」を訪ねる旅とある。「ぐるりのこと」も境界に関するエッセイというか思考の本だったな。
一人森の中に入っていたり、ゆっくりカヌーを漕いだりする文章が梨木さんらしい。
そして、月毎の風のゼリーを木の実やハーブから作る記述は、いかにもという印象。
チェルノブイリ放射能の汚染で立入禁止になった地域に、バイソン、モウコノウマ、イ -
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1930年代に、若い読者へ向けて書かれた本書は吉野源三郎氏の「君たちはどう生きるか」の15歳のコペル少年と錯覚してしまう。本作は、主人公・コペルが染織家の叔父ノボちゃんと共に疎遠になっていた親友・ユージンの庭によもぎを取りに行った一日のことが物語となっている。
そして、その一日を共有した人たちが、それぞれの心に秘めている想い、考えを通し、作者が私たちに生きていく上での環境、社会について問題定義をしている。
それは、弱いものを従わせる力。リーダーの存在意義。集団の中での無言の強制力などを戦争、性犯罪、環境保護などの社会問題を背景に、自分たちの立ち位置を常に考えるように、また考えて続けることの重 -
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主人公秋野がフィールドワークする架空の地 遅島。
遅島では多様な植物や動物、かつて修験道だった名残を目にすることができ、島の所々で生を感じる。その五十年後、再び遅島を訪れた秋野は変わってしまった島の姿を目の当たりにする。山は削られ、道が切り開かれ、かつてあった動植物は姿を消していた。ここは遅島ではない。そう感じた秋野だったが、
五十年前に見た海うそ(蜃気楼)は変わることなく、見ることができるのだった。
五十年前も後も遅島は遅島である。
その姿や人々の暮らしは変化すれど。
失われたものもあれば、得るものもある。
自分はそんな変わりゆく森羅万象の中にほんの少しだけ腰掛けているにすぎない。そんな気