梨木香歩のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ本当に大好きな梨木香歩さんなんだけど、最近の作品は政治的思想をまったくオブラートに包まずに書くようになってきて、しかも自分には理解できない価値観なので読んでいてぐったり疲れる。これは新聞の連載だからしょうがないんだろうか。「非暴力民衆一揆」という謎の言葉で原発をなくそうとか、ちょっとびっくりする。原発は電力確保のいち手段なのだから、本当になくしたいなら現実的に利用可能な代替手段の開発を援助するとか、そういう方向性で実現に向けた努力を確実に踏み出してほしい。
戦争だって政治だってつまるところただの手段だし、そう扱うことで御すべきではないかと思うのだが、コロナ対策についてでさえ、政府に従うことは民 -
Posted by ブクログ
エストニア旅行をお膳立てした編集者、通訳、カメラマンに土地ごとの現地ガイドも絡んでの旅行記。慌ただしい日本人の旅行の印象。ちょっとらしくないと思う。
確かに、この編集女史は有能な人なんだなというのは、判るんだけど。
エストニアと云われて、頭にイメージが沸かない。解説に「境界」を訪ねる旅とある。「ぐるりのこと」も境界に関するエッセイというか思考の本だったな。
一人森の中に入っていたり、ゆっくりカヌーを漕いだりする文章が梨木さんらしい。
そして、月毎の風のゼリーを木の実やハーブから作る記述は、いかにもという印象。
チェルノブイリ放射能の汚染で立入禁止になった地域に、バイソン、モウコノウマ、イ -
Posted by ブクログ
1930年代に、若い読者へ向けて書かれた本書は吉野源三郎氏の「君たちはどう生きるか」の15歳のコペル少年と錯覚してしまう。本作は、主人公・コペルが染織家の叔父ノボちゃんと共に疎遠になっていた親友・ユージンの庭によもぎを取りに行った一日のことが物語となっている。
そして、その一日を共有した人たちが、それぞれの心に秘めている想い、考えを通し、作者が私たちに生きていく上での環境、社会について問題定義をしている。
それは、弱いものを従わせる力。リーダーの存在意義。集団の中での無言の強制力などを戦争、性犯罪、環境保護などの社会問題を背景に、自分たちの立ち位置を常に考えるように、また考えて続けることの重 -
Posted by ブクログ
主人公秋野がフィールドワークする架空の地 遅島。
遅島では多様な植物や動物、かつて修験道だった名残を目にすることができ、島の所々で生を感じる。その五十年後、再び遅島を訪れた秋野は変わってしまった島の姿を目の当たりにする。山は削られ、道が切り開かれ、かつてあった動植物は姿を消していた。ここは遅島ではない。そう感じた秋野だったが、
五十年前に見た海うそ(蜃気楼)は変わることなく、見ることができるのだった。
五十年前も後も遅島は遅島である。
その姿や人々の暮らしは変化すれど。
失われたものもあれば、得るものもある。
自分はそんな変わりゆく森羅万象の中にほんの少しだけ腰掛けているにすぎない。そんな気 -
Posted by ブクログ
ネタバレ渡り鳥の実態や飛ぶルートをより詳しく紹介して考察する本かと思ったら、そこは学術本ではないが故にタッチしないことにされているのか、はたまた明らかになっていないのか「〜なのだろうか」という投げかけに終始している。本当の鳥のドラマを知りたかったんだけどなあ(だからこそ『コースを違える』のA33の話は淡々としていながらも心に残った)。
ご自身の著書含め他の本を引用して色々考察されていて、人の「渡り」という切り口は面白かったが、話があっちこっち飛んで、個人的にはあまり読みやすいタイプのエッセイではなかった。
背表紙の「この鳥が話してくれたら、それはきっと人間に負けないぐらいの冒険譚になるに違いない」、 -
Posted by ブクログ
著者の留学中に世話になった英夫人を中心に添えたエッセイとは知っていた。田舎の賢夫人の暮らしぶりがテーマと思ってたら、随分違った。一篇一篇が結構な長さがあるし、色々騒動も持ち上がるし。
イギリスでの生活が舞台だから、「玄関ドアの高さをフルに使って入ってきた彼は、」なんて表現になるのかな。判り易いけど、チョッと面白い。
レディー・ファーストは「甘やかし」と思い、心地良く感じながら「トウゼント オモッテハ イケナイ」と自分に訓戒を垂れる。
本を読むこともなく働き通しの家政婦の生活、敬虔なクウェーカー教徒の暮らしを思いやり、日常を深く生き抜くことを問う。
神への信仰にひたむきな女性が先住民の精神文