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Posted by ブクログ 2022年01月16日
小説の舞台である「遅島」は実在する島ではないけど、文中では、さまざまな植物の名前、地形や地名などの描写が細かく、まるで本当に存在する島のようで、またその空気感、雰囲気が心地良かった。 ハッピーエンドとは言えないものの、明け方を思い出すときのような、どこか清々しさを感じる読後感と余韻。
朗読サイトでこの本を知り購入。いつもながら自然描写が秀逸で、自然との共生の有様に思いを馳せる。古より心の拠り所としての民間信仰・仏教伝来・帰依、修験道等々様々な要因で各地でそれぞれの栄枯盛衰を経ているよう・・明治政府の神仏分離令はこの島でも容赦なく廃仏毀釈
僧籍剝奪還俗その理不尽な状況も捉えてい...続きを読むる。何もかも風化しながら現代まで過疎化が進み・・これまた日本各地で見られる観光地として開発されて幾ばくかの経済基盤となっていく。それぞれの意識焦点を息子との対話の中で反映ー海うそとは蜃気楼とのことーすべては幻のようでいて現世に受け継がれる確かなものは海うそだけなのか、作中の記述「喪失とは私のなかに降りつもる時間が増えていることだった」現実といかように折り合っていくかの永遠のテーマ
それにしても表紙見開きページ地図余りに丁寧な描き方、私は必死になって検索した。遅島え~っと読み方は???記載されている地名検索断念し本文を読む。ハマカンゾウ、カノコユリ自生、観光地として開発などで、もしかしてモデルは甑島?今は3架橋ある・・今更ながら本当に愚鈍な私!
Posted by ブクログ 2021年09月28日
若い時に人文地理学の調査で遅島に訪れる。そこは自然豊かで温かい人の優しさで溢れていた。調査は中途半端で終わり長い年月を経て息子が遅島でリゾート開発に携わっている事を聴き50年振りに訪れる。
そこはかつての自然豊かな島ではなくなり人の手がふんだんに加えられ調査を終わらせなかった自分に悲観するがかつてみ...続きを読むえた海うそが今も健在で胸を打たれる。
淡々とした語り口は読んでいて心地よく西の魔女同様素敵な話。
Posted by ブクログ 2021年04月20日
梨木さんの世界観。
あまりに詳細な地図・場所の表現から、実際にある島かと思っていたけれど、実在はしない「遅島」。
そこに住む人、動物、植物、そして水、風、海うそなどの自然。
この世とあの世の境界が分らなくなるようなモノミミや洞窟の存在。
静かに流れる時間が愛おしい。
そして50年後の世界。
家族...続きを読むとの時間。
色即是空、空即是色の世界。
最後に出てくる木切れに書かれてあった「吾都」。
ゾクゾクしました。
私が一番気になったのはカモシカの存在でした。
切ない・・
この本もずっと手元に置いて、何度でも読み返したいと思います。
Posted by ブクログ 2018年12月01日
作品を通して伝わってくる、なんともいえないもの哀しさが心地良い作品であった。
人生に悲観している時に読めば、一文一句が体に染み渡るように感ぜるだろう。
疲れている人、何かを失いその拠り所を求めている人などにおすすめしたい。
Posted by ブクログ 2018年08月26日
ベストセラー小説「西の魔女が死んだ」で有名な梨木香歩の作品。
梨木香歩の作品は、「西の魔女が死んだ」くらいしか読んだことがなかったので、作風の違いにすごく驚いた。
同時に作者の作家のとしての力量が卓越していることを思い知らされた。
久しぶりに自分の好みに合った美しく心に残る小説に出合ったと素直に...続きを読む喜べた作品。
人により好みが分かれる作品だと思うが、この小説の醸し出すノスタルジーと詩情あふれる美しさは格別である。
読み終わった後、本当に心地よい余韻に浸ることができた。
戦前、人文地理学を研究していた主人公がフィールドワークの為訪れた南九州の遅島での体験を綴ったもの。
舞台となる島は、作者の創作であるそうだが恐ろしくリアリティーがあり、実在するかのような説得力がある。
その島はかつて修験道が盛んな土地であったが、明治維新後の廃仏毀釈により、その名残が見いだせるだけになっている。
その痕跡を主人公が辿っていく話であるが、普通の小説のようにドラマチックな展開はなくただただ淡々と話が進む。
かといって退屈かと言えばそうではない。
なんというか記述されている描写の全てにその歴史というか、人々の積み重ねてきた生活とか、人の世の無常さを感じられた。
書いてある文章の後ろにある詩情を読者に感じさせる稀有な小説じゃないかと思った。
戦後の恐らくバブル時代と思われる時代に再度その島を訪れる機会を主人公は得るが、そのとき彼が感じた感情を恐らく読者も感じるだろう。
巡り合ってよかったと感じれる作品は少ないが、私にとってこの作品は明らかにその一冊である。
Posted by ブクログ 2018年08月11日
再読。この地を再訪した気分になり、1回目よりもすんなりと物語に入り込めた。懐かしい自然を破壊してのリゾート開発進行中のような結末にも、自分の老いや社会の変化をどのように受け止めていくことができるのかという示唆に富んでいた。やっぱり最終章は泣けた。
Posted by ブクログ 2018年07月04日
この文体が好きだ。断然好きなのだ。
「f植物園の巣穴」や「村田エフェンディ滞土禄」や「家守奇譚」および「冬虫夏草」や。
凄まじい喪失感、といった手早い解説的な言葉を地の文に入れるのはどうかなー、と最初は思っていた。
が、とはいえ作中でも明言されている通り、元来お喋りではなく「独白の人」なのだから、ま...続きを読むあいいか。
中盤からわかりはじめるが、島の調査がそのまま内面をなぞる旅=「修行」になっている。
と、くれば、終盤に向けひたひたと感動が迫りくるのは必須。
さらにはボーナストラック的に50年後を記すことで、昭和後期の過剰成長(中上健次や立松和平を連想)に接続され、平成の現在への連続性をも示唆する。
もうこの荒業と細やかさの混合にくらくらしてしまうよ。
また、地名へのこだわりが、終盤に報われるときの、静かな感動。解放感すら覚えるほどに。
最後に、《喪失とは、私のなかに降り積もる時間が、増えていくことなのだった》と。
失うことと獲ることが同質であるような感覚の発見。これは稀有だ。
Posted by ブクログ 2018年06月17日
自然や地誌的な事柄にとても造詣が深い梨木さんです。このお話を読みやはりさすがだと満足して読み終えました。
主人公の男子大学生、秋野は人文地理学を学んでおり、夏休みを利用して日本列島の南寄りに位置する、遅島という島の現地調査に回る。時代はまだ戦争が始まる前のことです。亡くなった研究所の主任教授の残した...続きを読む調査報告書の内容が、調査途中であったことから、仕事の補完ばかりではなく、古代から修験道のために開かれた島の地名に、その時彼の心が動いたからでした。許嫁を亡くし、父母も亡くしたばかりの秋野でした。
本のページの最初に島の地図も添えてあり調査に回った地名とともに、動植物や、昆虫、建て物や民俗や伝承の世界の単語が、章ごとに見出しになっています。島の豊かな生態系や地形の不思議、海うそとは何か…この島に住む人や案内役、島で出逢った人々の証言から島の辿った歴史が少しずつ映し出されていきます。明治の初め、日本の近代化に伴う政策から無惨に壊されていった寺院や仏像、廃仏棄釈の嵐にこの島も否応なく巻き込まれていったのでした。豊かな自然の風景とは裏腹な様々な暴挙に、人々の営みが根こそぎ奪われていったのです。
そこにある土地の記憶は生と死を刻み、多くの先祖の労苦を土台に連綿と今に生きる私たち。昨年、父を亡くし今更ながら自分のルーツを知る欲求に駆られた私には、この物語は切実に迫ってきました。
50年後に子どもに導かれ、再びかの島を訪れた秋野は、島の変わりように衝撃を受けながらもその胸中にある感慨は、老年期にあるものの恩寵とあり、…喪失とは、私の中にある降り積もる時間が、増えていくこと…とあるのにとても素晴らしい発見だと思うのでした。
Posted by ブクログ 2018年06月10日
読み終えたとき、同著者によるエッセイ「エストニア紀行」のあるくだりが頭を抜けていった。それは、橋、に関するエピソードだったのだが、本書を味わってから連想されて改めて、ああ、梨木さんにあったのはこの虚脱感だったのか、と思い遣られ、瞑目した。
小説というのは、読み手へ、読み手が現実には体験しない事件...続きを読むや衝撃を受け取ってもらうための、ある種「祈り」の芸術である、という。この本はしかし、それを強く聯想させながらも、読書による疑似体験を自分のそれに引き付けて掘り起こさせる痛みをも覚えさせる一冊である。
作中の人物、山根氏の語る「廃仏毀釈」が、現代、われわれが知らず非神秘的なものたちへたのむことへも通じて、とても、痛い。
そしてようよう間違いに気づいたとしても、かりに、「救い」が、われわれに対してあらわれたように感じられたとしても、それは破壊されたものにはあらわれない。
かれらは黙って朽ち果てるばかりである。
Posted by ブクログ 2023年04月05日
祖父や父が亡くなってから何年経ってもたびたび感じる切なさは何なのだろうと考える。それは、あのとき聞いた思い出も、そこに祖父と父がいて色んなことを感じ考え生きていたという事実も、私が忘れたときに消えてなかったことになってしまうのだという焦りと寂しさなんだと思う。
その寂しさは、大学の民俗学実習で僭越な...続きを読むがらも感じた、「この習俗、伝承は今私が記録しなければいつか忘れ去られてしまうのだ」という危機感に似ている。
でも考えてみれば、人も歴史も生まれては変わって消えての繰り返し。寂しいけれど、そんなに切羽詰まって寂しがることはないんだよと慰められている気がした。
Posted by ブクログ 2022年12月04日
昭和の初め、人文地理学者の秋野は南九州の遅島を訪れる。修験道の霊山があり雪も降るこの島は自然豊かで、彼は惹きつけられていく。
戦争を挟み五十年後、秋野は再び島を訪れる縁ができるが――
神仏分離に起こる廃仏毀釈、失われる営み、過疎。
学術的に判別され世に知らしめられたものが遺産となる。だとすると……...続きを読む
人知れず消えていった多くの文化を思うと胸が締め付けられる。
また時を経て読み直したい一冊。
Posted by ブクログ 2022年10月29日
産まれた時から海無し県から出たことがない私でも郷愁を誘われるような心持ちに。
でも感覚としてはやっぱり息子寄りかなぁ。
私だったら岩の謂われとか息子に喋っちゃうし、そしたら恋愛スポットとして活用!なんて流れになる気がする(笑。
あと論文まで行かなくても手記として島のことを書いて残したいと思っちゃうだ...続きを読むろうな。
Posted by ブクログ 2022年05月22日
渋い。深く味わいのある作品。
昭和初期に私が訪れた遅島は、もともとユタやノロに似た「モノミミ」のような民間信仰のある修験道の島で、寺なども多くあったが、廃仏毀釈の流れの中でモノミミはいなくなり、寺は破壊し尽くされる。その中で還俗させられた善照が「海うそ」=蜃気楼を見た場所で、私もまた海うそを見る。そ...続きを読むれと50年後に島が再開発され、元の姿を留めなくなった中で、同じ場所で海うそを見ることで、失われたものを嘆くだけの悲しみではなく、万物が移り変わってもそれはそういうものであって、あるものはある、みたいな悟りとしての海うそ、というのを感じた。
許嫁に自死され、両親を相次いで亡くした私が島で感じた色即是空。この世で生きるための足がかりのため、新しく恋をしなさいと島人は言う。全てがどうしようもなく移り変わっていく中で、あるがままを受け入れて生きていくための足がかりは永遠の愛、なんてことではなくて、実際主人公はそれほど劇的なものを妻に持っているわけではなくて、あるがままを受け入れてそこにある、ということが足がかりなのかなと思った。二つ家がただ寄り添ってそこに存在するように、次男曰く「慢性鬱」の私の隣にただ付かず離れずのポジティブな妻がいるように。
Posted by ブクログ 2021年12月09日
一行目から 島の温度とかにおいとかが感じられる
標高によって植物や虫や鳥 動物の種類が変わって
それぞれの生活があるんだなぁ~って…感じられるなんて素敵すぎます!
しかし、五十年たって変わってしまった島…
変わらされてしまった島…
泣きそうでした でも、生きていくって変わっていくことなのかもしれない...続きを読むとおもいました。
Posted by ブクログ 2020年05月21日
昔訪れた場所に再訪した時、こんな感じだったろうか?という思いになることはないでしょうか?自分の中でものすごく強い印象を抱いていて楽しみにしていた場合など、あれ?と落差の激しさに戸惑うことがあります。一方で思いがけず、自分の記憶にある景色が人の力で大きく変えられていた場合、つまり大規模な開発が行われて...続きを読む、記憶にある美しい山が赤茶けた肌を晒し、味のあった山道がアスファルトに変わっていたり、そうした場合、再訪したこと自体を後悔することもあるかもしれません。一方で視点を変えればそこに、その地に暮らす人々からすれば、自らの現在の生活を豊かにするために、便利に変えていきたいという思いが当然にあるはずです。その地に暮らす者でない他の土地の人間の中にある想い出を美しく保つためだけに、変わらないことが選択されることなどないのかもしれません。
『山の端から十三夜の月が上がっていた。月はしっとりと深い群青の夜空の、その一角のみを白くおぼろに霞めて、出で来た山の黒々とした稜線から下をひときわ病み濃くしていた』という、冒頭からのあまりにも美しい描写とともに一気にこの世界に連れて行ってくれるように物語は始まります。『私は文学部地理学科に所属する。大学の夏期休暇を利用して、現地調査でこの島を回っていた』というK大学の秋野。『一昨年、許嫁を亡くし、また昨年、相次いで親を亡くしていた』という境遇の中、『研究室の主任教授が亡くなった。研究室を整理しているうち、発表されていない調査報告書を見つけ』その仕事を補完したいという気持ちから興味を抱いたのが『緯度的には南九州とほぼ同等、本土側を見つめたタツノオトシゴのような形状で、南北を貫いて背骨のように山脈が連なる』という『遅島』でした。『古代、修験道のために開かれた島であった。明治初年まで、島には大寺院が存在していた』のが『廃仏毀釈でほとんど跡形もなくなった。その遺構に惹かれるものがあってこの島にやってきた』という秋野。この物語はそんな秋野が島の人々と交流を深め、島の遺構を巡ることで、島の現在と過去を見つめながら進んでいきます。
この作品の舞台となる『遅島』、モデルはあるのでしょうが、あくまで梨木さんが作り出した架空の島です。物語の前半はこの島を旅する一人の青年の書いた紀行文を読むように進みます。そして、植物に関する記載が紀行文でさえありえないと思えるレベルで登場します。『サルトリイバラ、ヤブツバキ、ハマヒサカキ、カナグギノキ、ハイノキ、オニヤブソテツ、ハマカンゾウ』という植物の名前、あなたは知っているものがあるでしょうか。でも梨木さんは例えばヤブツバキについて『丸々とした実をつけている。これが胡桃か何かのように食えるものであったらどれほどいいか』と言った言葉を付け加えます。知らなかった植物がなんだか身近になったような不思議な感覚です。一方で動物の表現も絶妙です。秋野が山の中で遭遇した動物。目と目があった瞬間に秋野が感じたところを『奴らはこちらを馬鹿にしているようなけたたましさがある』とヤギを表現するのに対して、『曰くいい難い神秘的な気配をまとっている。じっと見つめてくる瞳に哀愁が漂っている』とカモシカを表現します。そしてこのカモシカへの見方が伏線として結末の余韻をさらに味わい深いものにしてくれます。
作品は、前半の紀行文のような展開の後、後半4分の一は〈五十年の後〉という章題そのままに『それから戦争を跨いで五十年が経った』後の秋野が描かれていきます。この五十年の間には第二次世界大戦があり、その後の戦後復興を経て各地で観光地開発が盛んに行われます。『遅島』も当然に無縁ではありません。八十歳を超えた秋野が再び島を訪れますが、読んでいて、前半部分と、この章から受ける印象のあまりの大きな落差に衝撃を受けました。まるで帰ってきた浦島太郎のような心持ちと説明すれば、その感覚がなんとなくは分かっていただけるのではないかと思います。その地に暮らすものではない老いた秋野の目に映るもの。変わるもの、変わらないもの、そして変わっていないはずなのに変わったように感じるもの。この章ではそれが極めて印象的に描写されていきます。『セミの鳴き声は五十年前と変わらないのだろうか。何やら勢いが足りないように思うのはこちらの思い込みか』という表現には、何か昔のままにあるものを求め、でもそれであっても自信の持てない秋野の揺らぐ心情が見事に現れていると思いました。
『私の訴えに共感し頷くものは、誰もいない。何もない。風が木々を揺らす音だけが、空しく、その言葉の真の意味において、空しく響いているだけだった』という年老いた秋野。圧倒的な余韻が襲ってくる読後に、作品中では『蜃気楼』のことと説明されていた、この作品のタイトルともなった『海うそ』という言葉が浮かびます。それが本来はかないはずの存在であるが故に、逆に、深く、遠く、そして永遠へと人の心に残り続ける存在なんだと印象深く感じました。
なんて香り高いんだろう、なんて味わい深いんだろう、読後のなんとも言えない余韻に浸りながらそんなことを思った作品でした。
Posted by ブクログ 2020年05月18日
とても静かな世界観
生い茂る樹木 飛び交う野鳥
時折 突然現れる野生動物
足元の草 温度 湿度 風
少し空気は重いけれど
どろりとしたものはなく
巻頭の地図を何度も見たり
分からない植物をGoogleセンセに聞いてみたり
そんなことは 久しぶりで
新鮮な感じがして
そんな部分でも、楽しめた
...続きを読む
変わっていくことは 避けられない
一概に 悪いとも言えない
いいか悪いか、やってみなければ分からない
ということも たくさんだ
だけど
すっかり島が変わってしまった
残念だった
当時の面影すら残さずに…
せめて、もう少しだけでも…
そう 思った
うっそうと木々が生い茂る
湿った森を 歩きたくなった
Posted by ブクログ 2020年09月07日
時間軸2つからなる物語
むかしのままの手の入らない自然がいいのか、人が自然を楽しめるようにと計画される開発もありなのか
まさに今、家の近くの川沿いの公園化が行われていて、重機が入り、四季の移り変わりを見てきた木がある日行ってみると切られていたりする
胸がギュッと痛くなるが、誰も入れないよりも、自...続きを読む然に近づける場所があって、観察できること、季節を感じる機会を増やして、知ることで守る気持ちを持てるようにすることはいいことなんだろうか、
と思い直すようにしている
まっさらの原生林ではなく、何らかの形で人が作った場所なら尚更なこと、自分の感傷で物事を考えてはいけないのかという葛藤を日々感じている
自然と記憶の中の場面とどう折り合いをつけていくか
その内自分自身もいずれこの世から消えていく自然物の一つ
物語の中に自分を置いて考えてみる
Posted by ブクログ 2019年10月28日
なんか・・・良さそげな内容なんだけど、文章が頭に入ってこないもどかしさ。
情景がストンと浮かんでこないんだよね。
想像力の無さかな。
たまにとても心の琴線に触れる言い回しがあったり。
いろいろと思いを馳せたくなる。
うーーん。なんだかもやもや。
Posted by ブクログ 2019年08月03日
この人の本には、毎回毎回、いつまでも読んでいたいと思わせられるのが不思議。
静かな語りを心地よく味わっていると、終盤、がらっと空気が変わるところが『村田エフェンディ滞土録』的。
Posted by ブクログ 2019年02月08日
せつない。
上手く言葉にできないのだけど、寂しかった。
本を開くと、遅島の美しい風景、清らかな空気が飛び出してくるようだった。
不思議な感覚。
もう一度読みたいな。
Posted by ブクログ 2018年08月21日
後悔先に立たず。
手遅れというものがある。
日常の中で「私でなくても他の人が...」と思ってしまうことはあるけれど、そこで「他の人がするかもしれないが、私も」と億劫がらずに為すことが、後の後悔を生まない為になる。
Posted by ブクログ 2018年08月04日
梨木香歩の海うそを読みました。
昭和初期、秋野は大学の夏季休暇を利用して南九州に位置する遅島の調査を行っていました。
平家の落人が住み着いたという伝説があり、明治時代の廃仏毀釈により多くの寺院が壊されてしまった島に住む人たちの、静かで力強い姿が描かれています。
秋野自身も許嫁と両親を相次いで亡く...続きを読むしたばかりで、遅島の変化に富んだ自然のたたずまいに癒やされるのでした。
そしてその50年後、本土から遅島へ連絡橋がかかったという情報を得て秋野は再度遅島を訪れるのですが、秋野が記憶していた美しい遅島の姿は乱開発により失われてしまっていたのでした。
静謐な前半部分と、それが失われてしまった50年後の世界の対照が心に残る物語でした。
Posted by ブクログ 2018年07月08日
物語は静かに進む。梨木さん独特の言葉の海に浸って読み進めた。ところが後半で場面が変わると、文体は変わり、物語も一変する。まるで前段までが夢の話であったかのように。
これは哀しい話ではあるけれど、主人公は最終的に別の境地に至る。いつか、人生の次のステージにでも、もう一度読み返してみたい一冊。
Posted by ブクログ 2018年06月16日
これまでに読んだことのない話。
始めの方で、あれ?固かった?読みたいのと違ったかな?と思ったけど、植生や伝承に興味がありどんどん引き込まれていった。地図をひっくり返しながら読み、一緒に歩いている心持ちになり、戻って来た時には少し不思議な旅のゴールの達成感と安堵があった。
そして、数々の喪失を見て…諸...続きを読む行無常というのではとらえきれない、色即是空。
50年でもこんなに変わり果てるのだ。秋野の見た果てし無い歳月はどんなものであったろう。
いつかもう一度読み返すことにします。
Posted by ブクログ 2023年06月09日
海うそとは、海の幻、蜃気楼のこと。秋野は若い頃、九州の遅島、自然豊かな島で修験道だった道を辿った。海、山、水、空、自然の息吹を感じながら、地霊との対話や交感を。島の植物や生き物、海の魚などが生き生きと描かれている。梨木香歩「海うそ」、2018.4発行。50年後に訪れた秋野が見たものは、観光地化によ...続きを読むって変わり果てていく島の姿。人間の織りなす文化、風習、歴史はどこに向かうのか・・・。そんなことを考えさせられました。
Posted by ブクログ 2022年01月13日
「喪失」「再生」「修験道」「島」
喪失を抱えた私は、廃仏毀釈により、元々の信仰を喪失した島を巡る。
そして、50年後に再度島を訪れ、喪失と向き合う。
前半は、「私」の旅の理由は朧げにしか分からないものの、この旅は「私」にとって特別な意味があることなのだろうなと思いながら読み進めました。
自然や信...続きを読む仰の残骸から、独特の神秘的な雰囲気を感じました。
一転し、後半は、その慣れ親しんだ情景や交流した人々との繋がりが失われている様に、喪失感を感じました。
「私」は最後、喪失を超え、前向きになりますが、自分は島の雰囲気に入り込みすぎていたのか、最後まで喪失感から抜け出せず、もの悲しかったです。
読み手にも喪失感を与える描写、素晴らしいです。
深い主題の作品なので、読み直したら、気づくこともありそうです。
そして、「私」の許嫁には何があったのか。
Posted by ブクログ 2020年07月02日
50年前に既に風化し忘れ去られようとしている土地や言い伝えが、50年後、そこに居た人と共に蹂躙され壊され葬られ、それでもなお少しの片鱗が物語を喪ったまま散りばめられている。
変わらないのは海うそだけ。
そして不思議な、人との繋がり。
「喪失とは、私の中に降り積もる時間が、増えていくことなのだった」...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年05月04日
主人公秋野がフィールドワークする架空の地 遅島。
遅島では多様な植物や動物、かつて修験道だった名残を目にすることができ、島の所々で生を感じる。その五十年後、再び遅島を訪れた秋野は変わってしまった島の姿を目の当たりにする。山は削られ、道が切り開かれ、かつてあった動植物は姿を消していた。ここは遅島ではな...続きを読むい。そう感じた秋野だったが、
五十年前に見た海うそ(蜃気楼)は変わることなく、見ることができるのだった。
五十年前も後も遅島は遅島である。
その姿や人々の暮らしは変化すれど。
失われたものもあれば、得るものもある。
自分はそんな変わりゆく森羅万象の中にほんの少しだけ腰掛けているにすぎない。そんな気がした。
少し読むのが難しい小説だった。うまく内容を理解できてないかもしれないが、自分なりにこう解釈してみる。
少なくとも島の姿が変わって悲しい、保護するべきだ!そういうことを訴えてはいないのだなと。