梨木香歩のレビュー一覧

  • 冬虫夏草(新潮文庫)

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    地図帳を開いて、綿貫の旅路を指でたどりながら読む。旅とは見知らぬ地にいる自分に出会うためにするのかもしれない。

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    2023年02月10日
  • f 植物園の巣穴

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    梨木香歩の文章は読み進めるうちにその空気がページから滲み出てくる。ぬかるんだ泥、雨に濡れた道路や外壁のにおい、呼吸する木々など。

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    2023年02月10日
  • 椿宿の辺りに

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    ユニークなのは名前だけではない。
    山彦と海子や母親とのやりとり、亀シの立ちふるまいなど、心の中はムハ、ニヒ、クック状態。
    願いは体の痛みからの解放。それが名前や屋敷の謎、なんでこうなったを追うことにつながってゆく。
    裏表紙の「深淵でいてコミカル」というのは、まさに言い得て妙。
    どこかすっとぼけたような味わいも感じられて、私にはそこが一番の魅力。
    この面々での日常を書いた、また違った作品も読んでみたい気がした。

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    2023年02月05日
  • ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

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    イギリスのピアニスト、クレア・キップス(1890-1976)は、対ドイツ戦で灯火管制の続いていた1940年、玄関先で障がいを負ったスズメの雛を拾う。その日から12年間、スズメのクラレンスが老衰で亡くなるまで母子とも友愛関係とも取れる2人の交友が始まる。

    マッチ棒の先のミルクを頼りに生命を繋いだ幼少期から、俳優のように地域の人気者になり、奇跡の歌声をむつみ出した青年期、卒中で倒れたあとシャンパンの「薬」によって奇跡の復活を果たし、眠るようにクレアの手のひらで亡くなった老年期。その一生は、本にされるや英国のみならず、世界中のペット愛好家から愛された。

    私はつい最近、同じく英国で拾われたホームレ

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    2023年01月30日
  • f 植物園の巣穴

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    序盤は読み辛い文体でよくわからなかったが、どんどん不思議な世界に引き込まれて行った。
    植物園の木のうろに落ちて気を失っている状態、夢にありがちな辻褄の合わないめちゃくちゃなストーリーなのは想像できたが、これがどうオチがつくのか想像できなかった。
    最後の最後「道彦」でこんなに温かいお話であったことに驚いた。
    主人公の過去を追体験することで固定観念が外れ、カエル坊や蝶の様に見事に変態を遂げて還ってきた。
    幸せな生活が待っている。
    (タイトルから植物や植物園の描写が多いかと思いましたが違いました)

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    2023年01月23日
  • 炉辺の風おと

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    ネタバレ

    いろいろな場所へ旅をし、想いを綴ってきた梨木さんだが、コロナ禍でおもむきか変わった。旅ができなくなったこともあるが、コロナをきっかけに起きた、政府の方針や、外出制限で、引きこもることが当たり前になったことで起きた社会の変化だ。

    梨木さんも引きこもりを余儀なくされ、思いはより個人の内側へと向かうかと思ったが、むしろ社会へ、政治へと向かっていた。コロナ禍の今を、誰もが危惧する戦争への足音を、梨木さんは書かずにはいられなかったのだろう。(これがのちに『ほんとうのリーダーのみつけかた』へ繋がっていく)戦前のジャーナリスト桐生悠々の『他山の石』を取り上げたり、ベラルーシでデモを行った若い人たちの声に耳

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    2023年01月17日
  • 裏庭(新潮文庫)

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    以前から、こういう冒険の話を探していた。
    少しメルヘンチックでどこか歪にも感じられる裏庭の世界の描写がすごく好きだった。

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    2023年01月16日
  • 裏庭(新潮文庫)

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    小学生か中学生の読書感想文を書く時に、読んだ記憶。
    この本で梨木香歩さんと出会って、ほかの本も探すようになった。

    また読み返したい。

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    2023年01月09日
  • 海うそ

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    昭和の初め、人文地理学者の秋野は南九州の遅島を訪れる。修験道の霊山があり雪も降るこの島は自然豊かで、彼は惹きつけられていく。
    戦争を挟み五十年後、秋野は再び島を訪れる縁ができるが――

    神仏分離に起こる廃仏毀釈、失われる営み、過疎。
    学術的に判別され世に知らしめられたものが遺産となる。だとすると……
    人知れず消えていった多くの文化を思うと胸が締め付けられる。
    また時を経て読み直したい一冊。

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    2022年12月04日
  • りかさん(新潮文庫)

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    ネタバレ

    さてさてさんの本棚からチョイス
    梨木果歩さん、好きです
    あの幻想的なこの世とのあわいのような雰囲気
    それを見事に綴っていますよね
    やはり好き!
    人形の持つ やさしさ・きびしさ・かなしさ

    さてさてさんも書いておられましたが
    お話しのつながりがちょっと複雑ですね
    これはこれで楽しめばいいのですが……

    以前読んだ「からくりからくさ」思い出しました

    ≪ 持ち主の 心とどめる その人形 ≫

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    2022年11月16日
  • ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

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    『もしも物思いに耽りやすい夏の宵闇に、どこかで報われない恋の涙が落ちたとしたら、窓硝子の遥か彼方で彼女か流したものだったに違いない。』


    第二次世界大戦下のイギリス。夫に先立たれた一人の老ピアニストが出会ったのは、一羽の傷ついた小雀だった。愛情深く育てられた雀のクラレンスは、敵機の襲来に怯える人々の希望の灯となっていく―。特異な才能を開花させたクラレンスとキップス夫人が共に暮らした12年間の実録。


    わたしが好きな作家の梨木香歩さん訳、解説が小川洋子さんの作品だったので手に取った一冊。

    戦争の描写は少なめで、雀との生活にフォーカスしているので楽しく読んだ。

    雀のクラセンスには足に障碍が

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    2022年11月11日
  • エンジェル エンジェル エンジェル(新潮文庫)

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    あなたは、『エンゼルフィッシュ』を飼ったことがあるでしょうか?

    私たち人間は人と人との繋がりの中で毎日を生きています。意見のぶつかり合いの一方で、お互いがお互いを思いやる瞬間も見る時間の中に、コミュニケーションあってこその暮らしの楽しさを感じもします。その一方で、自分の時間の中に人間以外の他の生物との時間を過ごしたいという欲求を持たれる方もいらっしゃると思います。ペットフード協会が公表している”飼育頭数調査(2021年)”によると、その数は犬が710万6千頭、猫が894万6千頭にものぼるようです。犬の方が多いと思っていた私には少しビックリな数でもありますが、犬や猫との時間を求める方が数多く

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    2022年11月09日
  • 裏庭(新潮文庫)

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    エピローグで全部持ってかれた。
    裏庭
    家庭
    バックヤードこそ本質

    本質に飛び込む勇気
    自分が自分であるために自分の傷を見て生きることそしてその傷に触れるとしんどいから見て見ぬ振りしてる

    裏庭家庭に必要なのは、いままでとちゃう新しい茶かもしれない

    抽象的な文章で読むのしんどかったけど、最後とてもよかったっすね

    裏庭278p
    薬つけて、表面だけはきれいに見えても、中のダメージにはかえって悪いわ。傷を持ってるってことは、飛躍のチャンスなの。だから、充分傷ついている時間をとった方がいいわ。薬や鎧で無理に誤魔化そうなんてしない方がいい。

    鎧をまとってまであなたが守ろうとしたのは何なのかしら。傷

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    2022年10月29日
  • 海うそ

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    産まれた時から海無し県から出たことがない私でも郷愁を誘われるような心持ちに。
    でも感覚としてはやっぱり息子寄りかなぁ。
    私だったら岩の謂われとか息子に喋っちゃうし、そしたら恋愛スポットとして活用!なんて流れになる気がする(笑。
    あと論文まで行かなくても手記として島のことを書いて残したいと思っちゃうだろうな。

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    2022年10月29日
  • からくりからくさ(新潮文庫)

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    梨木さんの場景描写力は素晴らしい。
    日本語の美しさ、日本の自然や四季の変化の美しさを、改めて深く丁寧に教えてくれます。

    4人の女性が共同で暮らす古い家。
    丁寧に、真剣に生きる女性達が魅力的に描かれています。静かだけど情熱的な作品です。

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    2022年10月19日
  • 椿宿の辺りに

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    ネタバレ

    再読。身体の痛みから自分のルーツへと辿る物語。1冊を通しての時間の流れ方とか、現れる景色とか、梨木さん独特の世界の切り取り方が、読んでいて心地よい。

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    2022年10月18日
  • 本からはじまる物語

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    本が好きな人には是非読んでほしい!
    本と人との関わり方、大切な本の思い出、ファンタジーな物語もあり、、、

    色々な方のストーリーをいっぺんに楽しめる欲張りな本です!!

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    2022年10月15日
  • 沼地のある森を抜けて(新潮文庫)

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    ネタバレ

    うむむむむ、難解・・いやいや、私の読解力や知識が不足しているだけ・・・

    初めの、フリオの話は面白くて一気に読んでしまった。
    梨木さんってこんな物語も書くんだ?と思いつつ、
    久美の自問自答がちょっとおもしろいところもあって、
    クスッと笑ってしまった。
    いやー面白い、と思いながら読み進めると、一気にトーンというか景色というか、物語の色みたいなものが変わる。

    カッサンドラの話は、口だけの三味線女がでてくるなんてホラーでしかないんだけど、叔母だけでなく両親の死までさかのぼって真相を、となると、もはやミステリーのようにもなってきて、心がかき乱される。後々わかったけれど、カッサンドラが久美にとってジョ

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    2022年10月13日
  • 裏庭(新潮文庫)

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    佐藤さとる的な分かりやすいファンタジーかと思って読み始めたのだが、裏庭の意味がかなり重層的で、現実世界の人物だけでなく、出来事や感情などが暗喩として表出されていて、その対比構造が一回では読み込めなかったです。
    裏庭に触れたあとの現実がよくあるような全部良い変化をするわけでもないところが好きです。

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    2022年10月13日
  • f 植物園の巣穴

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    夢か現か、化かしているのか化かされているのか。妖しく美しい日本語の調べに誘われて覗いてはいけない世界を覗いてしまったような、恐ろしくも心地よい不思議な世界でした。後半に進むにつれ、彼と同様、私自身の記憶もとても曖昧な気がしてきて、虚ろな暗い闇の中に落ちるような不安を覚えました。自分の記憶を辿る旅は、かけがえのない人生を辿る旅であり、彼にとって大きな傷を治す必要な旅だったのですね。最後は目頭が熱くなりました。

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    2022年10月10日