あらすじ
蘇りの水と水銀を司る神霊に守られて吉野の地に生きる草壁皇子の物語――歴史に材をとった中篇「丹生都比売」と、「月と潮騒」「トウネンの耳」「カコの話」「本棚にならぶ」「旅行鞄のなかから」「コート」「夏の朝」「ハクガン異聞」、1994年から2011年の8篇の作品を収録する、初めての作品集。しずかに澄みわたる、梨木香歩の小説世界。
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やっぱり すごいなぁ 梨木果歩さんの世界観。
初めての短編集だとか。
8編の短編と中核となる中編「丹生都比売(におつひめ)」。
短編にも世界観がでているけれど、丹生都比売はさすが。
どんどん引き込まれていく、戻れなくなる・・・
それにしてもこの世界観をこんなきれいな文章で表現するなんてすごい。
壬申の乱の人間関係がこんなことになっていたのは、習ったはずがまったく頭の中に残っていませんでした。
あとがきには「ひとはみな、それぞれの生の寂しみを引き受けて生きていく、という芯を持つ蔓なのだろうと思う」。
間違いなく自分の世界を変えてくれた作家さんの一人です。
これからも梨木さんの本は読み続けなければ。
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「丹生都比売 梨木香歩作品集」(梨木香歩)を読んだ。
「トウネンの耳」はなんとも愛おしい作品。こういうのたまらなく好き。
「夏の朝」もいい。
しかし何と言っても表題作の「丹生都比」は出色だな。
『草壁皇子』のしだいに透き通っていく命の美しさが胸を打つ。
さすが梨木香歩である。
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シンプルな紺地のカバーが、文学的な雰囲気の短編集。
しんとした気持ちで読みたい。
短篇集とはいえ、表題作の『丹生都比売』(におつひめ)は独立して一冊で出版されたことのある長さであり、あとがきによれば、これは核になるお話で、他の作品もここから同じ蔓が伸びていった…ということだ。
対象年齢も主人公の年齢もまちまちの、「ジャンル分けできない一冊」になった、というが、確かに同じ種から伸びている蔓のように感じられる。
登場人物も、人なのかどうなのかよく分からない物もあり、しかし読んでいて、目に見える形が人であれ植物であれ鳥であれ、それは些細なことのようにも思えてくる。
草壁皇子に関する、吉野裕子氏の説というのは初めて知るが、ああ、あるかも知れないと思ってしまった。
かなしい皇子である。
月と潮騒/トウネンの耳/カコの話/本棚にならぶ/旅行鞄の中からなかから/コート/夏の朝/丹生都比売/ハクガン異聞
『コート』は、姉妹のかさねた歴史がしみじみと、最後になつかしく哀しかった。
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奇譚とか異聞とかいうとやたら観念の公房戦wを繰り広げるのが昨今の流行のようになってしまっているがそんななかシンプルな言葉を紡いで肌触りの良い上質なファンタジーを仕立てることの出来る作家のひとりが梨木さんだと思う。
今回も老いの侘しみや生の寂しみを時を超え多面的な視点で捉えた九つの物語、アイデンティティである鳥や植物も散りばめられて梨木ワールドに彩りを添えている。
表題作「丹生都比売」も史実の論議を外して読むならば母と子の「個」を見詰めたしっとりとした趣きで読み応えあり。
単行本もあるようなのでそちらも読んでみたい
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梨木香歩さんの短編集。
どの作品も、いつもの生活から少し目を外したところにあるかもしれない、不思議な世界が描かれていて素敵だった。
BGMを止めて、静かな空間でじっくり読みたい本。
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初期の梨木さんの短編集を集めたもの。
ここからすでに梨木さん独特の雰囲気は始まっていて、全てが繋がっているような感じがした。
すっと物語に引き込まれていって何かに包まれているような感じ。
ハードカバーの装丁が似合っているけど、文庫化することはないのだろうか。
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梨木さんの、弱いものに対する視線がほんとうに温かくて。文字を追っているだけで癒やされる。
「夏の朝」はもうボロボロ泣いた。夏ちゃんは今でいうところの発達障害とか自閉なのかな?という感じの子なのですが、おかあさんやおとうさんやほかの大人たちの、夏ちゃんを見守る優しさや空回りする一生懸命さがうつくしい。
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わからないようで、頭ではなく心で読むような整合性のとれた物語。キラキラと美しい感覚を覚える。
『夏の朝』は大好き
草壁皇子の話が読みたくて手にした本。壬申の乱が草壁皇子の目線で描かれている。
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不思議話し短編集。表題「丹生都比売におつひめ」の実母の妖しさと皇子の儚さも良かったけど、「コート」、すごく短い物語なのに、亡くなった姉に思いをはせる最後、ぐっときた。
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言葉のひとつひとつが透明で、その美しいきらめきが私を迎えてくれる。
『月と潮騒』では、引っ越ししたてのマンションの一室がまるで海底にあるかのような豊かな描写に、思わず潮風を感じた。
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やはり一番は『ニオツヒメ』かなぁ。切ないような、ほんのりあたたかいような。日本史が好きだから~と言う事を抜きにしても、この話が一番好き。
それ以外だと『本棚にならぶ』が、え…?そう言う事…?って、よくわからないままの恐怖。コワイけど、こんな本屋さんがあったら行ってみたいかも。かけていって収納ってどんな時に思いつくのか……。
“トウネン”も“トウネンの耳”もひたすらに気になる。表紙にいるのがトウネン?
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梨木さんの短編集。
表題作の「丹生都比売(におつひめ)」が
ほぼ半分を占めています。
丹生都比売は史実を基にしたファンタジーっぽくて
面白かったです。個人的に好きなのは「夏の朝」。
母親と子供の先生とのやり取りのイラつく状況を
イラつかずに読めるのは梨木さんの文章の
なせる業でした。この題材は作者さんによって
書き方が変わるでしょうね(´艸`*)
Posted by ブクログ
本のオビに「初の短篇集」とある。
そうか、そういえば梨木果歩さんの短篇集って読んだことがなかったな、と気が付く。
まぁ、あの「家守奇譚」なんかは連作短篇だったけど。
全9篇の短篇で構成されている。
短いものは数頁、最長で100頁の作品が収められている。
古くは1994年、新しいもので2011年に発表され、2篇は未発表作品。
最初の「月と潮騒」「トウネンの耳」は現実と非現実が混淆としている、少しとらえどころのない不思議な作品。
「カコの話」も似たような作品だが、ユーモアやシニカルな味が加わっている。
既婚の男性が読んだら、思わず考え込んでしまうかも。
この「月と潮騒」「トウネンの耳」「カコの話」はあの「家守綺譚」をちらりと思い出させたりもする。
「本棚にならぶ」「旅行鞄のなかから」も不思議な内容の話なのだが、その奥底には何か意義深い教訓めいたものが潜んでいるようにも思える。
この2篇はどう読み取っていいのか、少し迷ってしまう内容だったりした。
次の「コート」は5頁の小品なのだが、この短い中に心を大きく揺さぶってくれる密度の濃い話がつまっている。
この「コート」のみが現実の世界に終始した作品になっている。
「夏の朝」もホロリとさせてくれると共に、清々しい読後感を味わわせてくれる素晴らしい内容……ちなみに話の語り手は幽霊だったりする。
表題作である「丹生都比売」は本書の中では最長の100頁に及ぶ作品。
歴史物になるのだろうが、歴史の知識が無くても充分に面白く読み進めることが出来る。
最後の「ハクガン異聞」は鳥や自然を愛してやまない梨木果歩さんならではの作品。
ちなみに、この話の中で語られている「スノーグース」のレコードとはロック・バンド「キャメル」の作品である。
作品の世界感に多少の違いはあるが、やはりここにあるのは、一貫して梨木果歩さんの世界であり、魅力に満ち満ちている。
僕としてはこうした短篇よりも長篇の方がより面白いと感じているのだが、それでもこうして短篇をまとめて読み終えた今は、心が浄化されてとても気持ちが良い。
Posted by ブクログ
梨木さんらしい、ほの暗い世界
自分が孤独であっても寂しくない
いろんな世界があるから大丈夫って教えてくれる
ファンタジーと言えばそうかもしれないけど
ちょっと違う気がする
・月と潮騒/冷蔵庫
・カコの話
・夏の朝/夏ちゃんにガンダムとは…意外な表現(^_^;
・丹生都比売/再読 筋が分かっているので草壁がより可哀相に感じた
ハッピーエンドになればいいのにと何度も思った
・ハクガン異聞/ピアノ調律
Posted by ブクログ
短編集
『月と潮騒』
ごく短い、冷蔵庫のお話。梨木さんのイメージとちょっと違うな、と思いつつ、でも読み終わると梨木さんの紡ぐ世界だなと。
『トウネンの耳』
これもごく短いお話で、梨木さん鳥が好きだからね、と思いながら読んでいる間に終わってしまう。この本の中ではあまり印象に残っていない。
『カコの話』
ようやくこの短編集の流れに慣れてきたのか、大好きな家守奇譚あたりに雰囲気が寄ってきたからか、この話あたりから引き込まれ始める。過去は人魚の姿をしていたりするのだ。
『本棚にならぶ』
部分の欠損。独特で、印象には残っている。抽象的すぎてちょっとなー。
『旅行鞄のなかから』
これも独特。ずっと対話調で、記憶の旅とでもいうのか。
『コート』
最後の重ねられたコートの光景が鮮烈に目に浮かび、悲しく美しいエピソード。前の2作品と比較して非常にわかりいやすいのがまた好ましい。良い配置。
『夏の朝』
これだけで単行本1冊成立するくらいの読み応えがある。
夏ちゃんに寄り添う守護霊の視線がどこまでも温かくて、それがこの話を包み込んでいる。優しく悲しい気持ちになる。
『丹生都比売』
表題作だけこの本の中では一番の長編。過去に単行本として出版されたこともあるそうで、その時は書き足した部分を削って本来の形に戻されたとのこと。
草壁皇子のひ弱なイメージが、梨木さんの美しい古代風の語りで、繊細で優しく、良い方向に引き出されている。
水銀の禍々しさが幻想的に描写されるが、その裏に貫かれているのは母子の壮絶な物語。
Posted by ブクログ
短編集でした。
草壁皇子が主役の長編小説と思っていたので、ちょっとびっくり。
しかも、少し川上弘美っぽい不思議系の話。
それはそれで好きなのだけど、思っていたのとはちょっと違うので慣れるまで少し時間がかかりました。
でも、「コート」「夏の朝」辺りから、しみじみといいなあと。
慈しみという言葉が自然と思い起こされる。
で、「丹生都比売」
飛鳥時代、奈良時代は結構権力争いに負けて命を落とす皇子がたくさんいたけど、草壁皇子は圧倒的な後ろ盾をもって皇太子になったのに、天皇にならないで亡くなってしまった。
病弱だった草壁皇子の少年時代を書いたお話。
悲劇の皇子と言えば有間皇子や大津皇子が有名だけど、草壁皇子の悲劇はそれとは違う。
母親の過剰ともいえる期待を一身に受けながら、期待に応えることができない。
そんな自分を申し訳なく思う。
現在の子どもたちと同じ思いを抱える皇子。
“ひとはみな、それぞれの生の寂しみを引き受けて生きていく、という芯を持つ蔓なのだろうと思う。”
持統天皇(草壁皇子のお母さん)視点も入った、長編も読んでみたい。
Posted by ブクログ
人と人の周りにあるものとが、柔らかく不思議にとけてゆく、神話のような短編集。
目に見えないものの豊かさを感じることができ、おだやかな気持ちになります。
特に表題作「丹生都比売」は秀逸。
おごそかな装丁もいいです。
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長野まゆみさんのささみみささまめのような不思議な話の短編集。
潮騒の月が好きだけど、最後のオチが月に呼ばれた後に飛び降りるみたいなのを想像してしまう。
屋上だからかな。
丹生都比売はああ、梨木さんだ。この流れは…と唸ってしまった。
欲望のために弟、姉、果ては自分の息子まで殺した女。
あの勾玉をみて獣のように泣いたのは後悔なのか罪悪感なのか。
息子として愛してたはずなのに、自分の欲望には勝てなかったのか
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絶版されて久しい丹生都比売をもう一度読みたくて手に取った。
表題作、コート、夏の朝がとても良かった。
梨木さんの静謐な文体が好きではあるものの、最近の心象世界に深く潜っていく系の作品があまりピンと来ずしばらく読んでいなかった。もう一度チャレンジしてみようか……
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4.5。この本はいい本だ。何か私には響く。涼しく、薄ら淋しいが、悲しい寂しさじゃない。淡々とそのように在る。その感じが。あと、とても完成されてる、そういう印象をおぼえた。話もだが、文章、それで綴られる世界が。
Posted by ブクログ
鉄板の文体。
美しい文字の流れを読むだけで
心がすっと落ち着いていきます。
淡さと畏怖、綻びと静けさ。
そういう世界はなかなか現実でも
小説でもないことです。
贅沢です。
夏の朝を読んだとき、
あるワンシーンがはっきりと映像として
私の体をすり抜けていきました。
その光景に泣けた。。
Posted by ブクログ
うーん、これまで気付いた中で、一番素敵な紐のしおりの色だと。
冷蔵庫の音に共感。とあるレオパレスに住み始めた当初、夜中に、海の音がする、っと驚いて音の出所を探してみたら、冷蔵庫だったのでした。本当に夜の海鳴りの音なのです。どういう作りの冷蔵庫だったのか、水冷?
Posted by ブクログ
表題作のみ、きらきら、芯から透き通ってしずかに光るように美しかった。ほかは……なんというのだろう。悪くいうには忍びない(この著者の作品を、ほんとうに長く愛読してきたから)けれども、かの女の多くの作品と同じくーー意図してかどうかはわからないがーーユング心理学にいう『グレートマザー(すべてを呑み込む太母)』が、文章の後ろ側から立ち上ってあらわれているように思えてしまう。またそれだけでなく、現代というにはすこし昔の、「お母さんのいうようにしておけば間違いはないのよ」という、おしつけるような、ある種行き過ぎた強すぎる母性をも感じてしまうのである。……物事やいきものにはそれぞれ、それ自身の想いや生き方、なりわいなどがあるのに……
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9篇収録の短篇集。
天武天皇と持統天皇の子、草壁皇子が主人公の表題作をはじめ、人の暮らしや歩みが森や草花、生き物と共に織り紡がれた小説たち。
美しさと切なさ、畏れ、あたたかみ…読んでいて自分の感情が四季のように彩られます。
梨木マジック。
Posted by ブクログ
胸奥の深い森へと還って行く。見失っていた自分に立ち返るために……。
蘇りの水と水銀を司る神霊に守られて吉野の地に生きる草壁皇子の物語――
歴史に材をとった中篇「丹生都比売」と、「月と潮騒」「トウネンの耳」「カコの話」「本棚にならぶ」「旅行鞄のなかから」「コート」「夏の朝」「ハクガン異聞」、1994年から2011年の8篇の作品を収録する、初めての作品集。
しずかに澄みわたる、梨木香歩の小説世界。