梨木香歩のレビュー一覧

  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)

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    〈再登録〉「家守綺譚」でも触れられていた綿貫の友人・村田のトルコ滞在記。エフェンディ(学士)として過ごす村田から見た異国でのかけがえのない日々の記録。
    奇妙な出来事に遭遇しながらも、国も宗教も違う人々と理解し合っていく村田。彼らとのやり取りが面白かっただけに、その後の世界状況の中、それぞれの運命を生きざるを得なかったのが悲しい。ムハンマドに拾われた生意気なオウムに楽しませてもらいました。このオウムが後に感動的な展開へと導きます。
    百年前の架空の滞在記がこんなにも何かを訴えかけるのは、歴史の陰できっとこんな若者達が存在していたからだと思います。

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    2024年05月28日
  • 西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集

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    西の魔女の暮らしや考え方は、忘れられていくものなのかもしれない。時代の流れに合っていないし、もっと便利なものが溢れてる。それでも貫き通す信念こそ、魔女の証。想いは受け継がれ、ずっとそばにいる。何年も色褪せないものになる。薄れてしまう記憶もあるけれど、死後も祈りは消えない。

    最後のモノローグ、

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    2024年05月05日
  • 春になったら莓を摘みに(新潮文庫)

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    ネタバレ

    「西の魔女が死んだ」も好きでしたが、こちらは英国好きの私には堪えられないエッセイでした。
    旅行で行くのと暮らすのでは違うとわかっているけど、私も暮らしてみたい。久しく訪ねていませんが、また旅行したくなりました。
    ウエスト夫人の飾らない、でも暖かい人柄に惹かれます。こんなふうに歳を重ねたいものだと思いました。

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    2024年04月24日
  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ――

     大満足の222頁。
     久し振りに溢れるように泣いた…西武新宿線の車内でね。ええ。


     自分は世界を知らないなぁ、と思いながらも頑張って読む。もっと真面目に世界史に取り組んでおけばよかった、って後悔は何度も何度もしています。これからもしていくことでしょう。勉強しろって? いやぁ…ねぇ?
     19世紀末のトルコを舞台に、日本人留学生村田の日常を…と思いきや、中盤から物語は飛翔し、民俗学的な怪しさを孕みながら戦争を、理不尽を、その中で確かに息をするひととひととのつながりを、悲しく描き出してゆく。その波に心地よく揺られ、揺らされ…痺れるような若々しい痛みが芯に残る。
     巧い。前半の瑞々しさは

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    2024年04月17日
  • 冬虫夏草(新潮文庫)

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    前作『家守綺譚』を読んでからというもの、すっかりこの世界観の虜になってしまった。あっという間に読み終わってしまい、さみしい気持ちで本屋の梨木香歩のコーナーをふらふらと見ていたら、この『冬虫夏草』が続編だということが判明したので、嬉々として手に入れて読んだ。やっぱり好きだなあ。ふらっと現れる高堂と主人公綿貫の、さっぱりした友情がとてもいい。題名である、冬虫夏草は、作品を通して非常に重要なものだと思う。各章タイトルが植物の名前なのもやっぱりすごくいいな。また読み返したい。

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    2024年04月12日
  • 椿宿の辺りに

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    『f植物園の巣穴』の姉妹編。
    めちゃくちゃ面白かった!
    この面白味も『f植物園の巣穴』があってこそ。
    ということで、☆4だった『f植物園の巣穴』も☆5に修正し、こちらも勿論☆5!
    ご興味がおありの方は是非、『f植物園の巣穴』から読んでいただきたい。

    まだ三十代だが頭痛・腰痛持ちのうえ四十肩と鬱に悩まされている佐田(後に頸椎ヘルニアも加わってもう大変っ)。
    名は山幸彦(やまさちひこ)。
    なんだか神話の登場人物みたいだが、名字は佐田!
    そう、『f植物園の巣穴』の佐田豊彦の曾孫にあたる。

    そして従姉妹の名前が海幸彦(うみさちひこ)!
    いや、女性なので海幸比子(通称:海子)と書くのだが。
    さらには

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    2024年03月22日
  • f 植物園の巣穴

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    f植物園に転任してきた佐田豊彦。
    造成された水生植物園が担当だ。
    彼はそこを「隠り江」と名付けて情熱を注ぐ。
    が、ある日大切にしていた日本水仙がなぎ倒されていることに気付く。
    何物かが通ったように、椋の大木の"うろ"から水辺へと倒れていたのだ。

    思い起こせば、自分はその"うろ"に落ちたのではなかったか?
    なのに、そこからの記憶がない。
    次の記憶は唐突に自室で寝ている場面。
    そして歯痛の為に歯科医へ。
    前世は犬だったという歯科医の妻、ナマズの神主…次々現れる不思議な人物と、交錯する千代との思い出、ねえやのお千代との思い出、椋の大木、かつて抜いてしまった白

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    2024年03月22日
  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)

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    異文化交流とか異文化理解と言うと大袈裟なわりに浅薄な感じになってしまう。異国の人(に限らず他者)と関係を築くことは肩肘張るような特別なことではなく日常の延長なんだと感じた。国籍を越えたおつきあいの場合は、〇〇人という認識も必要ではあろうけど、その上で〇〇さんというように個として理解することが、あたりまえだけど大事だなと改めて実感した。

    その一方で、特に国際情勢が緊張感を増している時は国という概念は否が応でもつきまとうということも考えさせられる。いくら個人間で強いつながりを築いていても国同士の関係が悪化している場合は個人間の絆が断ち切られたり、時には不本意ながら殺しあうことになる可能性も生じて

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    2024年03月20日
  • 西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集

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    映画がすごく綺麗だったので読ませていただきました。原作もすごく綺麗でした。初めて読んだ時は中学生だったのでまいと重ねるところもあり、おばあちゃんに惹かれました。
    読んでいて心が落ち着く本です。

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    2024年03月15日
  • 西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集

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    初めて読みましたが最後は涙が止まらなかったです。
    そのままの勢いで短編やエピローグにあたる祖母視点の話を読めたのはとても幸運な事だったと思います。

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    2024年03月11日
  • 西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集

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    子供の課題図書で私も読みました。登校拒否の孫に対する祖母の対応が優しくて素敵でした。別れのときのシーンは今思い出しも涙がでます。

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    2024年03月05日
  • 椿宿の辺りに

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    何年か前に「五十肩」を患い、また「実家の空き家化問題」を抱える身として、馴染みやすい設定だった。

    「f植物園の巣穴」の続編ではあるが、こちらは前作の主人公の曾孫の時代=現代のお話で、文体もとっつきやすい感じがする。結末も現代的というか現実的な印象。こちらを先に読んでもいいかもしれない(どちらが先でも楽しめるはず)。

    前作となる「f植物園の巣穴」のレビューでは「フロイトの治療過程を思わせた」と書いたが、強引にいえば、こちらはユングの集合的無意識になるだろうか。

    梨木氏の作品では人が生きていく上での「土地」との関わり方がテーマになることが多い。昨今は SDGs達成度がどうであるとかいうドライ

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    2024年02月11日
  • f 植物園の巣穴

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    人間、嫌な経験をするとそれを意識から追い出すことで何とか生きていく、という仕組みになっているみたいだけども、そのやり方が必ずしも最善ではないということだろうな。フロイトの治療過程を思わせた。

    同著者の「家守綺譚」のシリーズにも近い和風異界的な「不思議」の描写が多いので、お好きな方はどうぞ。

    本作だけでもお話としては成立するが、途中に出てくるちょっとした記述が、続編「椿宿の辺りに」への布石となっているので、そちらもあわせて読みたい。

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    2024年02月11日
  • 春になったら莓を摘みに(新潮文庫)

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    ネタバレ

    理解はできないが受け容れる。相手を完全に理解することはできないけれど、相手を否定せず理解しようとする姿勢は持ち続けたい思った。 「それが文化である限り、どんなことであろうと私はそれを尊重する。文化である限りは。」 日本人の蕎麦を啜る音に驚いたナイジェリア人女性のこの言葉が印象に残っている。

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    2024年01月28日
  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)

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    読んだのは5回目くらい?大好きな本。
    わたし的には、「THE 青春」なお話。村田みたいな感性を持って、村田みたいな友との出会いをして、村田みたいに得難い経験ができたらって、人生後半の真ん中くらいになった今でも思ってしまう。
    鸚鵡の「友よ。」で毎回落涙。
    そしてラストの村田の慟哭は、今日現在の世界情勢そのものにも通じる。
    今また読んでおいてよかった。

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    2024年01月05日
  • 春になったら莓を摘みに(新潮文庫)

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    自分とは異なる考え方や感じ方を肯定するでもなく、否定するでもなく、受け入れるにはどうしたらいいのかと思って、手に取った本。
    どんなに自分では理解できなくても、好きになれなくても、人が感じたことを尊重できる自分になりたいと思った。

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    2023年12月31日
  • 丹生都比売 梨木香歩作品集

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    やっぱり すごいなぁ 梨木果歩さんの世界観。

    初めての短編集だとか。
    8編の短編と中核となる中編「丹生都比売(におつひめ)」。
    短編にも世界観がでているけれど、丹生都比売はさすが。
    どんどん引き込まれていく、戻れなくなる・・・
    それにしてもこの世界観をこんなきれいな文章で表現するなんてすごい。

    壬申の乱の人間関係がこんなことになっていたのは、習ったはずがまったく頭の中に残っていませんでした。

    あとがきには「ひとはみな、それぞれの生の寂しみを引き受けて生きていく、という芯を持つ蔓なのだろうと思う」。

    間違いなく自分の世界を変えてくれた作家さんの一人です。
    これからも梨木さんの本は読み続け

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    2023年12月05日
  • 沼地のある森を抜けて(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ‪沼地のある森を抜けて 梨木香歩‬
    ‪ぬか床から人がってのでファンタジー?と思ってたら人が死んでるってのでホラー?そこからトラウマとかルーツ探し?と読み進めると、最後壮大な生命と再生の物語‬
    ‪この最後を読む為に今までの鬱々としたのがあったのね、と‬
    ‪言葉にできないほどにカタルシス凄い‬


    "解き放たれてあれ
    ‪母の繰り返しでも、父の繰り返しでもない。先祖の誰でもない、まったく世界でただ一つの、存在なのだから、と"‬

    ‪もういないのに傷つけられた記憶と対人恐怖症だけ残ってる私には‬
    この本はとてもよかった‬

    この壮大な再生を言葉で表現して本で主人公と一緒に体験できる

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    2023年11月19日
  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)

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    1899年とあるので、まだ世界大戦前の、村田先生の土耳古(トルコ)滞在記。
    村田先生は『家守綺譚』や『冬虫夏草』でも名前があがっていた、綿貫の友人。
    エフェンディは、昔トルコで用いた学者・上流階級の人に対する尊称とのこと。

    当然だけど、語り手が変わることで前2作とは少し趣が違う。
    村田はトルコに居て、世界情勢が綿貫よりも見えているわけだし。
    著者の梨木さんは当時のトルコ、スタンブール(イスタンブール)の様子について丁寧に描かれている。
    時代的にも首都がアンカラに制定される前なので、イスタンブールは多くの人種でごった返し、栄えている。
    その殆どがイスラム教徒だ。
    そんなわけで、前半はトルコの

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    2023年11月17日
  • 冬虫夏草(新潮文庫)

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    『家守綺譚』を読み終えてから、だいぶ経ってしまった。
    それでも、この世界観にホッとする。
    何も起きないのだが…いや、起こるは起こるのだが、季節や動植物の精霊に関してはまるで起きて当たり前のような語り口。(前作も同様)
    たとえば狸が化けて法話を行ったり。
    ムジナが毘沙門祭りに現れたり。
    イワナの夫婦が宿屋を営んでいたり。
    それだけでなく、神々も妖怪も姿を表す。
    赤竜、天狗、河童…。

    主人公である綿貫征四郎が記した随筆のような作りだが、すんなりと世界観に浸るには、まず『家守綺譚』を読んでからの方が良い。
    その『家守綺譚』同様、各章が植物の名前になっている。
    私なんぞは、もうこの時点でときめいてい

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    2023年11月08日