村上春樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
◎記録
20代の時に一度読んだが、記憶が薄れたので再読。
30代になった今、20代に読んだ時とどう変わったのか比較しながら記録。
村上春樹さんの作品は数作しか読んだことないが、この作品は「メタファー」が多く登場する。
上では、15歳の少年:カフカと60代の老人:ナカタさん目線の話が交互に展開し、この2つの物語の関係は何か分からないまま進んでいく。
✔️「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」
これは本作では何度も登場する言葉だ。20代の頃は、15歳という若さで家出をするためには何事にもタフでいないとやっていけないよな、くらいに感じていたが、再読するとそれだけではないことに気づく。下の感想で述べる。
✔️「すべては想像力の問題なのだ。僕らの責任は想像力の中から始まる。イェーツが書いているIn dreams begin the responsibilities ーーまさにそのとおり。逆に言えば、想像力ないところに責任は生じないのかもしれない。このアイヒマンの例に見られるように。」p277-278
この言葉は20代の私にすごく響いた。これまで特に何も考えず、自分の考えを言葉や行動にしてきたが、その後に起こる出来事を想像したことはなかった。結果、後々思い出して不安になることも多々あった。何事も想像力がないと、上手くかないことも多い。自分の発言や行動に責任を持たなければならない。
✔️「差別されるのがどういうことなのか、それがどれくらい深く人を傷つけるのか、それは差別された人間にしかわからない。」p383-384
✔️「ただね、僕がそれよりもうんざりさせられるのは、想像力を欠いた人々だ。T•S•エリオットの言う〈うつろな人間たち〉」だ。その想像力に欠如した部分を、うつろな部分を、無感覚な藁くずで埋めて塞いでるくせに、自分ではそのことに気づかないで表を歩き回っている人間だ。そしてその無感覚さ、空疎な言葉を並べて、他人に無理に押しつけようとする人間だ。」p384
これは再読して心に残った文章である。
昨今、アンコンシャスバイアスや差別・偏見に厳しい時代になったため、この言葉の意味が理解できるようになったと思う。それまではどこか偏見強く持ったり物事を主観的にしか考えられない、つまり想像力は足りない人間だったと思う。自分が思う“当たり前”は、他人とって当たり前ではないということに気付けていなかったのだ。様々な人が存在し、その分だけ生活や考え・個性があることや、その人を受け入れることの大切さを考えさせられる。
人は経験しないとその痛み完全に理解することはできない。理解したくてもできない。かといって経験したいかと言われると困ることもある。誰かに寄り添うことや共感することは容易ではない。口先だけの言葉や慰めは通用しない。他人を理解するとは、本当に難しいことである。
✔️「目を閉じちゃういけない。目を閉じても、ものごとはちっとも良くならない。目を閉じて何かが消えるわけじゃないんだ。それどころか、次に目を開けたときにはものごとはもっと悪くなっている。私たちはそういう世界に生きているんだよ、ナカタさん。しっかりと目を開けるんだ。目を閉じるのは弱虫のやることだ。現実から目をそらすのは卑怯もののやることだ。君が目を閉じ、耳をふさいでいるあいだにも時は刻まれているんだ。コツコツコツと。」p310
人は見たくないものや嫌な出来事から目を背けてしまうことがある。責任を負いたくない、自分は関係ないと示したいがために。でもそんなことをしても現実から逃れるわけにはいかない。逃れられない。人の弱い部分を炙り出した言葉だと思う。
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Posted by ブクログ
不思議な読み心地の短編集でした。三宅香帆さんが村上春樹入門としておすすめと話していたので読みました!
文章が読みやすく、流れるようにきれいでした。終始心地よかったです。じんとくるラストも多く、心が温まりました
偶然の旅人
ハナレイ・ベイ
どこであれそれが見つかりそうな場所で
日々移動する腎臓のかたちをした石
品川猿
偶然の旅人と品川猿がお気に入り!
「偶然の一致というのは、ひょっとして実はありふれた現象なんじゃないだろうかって。つまりそういう類のものごとは僕らのまわりで、しょっちゅう日常的に起こっているんです。(中略)しかし、僕らの方に強く求める気持ちがあれば、それはたぶん僕らの視界の中に、ひとつのメッセージとして浮かび上がってくるんです。」
この文章がとても印象的でした。
肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却など『喪失』とそれに向き合う主人公たちの様子が詳しく描かれていました。喪失を受け止めて一歩前に進むもの、自身が向き合ってこなかった負の部分を「それも含めて自分の人生」と受け止めるものなど…読後考えさせられるお話が多かったです。
ただ、最終的に何を言いたいのか、私がうまく理解できていない部分もあり…。もっと村上春樹さんの作品を読んで深めたい!他の人の感想も聞きたいと思いました! -
Posted by ブクログ
遅れて読んだ名作。
村上春樹訳が
ジワジワと染みわたる。
冒頭はこうだ。
「テリー・レノックスとの最初の出会いは、
〈ダンサーズ〉のテラスの外だった。
ロールズロイズ・シルバー・レイスの車中で、
彼は酔いつぶれていた。」
「人々に湯水のごとく金を使わせることを
唯一の目的として作られた」高級クラブ
での出来事だった。
男は女に車外に放り出され、
アスファルトに尻もちをついた。
そして、私は彼を助け起こした。
主人公のフィリップ・マーロウと
テリー・レノックスは
こうして出会った。
レノックスは衝撃的なことに
そのとき、投げ出された
大金持ちの娘と再婚していた。
レノックスとマーロウは
その後、たまに飲む間柄になる。
かすかな友好。
ある日、レノックスは
マーロウに助けを求める。
事件に巻き込まれたのだ。
マーロウは彼を国外逃亡のために
デイファナの空港まで送り届けた。
しかし、自宅に戻った
マーロウを警官が訪れた。
彼は刑務所に入れられることになった。
マーロウはその後、
保釈され、レノックスが
死んだことを知る。
マーロウはそこから動き出す。
レノックスの死の理由を知るために。
物語はさまざまな
紆余曲折を経て、
衝撃的な結末に辿り着く。
マーロウは言う。
「さよならを言うのは、
少しだけ死ぬことだ。」
そして。
印象的な言葉も。
「ギムレットを飲むには
少し早すぎるね。」
レイモンド・チャンドラーは
元石油会社役員であり、
大恐慌時に作家へと転身する。
ダシール・ハメットに続く
ハードボイルドの作家であり、
「ブラック・マスク」誌に書き始めた。
「大いなる眠り」で初登場した
探偵フィリップ・マーロウは、
強面のサム・スペードとは異なり、
アイロニイをたたえ、
ロマンチシズムを全身にまとう。
孤独であること。
別れを重ねていくこと。
そのなかで、
失われた世代の作家たちから受け継いだ
アメリカの虚無感や失意を描いていった。
村上春樹訳は抑制した筆致で、
適切に適切に紡いでいく。
村上春樹はあとがきで
チャンドラーについてこう書いている。
「文章的にはきわめて雄弁であるものの、
人の意識を描こうというつもりは
彼にはほとんどないようだ。」
チャンドラーが描こうとしているのは、
「語り手フィリップ・マーロウの目によって
切り取られていく世界の光景である。」
「彼(フィリップ・マーロウ)の所見なり
対応なりは、彼の自我意識の実相とは
必ずしも直結していないように
我々の目には映る。」
つまりは。
ハードボイルドという文学ジャンルの
象徴のように感じられるが。
事実のみを描きながら、
そこに極力感情を込めないことによって、
アメリカの近代社会が逆に露わになっていく。
そして。
探偵は感情を表現しないがゆえに、
読み手は最大限に感情を揺さぶられることになる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「ヤクルト・スワローズ詩集」にはスポーツ観戦、いや応援しているチームが負けることへの心得が書かれていた、気がする
「言い換えれば「今日もまた負けた」という世界のあり方に、自分の身体を徐々に慣らしていったわけだ。潜水夫が時間をかけて注意深く、水圧に身体を慣らしていくみたいに。そう、人生は勝つことより、負けることの方が数多いのだ。そして人生の本当の知恵は「どのように相手に勝つか」よりはむしろ、「どのようにうまく負けるか」というところから育っていく。」
「もちろん負けるよりは勝っていた方がずっといい。当たり前の話だ。でも試合の勝ち負けによって、時間の価値や重みが違ってくるわけではない。時間はあくまで同じ時間だ。一分は一分であり、一時間は一時間だ。僕らはなんといっても、それを大事に扱わなくてはならない。時間とうまく折り合いをつけ、できるだけ素敵な記憶をあとに残すことーそれが何より重要になる。」 -
Posted by ブクログ
大枠は姉妹の情愛を描いた作品に感じる。
姉のエリと妹のマリ。片や眠り、片や夜を生きる。片や周りの期待通りに生き、片や反骨的に生きる。2人はそれぞれ対照的に描かれているものの、寄り添い合いたいという思いは1つで、最終的にはそうなれたのだと思う。
しかしながら姉妹だけでなく、他にも様々なことがこの夜には起こり、それに我々はどのような意味を見出すのか、試されているようにも感じた。(村上春樹的には意味など無いのかもしれないが)
この小説は物語を描くと言うより、伝記に近いものだと思う。兎に角、この小説の感想を書くことはとても難解で自分の文章力の無さを痛感させられる。
寂寥感のある読後感で、一先ず手に取って欲しい一冊。ただ、退屈に感じる人も多いと思います。