梨木香歩のレビュー一覧

  • 西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集

    Posted by ブクログ

    魔女と暮らした優しい日々のおはなし。心がじんわりあたたかくなった。
    話をする時にマイ、と必ず呼んでくれるのが愛情を感じた。短編のブラッキーの話も好き。愛犬とリンクしてちょっと涙が出た。

    0
    2025年05月03日
  • 西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集

    Posted by ブクログ

    “魔女修行”ってきっと、「誰かの理想に合わせる」ことじゃなくて、
    「自分で決めたことを、自分のペースでやり抜く」ことなのだと思う。
    外の声に揺れずに、自分との小さな約束を積み重ねていくこと。
    それはやがて“自己信頼”になって、“自己受容”に繋がっていく。

    特に心に残ったのは、何気ない日常のなかに込められたさりげない優しさ。
    過去に受け取った愛を、未来に贈り返していくような、静かで美しい循環。

    そして、物語の中には「相手を理解しようとする対話」の大切さも描かれていて、
    感情をそのままぶつけるのではなく、背景ごと受け止めようとする眼差しが印象的だった。

    「変わらなくても大丈夫」とまっすぐに肯

    0
    2025年04月23日
  • エストニア紀行―森の苔・庭の木漏れ日・海の葦―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    梨木さんの心情とともにエストニアを深く感じられる。エストニアに行ったことはないが、行ってみたくなり、人々の感性と優しい情熱が好きだった。

    エストニア人は、個人主義的な性格の強い、シャイな人たちで、群れるのを嫌うとこがあります。家の周りにも木を植える。防風林、というような実利的な面もありますが、なるべく人目を避けて、周りの人から見えないところに住みたいという気持ちが強いのだそうです。自然が大好きな人たちで、木も大好き。だから町中ですと生け垣が多いですが、田舎では、あんなふうに生長していく木を植えますね。目隠しの意味もあって。

    0
    2025年04月19日
  • からくりからくさ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    4人の下宿生と一体の人形が暮らす家を中心に物語は進む。

    登場人物は、染織、機織りなどの手仕事に関わっていて、自然や手仕事を通して、人の生きることに対しての心持ちと言えるようなことが語られる。

    機を織る。布を織る。

    様々な色の糸を縦横に使い、一枚の布を織る。

    簡単には織れない、地道な作業。

    織り上がった布には表裏があり、様々な顔を見せる。

    至る所で機織りはされ、たしかにその土地に根付いている伝統はあり、脈々と伝えられてきた。

    自分の気持ちや境遇、良い時も悪い時も、ただ機を織る。

    そうして手仕事をつないできた歴史があるということを知ることは、少しだけ人生を豊かにしてくれると思う。

    0
    2025年04月13日
  • 裏庭(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    20年くらい前に読んで衝撃を受けた作品
    本の世界に没入するという体験を初めてした作品でもあります。

    主人公の照美の近所にある
    丘の麓のバーンズ屋敷
    お化け屋敷とも呼ばれるそこは
    子どもの頃の大人に怒られるかもしれないけど
    行ってみたいという
    子どもの好奇心をくすぐるような不思議な場所
    照美のお父さんもお母さんも
    実は小さい頃にそこで遊んでいたり
    近所に住む友達のおじいちゃんから
    そこの屋敷にまつわる話を色々聞いたり

    近所ではあるけど
    日常ではないそこがミステリアスで
    なんともいえない魅力を放っています。

    バーンズ屋敷に関わる"裏庭"
    照美はそこに足を踏み入れていく

    0
    2025年04月05日
  • 春になったら莓を摘みに(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    今の季節にあった題名である。都会より自然のある生活を愛する著者の大学出たてで英国Sワーデンの下宿先を二十年後訪ね湖北地方を旅し、山を登り土地の人たちと交流して自分のアイデンティティを確かめながらまた、ニューヨークに渡りニューヨークの刺激に魅了し反核運動に参加したり、クリスマスパーティーに参加した話、カナダトロントに滞在してプリンスエドワード島での旅での老車掌とのやりとり、自閉症児との話など、爽やかな読後感のエッセイです。
     季節は今、題名の通りの時期ですが著者の温かな感性がただよう本でした。

    0
    2025年03月31日
  • 海うそ

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    梨木香歩さん、こんなところにまで達してしまわれたんですね、と深く深くため息をつくように思ってしまう作品でした。
    以前、どこかに掲載されていたインタビューで、この「海うそ」という作品を境に、何か大きく変わったというようなことを語っておられた記憶があります。この記憶もかなりあやふやなのですが、それからなんとなく、この作品は、重要な作品だと自分の中で位置づけてきた気がします。そういう先入観で読み始めたのですが、それが確信となるような、なんだかどっしとした重みのある作品でした。

    昭和の始めに、人文地理学研究者の秋野が研究のために訪れる南九州の遅島は、読むにつれて実在の島としか思えなくなり、思わず地図

    0
    2025年03月27日
  • やがて満ちてくる光の(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ・個性のはなし
    苦労して見つけた型にはまろうとしても、どうしてもはみ出してしまうものが個性。アニメや漫画のキャラクターみたいにひと方向に極端にモニョっとはみ出るものではなくて、生身の人間の個性っていうのは、自分で一生懸命作り上げた型をおしたら、360°全方向に少しずつ出てしまうものなんだろう。シーリングスタンプみたいな。
    それにしても犬に向かって「安易なパターンに堕するな」って解くのいいなっ

    ・ともだちのはなし
    村岡花子さん
    思っていることをありのまま言った日には誰とも友達になれないから、いつもいい加減に人と合うようなことを言って、あとは自分だけ考えているというような寂しい子だった。

    母校

    0
    2025年03月24日
  • 西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集

    Posted by ブクログ

    初見でしたが、短編も含めたこちらの一冊を読んで正解だったなと思いました。
    「魔女」とは言っても、ファンタジー要素が強いわけではなく、普通の人間が生きていくうえでの大切な考え方などを学ばせてもらいました。
    主人公を通して、自然の情景や感情の色が伝わってきて、作品に浸りながら素敵な時間が過ごせました。

    0
    2025年03月23日
  • 冬虫夏草(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    大好きな家守綺譚の続編。相変わらず読んでいてずっとこの世界にいたい読み終わりたくないという気持ちになる。
    明治時代が舞台のこの作品、ファンタジックとか幻想的という感じではなく、解説にもあったが科学的ではない出来事があくまで普通の世界として淡々と語られていくところが不思議と心地良い。これを読むと科学の常識で縛られた世界って安心するようで窮屈で居心地が悪かったんだなと思えてくる。
    綿貫、高堂、南川、犬のゴロー、河童の少年、、、
    綿貫と友人たちの会話がなんとも好き。みんなそれぞれいいキャラ。淡々とした中にそこはかとなく漂う綿貫の高堂へのなんとも言えない感情が良い。ゴローは相変わらず素晴らしい犬でたま

    0
    2025年03月31日
  • 海うそ

    Posted by ブクログ

    植生や遺跡の描写が緻密で
    実在の島ではないかと疑ってしまう
    島を歩いて伝承や考察
    信仰の対象であった名残を
    感じさせるシーンなど
    自分もフィールドワークに
    参加しているようだった

    最後にバブル期の開発?を
    思わせる場面があって
    面変わりをしんみりと感じつつも
    そういった開発は
    意外に失敗した事を
    知っているので
    この物語はまだ続いていて
    変化し続けている気がする

    ここ数年読んだ本の中で
    マイベストに入る本だなぁ
    どこか鄙びた温泉地に
    持っていって
    じんわりじっくり読みたい

    0
    2025年03月16日
  • ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

    Posted by ブクログ

    序に「私は野生の鳥は基本的には野にあるべきだと思っている」とある。だから、作者のキップスさんは生まれたばかりで巣から落ちた障害のあるスズメを深い愛情を持って育てながらも、彼がスズメであることを尊重して適度な距離感を保った視点で見ていたのだろう。この本がスズメの生態や人と一緒に暮らしていたからこそ開花した潜在的な能力などの観察記録としても興味深いものになっているのは、そのおかげだろうと思う。
    科学的な興味もさることながら、このスズメの愛らしさと逞しさには驚かされる。巣に見立てたベッドで迸るような歓喜の歌をひとくさり歌ったり、老いて病気になってからも生きる意志と聡明さで自由が利かなくなっていく状況

    0
    2025年03月15日
  • 沼地のある森を抜けて(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    なんとゆうか、これは、語彙力を試されているかのような話だった。

    あらすじをゆうと、主人公の叔母が亡くなり、一族の故郷の島にある、沼の成分が入った家宝の「ぬか床」を受け継いだところから話が始まります。

    ぬか床って、わたしもかつて世話をしていましたが、毎日手を入れて底からかき混ぜて空気を入れないといけない、けっこう手間のかかるものです。
    それを引き取るかわりに叔母のマンションも譲り受けるのですが、そのぬか床の手入れを怠ると、ぬか床から文句を言われたり酷い匂いがしてきたり、昨日まではなかったはずの卵がぬか床の中から生まれて、卵からは人が生まれて、それが子供の頃亡くなった同級生の男の子に見えたり、

    0
    2025年03月11日
  • 椿宿の辺りに

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    大事な本になった

    定期的な痛みがあって、それがなにから来ているんだろうと考えることもあった。

    この奇想天外な成り行きで、鬱もいつの間にか姿を消しました。ただ、快方への兆しの揺り戻しなのか、鈍い痛みが続いております。痛みと言っても、大きな隕石がなくなった跡の、巨大な穴のようなもの、何か非常な体積のものが去った、そのことの痛みが、地面に記憶されるように残っています。この痛みには不思議な愛着を感じ、手放したくないような気がしています。過去の痛みの記憶による痛み―――何とも個人的な、誰にもわかり得ない類の、だからこそこれだけは自分のものであるという、不思議な根っこのようなものを持った気分でいます。

    0
    2025年04月19日
  • 沼地のある森を抜けて(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    こんな物語に出会えて嬉しい。
    生物としての喜び、幸せを斬新な切り口で伝えてくれる。自分の存在まで背中を押された気分になった。幸せになろうと思える話、ちょっと忘れちゃった。また読みたい

    0
    2025年02月04日
  • ぐるりのこと(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    瞳という名前が誇らしくなった
    動物は瞳で会話できると思うし、瞳は自分と他の境界をなくすと思う
    境界を感じる人間生活は、私は嫌だ
    自分を開く、訓練。

    私たちの経験してこなかった相手の歴史に対して、そしてもしかしたらそれが自分のものになっていたかもしれない可能性に対して、自分を開いていく。

    他者の視点を、皮膚一枚下の自分の内で同時進行形で起きている世界として、客観的に捉えてゆく感覚を、意識的なわざとして自分のものにする。
    ずっとあたたかい世界にいたい

    0
    2025年02月06日
  • 冬虫夏草(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    人それぞれ、見えているものや見えている景色が違うのは当然のことなんだけど、それを改めて実感する。そういう作品だと感じました。

    どこか不思議な感覚になりました。

    0
    2025年02月03日
  • 冬虫夏草(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    物書きの綿貫は非日常的な日常を過ごす中、いなくなった犬のゴローを探すため鈴鹿に向かう。

    ひたすらどんどん歩いていく少し昔の旅。愛知川に沿った旅なので河童やイワナの夫婦など水辺の不思議な生き物との邂逅が多い。

    高堂もくせつよ(今回出番があまりない)だけど今回はさらにくせつよつよの友人・南川が印象に残る。個人的におかみさんの出番が少なかったのがちょっと寂しい。

    ゆったりした世界観を存分に味わいました。続編が出たら嬉しい。




    永源寺から車で20分ぐらいのところにコストコができてGoogleマップで見ると道路が綺麗になってますね。でも田んぼも多くてこれ以上開発されるってこともなさそうな気が

    0
    2025年01月31日
  • 裏庭(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    特に印象深い言葉は
    「自分の傷と真正面から向き合うよりは、似たような他人の傷を品評する方が遥かに楽だもんな」
    SNSで多く見かける批判の中にはこうした感情の裏返しの面があると思った。
    自分の傷と正面から向き合う主人公の照美との旅の中で勇気をもらえるような本でした。

    0
    2025年01月21日
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか

    Posted by ブクログ

    インジャの苦しみ、ユージンの苦しみを思うと胸が痛みます。私は人を傷つけながら生きてきたのではないかと考えさせられています。

    0
    2025年01月19日