感情タグBEST3
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生活を共にする四人の女性。それぞれの先祖や関係が一つの模様のように複雑に織られる。彼女達は自ら自分達のルーツを知ろうとする。それは作中で語られる手仕事を営んできた女性達のようでもありながら異国からの手紙で語られるアイデンティティーを剥奪されまいとするクルド人のようでもある。連続しながら変化すること。私もまた何かを引き継いで何かを残すのだろうか。
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前に一度読み終わっていたけれど、最近また読み直していた。
女として生きていると、確かにコントロールしきれない得体の知れない存在が、自分のどこかに隠れているような気もする。それは、ほかの女性を見ていても思う。それを不気味だ嫌だと避けるのではなくて、しっかり見つめてみれば、怖くはないのだ。
唐草模様が蛇であるという説、蛇が基になった模様、継承の模様、頭から始まり頭で終わる、その意味。ちょうど私ははじめての海外旅行でカンボジアへ訪れていて、アンコールトムの入り口で蛇を引っ張りあって海をかき混ぜて不老不死の薬を作る乳海撹拌の物語のモチーフが現れてびっくりした。そのモチーフはあらゆる遺跡に施されていた。王の母のために作られたタ・プロームのモチーフだけは、まさに、蛇の頭で始まり、頭で終わっていた。ガイドの方にどうしてここだけ?と聞いてみたけれど、飾りだ、という。私はからくりからくさに出てくる蛇のモチーフと重なって感じた。
最近の、自分と異文化への態度や理解の仕方、女として生きることなど悩み煮詰まっていたテーマがこんなに見事な物語として手をひいてくれているようで、やっぱり、私にとって梨木香歩さんの作品はとても大事だと思った。
一度読んだはずなのに、よきこときく、のからくりに気づいたときは呆然としてしまった。
また、女の道で、文化の道で迷子になったときに読み返すと思う。
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古民家で自然と共にのんびりと暮らしている女性たちの物語りかと思いきや、りかさんにまつわる過去や彼女たちの内に秘めた激しい思いが淡々と描かれていて、心にぐっと刺さりました。
能面にまつわる過去のつながりがイマイチ理解しきれなかったのですが、伏線がちゃんと回収されていたのでだいたい分かりました。
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素晴らしい梨木さんの世界。
「りかさん」という本の続編だと、読み終わってから知りました。
祖母の遺した家に住む蓉子とアメリカから日本の鍼灸の勉強をし蓉子とランゲージエクスチェンジをしているマーガレット、機織りをする紀久、テキスタイルの図案を研究している与希子の4人の女性の共同生活。
草木染め、機織り、紬、能面、人形と日本の伝統文化とクルド人の背景も交えながら生きることの意義を教えてくれる。
これも大切にしたい一冊になりました。
手元に置いていて何度も読み返したい一冊です。
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何冊か彼女の長編小説を読んでいるが、いつもその重層的な構造に、もしくはその絡まり合う要素にいつも目眩がする。考えてみれば、初めて読んだ「ピスタチオ」からしてそうだったのだが、その後の「沼地のある森を抜けて」など、複数の作品に共通している。そして、あえて共通項を探せば、女性、手仕事、自然、時代ということになるのだろうか。
そして、最後にカタルシスを伴うような圧倒的な事象が起こることも共通か。
などと分析されることを望んではいないのだろうが・・・
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不思議な作品
ファンタジー要素が混じりつつも、日常を描いてるような
それがだんだんひとつの事件(?)を追究していくことになっていく
おつたさんとか赤光たちと、与希子とか紀久たちの関係性が混乱してきたので、もう一度読み直しておきたい
文庫本の解説に、国内と国外を分けてみている作品というような話があったんだけど、実際4人で暮らしているのにマーガレットの存在だけ異質である点もおもしろい
「りかさん」という本も出していることを知ったので、あとから読んでみたいです
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『りかさん』の主人公「ようこ」が大人になり、「蓉子」として描かれていた。小さい頃から好きだった染物を続けていたり、人を慈しみ包み込むような暖かさが、「ようこ」だと分かる要素だった。
『りかさん』はようことりかさんの物語で、最後にマーガレットの娘と三人の共同生活が描かれていましたが、読んだ時点ではなんで共同生活なんて送ってるんだろう、なんでこんなややこしい関係なんだろうと思っていたことがやっと繋がりました。
『からくりからくさ』ではたくさんの植物の名前が出てきて、スマホを片手に調べながらじゃないとなかなか情景が浮かばなくて大変でした。
「色は移ろうものよ。花の色は移りにけりな、いたずらに、ってらいうじゃない。変わっていくことが色の本質であり、本質とは色である」
この与希子の言葉は花と染色の関係だけではなくて、人間関係や人の心情も表してるんじゃないかなぁとも思いました。四人の共同生活の中でそれぞれに抱える問題があって、でもそれが関わりあうことによってまた違う色が出てくるような…。
この本は情報量が多かったけど、その分考えることも多くて、特に龍神と蛇の関係は私が大学時代に研究したことにも通ずるところがあったので面白かったです。
能の講義も受けていたので能面に関しての話もすごく興味深かった。
作家さんってすごいなぁと思ってしまう。
知識もたくさんあるし、それを物語に取り入れてより内容の濃いものにできるからすごい。
何回読んでも飽きなさそうだし、読むたびに新しい気づきがでてきそう。
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再読。染や織や紋様といった魅力的な世界の描写に絡めて、生と死、愛情と憎悪、連続と変化といった相反するものが混じり合ったり混じり合わなかったりして流れていく、美しい世界。梨木さんの小説を読むたびに、こんな世界に身を置いて生きていきたいと思ってしまう。
唐草の先は…
紙の本で読んでいたものを買い直しました。
再読にも関わらず、えっ? この人とこの人にこんな繋がりが? この先どうなるの?? と思いがけない展開に驚かされます。きっと、静かな始まりからは予想だにしないラストだと思います。
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昔懐かしいおばあちゃんの家を思わせる、古い日本家屋。住んでいるのはイマドキではない、勉強熱心で深い思いやりを持つ表現者達、かつ草木や生き物、織物、染色に専門性がある。
空気感が心地よく、夏の終わり、西陽の入る縁側などを思い起こさせる。個性的な4人は二十歳そこそこ、プラス神秘的なリカさんが居る。
謎解きミステリーのような感じもするが、国際問題や大学や社会の理不尽、古い街や家のしきたりなど、盛り込まれている。彼女たちの前向きな好奇心と素直な性格がホッとする。
ストーリーは複雑だが、世界観はすきです。
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梨木さんの場景描写力は素晴らしい。
日本語の美しさ、日本の自然や四季の変化の美しさを、改めて深く丁寧に教えてくれます。
4人の女性が共同で暮らす古い家。
丁寧に、真剣に生きる女性達が魅力的に描かれています。静かだけど情熱的な作品です。
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「りかさん」を先に読んでいたので
すんなりと物語の世界に入れた。
大人になった蓉子は染織の世界へ。
祖母の家での同居人は機を織り、
織物の研究をし、針灸の勉強とそれぞれ。
庭の植物や穏やかな暮らしのなかに
人の思いや現実があり、
人形や織物が過去を物語る。
3人の合作の最後の様子は圧倒され
一瞬の芸術というのもあるのだなと
思った。
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りかさん、の主人公のようこが大人になった蓉子としての新たな物語。
祖母が亡くなって、かつて祖母が住んでいた家を下宿にすることになり集まった若い女性たち。
孫の蓉子は染色、アメリカ人のマーガレットは鍼灸師を目指し、紀久は機を織り、与希子は機と図案の研究。
4人とも手仕事を共通にしながらの共同生活。
蓉子の大切な市松人形のりかさんは
祖母の喪にふしたまま、ひっそりとしたままだった。
4人で協力しながらの生活
紀久の故郷で墓の中から見つかったりかさんそっくりの人形。
それを辿っていく中でわかる与希子の家系と遠い親戚だったという事実。
紀久が必死に書いた機織りの原稿を大学教授に横取りされそうになる騒動。
マーガレットが身籠った子供、その相手の神崎が滞在しているトルコ、クルド人のこと。
4人の手仕事が集結した作品をお披露目した日。
与希子の余命僅かの父のタバコの火によって燃えていったりかさんの最後。
書ききれないほどの話の内容の濃厚さ。
りかさんの最後、ありがとうだ。
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高校生で読んだ際は、自分の好きなワードがたくさんあるはずなのに、どうしてか内容が頭に入らずもやもやしていました。
再読してみて、紀久の心情を通し物語にすんなり入り込めるようになっていました。
物語がゆったりと進行しているので、一読してから長い時間を置いてみて、また読んだのが良かったのかもしれません。自分の中で上手く消化できた気がします。
古民家、人形、染織といった日本的なワードが散りばめられていますが、マーガレットの存在や中近東の話題、クルドのことが違和感なく語られていて、織物の縦糸と横糸を丹念に編んでいくような小説です。
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日常のことなのに、不思議な世界観を纏っているように感じる。
出てくるものが、少しずつ近づき繋がっていく。
日々の変化や、知ることが辛いこともあるけれど、乗り越えると違うものを得たりできるというようなことをなんとなく読んでて感じた。、
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ふしぎな物語だ。時間が止まったような一軒家で共同生活を始めた若い女たち。容子は染色、紀久は日本の紬織り、与希子はキリム織と、それぞれが伝統的な手仕事に打ち込んでいる。
それに鍼灸を学ぶマーガレットを加えて4人、と言いたいところだけれど、この家には実はもうひとりいる。それが、容子が祖母から受け継いだ人形の「りかさん」だ。容子が子どものころから会話を交わしてきた「りかさん」は、いろんな女の子たちとともに長い時間を過ごしてきた記憶と知恵をたくわえているようだけれど、容子の祖母が死んだ時から、その魂はどこかへ出かけているらしい。
つまり、この若い娘たちは、気が遠くなるほど多くの、ひとりひとりの名前を超えた何かを織り続けてきた女たちの営みを、自ら引き継ぐ者たちであるわけだ。さらに、紀久の祖母の墓の中から、「りかさん」にそっくりな人形が現れるあたりから、彼女たちが受け継ぐ歴史は、まさに蔦のつるのように、互いにいっそう複雑に絡み合うようになる。どうも、江戸時代に「りかさん」を作った非業の人形師とその周辺の人々は、彼女たちの親戚関係の中で、みなつながっているようなのだ。
これがふつうの小説ならば、過去の数奇な因縁によって結びつけられた現代の女たちは最後に真相を知ることで、すっきりとした近代的個人に立ち戻るところだけれど、もちろん梨木香歩の小説だから、そんなことにはならない。人形師の打った面が引き起こしたとされる大名屋敷内で起きた陰惨な事件に端を発する因縁で結ばれたつながり、さらには、彼女たちの周辺にいる男をめぐるつながり、そうした、個人の意思を超えたつながりによって結びつけられている関係を、彼女たちは厭うどころかむしろ積極的に確認するようなそぶりで、共同制作へと進んでいくことになる。
「生き物のすることは、変容すること、それしかないのです。…追い詰められて、切羽詰まって、もう後には変容することしか残されていない」。
手仕事からしだいに遠ざかって、自分を超える大きな流れが見えなくなってきているわたしたちのために、蔦唐草の模様の中に織り込まれてきた智慧を差し出してくれる作品だ。個人とは、わたしひとりのぶんだけではないということ。つないでいくためには、変らなくてはならないという智慧を。
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10代、20代のころにこの本を読んでもおそらくあまり響いてこなかっただろう。確かに毎日を生きることは機織りのようであり、ふりかえってみると人生はその織物のようだ。
変化はしんどいものであり、代償を払うものなのだと筆者は書いているが、織物から人形そして家が炎に包まれた瞬間、悲劇的な場面をそれは美しい情景として描かれているのが印象的。
そうか。人の死も同じなのかもしれないと感じた。
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祖母の残した古い家が痛まないようにと、20代の女4人と
人形のりかさんが共同生活を始める。
決して楽しいだけの繋がりではなく、それぞれの
心模様にも激しい葛藤を与えながら、また、親戚や
先祖達まで繋がっていく。
今を生きながら、遠い昔を覗き見る。
緩やかに頑なに脈々と繋がる蔦のような物語。
梨木さんの作品は何作か読んではいるけれど
こんなに激しい執念や感情は初めてでした。
優しいだけの作品と思って読むと、苦しいかもしれない。
「りかさん」→本作→りかさんに収録されているミケルの庭を読むといいかも。
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人形のりかさんを含め登場人物の動きがいい。
それぞれ性格も違うのに、ツナガリが深いのは解説にもあるように「手作業」にヒントがある?
染色や織物に関する記述も興味深い。
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作者さんの作品、今回も難しかったです。
本のカバーに書かれているのを読んでこれならと思いましたが。
女性4人の共同生活の物語です。
この作品にも沢山の草花について書かれていて、そのつど調べながら読みました。
知らない言葉についても同様に。
読んでいると彼女達の過ごす家が浮かんできます。けれども共同生活の物語としてだけではなく、世界情勢まで話は広がります。
それだけではなく…次々と。
きちんと理解出来て読めたかはわかりませんが、読んでいる間は心地良かったです。
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蓉子の祖母が亡くなり、その家に4人が同居することになった。染物修行中の蓉子、東洋文化を学びにきたマーガレット、紬(つむぎ)専門の紀久、キリム(中近東の図柄)に興味を持つ与希子の4人である。蓉子が大切にしている日本人形、りかさんを中心に、蓉子・紀久・与希子の関係が明らかになっていく…。
日本人形が元々苦手だったから恐る恐る読んでいった。染織に関する専門用語や、複雑な人間関係が話を難しくさせていて、具体的に細かいことを想像するのが困難だった。
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丁寧な共同生活が目に浮かぶ私の好きな世界観の本だった。ただ、植物や染色、織物の知識が、特別有るわけではないので、世界観の半分もイメージしきれなかったように思う。個人的には、いろんなエッセンスが散りばめられすぎていて、結局どうなったの?と言うこともあり、消化不良な感じが残った。
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女の子4人が住んでいる雰囲気や関係性は好きだけど、話が難しい、言葉が難しい、最終的な終わり方がわからない、、読むのにものすごく時間がかかった、、
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亡くなった祖母の家で4名の女性の同居。
描写が薄いベールで包んだような情景で独特の世界観。
このまえに、
りかさん、を読んでいたので、
りかさんの登場を楽しみにしてました。
Posted by ブクログ
裏庭で挫折したので、今回も挫折するのだろうかと思いながらも梨木香歩氏の独特の世界に入りたくて購入。りかさんを最初に読んだのがよかった。
大人になった蓉子さんは変わらずりかさんと一緒にいる。話すことはできなくなったけど、価値観も違う下宿人らとの生活の中心にりかさんがいてそして何よりも日常を大切にしている、そんな話になっている。
内容は難しいが機を織るトントンという音が聞こえるような小説でした。
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登場人物たちの大切にしているものが、興味のない分野過ぎて読むのにたいへん時間がかかってしまいました。
手仕事が主であった昔の方が、物事に対して非科学的な解釈をしたり、そういう感覚を常に持っていたのかなと思いました。
そういう言葉に表しづらい感覚を見事に文章で表現されていると思います。
りかさん は不思議と楽しく読めました。
ただこれは、長いです。壮大ですし。好きな人は好きだと思います。
Posted by ブクログ
再読。の、はずなんだけど、初めて読むような気持ち。
『りかさん』とつながる、というか『りかさん』の完結編というか。
現実的な部分と非常に不可思議な部分が融合して、なんだか酔いそう…。
Posted by ブクログ
梨木香歩さんシリーズ。
染色や織物の世界を通して、唐草模様のように連綿と受け継がれ、伝えられてきた、女達の抑鬱と幸福を描く。
染色、機織り、パターン作家、中東にルーツを持つ外国人鍼灸師の4人の若い女性と、1体の人形の共同生活。「おばあちゃん」が住んでいた一軒家を下宿にすることになり、たまたまそこに集まった4人は、実は数奇な運命の糸で結び合わされていた・・・。
オレが読むとどことなし女女(おんなおんな)していて生々しく感じるけど、静かな中にも存在の切実さというか生の迫力というかがすごく迫ってくる。凄いお話だと思う。
能面の「般若」は知っていたけど、このお話に出て来る「生成」「真蛇」というのを先に見ておいたらもっと面白いかも。