梨木香歩のレビュー一覧
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「りかさん」
幼い頃大切に抱いていた人形は、ぬいぐるみは、どこにやってしまっただろうか。あんなに楽しかった人形遊びをしなくなったのはいつだったか。温かい懐古と今を生きる私に寄り添ってくれるようなりかさんやおばあちゃんの言葉で胸がいっぱいになる。初めは奇妙な世界の話だと思ったけれど、じわじわと馴染んで、泣きそうになるくらい優しい。梨木香歩の作品は、いつも優しい。
「ミケルの庭」
「りかさん」の続編。幼子を可愛がる女性たち、皆、一様に優しく見える、幼子とは赤の他人なのに。
母性とはなんだろうと、いつも思う。純粋に「可愛い」と想う気持ちのようでもあるが、私がこれまで読んできた文学において、多くの場合 -
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日常のふとしたことから、梨木さんが徒然に思いを馳せてゆくエッセイ。
「ゆるやかにつながる」では、ツルの群れの話から私たち人間もまた群れる生き物だという話へ。
「できるならより風通しの良い、おおらかな群れをつくるための努力をしたい。個性的であることを、柔らかく受け容れられるゆるやかな絆で結ばれた群れを。傷ついたものがいればただそっとしておいてやり、異端であるものにも何となく居場所が与えられ生きていけるような群れを。ちょっとぐらい自分たちと違うところがあるからといって…(略)…詰め寄り排斥にかかることがないような群れを。」
これにはとても共感した。
「世界は生きている」では、清里の森から様々に -
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“魔女修行”ってきっと、「誰かの理想に合わせる」ことじゃなくて、
「自分で決めたことを、自分のペースでやり抜く」ことなのだと思う。
外の声に揺れずに、自分との小さな約束を積み重ねていくこと。
それはやがて“自己信頼”になって、“自己受容”に繋がっていく。
特に心に残ったのは、何気ない日常のなかに込められたさりげない優しさ。
過去に受け取った愛を、未来に贈り返していくような、静かで美しい循環。
そして、物語の中には「相手を理解しようとする対話」の大切さも描かれていて、
感情をそのままぶつけるのではなく、背景ごと受け止めようとする眼差しが印象的だった。
「変わらなくても大丈夫」とまっすぐに肯 -
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4人の下宿生と一体の人形が暮らす家を中心に物語は進む。
登場人物は、染織、機織りなどの手仕事に関わっていて、自然や手仕事を通して、人の生きることに対しての心持ちと言えるようなことが語られる。
機を織る。布を織る。
様々な色の糸を縦横に使い、一枚の布を織る。
簡単には織れない、地道な作業。
織り上がった布には表裏があり、様々な顔を見せる。
至る所で機織りはされ、たしかにその土地に根付いている伝統はあり、脈々と伝えられてきた。
自分の気持ちや境遇、良い時も悪い時も、ただ機を織る。
そうして手仕事をつないできた歴史があるということを知ることは、少しだけ人生を豊かにしてくれると思う。
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20年くらい前に読んで衝撃を受けた作品
本の世界に没入するという体験を初めてした作品でもあります。
主人公の照美の近所にある
丘の麓のバーンズ屋敷
お化け屋敷とも呼ばれるそこは
子どもの頃の大人に怒られるかもしれないけど
行ってみたいという
子どもの好奇心をくすぐるような不思議な場所
照美のお父さんもお母さんも
実は小さい頃にそこで遊んでいたり
近所に住む友達のおじいちゃんから
そこの屋敷にまつわる話を色々聞いたり
近所ではあるけど
日常ではないそこがミステリアスで
なんともいえない魅力を放っています。
バーンズ屋敷に関わる"裏庭"
照美はそこに足を踏み入れていく
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ネタバレ梨木香歩さん、こんなところにまで達してしまわれたんですね、と深く深くため息をつくように思ってしまう作品でした。
以前、どこかに掲載されていたインタビューで、この「海うそ」という作品を境に、何か大きく変わったというようなことを語っておられた記憶があります。この記憶もかなりあやふやなのですが、それからなんとなく、この作品は、重要な作品だと自分の中で位置づけてきた気がします。そういう先入観で読み始めたのですが、それが確信となるような、なんだかどっしとした重みのある作品でした。
昭和の始めに、人文地理学研究者の秋野が研究のために訪れる南九州の遅島は、読むにつれて実在の島としか思えなくなり、思わず地図 -
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大好きな家守綺譚の続編。相変わらず読んでいてずっとこの世界にいたい読み終わりたくないという気持ちになる。
明治時代が舞台のこの作品、ファンタジックとか幻想的という感じではなく、解説にもあったが科学的ではない出来事があくまで普通の世界として淡々と語られていくところが不思議と心地良い。これを読むと科学の常識で縛られた世界って安心するようで窮屈で居心地が悪かったんだなと思えてくる。
綿貫、高堂、南川、犬のゴロー、河童の少年、、、
綿貫と友人たちの会話がなんとも好き。みんなそれぞれいいキャラ。淡々とした中にそこはかとなく漂う綿貫の高堂へのなんとも言えない感情が良い。ゴローは相変わらず素晴らしい犬でたま -
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序に「私は野生の鳥は基本的には野にあるべきだと思っている」とある。だから、作者のキップスさんは生まれたばかりで巣から落ちた障害のあるスズメを深い愛情を持って育てながらも、彼がスズメであることを尊重して適度な距離感を保った視点で見ていたのだろう。この本がスズメの生態や人と一緒に暮らしていたからこそ開花した潜在的な能力などの観察記録としても興味深いものになっているのは、そのおかげだろうと思う。
科学的な興味もさることながら、このスズメの愛らしさと逞しさには驚かされる。巣に見立てたベッドで迸るような歓喜の歌をひとくさり歌ったり、老いて病気になってからも生きる意志と聡明さで自由が利かなくなっていく状況 -
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ネタバレなんとゆうか、これは、語彙力を試されているかのような話だった。
あらすじをゆうと、主人公の叔母が亡くなり、一族の故郷の島にある、沼の成分が入った家宝の「ぬか床」を受け継いだところから話が始まります。
ぬか床って、わたしもかつて世話をしていましたが、毎日手を入れて底からかき混ぜて空気を入れないといけない、けっこう手間のかかるものです。
それを引き取るかわりに叔母のマンションも譲り受けるのですが、そのぬか床の手入れを怠ると、ぬか床から文句を言われたり酷い匂いがしてきたり、昨日まではなかったはずの卵がぬか床の中から生まれて、卵からは人が生まれて、それが子供の頃亡くなった同級生の男の子に見えたり、