【感想・ネタバレ】りかさんのレビュー

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ネタバレ

リカちゃん人形が欲しかった小学生のようこにおばあちゃんが贈ったのは、おかっぱ頭の市松人形のりかさんだった。

落胆しながらも人形のお世話をしていくうちに、ようこはりかさんの声が聞こえるようになった。

おばあちゃんの元に来る前の持ち主にも、おばあちゃんにも大切にされていたりかさんは、気立が良く賢く、いつも洋子の味方になってくれる存在。

友達の登美子ちゃんのお家に雛人形を見せてもらいに行ってから、ようこのお家に着いてきてしまった、背守がなくて帰れないと泣く少女の存在。

登美子ちゃんのおじいちゃんが集めていたお人形たちの声を聞いて、お人形を通じて過去の人の思いを感じ取っていくようことりかさん。

汐汲がずっと守っていた黒こげになったアビゲイルと登美子ちゃんのおばあちゃんの姉の悲しい過去。

お人形は人の強すぎる思いを整理してくれる存在。
嬉しい時も楽しい時も、悲しい時も寂しい時も、お人形が人の気持ちを整理してくれる。

良いなあ。児童文学だけど、大人が読んでも大変面白い。

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2022年01月29日

Posted by ブクログ

1999年初版から20年、再読。 
何回読んでも、大好きな世界。
ようことおばあちゃんが感じとる世界がとても好き。こんな世界を描ける梨木香歩さん、凄いです。
りかさんを通して人形たちのざわめき、想いをたくさん聴いた。
人形はそれぞれの想いを抱えて、そこにいる。
アメリカから親善大使として贈られてきたアビゲイルも、いっぱいの愛を蓄えられて、その愛を届けるために来たのに…。その悲しみを引き受けて守り続けている汐汲み人形も憐れ。
人は業が深いから人形を必要とした、と同時に人形を慈しむ気持ちも持ち合わせている。
人形の使命は人間の感情の濁りを吸い取ることだという。
「濁り」この言葉は、ようことおばあちゃんが桜染めをしている時にもでてくる。
植物染料は媒染をかけてようやく色をだす。するとどうしてもアク(濁り)が出る。そのアクを含んだ色を「少し、悲しげ」だと著す。
一つのものを他から見極めようとすると、そこに差別が起きる。この差別にも澄んだものと濁りのあるものがある。澄んだ差別をして、ものごとに区別をつけて行かなくてはならない。自分の濁りを押し付けない、とおばあちゃんはようこに言う。
とても大切なことを伝えている。
濁りやアクを「少し、悲しげ」と受け入れ、そこから澄んだ方に向かう、それは梨木香歩さんの変わらない志向なのだろう。
「媒染を変えたら、出てくる物語も変わるだろう。ようこちゃんは、媒染剤みたいな人になれるよ」 なんて善い言葉でしょう。

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2019年12月22日

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思わずほったらかしてあった人形の髪の毛を梳かしてしまいました(笑)。世界のすべてに命があるように感じる子どもの頃。その感じを残したまま大人になる人もいるのですね。後篇、人形が語る秘密の話に涙が止まりませんでした。平和の大切さってわかる人とわからない人がいるのでしょうか。平和を大切に思う人の小さな声が世の中を変えるといいのに。

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2013年05月15日

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このお話の主人公ようこが、「からくりからくさ」の蓉子になるんでしょうね。人形というものに対する様々な思いは、人形そのものに吸収されて、持ち主が消えたり変わったりしても残ってしまうんだろうな。愛は愛になって、憎しみは憎しみになって返ってくる。それは相手が人形でなくても、同じなのかもしれません。

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2011年08月25日

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わたしが初めて読んだ梨木作品で、彼女の文章に魅了されるきっかけとなった作品。
ようこと「いいお人形」りかさんとの小さな冒険のお話。
ー「いいお人形は、吸い取り紙のように感情の濁りの部分だけ吸いとっていく」ー

「お人形」の少し怖くて妖しい、でもどうしようもなく魅力的な世界にわくわくさせられた。いわゆる児童書だけど、読み込ませる魅力の詰まった本なので是非手に取ってみてください。

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2011年02月28日

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色々な人生を人形の目から物語る。切ない系。人形の絵がリアルすぎるが、内容的にはこのくらい湿気というか影があってもいいのかもしれない。

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2010年05月28日

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私は後日談の「からくりからくさ」から読みましたが、どちらも楽しめました。登場人文の名前が出るたびに「へーそこで、そういう繋がりが」と再発見の喜びがありました。

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2009年10月04日

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ようこは誕生日プレゼントにリカちゃん人形が欲しかったのに、おばあちゃんから市松人形「りかさん」を贈られる。「りかさん」には取扱説明書がついていて、世話をしていくうち、やがて話し出す。りかさんにつられて、他の人形たちも喋りだし…。不思議な世界です。アビルゲイの話は深刻でした。独特の文章が癖になりそうです。「だけど、このりかさんは、今までそりゃ正しく大事に扱われてきたから、とても、気立てがいい。」

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2009年10月04日

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主人公の「ようこ」は、「おひな祭りに欲しいものがあるかい」と、おばあちゃんに尋ねられて、「リカちゃんが欲しい」とお願いする。
しかし、しばらくして届いたのは、ほっそりしたリカちゃんではなく、その倍近くも大きい、「りかさん」という名前の真っ黒髪の市松人形。
ぷっ。ありそう。ありそう。
でも、そこからの展開がすごい!りかさんが、ようこに話かけるのだ。それは、周りの人たちには聞こえない、不思議な言葉。
いつの間にか、ようこは、人形や木や、声を出すことができぬものたちの声を、聞くこと(感じること)が出来るようになっていく。そして・・・
最高に面白かった。
お人形遊びが好きだった、かつての少女たち、そして、今、少女の子どもたちに、是非とも読んで欲しい一冊!

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2009年10月04日

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梨木さんの作品って、涙無しに読めないところが本当にすごいと思います。最初は「うわー面白いなー好きだなー」と思って読んでるんですが、そのうちにしっかり感情移入しちゃってるんですよね。(あぁ…アビゲイルのお話が…)何より本当にこの方の作品は優しい。『西の魔女が死んだ』でもそうなんですけど、「死」とか「戦争」とか、絶対に避けられない厳しい現実も取り扱っているのに、とっても優しいんです。この本の読後には人形と言うものに対しての価値観とか、接し方が変わってしまいますね。児童文学分類なんだから、これはもっと沢山の人が、高学年…せめて中学生の間に読んで欲しいなぁと思いました。

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2009年10月04日

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初、梨木作品。児童書とばかにしてはいけないお話でした。話す人形ってコワイけど、りかさんならいいかな。

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2009年10月04日

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「リカちゃん人形」が欲しかったはずのようこにおばあちゃんが贈ってくれたのは、市松人形の「りかさん」だった。それ以来、ようこにはいろんな人形の想いや記憶がみえるようになる、というお話。
設定が巧みで、いろんな背景を負った人形が出てくる分、人間の業みたいなものがいろんな形で描かれてるんですが、欲張っている感じはしない。いい本です。
ちくしょう、いい作家だな梨木香歩!と思わず涙ぐみながらこぶしを握りしめました。読んでみて!とにかく!
視点がきちんと主人公の小学生におりていて、かつ文章の雰囲気は彼女を見守るおばあさんのやわらかさやあたたかさが感じられます。

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2009年10月04日

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リカちゃん人形が欲しいようこにおばあちゃんがくれたのは「りかさん」という名の市松人形でした。がっかりするようこでしたが、りかさんは不思議な力を持ち、ようことおしゃべりできる素敵なお人形でした...ということでこのお話はいろんな日本の古いお人形が出てくるとても素敵なファンタジーです。作者の梨木果歩さんは「西の魔女は死んだ」、「裏庭」などで有名な方です。お人形が見てきた歴史と人々の思いはさまざまな物語を奏でます。ようこやりかさんといっしょに体験するお人形の世界はいかがですか?

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2009年10月04日

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1番大好きな本。ほんとうに大好き。ここには書ききれないよ。この本を読んで考え方が変わりました。生き方も少し変わったと思う。りかさんもおばあちゃんもすてき。からくりからくさのあとに読んだほうがいいかも。好みだけど。

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2009年10月04日

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ひな祭りの前に『人形の家』を読んでいたころに知人から勧められ、人形やぬいぐるみと人との関係に興味が尽きないところ。

ゴッテンの人形の家 に出てくる人形たちはエミリーとシャーロットの家に暮らしていたけど、りかさんは外からやってきます。

おばあちゃんから電話で、今度のひな祭りに何が欲しい?と聞かれたようこは、リカちゃん人形が欲しいと答えます。
おばあちゃんは、

「お人形のりかちゃんなら気立てのいい子だ、雛祭りにはぴったりだ…よし。」

怪しいですよね気立てがいいとか…おばあちゃん、知ってるのかな…
で、やって来たのは半紙に『りかちゃん』と筆で書かれて古い箱に入れられた、真っ黒な髪の市松人形だったのです!

あーあーあー。と人ごとなので面白く読んでいたんですが、
このりかちゃんにもちゃんと思いがあるのです。人形の家のトチーのように、願うのとはちょっと違いますが、思いのようなものが、特定の人に伝わるのです。その夜のりかのメランコリックな感情の粒で翌朝目覚めたようこは、いつもと違う部屋の感覚、草原の朝の気持ちよさを感じて、箱に入れたままのりかちゃんを出して声をかけてみる。

おばあちゃんからのりかちゃんの説明書を読むと、ようこがりかを幸せにする責任があるという。毎朝着替えさせ、髪をとかして、箱膳をしつらえて一緒に朝夕の食事をする…など。

ある日りかちゃんからいつもと違う空気を感じ、ようこはりかちゃんと話せるようになる。ようこの家のお雛様たちがもめているのだ。
この時のようこのあまり驚かない感じもとってもおもしろい。

この家のお雛様はりっぱなものだけど、お内裏様に問題があったのです。
ここも、大河ドラマ『光る君へ』を観てる人にはおおお!ってなるエピソード。

りかちゃんからようこはりかさんと呼んでくださらない?と言われるように、とても頼りになるお人形。どうやらおばあちゃんともこうして話してきたようだ。

それからりかさんとおばあちゃんの助けをかりて、この家のお内裏様、
お友だちの登美子ちゃんの家の人形たちの問題にもりかさんがかかわってゆく。
登美子ちゃんのおじい様は相当な人形の収集家で、後半の物語では戦争中の出来事まで遡り、ようこのおばあちゃんの助けを得て人形たちを幸せにしてゆく。
怨霊とも違った、優しい人形と人とのつながりの世界が描かれます。

ようことおばあちゃんの関係がどんどん深まって素敵なものになってゆくのは
『西の魔女が死んだ』にも通ずるものがありました。
おばあちゃんは、ようこが大人のように「ちょっとはなしがあって」なんて言って、大人ぶってかわいいこと。と思っても、そういうことは口にださないセンスがある。(ようこ談)

人形に興味があるあるのかないのか、登美子ちゃんのセリフにもはっとさせられる。
人形たちが昨日と違う場所にいた時、夜中の大冒険から元の場所に戻れず落ちたふりをしている。そういうことを察してからは、人形だけでなく世の中の物はみんなふりしてるだけなのかなぁって思い始めたと言うのです。
なんと哲学的な少女たち!
ご飯はご飯のふり、わたしはわたしのふり、お母さんはおかあさんのふり…

これもまた、児童文学を超えた、大人のお人形を愛したひとたちに響く物語とおもうのです。

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2024年03月12日

Posted by ブクログ

からくりからくさを読み終えてから少し間をおいて手に取った。

読んでいる間ずっと、「西の魔女…」と同じ安心感に包まれている感じがした。この世界のことをよく知っていて、どんなことにも動じない、とても信頼できる大人がそばにいる…という感じ。

自身の経験との共鳴かもしれない。

私が社会人になり結婚して間もなく亡くなった祖母。田舎から息子(私の父)を訪ねてくる時は、いつも和服に羽織を重ねた正装だった。苦労に苦労を重ねた祖母は、再婚して改姓していたが、父のところへは定期的に顔を見に来た。

祖母は何でも知っていて、どんなこともくしゃくしゃの笑顔でやり過ごしていた。

祖母のそばにいるのが好きだった。

このことを、読み終えて思い出したのだ。

アビゲイルの話は、胸の奥からうめき声が出てしまっていたくらいに辛かった。比佐子の苦しみが苦しみとして出せなかった時代の日本を思う時、それは私の父の子供時代や、若かった祖母の日々に重なる。

多くの人間や人形の魂が、その重さに見向きもされないままに消えていったことだろう。

からくりからくさの、りかさんの最期を思い出した。彼女は…きっと幸せの中で燃えたのだと思えるようになった。

梨木作品の妖しさとあたたかさには、いつもやられてしまう。心にしみて、しばらくは動けない。

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2014年09月14日

Posted by ブクログ

私は人形が苦手です。
ぬいぐるみはまだマシですが。
そこに「居る」という気配がするのが怖いんですね。

人形には魂が宿るという話は洋の東西を問わず多いのではないでしょうか。この物語も日本人形のりかさんやお雛様たちが魂を持ち、その思いに主人公の女の子が巻き込まれる、というものです。
しかし、こうした人形ものにありがちなおどろおどろしさというのは比較的薄く、読みやすかったです。

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2013年05月17日

Posted by ブクログ

皆が持っているリカちゃん人形が欲しかったのに…おばあちゃんにほしいものを聞かれて答えたら、おばあちゃんは自分が大事にしているりかさんを欲しがっていると勘違い。でも、人形の気持ちがわかることで、ようこはりかさんと強くつながっていく。人形が愛されるために存在することを考えさせられる本だった。

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2012年10月01日

Posted by ブクログ

「リカちゃん人形がほしい!」って言ったら、おばあちゃんが市松人形の「りかさん」を送ってきた・・・。
うーん、それは予想の斜め上をいかれた。

そんな児童小説かと思いきや、どっこい大人が考えさせられるお話でした。
あんまり人に本を薦めたりはしないんだけど、これはお勧めの1冊だと思います。

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2010年05月03日

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『からくりからくさ』以前のお話。
ぜひ併せて読んでいただきたい。
児童書だといって侮るなかれ。

リカちゃん人形をおばあちゃんにおねだりしたようこであったが、
彼女の手元に届いたのは、市松人形の「りかさん」だった。
はじめはショックを隠しきれなかったようこも
次第にりかさんと心を通わすようになり、
同時に人形の声を聞くことができるようになった。
そしてようこは、自分や登美子の家に伝わる人形たちの深い歴史を旅する。

かつて私も、スリーピング・アイを持った
ジェニーちゃんという名のドールを持っていました。
だのに私は彼女がいつ我が家からいなくなったのかも忘れてしまった…。
もっと大切にすれば良かったな。
彼女は私の家に来れて幸せだったのだろうか。

自分の子供を嬲り殺したりする親がいるこの時代に
人間はもちろんのことモノにも歴史が、たくさんの物語があって
大切に守り愛していくことが大切なんだと伝えるこの本は
ものすごい戦いを挑んでいると思う。
でも、私はこの本を
たくさんの子供たちに(大人たちにも)読んで欲しいな。

あんまり強すぎる思いは、その人の形からはみだしちゃって、
   そばにいる気持ちの薄い人の形に移ることがある。それが人形。
歴史って裏にいろんな人の思いが地層のように積もっていくんだねぇ。
―― 動けば汐がかかるじゃろう。汐がかかれば切なかろう。
因縁も結局、縁だからね、なにがどうひるがえって
   見事な花を咲かすかわからないもの。

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2010年03月11日

Posted by ブクログ

文字の大きさからして児童向きだけど…字が小さいほうがいい人は文庫版をどうぞ。今度から人形を見る目が変わります。

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2009年10月04日

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「からくりからくさ」の主人公である蓉子がりかさんを祖母である麻から受け取り、子供ながらに人形の抱える念とその念に惑わされる人の業を学んでゆくという話である。漢字にルビが振ってあるところを見ると、対象にしているのは主人公である、ようこ、と同じ位の年頃、ようやく一人でバスに乗れるようになった位、の子供のようである。しかし、これは決して児童文学にありがちな一層のみお話しではなくて、むしろ「からくりからくさ」の番外編として多層的に読んで面白いものだと思う。「からくりからくさ」はミステリー風の異次元物語という調子の話で、本の中で一応の解決を見てはいるけれども、多くは語られていない謎も沢山あり、そのことがもやもやとしている向きにはこの本はオススメだと思う。じぶんも一つそんな胸のつかえ取れた。

りかさんが蓉子のところへ来た訳は「からくりからくさ」でも簡単に紹介されていたが、この物語はまさにその場面から始まる。蓉子もいまだひらがなの、ようこ、であり、祖母の麻も健在である。更に、「からくりからくさ」で最後の方に登場する幼なじみの登美子ちゃんも重要な役割を担って登場する。更には4人の女性の生い立ちに迫るエピソードも人形の語る話として出てくるに至って、先に「からくりからくさ」を読んだものは、内心にんまりする場面が多数あるだろう。しかし、そういう何かシリーズものにあるような、半分見えている楽屋落ちにだけ、この本の価値がある訳ではないことは間違い無い。

「からくりからくさ」では著者である梨木香歩の植物に対する念のようなものがとても強く、うっかりするとその念にしばれれて二進も三進もいかなくなるような感じに囚われがちだったが、この「りかさん」ではそんな念に囚われることもなく、梨木香歩の異次元世界にすんなり入りこめる。もしかしたら、想定読者層が若いせいなのかもしれないが、時々著者の内側から、作中の人物を通して現の世に表われて来ようとする植物の念が、やんわりと、ようこ、の視点で受け流され、読むものを縛りつけることがない。そこには「家守綺譚」で描かれたような、さらりと夢と現を行き来する粋のようなものがあって、読ませるという意味では力が抜けたような感じが、反って好感が持てる。唯一、物語の中でようこに絡みつく老桜の念がはっきりと登場する場面があったがこのエピソードは例外的で、この本の中で念を持っているのは、人と人形、だけとなっている。面白いのは、人形の念はりかさんや麻やようこによって次々と明るみに出て、解決を見るのに対し、人の念は一向に埒が明かないままである、ということだ。人には念もあるが業もあり、一筋縄では行かない様子が語るともなしに語られている。そんなところに梨木香歩の観察眼を感じて、感心してしまったりもする。

そもそも植物をじっくり観察するような眼を持った作者のことだから、動かないもの、あるいは動かないと一般には思われているようなものから気を感じる力には長けているのだろうと思う。もちろん、口数の決して多くないそのようなものたちと語る力があるのであるから、口を開くことを生業としているものから気を感じることなど容易である筈だと想像する。にも拘わらず、人形や植物、というところがもっぱらの対象であるのは、どこか口のついた存在から発せられる雑音のような念と業の強さに押されて、自ら戸を立てているということなのだろうか、と実は改めて思ったりもした。その対比は言ってみれば夢と現の対比と取れないこともなく、足の置き方として夢に偏りがちだったバランスをうまく現へ戻し、かつその絶妙の落とし所を見つけて結実したのが「家守綺譚」だったのだなあ、と「りかさん」を読んで納得した。つまり、そのバランスへ至る道のりの中間にこの「りかさん」があるように思えるのだ。という訳で、「からくりからくさ」を読んで少し構えることになっていた自分の梨木香歩に対する気持ちは、うまくこの本を読んでほぐすことができた。そのことが自分にとって一番の収穫だったように思う。

さて、この本で一つ胸のつかえが取れたと最初に書いた。それは人形の名前のことである。りかさんは、ようこがリカちゃん人形が欲しいと麻に言ったことでようこにもらわれることになったので、何となく、リカちゃん、が、りかさん、になったこと位のように思っていたのだが、考えて見れば、既に祖母の麻のところにいた時から、りか、と呼ばれていたのであり、リカちゃん人形とは関係のないことは気づいていて然るべきだった。ではその名前の由来、あるいは象徴するものはなんであろう。実は、それが理科ではないか、と思うに至ったのだ。麻が教師をしていた時に教えていたのは理科だった。であれば多分、りかとは理科のことであろう。しかし、りかは麻のところに来る前からりかだったのだろうか、それとも麻がりかと名前を付け直したのだろうか。あるいは、りか、という名前に惹かれて麻は理科を教えるような職業に付くようになったのだろうか。取れた筈のつかえはやはり残ったままなのかもしれない。

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2009年10月07日

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段飾りの雛人形が印象的な表紙。

主人公のようこは、自分と同世代くらいだろうか。
1970年前後に生まれた女の子が、小学生の頃のお話だ。

いわゆるリカちゃん人形が欲しかったのに、おばあちゃんがくれたのは、日本人形のりかさん。
ちょっとガッカリしたけれど、このりかさん、なんとようこと意思疎通ができるのだ。
雛祭りの頃、大きな蔵のある登美子ちゃんのおうちに、りかさんを連れて遊びに行くと、登美子ちゃんの段飾りの雛人形や古いお人形達の声が聞こえてくる…。
人形たちとその持ち主たちとの思い出が、人形の中に宿っている、ようこは、りかさんを通して人形たちの声を聞き、そこにある障りを解決していく。


りかさんをようこに託したおばあちゃんは、手を出さず、その子の力を信じて見守るところが、「西の魔女が死んだ」のおばあちゃんを思い起こさせる。

「こういうお話大好き」というレビューがおおいのだが、私は『人形モノ』がとても苦手なのだ。
小学生の頃、
美内すずえさんの「妖鬼妃伝」(1981年「なかよし」に連載)
や、
あしべゆうほさんの「悪魔ディモスの花嫁」シリーズ(プリンセスコミック)
を、怖いもの見たさで読んだトラウマが未だに残っていて、落ち着いて読めない。
あの絵柄が脳内に満ちて、背筋がゾクゾクしてしまう。

そして、「リカちゃん」じゃなく、「りかさん」を渡されて、ちょっとガッカリですむようこちゃん、いい子すぎやしませんか⁉︎
「リカちゃん」が売り切れで、誕生日に「ハルミちゃん」を渡され、かなりブーたれたかつての私からすると、とんでもなく良い子である…その時点で感情移入できず…。

それは置いといて。この作品、表紙の雰囲気とは違い、心あたたまるお話というわけではないと思うのだ。

かつては日米友好の証として日本に来た西洋人形が、太平洋戦争のせいで酷い仕打ちにあう物語もあったりするのだから…実際にこういう事があったのだろう。
戦争とは、人間の心をこうも変えてしまうのか…と
ゾクゾクの理由は、トラウマのせいだけではなかったはず。
2022.1.14

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2022年01月14日

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再読。
思えば、私が読んだ梨木香歩2作目。そして、確実に梨木ファンになったきっかけの本でした。ああ、出会えてよかった。

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2018年12月31日

Posted by ブクログ

ようこは自分の部屋に戻り、箱を見た。お人形のおいてあった下には、着替えが幾組かたたんであり、さらにその下のほうにもう一つ、箱のようなものが入っている。開けると、和紙にくるまれた、小さな食器がいくつか、出てきた。「説明書」と書かれた封筒も出てきた。中には便せんに、おばあちゃんの字で、つぎのようなことが書いてあった。『ようこちゃん、りかは縁あって、ようこちゃんにもらわれることになりました。りかは、元の持ち主の私がいうのもなんですが、とてもいいお人形です。それはりかの今までの持ち主たちが、りかを大事に慈しんできたからです。ようこちゃんにも、りかを幸せにしてあげる責任があります。』…人形を幸せにする?…どういうことだろう、ってようこは思った。どういうふうに?

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2018年07月17日

Posted by ブクログ

蓉子と「りかさん」との出会いと不思議な物語。再読。
「からくりからくさ」を先に読んでいたら、いろんな伏線がちりばめられているのがわかり、こうきたか!と驚いた。

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2011年06月07日

Posted by ブクログ

リカちゃん人形がほしかった女の子におばあちゃんがくれたのは
りかさんという日本人形で
世話をするうちに人形の声がきこえたり
幽霊が見えたりするようになる

アビゲイルの話は泣ける‥

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2011年01月17日

Posted by ブクログ

そういえば、本当に幼い頃、お友達の家で「お雛の会」が一度だけあった事を思い出した。綺麗なんだけど、大きな和室に飾られている大きなお雛さまが怖かった事も思い出した。お人形遊びが大好きだった私たち。「人形のほんとうの使命は生きている人間の、強すぎる気持ちをとことん整理してあげることにある。・・・」今まで遊んできた人形たちに感謝だわ。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

・「からくりからくさ」にも登場するりかさんとようこの物語。微妙なリンクがたまらなくうまい。マーガレットとか。・喋る人形というと半ばホラーですが、やさしい雰囲気がなんとも言えない。

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2009年10月07日

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