梨木香歩のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
植物や鳥を見て感じたことから、人の生き方や人間関係へと思いを巡らせていく。見過ごしてしまいそうな小さな草花や生き物のちょっとした動きにも興味を持って見ているところや、その人らしくあればいいというメッセージが、梨木さんらしくて良い。
2007〜2009年に雑誌で連載されたエッセイをまとめたエッセイ集で、当時はあまりにも急激に右傾化したので危機感が強まったことが反映されたものとなったそうだが、今読んでいても違和感がない。2015年文庫版あとがきでは「以前にも増して国の先行きに危機感を感じる世の中になってきた」と書かれているが、今はさらに危機感が強まっているのではないだろうか。 -
Posted by ブクログ
読み終わりたくなかったけど読み終わっちまった!2025年の100冊目に相応しい作品だった!!
家守奇譚からの村田エフェンディ滞土録からの…冬虫夏草!!!最高のシリーズだった。
夏目友人帳とか好きな人本当に読んでほしい…
この作品を紹介するならまず家守奇譚を読んでほしいのであえて紹介はしないんだけどとにかく最高だった、本当に心の底からずっとずっと読んでいたかった。
特に桔梗と寒菊が好きだったな、どっちも泣いたし、主人公である綿貫を私はすでにめちゃ信頼してるんだけどそれをさらに強固にさせてくれる感じ、非常に好きだわ〜。
あーー、最高だったなー。このシリーズの3冊はいつでも読めるように買う!!家にあってほしい!
今年の100冊目でした、ありがとう!!!! -
Posted by ブクログ
ゆるゆる、あわあわと不思議な日常が綴られた一冊。
「左(さ)は学士綿貫征四郎(わたぬきせいしろう)の著述せしもの。」という一文から始まる本書。
小説家を志す主人公の綿貫征四郎は親友の高堂(こうどう)の父親から「年老いたので嫁に行った娘の近くに隠居する、ついてはこの家の守をしてくれないか」という話を持ち掛けられる。人の住まない家はすぐに傷むので、綿貫がここで暮らして毎日窓の開け閉めをしてくれるのならば、いくばくかの月謝を払おうという申し出に対し、綿貫は英語学校の非常勤講師という副業を辞め、いそいそとこの一軒家で暮らし始める。
私にはピンと来なかったのだけれど「山一つ越えたとろにある湖」「家の北側は山になっている。山の裾(すそ)には湖から引いた疏水(そすい)が走っている。」といった描写から、地元の人などには京都の山科(やましな)辺りのことを書いているな、と見当がつくらしい。湖は琵琶湖のことだ。
ネットで検索をしてみると山科の地元の人が本の記述に合わせて写真と解説文を掲載している個人サイトを見つけた。周辺マップまで作ってあるので実際に散策してみたくなる。本文の中で土地名が具体的に示されることは無い。けれど綿貫の暮らしぶりを読んでいるとそういったことが読み取れる描写となっているようだ。興味深かった。サイトを制作した方は本当にこの作品を読んだ時に嬉しかったんだろうな。
時代も明確に示されることはない。けれど読んでいると何となく「明治くらいの話かな」と分かる。帯文にも「それはついこの間、ほんの百年前の物語。」とある。解説にも「明治三十年後半くらいを想像すればいいのか」と書いてあった。
物語はすべて植物名の全二十八章から成り立つ。
・サルスベリ
・都わすれ
・ヒツジグサ
・ダァリヤ
・ドクダミ
・カラスウリ
・竹の花
・白木蓮
・木槿(むくげ)
・ツリガネニンジン
・南蛮ギセル
・紅葉
・葛(くず)
・萩(はぎ)
・ススキ
・ホトトギス
・野菊
・ネズ
・サザンカ
・リュウノヒゲ
・檸檬
・南天
・ふきのとう
・セツブンソウ
・貝母(ばいも)
・山椒(さんしょう)
・桜
・葡萄(ぶどう)
綿貫が家に移り住んでから手間をかけてやった庭のサルスベリが二十年ぶりに満開の花を咲かせたところから物語がはじまる。
ボート部に所属していて湖でボートを漕いでいる最中に行方不明になり死亡した綿貫の親友、高堂が床の間の掛け軸からやってきて「サルスベリのやつが、おまえに懸想している。」と教えてくれる。それで何が起こるかというと特に大きな事件も起こらず次のお話へといく。
読んで分かる通り超常的な事が次々と起こっている。けれど最初こそ河童が出たり、小鬼が出たりすることを珍しがりこそすれ、すぐにそんなものかと受け入れてしまう。また次の話へと進む。章ごとに話が完結するので短編集のような本なのだが、登場人物の会話等から全部の章は時系列で進んでいるようである。日記帳みたいに。
ただ、6月~9月に花が咲く「サルスベリ」から始まって7つ目の章の「竹の花」までは私の世界の四季と合っているように思えるのだが、次の8つ目の章の「白木蓮」は3月~4月に咲く花である。冬が来ていない。
17番目の「野菊」と18番目の「ネズ」19番目の「サザンカ」あたりも厳しい冬の描写が書かれてなくて、冬が無いような感じがする。そういえば夏の暑さにうだっているという話も無かった。
ここが京都というなら盆地特有の「夏は暑く、冬は寒い」という激しい寒暖差があるはずなのだけれど、ずっと気持ちの良い初春から晩秋あたりを繰り返しているように見える。
もしかしたら冬と夏の記録を書いていない、という設定なのかもしれない。しかし、最後の二十八章で「サルスベリの花がいくつかほころび始めているのに気づいた。」という記述があるので一章の時の季節に向かっている風だ。この世界ではこういった具合に良い季節だけを気持ちよく巡っているのではないか。
似ているようで現実世界とは違う、ちょっと極楽めいた所なのだろう。
この極楽めいた場所で清貧の精神を持って生活する主人公の姿勢が気持ちが良く、幻想的な話で読後感が良い。本当に素敵な一冊。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯
古書店巡りしてたときに偶然見かけて、
普段なら買わないジャンルなのですが妙に目が惹かれて、
購入。
読み、泣きました。
実話であり、できる限り感情を省いた記録だと著者が心がけており、
それでも滲み出る「この子が愛おしかった」故の表現の数々に私はとても嬉しくて……。
内容ですが、
戦時中、あるピアニストの婦人が拾ったスズメの記録です。
12年生きたスズメの生涯について、
老いて大病を患った彼の傍らで、思い出を語ってくれています。
小鳥と暮らしたことのある人なら
共感や想像が簡単だと思います。
首にぴったりくっついて同じベッドで眠るなんて、
多分飼ったことない人だと「潰さない!?」と驚くと思います。
でもそれが好きな子、いるんですよ……。
わかる……。
わかる……。
love……。
スズメが芸をすることについても、
小鳥って意外と協力的なことがあって……
信頼関係があれば可能で……
とりあえず……鳥好きに、おすすめ。
あと著者がイギリス人でキリスト教徒なので動物との向き合い方が少し知れて嬉しい。
■最後に
鳥が、好きです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ物語は小さな島が舞台で、過去と現在が静かに呼応しながら展開していく。最初は時間軸がある物語と気づかずに読んでいたから、50年後の章に入った時には驚いた。過去編には馴染みのない植物や生き物、伝統的な建物の構造名称など調べながら読み進めたので、じっくり没入していった。
50年後の島を訪れた主人公が目にする変わり果てた姿には、私も一緒に落胆してしまった。開発によって失われた自然や、忘れ去られていく伝統の描写は胸に刺さるものがあった。でも、物語が終盤に向かうにつれて平家に関する伏線が回収されたり、スッキリもした。また、変化に対する心持ちが変化していく過程も丁寧に描かれていて良かった。
この小説を読んで一番考えさせられたのは、歴史や伝統、文化などが時代の流れの中で変化があったり、もしくは廃れていくものもあるという事。島出身の人ですら自分たちのルーツを知らないという現実は、決して他人事じゃないと感じた。戦前の生き証人が亡くなりつつある今、何が正しい記録なのかを見極めることすら難しいんだろうなって思う。
私も現代社会の便利さを享受して生きているけれど、だからといってその土地の歴史や文化を無かったことにはしたくない。何か大きなことができるわけじゃないけれど、せめて父や母のルーツについて話を聞いて、ささやかな記録を残しておこうと思った。