梨木香歩のレビュー一覧

  • ほんとうのリーダーのみつけかた 増補版

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    ことばを使う時、実を伴って使わないと、ことばは力を失い空疎なものになるということに強く共感した。金子みすずの詩の「みんなちがってみんないい」について、本当に?みんな一緒で安心が日本なんじゃないの?というのは、これまで感じていた違和感を言語化されたようで、胸を打たれた。元々は、長老のような人が子供たちに向ける温かな眼差しのような言葉なのにというところに、梨木香歩さんの優しさを感じた。

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    2022年10月04日
  • 椿宿の辺りに

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    「f植物園の巣穴」の子孫たちの話。自分はこっちのほうが好き。

    読んでて思ったのは、前作がドラクエⅠで本作はⅡっぽい。Ⅲ相当の話もできそう。

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    2022年09月17日
  • 裏庭(新潮文庫)

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    昔は不思議な話だな…で終わってたけど、今読み返すと心の傷を包んでくれるんだろうなと思い返す本。不思議で寂しくて暖かい。スピッツのロビンソンがずっと流れてる。Tell me. I’ll tell you.

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    2022年09月10日
  • f 植物園の巣穴

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    再読。
    『椿宿の辺りに』を再読したので、こちらも。
    背景がわかるだけに
    道彦との出会いは胸が熱くなりました。

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    2022年09月10日
  • f 植物園の巣穴

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    心がザワザワしているときに読んで、しんしんと鎮まってきた本。

    異界譚、夢の中のような話。
    どこから夢でどこから現実なのか、読み終わって、あああそこからか、と思う。
    異界の描き方の、イメージや、夢の中で論理的ではなくても本人は論理的だと思っているのだろう思考の描き方が秀逸で、私も眠って夢を見ているようだった。
    この表現力と文章には憧れる。

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    2022年08月26日
  • ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

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    原題 SOLD FOR A FARTHING

    CLARENCE
    THE FAMOUS AND
    BELOVED SPARROW
    BORN JULY 1ST 1940
    DIED AUGUST 23TH 1952

    クレア・キップスとクラレンスのハートフルな12年。人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯。ほんとに、副題の通り。もう奇跡ですね。
    クラレンスが小さな本を見ている写真が好きです。
    開いたページが「二羽のスズメ」(マタイ伝)という偶然も。

    シジュウカラが会話することは日本の動物行動学者が解明しています。
    チリリリリ(おなかがすいたよ)
    ツピー(そばにいるよ)
    きっと心を通わせれ

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    2022年08月21日
  • 椿宿の辺りに

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    化粧品会社の皮膚科学研究員に務める山幸彦は、耐え難い「三十肩」と、その痛みにより誘発された鬱に悩まされていた。そんな折、従妹の海幸比子も原因不明の痛みに苦しんでいることを知る。海幸比子の薦めで訪れた鍼灸師に促されるまま、山幸彦は祖先が住んできた椿宿の屋敷を訪れる。

    本書は梨木さん自身が四十肩の痛みに苦しんだことから生まれたという。痛みというのは、とかく厄介なものである。私もこの数年、左顎から首にかけての圧痛が消えないでいる。精密検査も受けたが結局原因が分からず、まあ悪い病気ではなさそうなので付き合っていくしかないかと諦観している。ここに至るまで、それこそ色んなことを試した。そんな実体験もあっ

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    2022年08月21日
  • エストニア紀行―森の苔・庭の木漏れ日・海の葦―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    酸いも甘いも包み隠さず書かれたエッセイ。
    鳥を見たとか鹿を見たとかについつい羨ましがっちゃう梨木さんがかわいい。

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    2022年08月15日
  • 裏庭(新潮文庫)

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    双子の弟、純を幼い頃に無くした少女照美が鏡の中にある裏庭の世界に旅立ち、成長して戻ってくる物語。
    裏庭を旅する中で少女は数多くの傷をその身に負う。しかし、その傷こそが自分を自分たらしめるものであり、傷を負いながら人は成長していくということを、少女は身をもって実感する。

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    2022年08月12日
  • 椿宿の辺りに

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    ネタバレ

    親の因果が子に報い。的な。
    f植物園の主人公はしょもない人だったけれど、やらかしがひ孫まで響いてるわーな椿宿でした。
    ここ十年以上、あちこちで水害が増えているので治水にも思いを馳せたり。
    やっぱりどこかいじっちゃいけないところをいじってきているんではないかとか。
    それと主人公が祖母の余命を告げられた時に、もっと病院へ行って何かしてあげられるんじゃないかっていう介護士さんとのやりとりに、思うこともあったり。

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    2022年08月09日
  • f 植物園の巣穴

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    ネタバレ

    久々に再読。梨木さんのたくさんの作品の中でも「家守綺譚」系統の植物と不思議が絡むお話。
    最初は話の流れも途切れがちで次々に荒唐無稽な展開が続くと思われる中で、徐々に歯に空いた穴、木のうろ、白木蓮を失った後の穴…植物園職員である主人公の心に空いた穴の中をのぞきこみ、失われたものを自ら発見し、よどんでしまった「川」を流れるようにする、という芯が分かるようになる。
    「ここは、過去と現在がみんないっしょくたに詰まっているのだ」理屈の通じない世界で、これが自分の心の問題であることをやがて主人公は悟るのだ。
    人生で抱え込んできた淀みに対して、はっきりした問題を現実的に解決するとかではなく、ただあの時の気持

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    2022年07月30日
  • りかさん(新潮文庫)

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    中学の頃に読んだ西の魔女が大好きで、12.3年ほど経った今、自然を感じられる本を読みたい気分になり、西の魔女を思い出して梨木さんの本を手に取った。

    本書は、自然を感じる要素は多くなかったが、祖母と孫、りかさんを中心とした人形たちが織りなす純粋で不思議なファンタジーな世界観に魅了されなた。

    これまで読んだ梨木さんの本に出てくるおばあちゃんは自然で、まっすぐで、強くて、聡明で、しなかやで、自分もこんな年の取り方をしたいと思わされる。

    みなさん集合して住んだらどんな感じになるんだろうか、、

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    2022年07月24日
  • ほんとうのリーダーのみつけかた 増補版

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    ネタバレ

    「君たちはどう生きるか」という問いへの筆者なりの一つの答え。

    これまで何も考えず、同調圧力に従い生きてきた気がする。
    尊敬できるリーダーを探し求め、やっぱりちょっと違うなぁ、とがっかりしたり。
    思ってもないことを言って、自己嫌悪に陥ったりすることもたくさんある。
    「自分の中の、埋もれているリーダーを掘り起こす」作業をしたことがなかった。

    自分的基準や批判精神を持って、自分にいいかっこしながら生きていく。劣位にある自分も受け止めていく。そうして、「自分という群れ」のリーダーとしての振る舞いを学び、世界への愛と祝福の想いを抱きながら進んで行けたら。引っかかったことに勇気を持って声をあげることも

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    2022年07月24日
  • f 植物園の巣穴

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    設定が大正時代あたりだということに気づいてからはすうと物語に入って行けた。徐々に明らかになる事実が心に響く。

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    2022年06月30日
  • ほんとうのリーダーのみつけかた 増補版

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    この2年以上、国民はリーダーの不在に流されてきた。本書の単行本が出たのは2020年7月。コロナ感染が急拡大して、国民が半ばパニックに陥っていた頃だ。その少し前の4月に政権が2枚の布マスクを全国民に配布していた時期で、新刊の棚に本書が並んでいるのを見た私は、ああ梨木さんも国に物申すのかなと思い、きちんと目を通していなかった。

    今回、それが文庫版となって刊行された。ツカが出なかったのか、厚めの紙に、ゆったりとした組み方で、さらに書き下ろしが1章加えられている。それでも100ページほどの薄い本だが、内容は濃い。

    読み終えた第一印象は、“あれ、思っていたのと違う”だった。私は梨木さんが、頼りない国

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    2022年06月18日
  • 海うそ

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    ネタバレ

    渋い。深く味わいのある作品。
    昭和初期に私が訪れた遅島は、もともとユタやノロに似た「モノミミ」のような民間信仰のある修験道の島で、寺なども多くあったが、廃仏毀釈の流れの中でモノミミはいなくなり、寺は破壊し尽くされる。その中で還俗させられた善照が「海うそ」=蜃気楼を見た場所で、私もまた海うそを見る。それと50年後に島が再開発され、元の姿を留めなくなった中で、同じ場所で海うそを見ることで、失われたものを嘆くだけの悲しみではなく、万物が移り変わってもそれはそういうものであって、あるものはある、みたいな悟りとしての海うそ、というのを感じた。
    許嫁に自死され、両親を相次いで亡くした私が島で感じた色即是空

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    2022年05月22日
  • 炉辺の風おと

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    梨木香歩さんの自然特に植物や鳥によせる気持ちが伝わって来る。その他日常の細々した出来事への気づきや、特に父上の看取りへのあれこれにはしみじみ考えさせられた。
    自分に対峙するものへの曇りなき眼差しということを強く感じる文章だった。

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    2022年05月18日
  • 裏庭(新潮文庫)

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    ファンタジー/ミステリー。ある洋館に別世界への入り口があり、主人公の照美が「テルミィ」として旅をし、戻ってくるまでが書かれる。個人的には欠けたものを継ぎなおす話と受け取った。

    現在と別世界の話が並行して進み、交差しながら展開していく。登場人物も多く、関係も複雑で、さらには別世界の人物が実は○○だったなどの展開もあり、個人的には理解する難度が高めだった。

    現在の文章は分かり易く、別世界はファンタジー感のある抽象的な文章。それぞれでフォントまで違うなど、作品、本としての仕掛けもあまり見ないもので印象に残った。

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    2022年05月07日
  • エストニア紀行―森の苔・庭の木漏れ日・海の葦―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    旅行記はあまり自分にむいてないんだよね
    でも感じたこととか、自然の描写とか、梨木さんの豊かな知識とか造詣の深さ、感受性が伝わってきて穏やかだった。

    誰もいない森の小道を、一人で歩く充実感は何に喩えたらいいのだろう。
    ここ数日楽しく充実していたけれど、あまりに多くの人々に会っていたので、自分という生体がこういう時間を必要としているのだとしみじみ思う。

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    2022年04月19日
  • エンジェル エンジェル エンジェル(新潮文庫)

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    ネタバレ

    孫の「こうこ」に古き思い出の公子さんを投影していたのだろうか。「こうちゃん」と呼びたかったことや翆川先生と山本さんの姉妹の関係が羨ましたかったこと。エンゼルさま(エンゼルフィシュ)が少女時代の後悔を抱くさわこへ僅かな時間をくれたのだと思う。
    止められない嫉妬心・攻撃的な態度で人を傷付けてしまった過去。そういう黒い気持ちってずっと忘れられないものだよね。
    それを、どうにもできなかったエンゼルだってかわいそうだよと、他ならぬ「こうちゃん」に許された。
    きっと安心して旅立だっていけたのだろうな

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    2022年04月17日