近藤史恵のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
第4作。
このシリーズは何度も読み返しているので、ビストロ・パ・マルは実際に訪れたことはないけれど馴染みのフレンチレストランのような気持ちになっている。
なので、コロナが蔓延し制限が課される中、「あの人々はこの時期にどうなっているんだろう?」と思いを馳せた1作だ。
営業時間を短縮したり席数を減らしたり、テイクアウトメニューを模索したり、料理教室を開いたり、その時の最善を尽くしていてほっとした。
ギャルソンの高築君の視点で語られている物語だが、彼はあまり感情の起伏がない。
ビストロ・パ・マルの他の面々も仲がいいが、あくまで仕事上でよいものを引き出すための関係という感じが心地よくも淡々としている -
Posted by ブクログ
「アミの会」のアンソロジー。
『初めて編』ということで、七編のストーリーは、初めて訪れる旅先での初めての食べ物が登場する。
料理が美味しそうだったのは、乗り鉄・食べ鉄にも嬉しい「下田にいるか」坂木司さん。なんと言っても下田なら行けそう!と思えるのが嬉しい。観光も楽しそう。
もうひとつは、サハリンでのロシア料理がたっぷりの「地の果ては、隣」永嶋恵美さん。初めて読む作家さん。作中では、既にロシアとウクライナの戦争の気配が描かれていて、今は…まだ、いつになったらロシアに旅行に行こうと思えるのかわからないけれど。
コロナ禍のあと、旅に出る物語が描きにくくなっただろうと思うけれど、むしろ、だからこ -
Posted by ブクログ
小説家である織部妙は、新人小説家の橋本さなぎという綺麗な女性を紹介される。
織部は、橋本さなぎの本に夢中になるが、紹介された橋本本人が、本の印象とは違うことに違和感を抱く。この人がこの本を書くのか?という違和感、わかる気がする。
暗く不条理な、そんな小説を書いている女性がホステス風だと、なんかイメージ違ったなってなりそうだ。この本では、織部以外の人は橋本さなぎに違和感を抱いていない様子なのは、単に「美人だからいっか」と美人は許されるということなのか、橋本さなぎの文体を初芝祐のような太った女性が書いていることを笑うのが主流だからなのか…。私には分からない。
でも確かに、小説家について見た目と作風 -
-
Posted by ブクログ
昔の友人から突然連絡があり、居候させて欲しいという、しかも子連れ。少しならと受け入れるとなんだかんだで長引くのでイライラさせられる。恐らくほとんど読者は居候されている側の気持ちで、どうしてくれるんだみたいなザワザワしたまま物語の先を追いかける。
作者が女性だから書けるだろうというところもあり、ある部分で居候側の気持ちもわかったりして、最後まで読んでいくらか納得して高い評価となるのか。まあ、そういう話かというエンディング。先が気になって一気に読んだから星4つにしたが、感想を書いていて星3かなというところ。
自転車レースの推理小説がとても面白かったので何冊か読んでいるが、それに並ぶような快作がない -
Posted by ブクログ
ネタバレ老犬ホームを舞台にした小説で、このタイトル…てっきり動物好きの涙腺をダイレクトに刺激してくるべたな連作集でないかな…と勝手に推測していたが、まったくそんな作品ではなかった。
もちろん犬ネタでうるうる来そうになる場面はあるにはあるが、あくまで物語の主人公は人間であり、描かれるテーマも人と人との絡みにまつわるあれこれである。
例えば、身勝手な犬の飼い主たちはつまることろ、身勝手な不倫男のメタファーであり、そこに共通して見えるのは、相手の気持ちや立場を慮らず利己に徹する未熟で歪な愛情だ。
厳然と横たわる様々な社会問題を、老犬ホームというギミックを使って巧みに読者に提示している、とも換言できる。
そし