梨木香歩のレビュー一覧

  • ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

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    ネタバレ

    第二次大戦下のロンドンで、著者クレア・キップスは一羽の子雀を拾う。子雀は翼と足に障害があり、自然界では生きられないと判断したため、手元で育てることにしたキップスだったが、子雀は二人の共同生活に想像もつかないほどの大きな喜びと驚きを与えたのだった……優れた野鳥観察記であるとともに、戦時下のロンドンで人々がどのように考え、生き、暮らしに喜びを見出していたかも垣間見られる戦時記録としても興味深い。

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    2025年01月14日
  • 渡りの足跡(新潮文庫)

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    「渡り」をキーワードに様々な事象が語られる。その場所の季節感、鳥、花、土の声や匂いがありありと伝わってくる。自然の強さ、美しさ、儚さ。生命の尊さ。

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    2024年12月20日
  • からくりからくさ(新潮文庫)

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    「ここにはないなにか」を探そうとしないで。ここが、あなたの場所。

    祖母が遺した古い家に女が四人、私たちは共同生活を始めた。糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。やさしく硬質な結界。だれかが孕む葛藤も、どこかでつながっている四人の思いも、すべてはこの結界と共にある。心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして――。生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。
    「新潮社」内容紹介より

    ちょと染色をする機会があって、それを友人に話したらこの本を紹介してもらったので読んでみた.

    染色をするにあたっていろいろと調べてみたのだけれど

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    2024年12月15日
  • ここに物語が(新潮文庫)

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    ネタバレ

    書評、解説、時々エッセイ。

    梨木香歩の小説を読むと、彼女は理系の人だなあと思うことが多々ある。
    割と自然科学に造詣が深いから、というだけではなく、書いてある文章の行間に込められた情報が多いような気がするのだ。
    つまり、形としては散文なのだけど、実は詩なのではないかと思えるような文章を書く人だから。

    それは誰に言ったこともなく、心の中でひっそりと思っていたのだが、実は初めての自費出版本は詩集だったと書いてある箇所をよんで、「やっぱりね」と一人強く頷いたのだった。

    地球上で起こる出来事は、すべてこの地球上の生命に無関係ではない、ということを手を変え品を変え小説に書き綴ってきた彼女の書評は、浅

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    2024年12月13日
  • 海うそ

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    少し前に読んだ『ピスタチオ』も良かったけど、こっちも超良かった!!
    読書時の私自身の心持ちにもよると思うけれど、読みごたえとしては『海うそ』の方がずっと良かったかも。

    昭和初期。
    人文地理学者の秋野は、亡くなった同室の主任教授が残した研究を補完する為、南九州の「遅島」を訪れる。
    (秋野は一昨年に許嫁を、翌年には相次いで両親も亡くしている)

    遅島には、かつて修験道の霊山があった。
    そして死者からの言葉を伝える「モノミミ」と呼ばれる者たちも存在していた。
    しかし、神道を国体として確固たるものにしたかった当時の政府は、民間宗教の排除に乗り出した。
    この島で知り合った山根氏は、まずその標的とな

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    2024年12月03日
  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)

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    家守綺譚からの繋がりでトルコ滞在中の村田視点。
    やっぱり不思議なことが起こる。

    このシリーズ手元に置きたいくらい好み。

    ゴローが息災なだけで満足だし、ラストの鸚鵡の一声には村田と一緒に泣いた。

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    2024年12月02日
  • ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

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    梨木香歩さん訳の、
    1953年初版のベストセラー。
    ある1人の寡婦が出会った、自然界では生きていけないだろう雀の子供。
    その雀-クラレンスと名付けられた雀の、12年に渡る生涯。
    フラットに書かれた文章に現れる、キップス夫人の洞察力の深さにも驚かさせるが、
    街中で景色に溶け込むように眺めていた雀が
    こんなに感情豊かで、才能溢れる鳥であることを
    本書を通じて知ることが出来てよかったと思う。
    訳者も書いている通り、クラレンスが老いて、
    いつ亡くなるのかも分からない中で書かれた
    物語であるからか、クラレンスが全盛期である頃の生き生きとした描写の中にも、一貫して静謐さが漂っている。
    全ての生き物が迎える

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    2024年12月02日
  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)

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    ネタバレ

    何か特別派手なことが起こるわけではないのだけれど、人種も国籍も宗教もちがう登場人物達が織り成す物語の言葉のひとつひとつが胸にささる。
    トルコがまだオスマン帝国の時代、第一次世界大戦が始まる前の時代に、バックグラウンドが違う人達が一緒に暮らすのは、現代の何倍もの苦労があったのだろうと思う。
    その中で完全にお互いのことが理解できるわけではないけれども、お互いの文化を尊重しあって生活する登場人物たちはすごく素敵だと思うし、私もそうありたいと思った。
    ディミストリが言うように、私たちは人間で、およそ人間に関わることで、私たちに無縁なことは一つもないのだから。

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    2024年11月30日
  • 春になったら莓を摘みに(新潮文庫)

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    高校生の時に読んでからずっと忘れられない一冊。
    価値観が違う人・もの・出来事を、理解できなくても自分の中に受容する姿勢の大切さを今でも語りかけてくる。

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    2024年11月28日
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか

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    青春テーマの本探しにて。
    うちが好きなのは大人が読んでおもしろい青春小説なのか。
    たった一日の中で獲得する世界への気づき。外からのきっかけで見つけてくる内にいた自分。
    そういう子どもたちがまぶしくてうらやましくて、うちにとっては「失われた青春」って感じなのかなあ。

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    2024年11月24日
  • 裏庭(新潮文庫)

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    今の自分に置き換えて、生きるヒントをいただいたような、少し救われたような気持ちになった。

    私は、傷を恐れ、支配されてしまいがちなので、読み進めるたびに反省...。鎧を着ても、傷は治らないんだよなぁ。
    裏庭を冒険する照美ちゃんの姿を見て、勇気が湧いた。


    実は高校生くらいの時に読んだけれど、その時はなんとなく世界観がイメージしにくかった。大人になって、やっと面白さがわかるようになった。
    今出会えてよかったと思える作品でした。

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    2024年11月24日
  • 冬虫夏草(新潮文庫)

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    家守綺譚の主人公が犬を探しに旅に出る。
    怪異といえばそうだけどもっと優しい不思議な話。
    各話タイトルの植物も知らないものが多い。

    ゴローが尻尾振って駆けてくるだけで目頭が熱くなる(多分満面の笑み

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    2024年11月19日
  • 冬虫夏草(新潮文庫)

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    ネタバレ

    この物語の中にいつまでも浸っていたくて、毎日少しづつ時間をかけて読み進めた。
    知らない植物や言葉が出てきたら都度調べながらゆっくりと。
    昨日の続きから読み始めようと思って、本を開くが、昨日読んでいた物語の内容がパッと思い浮かばない。
    少し戻って話を思い出してから読み進める。
    面白くなくて話を忘れているのではなく、現実とそうでない世界との境界線が曖昧で物語に入るのに少し時間がかかるのだ。

    最後、ゴローが此方に向かってくる時の文章が、自分の目が綿貫の目になったかのように、ありありと思いうかび思わず涙してしまった。

    家守奇譚と冬虫夏草はこれから先、何度も読み返す作品だと思う。

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    2024年09月23日
  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)

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    ネタバレ

    先に梨木さんの「家守綺譚」を読んでいた。少し昔の日本家屋での、穏やかな日常を描いた作品だったので、本作とは全く別物と思っていたら、一部、同じ登場人物が描かれていて、その繋がりは嬉しい驚きだった。
    本作は、イスタンブールを旅しているような気分に浸れるもの、を求めて手に取り、まさにそんな期待に応えてくれる作品だった。そして最後には、「歴史、人々の暮らし、国家のありよう」を問う、胸に迫る結末が待っていた。
    私は世界史に触れる時、『各時代、各地域、そこで暮らす様々な身分の人たちの生活や心情を、自分の中で再現する』ことを心掛けており、その姿勢は、作者があとがきに書いた執筆姿勢と共鳴するものでもあって

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    2024年09月21日
  • 西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集

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    ラストは感動する結末でした。

    「生死」の概念を考える。
    「人」とは何なのか考える。
    「自分」とは、「さよなら」には...、

    昔話のようなフワフワとした優しい小説なのですが
    たくさん考えさせられましたし、
    たくさん学びました。

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    2024年08月19日
  • 鳥と雲と薬草袋/風と双眼鏡、膝掛け毛布(新潮文庫)

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    その土地の地名の成り立ち、謂れ、
    なんとなく過ぎ去ってそういうものだと思っていることって多い。

    名前ってとても大切だし、
    文化、社会に密接に繋がる言葉をすごく面白いと思う。

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    2024年07月27日
  • やがて満ちてくる光の(新潮文庫)

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    ながーくちまちまと読んできた本。ついに読み終わってしまった。
    梨木さんの好きな事とか知りたい事とかをとことん追求する感じとか、社会の色々な問題とかいろんなジャンルのことが書いてあって素直に興味が湧いた。何回も手を止めて調べたりでいい意味で全然進まない本だった。
    全く別のものが突然線になって繋がる感覚、あーそれめっちゃわかるって思ったし、大声では言えないけどどこか似た間隔を持ってるような気がするなと感じた。エッセイの類ってどこか苦手に思ってあんまり読んでなかったけどこれは毎回本を開くのが楽しみでした。

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    2024年07月26日
  • 家守綺譚(新潮文庫)

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    だいぶ前に単行本では読んでいたけれど、すごく好きだったことしか覚えていなくて再読。
    ちょうど今、散歩道のサルスベリが満開だ。

    高堂が来て、「──サルスベリのやつが、おまえに懸想をしている」と言ったあたりで、もう心をつかまれた。
    ああ、これやっぱり好きなやつだと思った。
    続編があると知ったので、そちらも読みたい。

    会話文はかぎ括弧がなく、「──」で始まっているからか、征四郎に共感しながら読むというより、一歩後ろから眺めているような、夢の中の出来事のような感覚になった。


    川に遊びに行く時、祖父に「河童に尻子玉を抜かれるから深いとこに行ったらあかん。」と言われたことを思い出す。
    山あいの小さ

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    2024年10月16日
  • エンジェル エンジェル エンジェル(新潮文庫)

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    洋酒の効いたパウンドケーキ。
    昔はよくわからなかったけれど、大人になるとその苦さも甘さも全部美味しくなってしまうような。
    子供の時に読んで、大人になってまた読むべき本。
    昔はふんふんと流して読んでいたフレーズが、「私が、悪かったねぇ」という彼女から溢れた何気無い言葉が、やっと救いの言葉に響いて、朝から涙ぐんでしまった。
    ご馳走様でした。

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    2024年07月20日
  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)

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    温かくて、少し不思議で、切ない物語だった。
    どこか海外の翻訳本や明治の文豪の作品を思わせるあまり砕けていない文体が好きだった。
    私のお気に入りである、筒井康隆の『旅のラゴス』と少し似ていた。
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    不思議な下宿。魅惑の異文化。かけがえのない友人たち。
    留学生・村田がトルコで過ごした青春の日々。

    19世紀末のトルコ、スタンブール。留学生の村田は、ドイツ人のオットー、ギリシア人のディミィトリスと共に英国婦人が営む下宿に住まう。朗誦の声が響き香辛料の薫る町で、人や人ならぬ者との豊かな出会いを重ねながら、異文化に触れ見聞を深める日々。しかし国同士の争いごとが、朋輩ら

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    2024年07月08日