梨木香歩のレビュー一覧

  • 沼地のある森を抜けて(新潮文庫)

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    梨木さんの世界。

    はじまりは「ぬかどこ」。
    世界に一つしかない細菌叢の世界。
    しかも時間とともに変化し続ける。

    一つの細胞から細胞膜、細胞壁、細菌、麹菌、動物、人。
    脈々と続く時間の流れ。
    境界のない世界。
    とても大きな世界感。

    人と人の結合がこのように語られるのか と驚き。
    「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」もすごい伏線だと思う。

    子どもの頃は100年なんて想像もできなかったけれど、梨木さんの世界に触れることで、今は1000年単位でも理解が出来るような気がします。

    この本も大切な一冊になりました。
    老若男女におすすめです。

    で、読み終わってすぐですが、もう一度読み返して

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    2021年07月07日
  • 炉辺の風おと

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    暖炉の薪に火を入れるような
    真剣さと、暖められる緩やかさを持って読み進めた。

    片手間には読めない、一つ、一つ
    心に響く。

    自然との向き合い方、
    動物たちとの関わり方、
    ものとの付き合い方、
    生と死の見つめ方、
    そして、今、コロナ禍に
    どう考えて、時を過ごすのか。

    たくさんの気づきがあった。
    少し荒むようなひっかかりのある日々の中、
    それをゆっくりと温めて、解いてくれるような。

    時に、最後の一行に深い深い余韻が
    あって、さぁ、あなたはどう思う?
    と、優しい宿題を与えられたような
    読後感もあった。

    何度も読み返したい、素晴らしい一冊。

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    2021年05月22日
  • 渡りの足跡(新潮文庫)

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    梨木さんのネイチャーライティング、エッセイ集。

    渡りをする鳥たち、周りの自然。
    とても深い知識に基づいたエッセイだけど文学的表現に富んだ、読み応えたっぷりの一冊。

    「街の機嫌」

    「ノーノーボーイ」

    「存在」は移動し、変化していく。生きることは時空の移動であり、それは変容を意味する。それが「渡り」の本質だろう。

    梨木さんの世界観に魅せられる、そんな一冊でした。
    これも手元にずっと置いておき、また何度も読み返したいと思います。

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    2021年04月30日
  • 海うそ

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    ネタバレ

    梨木さんの世界観。

    あまりに詳細な地図・場所の表現から、実際にある島かと思っていたけれど、実在はしない「遅島」。
    そこに住む人、動物、植物、そして水、風、海うそなどの自然。
    この世とあの世の境界が分らなくなるようなモノミミや洞窟の存在。
    静かに流れる時間が愛おしい。

    そして50年後の世界。
    家族との時間。

    色即是空、空即是色の世界。

    最後に出てくる木切れに書かれてあった「吾都」。
    ゾクゾクしました。

    私が一番気になったのはカモシカの存在でした。
    切ない・・

    この本もずっと手元に置いて、何度でも読み返したいと思います。

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    2021年04月20日
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか

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    たくさんの、本当に沢山の事を考えさせられる本やった。
    『群れ』の恐ろしさ。でも、群れてないと生きていけない人間。
    同調圧力。そして、無意識に圧力に押されて考える事をやめてしまう自分の心。
    怖い。
    きちんと、学んでおかないと、気付いたら戦争がおきてるかもしれない。おきてしまった後に気付いても遅すぎる。
    きちんと、学ばなければ。

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    2021年03月28日
  • 炉辺の風おと

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    読んでいて、体の奥底からふつふつと温められているような気がした。
    激しい言葉や暴力に訴えなくても、人は人を「焚きつける」ことができるのだなあと実感。

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    2021年03月02日
  • りかさん(新潮文庫)

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    梨木さんの世界観。
    とても素晴らしい。

    「からくりからくさ」の蓉子さんが子供の頃のお話。
    蓉子さんが素晴らしいのは、おばあちゃん(麻子さん)からもらった人形「りかさん」がいたからだったのか。。
    蓉子さんもとても素敵だけれど、原点は麻子さんとりかさん。
    「歴史って、裏にいろんな人の思いが地層のように積もっているんだねえ」
    なるほど。。

    人形を通して人の思いがある。
    こんな素敵な人形に出会いたいと思いました。

    文庫化のために書き下ろしされた「ミケルの庭」は「からくりからくさ」の後のお話。
    こうやって作品が繋がると、読んでいてゾクゾクっとしました。

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    2021年03月02日
  • エンジェル エンジェル エンジェル(新潮文庫)

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    これも すごい梨木さんの世界。

    あっちの世界とこっちの世界。
    人の中も複雑。
    天使と悪魔。
    それは本当にそれほど違う??
    なにもかも認めることができれば、それはすごいことだと思う。

    梨木さんの本は やっぱり良いなぁと思います。
    まだ買い置きしているものがあるので、順番に読んでいきたいと思います。

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    2021年02月17日
  • 不思議な羅針盤(新潮文庫)

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    2007年から2009年までの三年間、雑誌「ミセス」に連載されたエッセイ集。

    随所に梨木さんらしさが出ている。
    動植物
    への深い知識、人間としての大きさ、深い愛情。。
    特に最後の「どんぐりとカラスと暗闇」は梨木さんの思いが詰まっている。
    この本もまたずっと一緒にいたい一冊になりました。

    最近 良い本ばかりに巡り合い、とても充実しているように思います。

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    2021年02月07日
  • エストニア紀行―森の苔・庭の木漏れ日・海の葦―(新潮文庫)

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    すっかり梨木香歩さんにハマってしまっている。

    梨木さんがガイドさんとエストニアに取材。
    ただの海外取材ではなく、きちんと梨木さんの動植物、料理に対しての深い知識と想い、世界観が込められている。

    もうすっかりエストニアには行ったことがあるような気分。
    そして、今度はゆっくりと滞在したいと思ってしまう。
    コロナが治まったら絶対に行くぞ!!

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    2021年01月18日
  • からくりからくさ(新潮文庫)

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    素晴らしい梨木さんの世界。

    「りかさん」という本の続編だと、読み終わってから知りました。

    祖母の遺した家に住む蓉子とアメリカから日本の鍼灸の勉強をし蓉子とランゲージエクスチェンジをしているマーガレット、機織りをする紀久、テキスタイルの図案を研究している与希子の4人の女性の共同生活。

    草木染め、機織り、紬、能面、人形と日本の伝統文化とクルド人の背景も交えながら生きることの意義を教えてくれる。

    これも大切にしたい一冊になりました。
    手元に置いていて何度も読み返したい一冊です。

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    2020年12月29日
  • 炉辺の風おと

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    梨木香歩さんのエッセイを読むと、どの文章も、厳しく鋭く突き刺さってくるようだ。辛くなることもある。
    なにかを感じずにはいられない。感じなくてはならない、このまま読み飛ばしてはならない。非常に覚悟を問われるのだ。

    ———

    自分が死んだ後も世界はなくならない、自分だけが消えるのが怖い、といった感情は、確かに(精神が)幼いころにあった。
    そして今は、自分が死んだ後も鳥は樹々は海は空はずっとある、と思う。そうあって欲しい。
    『炉辺の風おと』p.115を読んでの感想。

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    2020年12月15日
  • 炉辺の風おと

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    ゆっくり、ひとつひとつの文章を、言葉を、味わいながら読んだ。

    梨木さんの野鳥や植物を観察する力、気にかける眼差しがとても素敵だなと憧れるも、私には何かが欠けている。いつか同じ景色を見ることができるのだろうか。

    言葉にできないけれど、こんな今だからこそ、大事に何度も何度も読み返したい。

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    2020年11月15日
  • f 植物園の巣穴

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    地球っこさんに教えていただいた前回読んだ「家守綺譚」がとっても面白かったので、次も地球っこさんが読まれていたこの本を読みました。

    うーむ とっても面白い。
    家守綺譚より、こちらの方がよりハマってしまいました。。

    解説から
    「穴」は垂直の移動。「川」は水平の移動を表す。

    語り手の人生における、三つの大きな喪失を巡る物語。

    この小説は、生と死の世界の間を往復し、死人と交流する物語でもある。

    読み終えて、初めからもう一度物語をたどり直してみると、あちこちに差し挟まれたエピソードが、初読時とは違う深い意味を帯びて迫ってくる。


    地球っこさん ありがとうございました。
    梨木香歩さんの本をもう

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    2020年11月09日
  • 不思議な羅針盤(新潮文庫)

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    自粛生活に伴い実家から送ってもらった本の中から再読。以前はいつ読んだか思い出せない。
    エッセイ本嫌いの私が、なぜかこの著者のエッセイ本だけは夢中になって読んでしまう。
    2007年から3年間雑誌に連載していた短編を集めた本だが、社会が少しずつきな臭くなっていく流れを危惧する言葉も並んでいる。2020年の今読み直してもリアルタイムで感じている心の靄を共有できる。今同じように社会がきな臭くなってきたわけではなく、この頃から少しずつ少しずつ、首を傾げてしまうような変化が続いているんだと思う。そして著者の描く他人との距離感は、今の社会情勢だからこそ一読の価値があると思う。

    この本の記憶は、狭い世界で豊

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    2020年08月15日
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか

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    中学生の姪によいのではないかと取り寄せ、まず自分で読んでみたら、すごくよかった。どんどんキナ臭くなってくる国を憂いてた梨木さんが若者のために書いた小説。同調圧力に負けない、些細な違和感を大事に、寛容であろうとすること、大人になるために大切なことがぎゅっと詰まっていた。

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    2020年07月31日
  • f 植物園の巣穴

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    この人の本の凄いところは、読み直せば読み直すほどどんどん好きになっていく不思議さにあると思う。続編を読むための再読だったけれど。繋がりがあるとこの本が生きる。どうか続編と続けて読んでほしい。

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    2020年07月05日
  • からくりからくさ(新潮文庫)

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    何冊か彼女の長編小説を読んでいるが、いつもその重層的な構造に、もしくはその絡まり合う要素にいつも目眩がする。考えてみれば、初めて読んだ「ピスタチオ」からしてそうだったのだが、その後の「沼地のある森を抜けて」など、複数の作品に共通している。そして、あえて共通項を探せば、女性、手仕事、自然、時代ということになるのだろうか。
    そして、最後にカタルシスを伴うような圧倒的な事象が起こることも共通か。
    などと分析されることを望んではいないのだろうが・・・

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    2020年06月28日
  • ぐるりのこと(新潮文庫)

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    言葉が分からないという関係のなかで、どうにかして相手を理解しようとすることが、コミュニケーションの大事な部分であると思う。
    相手の人生観、宗教的な背景、など知ろうとすること。
    通訳を通して得た言葉は、ただの言葉として分かりやすいけれども、本当に得るべきものは、相手を知ろうとする意識なのだと思う
    旅の途中、共通言語のない人との会話に四苦八苦したときのことを思い出した。

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    2020年05月14日
  • ぐるりのこと(新潮文庫)

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    梨木さんの文章や思考は循環的というか、むしろ連想的というか、思考の順番をそのままにしているので、ちょっと分かりにくいところもあるが、それでいてとても奥が深い。

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    2020年03月03日