梨木香歩のレビュー一覧
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イギリスのピアニスト、クレア・キップス(1890-1976)は、対ドイツ戦で灯火管制の続いていた1940年、玄関先で障がいを負ったスズメの雛を拾う。その日から12年間、スズメのクラレンスが老衰で亡くなるまで母子とも友愛関係とも取れる2人の交友が始まる。
マッチ棒の先のミルクを頼りに生命を繋いだ幼少期から、俳優のように地域の人気者になり、奇跡の歌声をむつみ出した青年期、卒中で倒れたあとシャンパンの「薬」によって奇跡の復活を果たし、眠るようにクレアの手のひらで亡くなった老年期。その一生は、本にされるや英国のみならず、世界中のペット愛好家から愛された。
私はつい最近、同じく英国で拾われたホームレ -
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ネタバレいろいろな場所へ旅をし、想いを綴ってきた梨木さんだが、コロナ禍でおもむきか変わった。旅ができなくなったこともあるが、コロナをきっかけに起きた、政府の方針や、外出制限で、引きこもることが当たり前になったことで起きた社会の変化だ。
梨木さんも引きこもりを余儀なくされ、思いはより個人の内側へと向かうかと思ったが、むしろ社会へ、政治へと向かっていた。コロナ禍の今を、誰もが危惧する戦争への足音を、梨木さんは書かずにはいられなかったのだろう。(これがのちに『ほんとうのリーダーのみつけかた』へ繋がっていく)戦前のジャーナリスト桐生悠々の『他山の石』を取り上げたり、ベラルーシでデモを行った若い人たちの声に耳 -
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『もしも物思いに耽りやすい夏の宵闇に、どこかで報われない恋の涙が落ちたとしたら、窓硝子の遥か彼方で彼女か流したものだったに違いない。』
第二次世界大戦下のイギリス。夫に先立たれた一人の老ピアニストが出会ったのは、一羽の傷ついた小雀だった。愛情深く育てられた雀のクラレンスは、敵機の襲来に怯える人々の希望の灯となっていく―。特異な才能を開花させたクラレンスとキップス夫人が共に暮らした12年間の実録。
わたしが好きな作家の梨木香歩さん訳、解説が小川洋子さんの作品だったので手に取った一冊。
戦争の描写は少なめで、雀との生活にフォーカスしているので楽しく読んだ。
雀のクラセンスには足に障碍が -
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あなたは、『エンゼルフィッシュ』を飼ったことがあるでしょうか?
私たち人間は人と人との繋がりの中で毎日を生きています。意見のぶつかり合いの一方で、お互いがお互いを思いやる瞬間も見る時間の中に、コミュニケーションあってこその暮らしの楽しさを感じもします。その一方で、自分の時間の中に人間以外の他の生物との時間を過ごしたいという欲求を持たれる方もいらっしゃると思います。ペットフード協会が公表している”飼育頭数調査(2021年)”によると、その数は犬が710万6千頭、猫が894万6千頭にものぼるようです。犬の方が多いと思っていた私には少しビックリな数でもありますが、犬や猫との時間を求める方が数多く -
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エピローグで全部持ってかれた。
裏庭
家庭
バックヤードこそ本質
本質に飛び込む勇気
自分が自分であるために自分の傷を見て生きることそしてその傷に触れるとしんどいから見て見ぬ振りしてる
裏庭家庭に必要なのは、いままでとちゃう新しい茶かもしれない
抽象的な文章で読むのしんどかったけど、最後とてもよかったっすね
裏庭278p
薬つけて、表面だけはきれいに見えても、中のダメージにはかえって悪いわ。傷を持ってるってことは、飛躍のチャンスなの。だから、充分傷ついている時間をとった方がいいわ。薬や鎧で無理に誤魔化そうなんてしない方がいい。
鎧をまとってまであなたが守ろうとしたのは何なのかしら。傷 -
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ネタバレうむむむむ、難解・・いやいや、私の読解力や知識が不足しているだけ・・・
初めの、フリオの話は面白くて一気に読んでしまった。
梨木さんってこんな物語も書くんだ?と思いつつ、
久美の自問自答がちょっとおもしろいところもあって、
クスッと笑ってしまった。
いやー面白い、と思いながら読み進めると、一気にトーンというか景色というか、物語の色みたいなものが変わる。
カッサンドラの話は、口だけの三味線女がでてくるなんてホラーでしかないんだけど、叔母だけでなく両親の死までさかのぼって真相を、となると、もはやミステリーのようにもなってきて、心がかき乱される。後々わかったけれど、カッサンドラが久美にとってジョ