梨木香歩のレビュー一覧
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原題 SOLD FOR A FARTHING
CLARENCE
THE FAMOUS AND
BELOVED SPARROW
BORN JULY 1ST 1940
DIED AUGUST 23TH 1952
クレア・キップスとクラレンスのハートフルな12年。人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯。ほんとに、副題の通り。もう奇跡ですね。
クラレンスが小さな本を見ている写真が好きです。
開いたページが「二羽のスズメ」(マタイ伝)という偶然も。
シジュウカラが会話することは日本の動物行動学者が解明しています。
チリリリリ(おなかがすいたよ)
ツピー(そばにいるよ)
きっと心を通わせれ -
Posted by ブクログ
化粧品会社の皮膚科学研究員に務める山幸彦は、耐え難い「三十肩」と、その痛みにより誘発された鬱に悩まされていた。そんな折、従妹の海幸比子も原因不明の痛みに苦しんでいることを知る。海幸比子の薦めで訪れた鍼灸師に促されるまま、山幸彦は祖先が住んできた椿宿の屋敷を訪れる。
本書は梨木さん自身が四十肩の痛みに苦しんだことから生まれたという。痛みというのは、とかく厄介なものである。私もこの数年、左顎から首にかけての圧痛が消えないでいる。精密検査も受けたが結局原因が分からず、まあ悪い病気ではなさそうなので付き合っていくしかないかと諦観している。ここに至るまで、それこそ色んなことを試した。そんな実体験もあっ -
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ネタバレ久々に再読。梨木さんのたくさんの作品の中でも「家守綺譚」系統の植物と不思議が絡むお話。
最初は話の流れも途切れがちで次々に荒唐無稽な展開が続くと思われる中で、徐々に歯に空いた穴、木のうろ、白木蓮を失った後の穴…植物園職員である主人公の心に空いた穴の中をのぞきこみ、失われたものを自ら発見し、よどんでしまった「川」を流れるようにする、という芯が分かるようになる。
「ここは、過去と現在がみんないっしょくたに詰まっているのだ」理屈の通じない世界で、これが自分の心の問題であることをやがて主人公は悟るのだ。
人生で抱え込んできた淀みに対して、はっきりした問題を現実的に解決するとかではなく、ただあの時の気持 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「君たちはどう生きるか」という問いへの筆者なりの一つの答え。
これまで何も考えず、同調圧力に従い生きてきた気がする。
尊敬できるリーダーを探し求め、やっぱりちょっと違うなぁ、とがっかりしたり。
思ってもないことを言って、自己嫌悪に陥ったりすることもたくさんある。
「自分の中の、埋もれているリーダーを掘り起こす」作業をしたことがなかった。
自分的基準や批判精神を持って、自分にいいかっこしながら生きていく。劣位にある自分も受け止めていく。そうして、「自分という群れ」のリーダーとしての振る舞いを学び、世界への愛と祝福の想いを抱きながら進んで行けたら。引っかかったことに勇気を持って声をあげることも -
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この2年以上、国民はリーダーの不在に流されてきた。本書の単行本が出たのは2020年7月。コロナ感染が急拡大して、国民が半ばパニックに陥っていた頃だ。その少し前の4月に政権が2枚の布マスクを全国民に配布していた時期で、新刊の棚に本書が並んでいるのを見た私は、ああ梨木さんも国に物申すのかなと思い、きちんと目を通していなかった。
今回、それが文庫版となって刊行された。ツカが出なかったのか、厚めの紙に、ゆったりとした組み方で、さらに書き下ろしが1章加えられている。それでも100ページほどの薄い本だが、内容は濃い。
読み終えた第一印象は、“あれ、思っていたのと違う”だった。私は梨木さんが、頼りない国 -
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ネタバレ渋い。深く味わいのある作品。
昭和初期に私が訪れた遅島は、もともとユタやノロに似た「モノミミ」のような民間信仰のある修験道の島で、寺なども多くあったが、廃仏毀釈の流れの中でモノミミはいなくなり、寺は破壊し尽くされる。その中で還俗させられた善照が「海うそ」=蜃気楼を見た場所で、私もまた海うそを見る。それと50年後に島が再開発され、元の姿を留めなくなった中で、同じ場所で海うそを見ることで、失われたものを嘆くだけの悲しみではなく、万物が移り変わってもそれはそういうものであって、あるものはある、みたいな悟りとしての海うそ、というのを感じた。
許嫁に自死され、両親を相次いで亡くした私が島で感じた色即是空