梨木香歩のレビュー一覧
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梨木さんの日常を語るエッセイ。家の周りで咲く小さな花や人とのつながりを、優しく鋭い目で見つめ、温かい言葉でつづる、何気ない暮らしの羅針盤。
梨木さんはふと歩いてみた隣との細い境、手入れのされていない庭で一綸やっと花をつけて咲いている貝母を見つける。
この花は束にして活けるとお互いの巻きひげでまるで縛りあって立っているかのように見える、そういう生き方から無理をしない、寄りかかれるものがあれば寄りかかってみる、状況に合わせて生きていく姿勢を感じる。
そしてサステナビリティー(持続可能性)という言葉に気が付く、よく見かけるようになったその言葉はやがて時代の波に流されていくだろう、生きていく間にはさまざまな事柄に出会うが、無理のない持続可能な生活、無理をしないで環境に合わせて生きる羅針盤を、ひっそりと咲く貝母に見る。
クリスマスローズは植えても何年も咲かない。うちでも5.6年して「咲く気がないのかな」と思い始めたころやっと咲いた。そのあとの生命力は凄くてどんどん増えて困った。あちこちに分けて今では切り花にもちょうどいい花数になった。こういう風に梨木さんと同じような経験をし、ガーデニングのあれこれを読むと、何か細くても花好きは何かつながるような感じがする。
ツルが見たくて出水にいく。珍しい野生のアスパラガスを摘みに行く。
ツバメや、スズメや、ドバトを見て距離の取り方について考える。むつかしくもあり、時には寂しくもある距離について。「近づき過ぎず、遠ざからない」と見出しにつけている。
ミントを噛んで野生を感じたり、月明かりの下で木々の葉を透して違った風景を感じる。夜の時間に開く五感を感じ不思議に開いていくのを楽しむ「五感の開き方閉じ方」より
「五感を喧騒に閉じて、世界の風に開く」私もそうありたいと共感する。
夢は他愛のないものかもしれないが、時には公共性をもっているのではないか。夢を語るうちに相手の何か深い部分を動かしまた伝播していく。そんなことがあるかもしれない「夢と付き合う」
これが一番心に残った。
「プラスチック膜を破って」
駅のアナウンスの途中で、「ああっ!」と言って声がとまった。緊急でもなさそうだったのだが、今まで意識しなかったホームの人たちが一斉に表情を緩めた。「いったい何が起こったのだろう」と囁きが聞こえた。
「知りたい『ああっ!』のわけを」バラバラだった人々は心を一つにした。
常に透明なプラスチック膜で覆われているような人達が膜を破った瞬間だった。そして何事もなかったかのように入ってきた電車にのって別れて行った。
時々こういう瞬間がある。こんなことがなぜ表情まで変化させるほど幸せにするのだろう。梨木さんとともにいると小さな花を見つけ、時にはつけてきた表情を崩す瞬間に会う。
スッカリ硬化した膜を付けている人もいる。でも少しでも「破れ」ができたらすかさず笑顔で迎えたい。暖かい春風が吹き込むように、と締めて居る。
こうして梨木さんの日常は続く、「百パーセントここにいる」時を楽しむために。
探している羅針盤の振れが幸せな方向を向く、そんな優しい言葉や深い生き方にさりげなく触れている。 -
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いざという時のために取っておいた秘蔵の一冊。鈴鹿の山々を満たす清涼な空気、沢のせせらぎ、秋草の彩り。冬の間、長らく恋しく思っていた自然が目の前に広がった。
番犬ゴローが行方不明となり、わずかな手がかりをもとに最後に目撃された山へと分け入る綿貫。前作の『家守綺譚』では妖や霊、人がひっきりなしに彼のもとを訪れたのに対して、本作では彼自身が赴く。河童、天狗、赤竜に、イワナの夫婦。坊主に神主、村の人々。様々な存在とのささやかな邂逅がささくれだった心に沁みる…。最近寺社仏閣巡りにハマっているのもあり、あちこちと寄り道をする主人公に自分を重ねながら読んだ。辛い現実からしばし目を逸らさせてくれたかと思いきや、今後の顛末を思うと少しばかり苦い思いが残る。いずれにせよ一文一文に癒されたことは確か。辛いと思った時は何度でも読み返すだろう。 -
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さすが、愛蔵決定版、と銘打って紹介されているだけある。3冊読んだけど(正確にいうと『西の魔女が死んだ』部分は1冊分しか読んでないけど)この1冊が一番好き。読む前からそんな予感はあった。シンプルな表紙の深い緑色がこの話にとてもよく似合うこと。スピンオフの関連話が3つも入っていること。その3つどれもが素敵な話だったこと…
ふーーー。しみじみ満足です。
「こんなことは私の致命傷にはならない」
うーん。沁みる。おばあちゃん、私も大好き。
おばあちゃん目線で書かれたお話『かまどに小枝を』も、とても素敵。
私も子どもを育てるようになって、母の偉大さを思い知っているのだけど、母も私や私の子どもたちのことを祈ってくれているのだと思う。なんともありがたい。
今週は私の子どもたちは相次いで体調不良になった。娘が「ばあばと話したい…」と言うので電話した。具合が悪くて泣いていた娘だったが、話しているうちに落ち着いた。ミラクルだ。私の母も魔女なんじゃないかと思う。
まいにとってのサンクチュアリに、大人になったまいが足を踏み入れたとき、どんな言葉を聞くだろう。
まいが大人になったときの物語を読んでみたいけど、いろんな想像ができるっていう意味では書かれてなくてもいい、かな…。いやー、でも、まいが子育てしてる話として、おばあちゃんからバトンをつないでいるエッセンスが入ってるような話も読みたいなぁ。
文字の大きさや行間は、ピンクの表紙の小学館が一番読みやすいけど、いい歳した大人として手元に置きたいのは、この1冊に決めた。まさに、愛蔵モノ。
巻末に載っている梨木香歩の他の作品紹介を読んで、何冊か気になるものをメモした。
読みたい本がたくさんあって、幸せ。 -
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うだつの上がらない主人公が暮らすことになった家には広い庭がある。その庭や近くの山などの四季折々の様子が描かれる中で、植物が不思議な振る舞いをしたり、河童やら狸やら不思議な生き物が現れたりするのが、いかにも梨木香歩さんの世界で良い。次々と現れる不思議なものたちを、そういうものだからと大らかに受け容れる人たちの物語を読んでいくうちに、気持ちが明るく軽くなってくる。
梨木香歩さんの作品に通底する「分かっていないことは分かっている」、「理解はできないが受け容れる」ことは、排外主義が蔓延り、同調圧力が強まっている今の世の中で、大切にしなければいけないことだとあらためて思った。 -
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話は、マイが中学3年の授業中に西に住む祖母が心臓発作で倒れた連絡が来た所から始まり、母と車で祖母の家に向かう時に、2年前の祖母と2人での生活を思い出す。
中学1年の春マイは母親に「わたしはもう学校へは行かない。あそこは私に苦痛を与える場でしかないの」と告げ、不登校に。
人里離れた山の中で1人暮らしの祖母(イギリス人)に預けられる事に。
祖母は母から電話で、マイは「扱いにくい子」「生きにくいタイプの子」と説明されても喜んでマイを引き受けた。
「私(祖母)の家系は魔女の能力を持つ人が多いからマイにもその血が流れていて、鍛練すれば、あなたにも出来る様に成るわよ。」
マイと祖母の生活が始まった。
祖母はマイの色々な不安に優しく向き合ってあげるとても素敵な魔女でした。
マイに「人は死んだらどうなるの?」と聞かれ、「実は、私も死んだ事が無いからわからないのよ。」と答えながらも、自分の死生観を説明し、最後に「おばあちゃんが死んだら、マイに知らせてあげますよ」
って。
「扱いにくい子」「生きにくいタイプの子」
と思われている人々に、「それはそれで良いですよ。」と。私もエールをもらった気がしました。
最後はグッときちゃいました。
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Posted by ブクログ
植物や鳥を見て感じたことから、人の生き方や人間関係へと思いを巡らせていく。見過ごしてしまいそうな小さな草花や生き物のちょっとした動きにも興味を持って見ているところや、その人らしくあればいいというメッセージが、梨木さんらしくて良い。
2007〜2009年に雑誌で連載されたエッセイをまとめたエッセイ集で、当時はあまりにも急激に右傾化したので危機感が強まったことが反映されたものとなったそうだが、今読んでいても違和感がない。2015年文庫版あとがきでは「以前にも増して国の先行きに危機感を感じる世の中になってきた」と書かれているが、今はさらに危機感が強まっているのではないだろうか。