梨木香歩のレビュー一覧
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ネタバレ先に梨木さんの「家守綺譚」を読んでいた。少し昔の日本家屋での、穏やかな日常を描いた作品だったので、本作とは全く別物と思っていたら、一部、同じ登場人物が描かれていて、その繋がりは嬉しい驚きだった。
本作は、イスタンブールを旅しているような気分に浸れるもの、を求めて手に取り、まさにそんな期待に応えてくれる作品だった。そして最後には、「歴史、人々の暮らし、国家のありよう」を問う、胸に迫る結末が待っていた。
私は世界史に触れる時、『各時代、各地域、そこで暮らす様々な身分の人たちの生活や心情を、自分の中で再現する』ことを心掛けており、その姿勢は、作者があとがきに書いた執筆姿勢と共鳴するものでもあって -
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だいぶ前に単行本では読んでいたけれど、すごく好きだったことしか覚えていなくて再読。
ちょうど今、散歩道のサルスベリが満開だ。
高堂が来て、「──サルスベリのやつが、おまえに懸想をしている」と言ったあたりで、もう心をつかまれた。
ああ、これやっぱり好きなやつだと思った。
続編があると知ったので、そちらも読みたい。
会話文はかぎ括弧がなく、「──」で始まっているからか、征四郎に共感しながら読むというより、一歩後ろから眺めているような、夢の中の出来事のような感覚になった。
川に遊びに行く時、祖父に「河童に尻子玉を抜かれるから深いとこに行ったらあかん。」と言われたことを思い出す。
山あいの小さ -
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温かくて、少し不思議で、切ない物語だった。
どこか海外の翻訳本や明治の文豪の作品を思わせるあまり砕けていない文体が好きだった。
私のお気に入りである、筒井康隆の『旅のラゴス』と少し似ていた。
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不思議な下宿。魅惑の異文化。かけがえのない友人たち。
留学生・村田がトルコで過ごした青春の日々。
19世紀末のトルコ、スタンブール。留学生の村田は、ドイツ人のオットー、ギリシア人のディミィトリスと共に英国婦人が営む下宿に住まう。朗誦の声が響き香辛料の薫る町で、人や人ならぬ者との豊かな出会いを重ねながら、異文化に触れ見聞を深める日々。しかし国同士の争いごとが、朋輩ら -
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〈再登録〉「家守綺譚」でも触れられていた綿貫の友人・村田のトルコ滞在記。エフェンディ(学士)として過ごす村田から見た異国でのかけがえのない日々の記録。
奇妙な出来事に遭遇しながらも、国も宗教も違う人々と理解し合っていく村田。彼らとのやり取りが面白かっただけに、その後の世界状況の中、それぞれの運命を生きざるを得なかったのが悲しい。ムハンマドに拾われた生意気なオウムに楽しませてもらいました。このオウムが後に感動的な展開へと導きます。
百年前の架空の滞在記がこんなにも何かを訴えかけるのは、歴史の陰できっとこんな若者達が存在していたからだと思います。 -
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ネタバレ――
大満足の222頁。
久し振りに溢れるように泣いた…西武新宿線の車内でね。ええ。
自分は世界を知らないなぁ、と思いながらも頑張って読む。もっと真面目に世界史に取り組んでおけばよかった、って後悔は何度も何度もしています。これからもしていくことでしょう。勉強しろって? いやぁ…ねぇ?
19世紀末のトルコを舞台に、日本人留学生村田の日常を…と思いきや、中盤から物語は飛翔し、民俗学的な怪しさを孕みながら戦争を、理不尽を、その中で確かに息をするひととひととのつながりを、悲しく描き出してゆく。その波に心地よく揺られ、揺らされ…痺れるような若々しい痛みが芯に残る。
巧い。前半の瑞々しさは -
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『f植物園の巣穴』の姉妹編。
めちゃくちゃ面白かった!
この面白味も『f植物園の巣穴』があってこそ。
ということで、☆4だった『f植物園の巣穴』も☆5に修正し、こちらも勿論☆5!
ご興味がおありの方は是非、『f植物園の巣穴』から読んでいただきたい。
まだ三十代だが頭痛・腰痛持ちのうえ四十肩と鬱に悩まされている佐田(後に頸椎ヘルニアも加わってもう大変っ)。
名は山幸彦(やまさちひこ)。
なんだか神話の登場人物みたいだが、名字は佐田!
そう、『f植物園の巣穴』の佐田豊彦の曾孫にあたる。
そして従姉妹の名前が海幸彦(うみさちひこ)!
いや、女性なので海幸比子(通称:海子)と書くのだが。
さらには -
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f植物園に転任してきた佐田豊彦。
造成された水生植物園が担当だ。
彼はそこを「隠り江」と名付けて情熱を注ぐ。
が、ある日大切にしていた日本水仙がなぎ倒されていることに気付く。
何物かが通ったように、椋の大木の"うろ"から水辺へと倒れていたのだ。
思い起こせば、自分はその"うろ"に落ちたのではなかったか?
なのに、そこからの記憶がない。
次の記憶は唐突に自室で寝ている場面。
そして歯痛の為に歯科医へ。
前世は犬だったという歯科医の妻、ナマズの神主…次々現れる不思議な人物と、交錯する千代との思い出、ねえやのお千代との思い出、椋の大木、かつて抜いてしまった白 -
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異文化交流とか異文化理解と言うと大袈裟なわりに浅薄な感じになってしまう。異国の人(に限らず他者)と関係を築くことは肩肘張るような特別なことではなく日常の延長なんだと感じた。国籍を越えたおつきあいの場合は、〇〇人という認識も必要ではあろうけど、その上で〇〇さんというように個として理解することが、あたりまえだけど大事だなと改めて実感した。
その一方で、特に国際情勢が緊張感を増している時は国という概念は否が応でもつきまとうということも考えさせられる。いくら個人間で強いつながりを築いていても国同士の関係が悪化している場合は個人間の絆が断ち切られたり、時には不本意ながら殺しあうことになる可能性も生じて -
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何年か前に「五十肩」を患い、また「実家の空き家化問題」を抱える身として、馴染みやすい設定だった。
「f植物園の巣穴」の続編ではあるが、こちらは前作の主人公の曾孫の時代=現代のお話で、文体もとっつきやすい感じがする。結末も現代的というか現実的な印象。こちらを先に読んでもいいかもしれない(どちらが先でも楽しめるはず)。
前作となる「f植物園の巣穴」のレビューでは「フロイトの治療過程を思わせた」と書いたが、強引にいえば、こちらはユングの集合的無意識になるだろうか。
梨木氏の作品では人が生きていく上での「土地」との関わり方がテーマになることが多い。昨今は SDGs達成度がどうであるとかいうドライ -
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やっぱり すごいなぁ 梨木果歩さんの世界観。
初めての短編集だとか。
8編の短編と中核となる中編「丹生都比売(におつひめ)」。
短編にも世界観がでているけれど、丹生都比売はさすが。
どんどん引き込まれていく、戻れなくなる・・・
それにしてもこの世界観をこんなきれいな文章で表現するなんてすごい。
壬申の乱の人間関係がこんなことになっていたのは、習ったはずがまったく頭の中に残っていませんでした。
あとがきには「ひとはみな、それぞれの生の寂しみを引き受けて生きていく、という芯を持つ蔓なのだろうと思う」。
間違いなく自分の世界を変えてくれた作家さんの一人です。
これからも梨木さんの本は読み続け -
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ネタバレ沼地のある森を抜けて 梨木香歩
ぬか床から人がってのでファンタジー?と思ってたら人が死んでるってのでホラー?そこからトラウマとかルーツ探し?と読み進めると、最後壮大な生命と再生の物語
この最後を読む為に今までの鬱々としたのがあったのね、と
言葉にできないほどにカタルシス凄い
"解き放たれてあれ
母の繰り返しでも、父の繰り返しでもない。先祖の誰でもない、まったく世界でただ一つの、存在なのだから、と"
もういないのに傷つけられた記憶と対人恐怖症だけ残ってる私には
この本はとてもよかった
この壮大な再生を言葉で表現して本で主人公と一緒に体験できる