梨木香歩のレビュー一覧
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異文化交流とか異文化理解と言うと大袈裟なわりに浅薄な感じになってしまう。異国の人(に限らず他者)と関係を築くことは肩肘張るような特別なことではなく日常の延長なんだと感じた。国籍を越えたおつきあいの場合は、〇〇人という認識も必要ではあろうけど、その上で〇〇さんというように個として理解することが、あたりまえだけど大事だなと改めて実感した。
その一方で、特に国際情勢が緊張感を増している時は国という概念は否が応でもつきまとうということも考えさせられる。いくら個人間で強いつながりを築いていても国同士の関係が悪化している場合は個人間の絆が断ち切られたり、時には不本意ながら殺しあうことになる可能性も生じて -
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ネタバレ主人公の「まい」は、思春期特有の揺れ動く気持ちから学校に行けなくなり、自然に囲まれた祖母の家でしばらく暮らすことになる。この祖母の人柄や家がとても魅力的で、あっという間にその世界観に引き込まれてしまった。食事や掃除、物の扱い方に至るまで一つひとつの所作が丁寧で、庭のハーブや季節の草花を愛で、洗濯や料理に使うのが「たまに」ではなく、「日常」であることに憧れてしまう。
まいは祖母との生活の中で、大切なことをいくつも学び、揺れ動きながらも徐々に視座を高め、物事や人を深く受け止める力を養っていく。何より魅力的なのは、まいと祖母の関係性である。祖母は厳しくも温かく、時には根気強くまいに寄り添い続け、歳の -
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何年か前に「五十肩」を患い、また「実家の空き家化問題」を抱える身として、馴染みやすい設定だった。
「f植物園の巣穴」の続編ではあるが、こちらは前作の主人公の曾孫の時代=現代のお話で、文体もとっつきやすい感じがする。結末も現代的というか現実的な印象。こちらを先に読んでもいいかもしれない(どちらが先でも楽しめるはず)。
前作となる「f植物園の巣穴」のレビューでは「フロイトの治療過程を思わせた」と書いたが、強引にいえば、こちらはユングの集合的無意識になるだろうか。
梨木氏の作品では人が生きていく上での「土地」との関わり方がテーマになることが多い。昨今は SDGs達成度がどうであるとかいうドライ -
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やっぱり すごいなぁ 梨木果歩さんの世界観。
初めての短編集だとか。
8編の短編と中核となる中編「丹生都比売(におつひめ)」。
短編にも世界観がでているけれど、丹生都比売はさすが。
どんどん引き込まれていく、戻れなくなる・・・
それにしてもこの世界観をこんなきれいな文章で表現するなんてすごい。
壬申の乱の人間関係がこんなことになっていたのは、習ったはずがまったく頭の中に残っていませんでした。
あとがきには「ひとはみな、それぞれの生の寂しみを引き受けて生きていく、という芯を持つ蔓なのだろうと思う」。
間違いなく自分の世界を変えてくれた作家さんの一人です。
これからも梨木さんの本は読み続け -
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ネタバレ沼地のある森を抜けて 梨木香歩
ぬか床から人がってのでファンタジー?と思ってたら人が死んでるってのでホラー?そこからトラウマとかルーツ探し?と読み進めると、最後壮大な生命と再生の物語
この最後を読む為に今までの鬱々としたのがあったのね、と
言葉にできないほどにカタルシス凄い
"解き放たれてあれ
母の繰り返しでも、父の繰り返しでもない。先祖の誰でもない、まったく世界でただ一つの、存在なのだから、と"
もういないのに傷つけられた記憶と対人恐怖症だけ残ってる私には
この本はとてもよかった
この壮大な再生を言葉で表現して本で主人公と一緒に体験できる -
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1899年とあるので、まだ世界大戦前の、村田先生の土耳古(トルコ)滞在記。
村田先生は『家守綺譚』や『冬虫夏草』でも名前があがっていた、綿貫の友人。
エフェンディは、昔トルコで用いた学者・上流階級の人に対する尊称とのこと。
当然だけど、語り手が変わることで前2作とは少し趣が違う。
村田はトルコに居て、世界情勢が綿貫よりも見えているわけだし。
著者の梨木さんは当時のトルコ、スタンブール(イスタンブール)の様子について丁寧に描かれている。
時代的にも首都がアンカラに制定される前なので、イスタンブールは多くの人種でごった返し、栄えている。
その殆どがイスラム教徒だ。
そんなわけで、前半はトルコの -
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『家守綺譚』を読み終えてから、だいぶ経ってしまった。
それでも、この世界観にホッとする。
何も起きないのだが…いや、起こるは起こるのだが、季節や動植物の精霊に関してはまるで起きて当たり前のような語り口。(前作も同様)
たとえば狸が化けて法話を行ったり。
ムジナが毘沙門祭りに現れたり。
イワナの夫婦が宿屋を営んでいたり。
それだけでなく、神々も妖怪も姿を表す。
赤竜、天狗、河童…。
主人公である綿貫征四郎が記した随筆のような作りだが、すんなりと世界観に浸るには、まず『家守綺譚』を読んでからの方が良い。
その『家守綺譚』同様、各章が植物の名前になっている。
私なんぞは、もうこの時点でときめいてい -
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梨木香歩さんのエッセイ
八ヶ岳での山小屋探しからはじまる。
贅沢は論外、本格ログハウスも身の丈に合わず、
新建材だらけもちょっと‥‥‥
とか、このエッセイ全体を通しての、価値観、本質に通じる部分かな。
冬の八ヶ岳おろしは凄まじく、
「あの突風具合ときたら。漫然とただ吹いていると言うのではなく、ときに屋根を剥いだりブロックまでもピンポイントで吹き飛ばしたりする」
山の中の植物、動物、特に小鳥たちとのやりとりが素敵に描かれている。
とても面白かったのが、かわいい小鳥たちに混じって、一際大きなカラスの「悪太郎」が飛来し、用意した餌の牛脂ボールを狙われる。
ベランダで強そうに腕を組んだりして見張って -
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梨木香歩さんのファンなら必ず手元に置いておきたい本。
デビューから2019年までに色々なところで発表されたエッセイをまとめたもの。
鳥のこと、バードストライクのこと、植物のこと、イスタンブールやエストニアのこと、時間・空間の境界のことなど。
これまで梨木さんがどれだけ丁寧に生きてきたかがよく分かる。
一つ一つ丁寧に向き合う姿勢が素晴らしい。
もっと早くに梨木さんの小説に触れ、この本を読んでいたら、自分ももっと丁寧に生きてこれたかも。
少なくともこれからはもっともっと丁寧に生きてゆこうと思いました。
いつかお会いしてお話を伺いたい、そんなことが出来たら夢のようですね。 -
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八ヶ岳の裾野の山小屋で過ごす時間を軸に、動植物や自然と自分のくらし、父、人生の終わり、言葉と政治など、身の回りのことを語るエッセイ。
梨木さんはいつも、表層を一枚ずつ剥がしてその深層まで描きこむようなお話を書く人だと思っていて、エッセイは「渡りの足跡」以来であまり読んでいませんが、こちらは小説と同じでかなりディープな部分まで踏み込んで書かれたんだなあ、という印象(他のをあまり知らないのでここは何とも、なんですが)。
ちなみに「渡りの足跡」は鳥の渡りという事象からさまざまなことに思いを馳せるエッセイ集。これを読んで梨木さんがガチのナチュラリストだったんだ、と知りました。
このエッセイ集では八