梨木香歩のレビュー一覧
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少し前に読んだ『ピスタチオ』も良かったけど、こっちも超良かった!!
読書時の私自身の心持ちにもよると思うけれど、読みごたえとしては『海うそ』の方がずっと良かったかも。
昭和初期。
人文地理学者の秋野は、亡くなった同室の主任教授が残した研究を補完する為、南九州の「遅島」を訪れる。
(秋野は一昨年に許嫁を、翌年には相次いで両親も亡くしている)
遅島には、かつて修験道の霊山があった。
そして死者からの言葉を伝える「モノミミ」と呼ばれる者たちも存在していた。
しかし、神道を国体として確固たるものにしたかった当時の政府は、民間宗教の排除に乗り出した。
この島で知り合った山根氏は、まずその標的とな -
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梨木香歩さん訳の、
1953年初版のベストセラー。
ある1人の寡婦が出会った、自然界では生きていけないだろう雀の子供。
その雀-クラレンスと名付けられた雀の、12年に渡る生涯。
フラットに書かれた文章に現れる、キップス夫人の洞察力の深さにも驚かさせるが、
街中で景色に溶け込むように眺めていた雀が
こんなに感情豊かで、才能溢れる鳥であることを
本書を通じて知ることが出来てよかったと思う。
訳者も書いている通り、クラレンスが老いて、
いつ亡くなるのかも分からない中で書かれた
物語であるからか、クラレンスが全盛期である頃の生き生きとした描写の中にも、一貫して静謐さが漂っている。
全ての生き物が迎える -
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ネタバレ何か特別派手なことが起こるわけではないのだけれど、人種も国籍も宗教もちがう登場人物達が織り成す物語の言葉のひとつひとつが胸にささる。
トルコがまだオスマン帝国の時代、第一次世界大戦が始まる前の時代に、バックグラウンドが違う人達が一緒に暮らすのは、現代の何倍もの苦労があったのだろうと思う。
その中で完全にお互いのことが理解できるわけではないけれども、お互いの文化を尊重しあって生活する登場人物たちはすごく素敵だと思うし、私もそうありたいと思った。
ディミストリが言うように、私たちは人間で、およそ人間に関わることで、私たちに無縁なことは一つもないのだから。 -
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ネタバレこの物語の中にいつまでも浸っていたくて、毎日少しづつ時間をかけて読み進めた。
知らない植物や言葉が出てきたら都度調べながらゆっくりと。
昨日の続きから読み始めようと思って、本を開くが、昨日読んでいた物語の内容がパッと思い浮かばない。
少し戻って話を思い出してから読み進める。
面白くなくて話を忘れているのではなく、現実とそうでない世界との境界線が曖昧で物語に入るのに少し時間がかかるのだ。
最後、ゴローが此方に向かってくる時の文章が、自分の目が綿貫の目になったかのように、ありありと思いうかび思わず涙してしまった。
家守奇譚と冬虫夏草はこれから先、何度も読み返す作品だと思う。 -
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ネタバレ先に梨木さんの「家守綺譚」を読んでいた。少し昔の日本家屋での、穏やかな日常を描いた作品だったので、本作とは全く別物と思っていたら、一部、同じ登場人物が描かれていて、その繋がりは嬉しい驚きだった。
本作は、イスタンブールを旅しているような気分に浸れるもの、を求めて手に取り、まさにそんな期待に応えてくれる作品だった。そして最後には、「歴史、人々の暮らし、国家のありよう」を問う、胸に迫る結末が待っていた。
私は世界史に触れる時、『各時代、各地域、そこで暮らす様々な身分の人たちの生活や心情を、自分の中で再現する』ことを心掛けており、その姿勢は、作者があとがきに書いた執筆姿勢と共鳴するものでもあって -
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温かくて、少し不思議で、切ない物語だった。
どこか海外の翻訳本や明治の文豪の作品を思わせるあまり砕けていない文体が好きだった。
私のお気に入りである、筒井康隆の『旅のラゴス』と少し似ていた。
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不思議な下宿。魅惑の異文化。かけがえのない友人たち。
留学生・村田がトルコで過ごした青春の日々。
19世紀末のトルコ、スタンブール。留学生の村田は、ドイツ人のオットー、ギリシア人のディミィトリスと共に英国婦人が営む下宿に住まう。朗誦の声が響き香辛料の薫る町で、人や人ならぬ者との豊かな出会いを重ねながら、異文化に触れ見聞を深める日々。しかし国同士の争いごとが、朋輩ら -
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〈再登録〉「家守綺譚」でも触れられていた綿貫の友人・村田のトルコ滞在記。エフェンディ(学士)として過ごす村田から見た異国でのかけがえのない日々の記録。
奇妙な出来事に遭遇しながらも、国も宗教も違う人々と理解し合っていく村田。彼らとのやり取りが面白かっただけに、その後の世界状況の中、それぞれの運命を生きざるを得なかったのが悲しい。ムハンマドに拾われた生意気なオウムに楽しませてもらいました。このオウムが後に感動的な展開へと導きます。
百年前の架空の滞在記がこんなにも何かを訴えかけるのは、歴史の陰できっとこんな若者達が存在していたからだと思います。 -
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ネタバレ――
大満足の222頁。
久し振りに溢れるように泣いた…西武新宿線の車内でね。ええ。
自分は世界を知らないなぁ、と思いながらも頑張って読む。もっと真面目に世界史に取り組んでおけばよかった、って後悔は何度も何度もしています。これからもしていくことでしょう。勉強しろって? いやぁ…ねぇ?
19世紀末のトルコを舞台に、日本人留学生村田の日常を…と思いきや、中盤から物語は飛翔し、民俗学的な怪しさを孕みながら戦争を、理不尽を、その中で確かに息をするひととひととのつながりを、悲しく描き出してゆく。その波に心地よく揺られ、揺らされ…痺れるような若々しい痛みが芯に残る。
巧い。前半の瑞々しさは -
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『f植物園の巣穴』の姉妹編。
めちゃくちゃ面白かった!
この面白味も『f植物園の巣穴』があってこそ。
ということで、☆4だった『f植物園の巣穴』も☆5に修正し、こちらも勿論☆5!
ご興味がおありの方は是非、『f植物園の巣穴』から読んでいただきたい。
まだ三十代だが頭痛・腰痛持ちのうえ四十肩と鬱に悩まされている佐田(後に頸椎ヘルニアも加わってもう大変っ)。
名は山幸彦(やまさちひこ)。
なんだか神話の登場人物みたいだが、名字は佐田!
そう、『f植物園の巣穴』の佐田豊彦の曾孫にあたる。
そして従姉妹の名前が海幸彦(うみさちひこ)!
いや、女性なので海幸比子(通称:海子)と書くのだが。
さらには -
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f植物園に転任してきた佐田豊彦。
造成された水生植物園が担当だ。
彼はそこを「隠り江」と名付けて情熱を注ぐ。
が、ある日大切にしていた日本水仙がなぎ倒されていることに気付く。
何物かが通ったように、椋の大木の"うろ"から水辺へと倒れていたのだ。
思い起こせば、自分はその"うろ"に落ちたのではなかったか?
なのに、そこからの記憶がない。
次の記憶は唐突に自室で寝ている場面。
そして歯痛の為に歯科医へ。
前世は犬だったという歯科医の妻、ナマズの神主…次々現れる不思議な人物と、交錯する千代との思い出、ねえやのお千代との思い出、椋の大木、かつて抜いてしまった白