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Posted by ブクログ
前に一度読み終わっていたけれど、最近また読み直していた。
女として生きていると、確かにコントロールしきれない得体の知れない存在が、自分のどこかに隠れているような気もする。それは、ほかの女性を見ていても思う。それを不気味だ嫌だと避けるのではなくて、しっかり見つめてみれば、怖くはないのだ。
唐草模様が蛇であるという説、蛇が基になった模様、継承の模様、頭から始まり頭で終わる、その意味。ちょうど私ははじめての海外旅行でカンボジアへ訪れていて、アンコールトムの入り口で蛇を引っ張りあって海をかき混ぜて不老不死の薬を作る乳海撹拌の物語のモチーフが現れてびっくりした。そのモチーフはあらゆる遺跡に施されていた。王の母のために作られたタ・プロームのモチーフだけは、まさに、蛇の頭で始まり、頭で終わっていた。ガイドの方にどうしてここだけ?と聞いてみたけれど、飾りだ、という。私はからくりからくさに出てくる蛇のモチーフと重なって感じた。
最近の、自分と異文化への態度や理解の仕方、女として生きることなど悩み煮詰まっていたテーマがこんなに見事な物語として手をひいてくれているようで、やっぱり、私にとって梨木香歩さんの作品はとても大事だと思った。
一度読んだはずなのに、よきこときく、のからくりに気づいたときは呆然としてしまった。
また、女の道で、文化の道で迷子になったときに読み返すと思う。
Posted by ブクログ
不思議な作品
ファンタジー要素が混じりつつも、日常を描いてるような
それがだんだんひとつの事件(?)を追究していくことになっていく
おつたさんとか赤光たちと、与希子とか紀久たちの関係性が混乱してきたので、もう一度読み直しておきたい
文庫本の解説に、国内と国外を分けてみている作品というような話があったんだけど、実際4人で暮らしているのにマーガレットの存在だけ異質である点もおもしろい
「りかさん」という本も出していることを知ったので、あとから読んでみたいです
Posted by ブクログ
再読。染や織や紋様といった魅力的な世界の描写に絡めて、生と死、愛情と憎悪、連続と変化といった相反するものが混じり合ったり混じり合わなかったりして流れていく、美しい世界。梨木さんの小説を読むたびに、こんな世界に身を置いて生きていきたいと思ってしまう。
Posted by ブクログ
りかさん、の主人公のようこが大人になった蓉子としての新たな物語。
祖母が亡くなって、かつて祖母が住んでいた家を下宿にすることになり集まった若い女性たち。
孫の蓉子は染色、アメリカ人のマーガレットは鍼灸師を目指し、紀久は機を織り、与希子は機と図案の研究。
4人とも手仕事を共通にしながらの共同生活。
蓉子の大切な市松人形のりかさんは
祖母の喪にふしたまま、ひっそりとしたままだった。
4人で協力しながらの生活
紀久の故郷で墓の中から見つかったりかさんそっくりの人形。
それを辿っていく中でわかる与希子の家系と遠い親戚だったという事実。
紀久が必死に書いた機織りの原稿を大学教授に横取りされそうになる騒動。
マーガレットが身籠った子供、その相手の神崎が滞在しているトルコ、クルド人のこと。
4人の手仕事が集結した作品をお披露目した日。
与希子の余命僅かの父のタバコの火によって燃えていったりかさんの最後。
書ききれないほどの話の内容の濃厚さ。
りかさんの最後、ありがとうだ。
Posted by ブクログ
10代、20代のころにこの本を読んでもおそらくあまり響いてこなかっただろう。確かに毎日を生きることは機織りのようであり、ふりかえってみると人生はその織物のようだ。
変化はしんどいものであり、代償を払うものなのだと筆者は書いているが、織物から人形そして家が炎に包まれた瞬間、悲劇的な場面をそれは美しい情景として描かれているのが印象的。
そうか。人の死も同じなのかもしれないと感じた。