湊かなえのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ自分の見ている世界が普通ってわけじゃない。どんな見え方があってもいいんだと思える作品でした。
【感想】
蝶といえばアゲハ、蝶といえば学者の榊史朗。小さい頃の留美は、史朗の標本を見て、色で蝶の特性を表現できる史朗の目に憧れを抱いた。史郎にとって蝶が人生そのものだったように、留美にとっては史朗がそうだったんだと思った。
そして史郎(蝶)には、人がこうみえるのでしょう?と人間の内面を表現した人間標本を杏奈に作らせて、史朗に、自分も同じ世界が見えたことを伝えたかったんだと思った。
親子の愛のすれ違いにはもやもやした感情が残る。
留美と史朗が互いにその目を羨ましがっていたのが、ないものねだり〜と思 -
Posted by ブクログ
ネタバレ学校で起こった、担任教師の娘のプール溺死事件とそれに関わる人々を、章ごとに異なる人物の視点から描いたミステリー。
最初の森口先生ほ、生徒に語る文体で、生徒の発言の復唱を鉤括弧で表現するのが斬新。そして語り自体がユーモラスでありつつも、淡々とした中にある恐ろしさを感じる。
ある人物の主観ではこうだけど、他者から見ると違う、というのが多数あり、人物設定とプロットが見事。
文学的描写はかなり排除されていて、本筋がメインでぐんぐん物語が進む。
森口先生と母親日記はやや読みづらかったけど、直樹と修哉は没頭した。
ラストの研究室への仕掛けまで練られてて、すごい!と思いつつも、森口先生も復讐のために他 -
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題名とプロローグのせいで本作品は猟奇的な出来事が起きる事を想像してしまう。
しかし、本作は湊かなえ作品である事から残ページ過多であることから、『真相は?』と疑ってしまう???
芸術作品と作成過程の描写に対してグロ過ぎるような気もしますが、湊かなえさんの新境地といった気もします。
四元色の目の事を初めて知りました。
あと色盲の仕組みも少しだけ解りました。
癖と才能のトリガーが何処にあるかは解らない。良いトリガーだけ引き当てられれば良いのにと思います。
久々の湊かなえのイヤミス読んで良かった!
大学で蝶の研究をする榊史朗は最愛の息子を含む6人の少年達を手に掛け【人間標本】なる物を作 -
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ネタバレ前に読んだ彼女の著書「カケラ」「贖罪」と同じく、主人公の取材形式で事件を追っていく流れ。このタイプは湊かなえさんの3作品でしかまだ呼んだことがないが、相手の情報はたっぷり得れるのに対して主人公のことが全くわからないので、後々相手の発言によりタチの悪い主人公だと露呈される。そこを見抜こうとするのが楽しかった。
「自分の記憶で作られる過去と、他人の記憶で作られる過去。正しいのはどちらなのでしょう。」
主観と客観は全く異なるのだなあ、と。自分の中に華やかな思い出として残っていたとしても、他人からしたら別物かもしれない。
噂に関してもそうです。見たもの聞いたものが、どんどん誇張され見栄や妬みが含むこ -
Posted by ブクログ
ネタバレこの物語は、永瀬暁による手記「暁闇」と、金谷灯里の視点による「金星」という二つのパートで、同じ事件を描き出す構成になっています。なかでも印象に残ったのは、「金星」の終章に出てくる「真実は人の数だけ存在し、フィクションとノンフィクションの違いは、その一文を入れるか入れないか」という趣旨の一文でした。
読み進めているあいだ、私はずっと「暁闇」は事実で、「金星」はフィクションなのだろうと思い込んでいました。けれど、どちらもそれぞれの「真実」を書き記した、紛れもない事実だったのだと気づかされます。そのうえで「金星」において、金谷灯里が自分を投影した主人公の名前を「星賀(せいか)」としている点に、彼女