梨木香歩のレビュー一覧

  • 海うそ
    ベストセラー小説「西の魔女が死んだ」で有名な梨木香歩の作品。

    梨木香歩の作品は、「西の魔女が死んだ」くらいしか読んだことがなかったので、作風の違いにすごく驚いた。
    同時に作者の作家のとしての力量が卓越していることを思い知らされた。

    久しぶりに自分の好みに合った美しく心に残る小説に出合ったと素直に...続きを読む
  • 海うそ
    再読。この地を再訪した気分になり、1回目よりもすんなりと物語に入り込めた。懐かしい自然を破壊してのリゾート開発進行中のような結末にも、自分の老いや社会の変化をどのように受け止めていくことができるのかという示唆に富んでいた。やっぱり最終章は泣けた。
  • 不思議な羅針盤(新潮文庫)
    梨木さんのエッセイ集。梨木さんの物語はいつも静かに思想を放っていて好きなのだけど。エッセイでは逆に思いの丈を語り尽くすスタイルになっていて、それがまた自分の対外的なものに対しての漠然とした不満を代弁してくれたような快感がある。ふと目撃した物事から社会、文化の問題点に想いを馳せる想像力の飛翔が素晴らし...続きを読む
  • エンジェル エンジェル エンジェル(新潮文庫)
    祖母のサワちゃん孫のコウちゃん。ふたりの真夜中の交流。水槽の灯りに包まれて、柔らかな時間を過ごす2人はきっとその時間だけ、別の時代を生きた同じ年頃の女の子でした。

    おばあちゃんの生きた時代。戦前の、生まれのいい女学生だったサワちゃんの暮らし。機械音のない家の中で、手仕事を重ねて日々を営む暮らし。初...続きを読む
  • 冬虫夏草(新潮文庫)
    「冬虫夏草」(梨木香歩)を読んだ。
    少しだけアブノーマルで仄暗い領域と緩やかに混じり合い静かな時間が緩々と流れているこの物語がたまらなく好き。
    「家守綺譚」と合わせて何度でも読みたい。

    「冬虫夏草」(梨木香歩)を読んだ。
    旅行中のホテルの部屋でゆっくり読みました。
    「家守綺譚」と合わせてこの二冊は...続きを読む
  • 海うそ
    この文体が好きだ。断然好きなのだ。
    「f植物園の巣穴」や「村田エフェンディ滞土禄」や「家守奇譚」および「冬虫夏草」や。
    凄まじい喪失感、といった手早い解説的な言葉を地の文に入れるのはどうかなー、と最初は思っていた。
    が、とはいえ作中でも明言されている通り、元来お喋りではなく「独白の人」なのだから、ま...続きを読む
  • 海うそ
    自然や地誌的な事柄にとても造詣が深い梨木さんです。このお話を読みやはりさすがだと満足して読み終えました。
    主人公の男子大学生、秋野は人文地理学を学んでおり、夏休みを利用して日本列島の南寄りに位置する、遅島という島の現地調査に回る。時代はまだ戦争が始まる前のことです。亡くなった研究所の主任教授の残した...続きを読む
  • 海うそ
     読み終えたとき、同著者によるエッセイ「エストニア紀行」のあるくだりが頭を抜けていった。それは、橋、に関するエピソードだったのだが、本書を味わってから連想されて改めて、ああ、梨木さんにあったのはこの虚脱感だったのか、と思い遣られ、瞑目した。
     小説というのは、読み手へ、読み手が現実には体験しない事件...続きを読む
  • 冬虫夏草(新潮文庫)
    植物の名前がつけられた章立ての短編が連なった構成で、ひとつ、ひとつ、読んでいくうちに、綿貫さんのお庭からはるか鈴鹿の山奥まで旅していて、話も不在の竜が復活するのかしないのかどんどん壮大になって、どうなるんだと、思っていたら、ストンと迎えた終わり方に、ああ良かったと安堵していました。

    イワナの夫婦が...続きを読む
  • 沼地のある森を抜けて(新潮文庫)
    2009年2月16日~17日。
     ミクロが作りだすマクロな世界って感じか。
     とても壮大な物語を読んだ気がする。
     誕生と死、圧倒的な孤独、細胞の夢。
     抽象的でもあり、非常に科学的でもある。
     ぬか床なんて庶民的な小道具を持ちだしてきて、こんな世界を作ってしまうんだからなぁ。
     ついで...続きを読む
  • エストニア紀行―森の苔・庭の木漏れ日・海の葦―(新潮文庫)
    数々の自然に対する造詣が深い梨木香歩のエストニア紀行文。エストニアがどこにある国なのか先ず確認する作業は厭うまでもなく、ページを開くと直ぐに地図が現れます。北欧のバルト海に面したロシアと隣合わせた位置でした。その旅の紹介は行きの飛行機内での様子から始まります。副題に「森の苔・庭の木漏れ日・海の葦」と...続きを読む
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか
    人がいかに簡単に周囲に流されるか、ということ。
    この物語の中に、流れに流されたくなくて一人になることを選んだ三人が出てくる。
    戦時中徴兵されることを肯じなかった人。
    命の授業という名目で自分のかわいがっていた鶏を絞めて食べることを強制された少年。
    心ならずもAVに出ることになってしまった少女。
    もう...続きを読む
  • ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯
     クレア・キップス著、梨木香歩訳「ある小さなスズメの記録」、2015.1(文庫)発行です。口絵・イラストは酒井駒子さん、解説小川洋子さんです。感動の書でした。第二次大戦下のイギリス、老ピアニストが出会った生まれたばかりの傷ついた小雀。愛情深く育てられた雀のクレランスとキップス夫人が共に暮らした12年...続きを読む
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか
    中学校でブックトーク。地味に見える本なので、なかなか手にとってもらえないけど、西の魔女…といっしょに紹介した。/辻塚
  • 不思議な羅針盤(新潮文庫)
    先日読んだ本『金曜日の本屋さん』の中で、梨木さんの文章が「文字に色がついているみたい」とありこのエッセイ集を読んだ。
    ほんとその通り!
    何気ない日常のあれこれについて、梨木さん目線で描かれてあり、五感を大いに刺激された。

    野に咲く貝母やスミレを「彼女」と親しみを込めて呼んだり、カラスとも意志疎通し...続きを読む
  • 丹生都比売 梨木香歩作品集
    シンプルな紺地のカバーが、文学的な雰囲気の短編集。
    しんとした気持ちで読みたい。

    短篇集とはいえ、表題作の『丹生都比売』(におつひめ)は独立して一冊で出版されたことのある長さであり、あとがきによれば、これは核になるお話で、他の作品もここから同じ蔓が伸びていった…ということだ。

    対象年齢も主人公の...続きを読む
  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか
    物語中盤まで油断してた〜
    確かに、タイトルからして何か重いものを示唆していたのだけれど、内容は多感な14歳の僕の日常ぐらいのものかななんて気軽な気持ちで読んでたのだけれど、途中、インジャちゃんが登場した辺りから、あ、やっぱり重い、今回の梨木さんはいつも以上に強いメッセージを持っていて、だから私も気軽...続きを読む
  • エンジェル エンジェル エンジェル(新潮文庫)
    文体から、いい子ちゃん小説かと思いきや、まったく逆ベクトルの凄まじい小説だった……!
    悪意、暴力、女性性、旧約聖書の世界、罪と罰、罪悪感、の連鎖。
    死体を石で幾度も打ち付ける場面には背筋が凍る思いをした。
    願わくば最後に飛び出してきたエンジェルが、さわちゃんの心に届かんことを。
  • ぐるりのこと(新潮文庫)
    私にとって大切な本になった。
    自然のことに精通している梨木さんの人間観察について書いてるところがとても好きだ。
    思慮深くて読みながらうなずいてしまう。
    特に好きなのは西郷隆盛について書いてるところ。通り一辺の分析ではない部分は読みごたえがあった。
    儒教的精神について書かれているところも共感した。
    ...続きを読む
  • ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯
    梨木香歩さん訳と表紙で買いました

    ピアニストのキップス夫人と体に多少不自由なところがある
    イエスズメのクラレンスの12年間の記録

    イエスズメの寿命は野生では2~3年程度
    その何倍もの時間を著者と生きたクラレンス

    淡々とつづられる戦中戦後の日々
    歌う才能、老いとリハビリ
    部屋の中で生き生きと日々...続きを読む