梨木香歩のレビュー一覧

  • ぐるりのこと(新潮文庫)
    梨木さんの文章や思考は循環的というか、むしろ連想的というか、思考の順番をそのままにしているので、ちょっと分かりにくいところもあるが、それでいてとても奥が深い。
  • 渡りの足跡(新潮文庫)
    これまた素晴らしい一冊だった。日本のネイチャーライティングの到達点とあった。
    外部を、自然を探索することが、自らの内面を探る旅であるということが、渡り鳥の定位のメカニズムを通じて語られる。
  • りかさん
    1999年初版から20年、再読。 
    何回読んでも、大好きな世界。
    ようことおばあちゃんが感じとる世界がとても好き。こんな世界を描ける梨木香歩さん、凄いです。
    りかさんを通して人形たちのざわめき、想いをたくさん聴いた。
    人形はそれぞれの想いを抱えて、そこにいる。
    アメリカから親善大使として贈られてきた...続きを読む
  • 沼地のある森を抜けて(新潮文庫)
    ぬか床から始まった物語は,酵母や菌類の成長と発展?につながり,ぬか床からクローンのように現れる人たちの不思議さに驚いているうちに,生命とは死と再生の力だと大潮の日に収斂していく.特殊な島の奥深い沼地の不気味さもあって,少しホラー的な要素もある.本編に差し込まれた3つの挿話「かって風に靡く白銀の草原が...続きを読む
  • 家守綺譚(新潮文庫)
    時間がゆるりゆるりと流れる、非現実的な世界観。こんな時間が其処にあっても、手に余してしまう忙しない性分だけど、憧れる。

    西の土地という共通点から有頂天家族のようでもあるし、主人公が物書きでのらりくらりとした生活が夏目漱石のそれから、のようでもある。

    植物に明るくないので、無粋だけど植物調べながら...続きを読む
  • 丹生都比売 梨木香歩作品集
    「丹生都比売 梨木香歩作品集」(梨木香歩)を読んだ。
    「トウネンの耳」はなんとも愛おしい作品。こういうのたまらなく好き。
    「夏の朝」もいい。
    しかし何と言っても表題作の「丹生都比」は出色だな。
    『草壁皇子』のしだいに透き通っていく命の美しさが胸を打つ。
    さすが梨木香歩である。
  • ぐるりのこと(新潮文庫)
    日々の生活の中で梨木さんの胸に去来する強い感情、そして歴史や政治、社会問題に関する深い教養に裏付けされた思索が、エッセイの形で書かれていた。受験勉強などを通じて、目的に対して最小の労力でそれに辿り着く最短距離ばかり追い求めてきた私にとって、このような、自分を芯に添えて、ぐるりのことと交流しながら深く...続きを読む
  • からくりからくさ(新潮文庫)
    『りかさん』の主人公「ようこ」が大人になり、「蓉子」として描かれていた。小さい頃から好きだった染物を続けていたり、人を慈しみ包み込むような暖かさが、「ようこ」だと分かる要素だった。

    『りかさん』はようことりかさんの物語で、最後にマーガレットの娘と三人の共同生活が描かれていましたが、読んだ時点ではな...続きを読む
  • 冬虫夏草(新潮文庫)
    梨木果歩はいくつか読んだけれど、やはりこの綿貫の話が一番好き。家守奇譚を読んでからいったい何年たっているのか。家守奇譚が高堂の家を中心にした話だったのに対し、こちらは綿貫が犬のゴローを探して旅に出る編。相変わらず龍だとか河童だとかがさらりと出てきて、ちょっと古めかしい文章も合わせて極上のファンタジー...続きを読む
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか
    うこぎご飯はまじで美味しい。
    うこぎは天ぷらも美味い。

    私もコペルくん程ではないにしても、相手の気持ちを読んだり、色々考えるすぎる人間なので、言葉にできない生きにくさを子供の時から感じてた。
    だから、自分に子どもが生まれた時、我が子にはこういう繊細な子になってほしくない、もっとイージーに生きてって...続きを読む
  • エンジェル エンジェル エンジェル(新潮文庫)
    周りから期待されているいい子の顔と、自分の本心とのギャップに追い詰められている親娘3世代のお話。
    最期の最期にコウちゃんがさわちゃんを、記憶のコウちゃんに代わって許してあげれてよかった。
    うん、だれも天使だけなんかになれない。
    「バランスとって飛ぼうよねえ さわちゃん 力いるけど」でじんときた。
  • からくりからくさ(新潮文庫)
    再読。染や織や紋様といった魅力的な世界の描写に絡めて、生と死、愛情と憎悪、連続と変化といった相反するものが混じり合ったり混じり合わなかったりして流れていく、美しい世界。梨木さんの小説を読むたびに、こんな世界に身を置いて生きていきたいと思ってしまう。
  • 不思議な羅針盤(新潮文庫)
    梨木香歩さん作品、高校生のときからずっと読んでます。
    エッセイも大好きで、自分の足元がぐらついたときに読むとちゃんと心地いい場所に戻ってこれる感じがします。
    植物に詳しくないので、わからないときもありますが、草花や動物への眼差しが好きです。
    透明な感じがして。
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか
    苦くて消化しきれない草を飲み込まされたような感じ。
    だけど、それを抱えたまま熱をもって群れて生きていかねばならないと思わされた
  • 海うそ
    作品を通して伝わってくる、なんともいえないもの哀しさが心地良い作品であった。
    人生に悲観している時に読めば、一文一句が体に染み渡るように感ぜるだろう。
    疲れている人、何かを失いその拠り所を求めている人などにおすすめしたい。
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか
    言いたいことは沢山あるけど、まず最初に感嘆したのは人物描写の豊かさ。ちょっとした会話の間や視線の動かし方、とりとめもな(いように描かれてるけどきちんと読者に効果的に伝わるようおそらく計算されている)く展開し連鎖する人間的思考、それら全てが事細かく表現されているけれど全くくどく感じない、絶妙なバランス...続きを読む
  • 冬虫夏草(新潮文庫)
    梨木さんの作品で一番好きなのが「家守綺譚」。次が「村田エフェンディ滞土録」です。もちろんこの作品も大好きになりました。

    神やら幽霊やら妖怪までもが、すぐ隣にいる世界観。怖いわけでもなく日常に溶け込んでいます。

    不思議なイワナの宿、いなくなったゴロー。気がついたら物語もだいぶ終わりに近づいていまし...続きを読む
  • エストニア紀行―森の苔・庭の木漏れ日・海の葦―(新潮文庫)
    旅をする上で大切なことは、本当に自分が行きたいところに行くこと。
    だけど予定が変わってしまっても、それを楽しむこと。
    ふだんの生活においても、また同じ。
  • 沼地のある森を抜けて(新潮文庫)
    この作品をきっかけにぬか床を始めた。笑

    「自分」の境界をめぐる話。
    からくりからくさ、ピスタチオなどと繋がる、自己の在り方、在り様と、世界との繋がり。
    読後、消化不良になったり壮大さにクラクラしてしまう人は上記の二冊から入れば分かりやすいかな、と思う。

    他の梨木作品に比べて「いや〜な」人物も出て...続きを読む
  • ぐるりのこと(新潮文庫)
    私達をぐるりと取り囲む異世界。
    ぐるりの内側へ籠りがちな私に、もっとぐるりの外側へ開いていけよ、と梨木さんから温かくも厳しい言葉をもらった。

    ぐるりの内側と外側は言語や風習、文化等といった差異があり、その違いに混乱し時に大小様々な争いも否めない。
    ぐるりの内側に籠り隠れることはとても楽ちん。
    けれ...続きを読む