梨木香歩のレビュー一覧
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ようこは自分の部屋に戻り、箱を見た。お人形のおいてあった下には、着替えが幾組かたたんであり、さらにその下のほうにもう一つ、箱のようなものが入っている。開けると、和紙にくるまれた、小さな食器がいくつか、出てきた。「説明書」と書かれた封筒も出てきた。中には便せんに、おばあちゃんの字で、つぎのようなことが書いてあった。『ようこちゃん、りかは縁あって、ようこちゃんにもらわれることになりました。りかは、元の持ち主の私がいうのもなんですが、とてもいいお人形です。それはりかの今までの持ち主たちが、りかを大事に慈しんできたからです。ようこちゃんにも、りかを幸せにしてあげる責任があります。』…人形を幸せにする?
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このエッセイが掲載されたのが2007年から2009年。
10年近くの月日が経って読むエッセイ集なのに古臭さが無い内容でした。
しかし、すべてが新しく新鮮というわけでなく、「変わらないもの」と「変わった(変わってしまった)もの」があり、「変わらないもの」は「変わらないもの」として、生き方のちょっとした参考になったり、日々引っかかっていた小さな事柄とからんで賛同できたり、「変わったもの」もただ古いわけじゃない感覚があったりと、劇的な何かがある内容じゃないけれど、穏やかな気分になれる一冊でした。
植物の話や日常の風景(愛犬との共闘は笑ってしまった……)、虫や動物の生態・本能、人としての在り方・考え方 -
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旅には目的地を楽しむことと
旅のフィーリングを楽しむこと、大きく2つある。
本書は後者の気分が色濃く出ている。
だから観光案内を期待して読むと
少し肩すかし感があるとは思う。
ただ、できるだけ誠実に旅行者として
そこにある土地の目線に寄り添おうという
筆使いは好感が持てる。
また、これは辺境のための文学としても描かれている。
辺境についての、でも辺境による、でもなく、
旅行者としての資格で辺境に捧げられている。
作者としての姿勢であり、優しい人柄を感じもするが、
言葉は本来的にもっと暴力的なものだ。
その暴力を極力発現させないようにと気をくばっていることは分かる。
だが、そのような意識 -
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程よい距離感。
梨木さんの文章は主張しない。
何かに憤慨しても心動かされても
それをそれとして
まるで自分のことも含めて
傍らで観察しているような気配。
何ものにも染まず染まらず。
彼女の小説が放つ強い存在感の正体は
彼女のエッセイ集を読み重ねているうちに
少しずつ分かり始めたような気がする。
ご自分の中に生まれる感情や思いを
ごく自然にこぼれ落ちる言葉に
何の違和感もなく託しているのだろう。
不自然も気負いも恣意もない
ただ言葉にしたいだけのこと。
そこに特定のベクトルが あらかじめ
用意されてからの言葉ではないので
無色透明の清々しさがあるのだろう。
だから 私たち読み手が
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Posted by ブクログ
ネタバレ前半と後半の印象が違う。
怨念や呪いのような絡みつく繋がりは、それだけでなく暖めも育てもする、ような複雑な成り立ちにそういうものかも、と思う。
最終的な結末が意外であり、物語的にはそうでなくては成らない決められていた結末にもみえる。
前半が好みで、後半はちょっと苦手。
次に読んだときは印象がかわるかもしれない。
再読。
最終的なまとめかたが結局男女だから子孫を残すというのが、新鮮さが足りないと思ってしまったのかも。強引さを感じたのか。
二人の性格が、少し世間と外れているのだから、せっかくだから新しい形の子孫繁栄?がみたかったのかも。