湊かなえのレビュー一覧
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ネタバレ湊かなえの『夜行観覧車』を見終えて感じたのは、これは単なる高級住宅地の闇の物語じゃなくて、「誰の中にもある息苦しさ」の話なんだと思った。
坂道病って、結局は“人と比べることでしか自分を測れなくなる病”で、環境が違っても誰でもかかる可能性がある。
登場人物たちはそれぞれ、見栄や周囲の目、理想の家族像に縛られて、自分で自分の首を締めていた。
カップラーメンを隠れて食べなければいけないような夫婦関係――そんな小さな不自由が積もって、大きな悲劇を生む。
「もっと正直で、もっと弱さを見せられる関係」でいられたら、誰も壊れずに済んだのかもしれない。
子育てしている身としては、「明日は我が身」と感じる部 -
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『人の良い部分と汚い部分を見事に書き分けられた作品』
最後まで読見終わるまで、何度“モヤモヤ”とした気持ちを感じただろう?
「表面上では『周囲から評判が良く、羨望の目を向けられる』ような家族でも必ず裏に隠されたものがある」、そんなことを言わさせてしまう作品だ。
そして、最後の最後には「これで本当によかったのか・・?」と感じてしまうのも本作の魅力なのではなんて感じている。
本作は、高級住宅街であるひばりヶ丘に立つ一家・高橋家で起こった殺人事件をきっかけに物語が始まる。
医学部や有名私立へ通う子供をもつ高橋家と、その向かいに住む癇癪持ちの娘・彩花をもつ遠藤家の変化が400ページ近くにわたって描 -
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「楽園」。この言葉からイメージされる楽園像は人それぞれ違ったものだろうが、この物語に出てきたトンガは私が思い描く楽園そのものだった。遠い遠い国の美しい島、濁りのない透明な空と海、白い砂浜に自分ただ1人。
自分を殺して、押しつぶされながら、やっと辿り着いた楽園に心が震えた。
また、「太陽」では、見事に”リアルな人間”が描かれており、自分の中のエゴや偽善に迫ってきて、1人でばつが悪くなる(これがあるから、湊さんはやめられない...!)。見えない傷を抱えていること、それぞれが思い通りにならない人生を一生懸命に生きていることに気付かされる。
救いと寄り添いを感じ、毒気が少ない作品だったため、湊かな -
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1年前から山にハマった。
低山で経験を積み、この夏初めて立山、燕岳、木曽駒ヶ岳に登った。どれも恋い焦がれた名峰。
山女日記に登場する山は、どれも登ったことがないけれど、登場人物が山頂を目指す気持ちはとても共感できる。
山は人生に似ている。
険しい箇所ほど狭くて、同行者と横並びで歩けないし、岩の直登は落石の可能性があるのでひとりずつしか登れない。
大事なときほど孤独で自分との対峙の時。
けれど、どんな山行も普段は嫌なやつ!と思っていても自分も反省するところがあるな。今度謝らなきゃなとか、、、。
自分の足音と荒い息しか聞こえていないのに、頭の中は色んな人のことで忙しく、素直に自分を見つめ直すことが -
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色んな人も書いてるけど登場人物の多さよね
学校を舞台にしてたらこの登場人物だけでは少ないと感じるまである
「高校入試」と言う規模感で言えば小さいものだけど中学生にとっては今後の人生を左右するというのが上手く作用していた
ましてや「一高」この高校に入りさえすれば!のような神様的扱いであるが故
大人達からの圧力やプレッシャーもあるのほんとに大人の厄介さみたいなものが描かれてる
自分の子どもなのに無理に勉学を強要させさらに今では「毒親」や「モンペ」と呼ばれる親についてが出てきているようだった
先生によっても考え方は全く違うし先生という前に1人の人間ということも考えなけれいけない
自分の通ってた高校も -
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湊かなえの長篇ミステリ作品『白ゆき姫殺人事件』を読みました。
湊かなえの作品は、昨年読んだアンソロジー作品『みんなの怪盗ルパン』に収録されていた『仏蘭西紳士』以来ですね。
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化粧品会社の美人社員が黒こげの遺体で発見された。
ひょんなことから事件の糸口を掴んだ週刊誌のフリー記者、赤星は独自に調査を始める。
人人への聞き込みの結果、浮かび上がってきたのは行方不明になった被害者の同僚。
ネット上では憶測が飛び交い、週刊誌報道は過熱する一方、匿名という名の皮をかぶった悪意と集団心理。
噂話の矛先は一体誰に刃を向けるのか。
傑作長編ミステリー。
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Posted by ブクログ
ちょっと重かったけど、面白かった。どこかに小さな違和感、亀裂をもち理想と現実が分からなくなって引き下がれなくなってしまった家族の崩壊と再生のお話。高級住宅街の中の話だからこそ、カップラーメンやポテチ、ファミレスが相対的に安心を象徴していたような気がした。高級住宅地に家を買うこと、息子を医者にすること、高級住宅街の地位を守ること。「傲慢」という言葉で片付けて仕舞えばそれまでだが、それは彼女らにとっては理想であり、人生をかけて手に入れたいもの。
タイトルが「夜行観覧車」なのはなぜだろうか。夜に進む崩壊と再生の輪廻を表しているのかなと思った。