梨木香歩のレビュー一覧

  • 丹生都比売 梨木香歩作品集

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    不思議話し短編集。表題「丹生都比売におつひめ」の実母の妖しさと皇子の儚さも良かったけど、「コート」、すごく短い物語なのに、亡くなった姉に思いをはせる最後、ぐっときた。

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    2023年11月04日
  • やがて満ちてくる光の(新潮文庫)

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    再読。長期間にわたるいろいろな種類のエッセイを集めた一冊。エッセイの断片を拾っていくことで梨木さんという人の形が浮かび上がってくる。作家さんのエッセイを読んで憧れを抱くことは多いが、梨木さんに対しては憧れよりさらに畏怖の念さえ抱いてしまう。それくらい生き方の芯にあるものの揺るぎのなさにひれ伏してしまう。

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    2023年10月28日
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか

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    色々な現代にある問題が、
    コペルの周囲や、友だちなど身近な存在の問題として語られ、コペルがそれらについて考えていく。
    中心としては、集団の考えに個が押し潰されてしまう状況下(集団の圧力)に耐えきれず、そこから距離をおいてひとりでならざるをえなかったコペルの周囲の人たちの話。
    徴兵制、性的搾取、学校での安易な屠殺教育、ジェンダー、環境汚染など身近な問題からコペルは考えていく。そのなかで、自分が向き合えなかった問題に向き合い、自分の弱さを知る。
    最後はやっぱり人には人(群れ)が必要なのだと思うにいたり、群れの温かさを必要としている人を受け入れられる人でありたいという思いで締め括られている。

    感想

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    2023年10月19日
  • 裏庭(新潮文庫)

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    学生時代に挫折したのですが社会人になり完読できました。
    学生の頃とは違い、テルミィを我が子のように見守りながら読みました。
    ショッキングなシーンもありましたが、それ以降のシーンで救いもあり、最後には一緒に冒険をしたかのような読後感がありました。

    梨木香歩さんの他の作品と少しテイストが違い普段読みなれないブラックファンタジー?な世界観なのと、時代や世界、語り部が交差するので少し読みづらかったです。

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    2023年09月09日
  • からくりからくさ(新潮文庫)

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    昔懐かしいおばあちゃんの家を思わせる、古い日本家屋。住んでいるのはイマドキではない、勉強熱心で深い思いやりを持つ表現者達、かつ草木や生き物、織物、染色に専門性がある。
    空気感が心地よく、夏の終わり、西陽の入る縁側などを思い起こさせる。個性的な4人は二十歳そこそこ、プラス神秘的なリカさんが居る。
    謎解きミステリーのような感じもするが、国際問題や大学や社会の理不尽、古い街や家のしきたりなど、盛り込まれている。彼女たちの前向きな好奇心と素直な性格がホッとする。
    ストーリーは複雑だが、世界観はすきです。

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    2023年08月23日
  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)

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    梨木香歩がこんなに骨のある古典的な文章を書くとは知らなかった。
    あっという間に当時の土耳古に引き込まれてしまった。

    民族も宗教も価値観も違う人々が、様々な感情がありながらもお互いを尊重し合って過ごした時間は、「青春」と一言でいうには濃密過ぎるように思う。他人と一緒に過ごす時間は、必ずいつか終わりが来るものなのだ、と思いつつ、それにしてもこんな別れを迎えてほしくはなかった。時代、社会情勢、国、民族、宗教、…尊重していたものに殺され、別れさせられたと言っても過言ではない。

    ディスケ・ガウデーレ!ー楽しむことを学べ。

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    2023年08月20日
  • 春になったら莓を摘みに(新潮文庫)

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    異国の地での暮らし、人との出会いはその後の人生を変えてしまうくらいの影響力があると思う。
    人との関係、距離感がいい。
    エッセイではないような重さがある。

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    2023年08月11日
  • 冬虫夏草(新潮文庫)

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    作品的には前作のほうがよかったけれども
    こちらも負けず劣らずに不思議な雰囲気を
    醸し出しています。

    今回も不思議なものたちに出会います。
    河童にも出会いますし、
    死が近づいているものにも出会います。
    そしてこの世の者でないものも…

    綿貫はどうも優しすぎるんですよ。
    死んでしまった人をついてこさせるとは
    まあ罪深い…

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    2023年08月10日
  • りかさん(新潮文庫)

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    小さい頃遊んだ、りかちゃん人形、緑色のドレスを着たフランス人形を思い出した。
    実家を出る時に処分してしまっけどきちんと感謝してお別れすれば良かったなと思ったり。
    子供の人形遊びは、心の成長にとって大切なステップなんだなと再認識した。

    生きてる人間の強すぎる気持ちをどんどん整理する使命を持った人形。人形に想いを預ける以上人には人形を慈しむ責任が生まれる。その愛があればこそ人形は重荷に耐えて微笑んでいられる。

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    2023年07月04日
  • やがて満ちてくる光の(新潮文庫)

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    梨木香歩さんがデビューから様々な媒体で書き綴ったエッセイをまとめた一冊。悪くいえば雑多で脈絡がないのだけれど、むしろそうした雑多な感じが梨木さんという個人をより鮮明に浮かび上がらせてくる。作品を介さない、素の梨木香歩が垣間見える感じなのだ。個人的には「家の渡り」が読み応えがあった。

    あとがきで梨木さんも書かれているように、編集者は大変だっただろう。およそ四半世紀にわたり他の媒体に掲載されたものを探し出すのはもちろん、それらすべての媒体から転載の許可を得るのは難儀なことだろうと思う。まあ、おかげで我々読者は労せずに梨木さんのエッセイをまとめて読めるわけである。

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    2023年06月16日
  • やがて満ちてくる光の(新潮文庫)

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    梨木さんのエッセイを読んでいると、著者が手を差し伸べてくれていて、一緒に森の中を散策している気分になります。ふと気づくと悩みが消えていく感覚。。どこへ行くか分からなくなってしまって立ち止まった時にいつも読む本です。

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    2023年06月15日
  • 椿宿の辺りに

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    痛みに導かれるように椿宿へと向かう。
    こんがらがっていた紐が解されるように徐々に優しくあるべき姿にもどる。
    痛みの描写に何度も顔を顰めたけど、視界がだんだん見えてくるようになる展開は素敵です。

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    2023年05月22日
  • エンジェル エンジェル エンジェル(新潮文庫)

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    目を背けたい現実を突きつけられているようでもありながら、優しさに包まれているような感覚もある不思議な物語だった。
    私の家でもエンゼルフィッシュを飼育しているため(今は何代目だろう…)、彼らの凶暴性や残虐性を初めて見たときの悲しさや怒りのようなものを思い出し懐かしく感じた。
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    コウコは、寝たきりに近いおばあちゃんの深夜のトイレ当番を引き受けることで熱帯魚を飼うのを許された。夜、水槽のある部屋で、おばあちゃんは不思議な反応を見せ、少女のような表情でコウコと話をするようになる。ある日、熱帯魚の水槽を見守る二人が目にしたものは――なぜ、こんなむごいことに。コウコの

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    2023年05月17日
  • 椿宿の辺りに

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    良いです。起承転結はあるものの浮き沈みが緩やかで先が気になるけれど淡々と進むお話。普段の日常って思い通りにいくこともそうでないことも受け入れたり抗ったり。それを踏まえた話の流れが綺麗で引き込まれる小説ですし、私は好きです。

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    2023年05月02日
  • 海うそ

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    祖父や父が亡くなってから何年経ってもたびたび感じる切なさは何なのだろうと考える。それは、あのとき聞いた思い出も、そこに祖父と父がいて色んなことを感じ考え生きていたという事実も、私が忘れたときに消えてなかったことになってしまうのだという焦りと寂しさなんだと思う。
    その寂しさは、大学の民俗学実習で僭越ながらも感じた、「この習俗、伝承は今私が記録しなければいつか忘れ去られてしまうのだ」という危機感に似ている。
    でも考えてみれば、人も歴史も生まれては変わって消えての繰り返し。寂しいけれど、そんなに切羽詰まって寂しがることはないんだよと慰められている気がした。

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    2023年04月05日
  • エストニア紀行―森の苔・庭の木漏れ日・海の葦―(新潮文庫)

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    梨木香歩の世界観が満載の紀行記。彼女の着眼点が顕になることによって、あの独特の作風の根を垣間見ることができる。良作。

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    2023年03月08日
  • 丹生都比売 梨木香歩作品集

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    言葉のひとつひとつが透明で、その美しいきらめきが私を迎えてくれる。
    『月と潮騒』では、引っ越ししたてのマンションの一室がまるで海底にあるかのような豊かな描写に、思わず潮風を感じた。

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    2023年02月25日
  • ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

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    表紙絵に一目惚れして購入。第二次世界大戦頃の話だが、全く耳にしたことがない作者、作品であった。日本でも早くから出版され、根強い人気だったようだ。いくつかの書評にあるように、楽しく、幸せを感じさせてくれる素晴らしい作品だ。
    「秘密の花園」のバーネットが書いた「私のコマドリ」と似ているが、鳥と作者との長い共同生活の結果であるため、類い希なる鳥類の研究記録となった。また擬人化表現(と言うか、このスズメの中身は本当にヒトなのかも 笑)によるユーモア溢れる文章でクスクスと読み手を笑わせてくれ、またこの小さき者が如何に人間に「教え」を示すかが語られていく。
    どんな生き物にも、感情はもちろん、知性や個性があ

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    2023年03月05日
  • 春になったら莓を摘みに(新潮文庫)

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    私は読書は同じ著者のものを続けて読んでしまうクセがあります。(またこの著者さんの本の感想かと思った方がいればすみません)
    こちらの書籍は、大まかに言うと人と人、過去と現在の問題や、日常のエッセイかと思います。様々な話題が取り上げられていました。
    一部の内容について、私自身、戦争はもちろん差別されるような環境にも置かれたことがない(認識してないだけかもしれないが)ので自分には難しい話だった。
    そうであっても、心によく入ってきて感情が揺り動かされて、初めてこういった話題は今まで理解はしようとしていても深く感情まで動いたことはなかったのだなとこの本で気付かされた。

    改めて世界の平和を心から願う。

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    2023年02月22日
  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)

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    19世紀末、トルコ・イスタンブールに留学した考古学者の村田君が、異国の人々と紡ぐ友情の物語。

    人種も宗教も価値観も違うけれど、彼らの友情はとても素敵で、淡々と語られる日常のその一瞬一瞬が輝かしい。

    帯に青春小説と書かれていて、最初はその要素を感じなかったが、読み終わって納得。
    青春ってそのときには気付かない。思い返してそれがかけがえのないものだったと気付く。読後にひしひしとそれを感じるような作品だった。

    最後の章で、彼らとの友情の集積が一気に思い起こされ、胸を打たれた。鸚鵡の言葉に、最後あんなに涙腺が刺激されるとは思わなかったな…。

    出会えてよかったし、また読み返したい一作。

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    2023年02月14日