あらすじ
クラスメイトの稚拙な行動の理由。忘れ得ぬ在りし日の祖母の姿。他人のものばかり欲しがるあの子。いるはずのない住人の気配。甘やかに秘密を分かち合う二人の女。宿命的な死に蝕まれた村。妻と別れた男に訪れた非日常。言い訳はいらない。もう、とりつくろえない。隠された真実に気づかせてくれる珠玉の作品集。(紙書籍版と異なり、本電子版には「金色の風」は収録されておりません。あらかじめご了承下さい)
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Posted by ブクログ
「カイザリン」という響きがなんだか魅惑的。
オランダ語で「女帝」って意味なんですね。
小さい頃、花びらを取りながら「すき、きらい、すき」ってやったみたいに、「こわい、ステキ、こわい」と感じさせる短編集でした。
『タルトタタンの夢』『わたしの本の空白は』など近藤史恵さんの作品は何冊か読んでいますが、なんだか新鮮な印象でした。
8編全てよかったですが、特に『甘い生活』がぞぞぞわっとしました。
子どもの頃から他人のものばかり欲しくなり、巧妙に奪うことに快感をおぼえる主人公。
小学校の時の思い出、奪ったことすらも忘れていたけど…
ラストがぞわっとして怖かったです。
近藤史恵さんの美しいことばにも魅了される1冊です。
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8つの短編小説を集めた素晴らしい1冊でした。少しゾクッとするミステリーも素晴らしいですが、個人的には2作目の金色の風が好きです。
何かをしたくてもがきながら、悩み、泣き、人と出会い、走りながら自分の中の真理というか気持ちに気付くシーンがたまらなく好きです。「泣きたいほど苦しくて、やめたくて、どうしてこんなことをやっているんだろうと思って。そう、なにもかも同じで、繰り返しだ。わたしたちは同じことを繰り返す。」何度も何度も読み返したくなる作品でした。
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なぜ火をつけたのか?束縛の夫婦生活から逃れようと足掻く女性たちを描いた表題作ほか、ミステリ中心の短編集。
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近藤さんの短編集ですが、なんとイヤミスがたくさんありました。近藤さんのミステリはけっこう際どい線を行っていてもイヤミスと言えるほどのものは読んだことがなかったのですが、これらははっきりイヤミスですね。うーん、と思いながら読んだのが多かったです(つまらないということではなく、面白く読みながらも読後感が・・)。
読めば読むほど迷路の奥に誘われるような「孤独の谷」と女性の憐憫に絡め取られるモラハラ夫を描いた「老いた犬のように」が好きです。
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近藤史恵さん、読書強化月間!
『ホテル・カイザリン』。短編8作。
全体的に、ドロドロでした。数日前に読んだ
『ホテルピーベリー』に近いトーンでした。
読後感が良かったのは『金色の風』と『迷宮の松露』。ともに海外に旅する日本人女性のお話ですが、日本で色々あって海外に旅に・・・。
そこで出会う人との触れ合いで自分を見つめ直す、というようなお話。良いお話です。
残りの6作は『世にも奇妙な物語』にしても良いくらいな、ブラックユーモアテイストからミステリホラーに思えるものまで、まぁ、ねっとりです。
近藤さんは、登場人物の内面、心理描写を飾らず、リアリティある質感で描く作家さんですね。
人のココロの中なんでそんなもんだよね、
嫉妬とか羨望とかいっぱいあるよね、って
再認識させてくれますね。
皆さんには、第一話『降霊会』おすすめです!
全30ページ弱なのに、斬新なラスト!
みなまでかたるまい。
Posted by ブクログ
目次
・降霊会
・金色の風
・迷宮の松露
・甘い生活
・未事故物件
・ホテル・カイザリン
・孤独の谷
・老いた犬のように
ホテルを舞台にした連作短篇なのかなと思ったら、それぞれ個別の作品だった。
小さな悪意と混じりけのない正義のどちらが人を追い詰めるのか(降霊会)
報われなかった努力の中にも自分にとって大切な核はあった(金色の風)
など、ちょっとダークなものから、じんわり沁みてくる作品まで。
万年筆のインクを買う時「松露」を見つけて、なんとなく緑系の色なのかと思ったら、黒味の強い青だったので驚いたことがある。
『迷宮の松露』の松露は和菓子の名前なのだけど、知ってるつもりで全然わかっていないことって結構あるよね。
一番ミステリ色が強いのは『未事故物件』。
まさかそんなことが行われていたとは!
『赤毛連盟』を想起させる作品。
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短編集だが、感動ものとホラーというかミステリーみたいなもの、そして考えさせるものとバラエティに富んだラインナップだった。
アミの会のアンソロジーに載っていたのもあるので読んだことのあるのもあったが。
やはり秀逸だったのは『降霊会』かな。どんでん返しに次ぐどんでん返しが見事。
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短編集、結構好きな雰囲気の話が多め。
海外が舞台の話もあり、自分も今月末から海外なのでどこか別の国に行こうかなと思いながら読んだ。
・降霊会 ★★★★
主人公が悪だと思ったらさらにその主人公が悪で悪を返すみたいなドス黒い展開が非常に良き!
超短い話なのに1発目から、この本おもろいかも!と思えた。
・金色の風 ★★★
パリが舞台。あんまりパリに住みたくはないけどヨーロッパ生活が懐かしい。
チェコ人の女の子とゴールデンレトリバーの走る姿が爽やかな印象の話。
・迷宮の松露 ★★★
モロッコが舞台の話。
モロッコで暮らすのも悪くなさそう。と思いながら読んだ。
主人公が京都でおばあちゃんと暮らすシーンが素敵。
・甘い生活 ★★★★★
人の物が欲しくなる主人公の話。
こんな歪んだ人、周りにいたら嫌やけど本で読む分には大好き。
すげー嫌な奴なのが良き!
・未事故物件 ★★★★★
面白くて夢中で読んだ。ホラーかと思ったら人間が一番怖いパターン!面白かった!!
・ホテル・カイザリン ★★★
素敵なホテルの話。
ホテルの部屋や雰囲気が素敵で良かった。
・孤独の谷 ★★★
変わった風土病の話。
面白かったけど、ちょっとインパクトに欠けた。
・老いた犬のように ★★★
熟年離婚した作家が主人公の話。
実は主人公のモラハラが原因で離婚したようだが、これって以外によくある話なのかも、、と思った。
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終始漂う侘しさ、満たされなさが素敵な作品です。個人的に毒気やホラー要素は感じませんでした。そうなって然りだったのだとすとんと飲み込めるような。
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ミステリーかな?と思ったけど、それだけではなかった。
一話一話味付けの違うお料理のようでとても楽しめました。
この著者の本の中でこの本が今一番好きかも。
Posted by ブクログ
うっすら怖い話の中で「金色の風」だけは爽やかだった。パリオリンピックのマラソンをイメージしながら読めたのがよかった。人の物を羨んで欲しそうにする人や人のことをやっかむ人っているけど、「甘い生活」を読んだら心を入れ替えるのではないか。いや、「老いた犬」のように情けなく吠えてみるか鼻を鳴らして泣くだけか。
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どの話も面白かったです!
ホラー、ミステリ、イヤミス…ジャンルは違えどゾクっとする短編集で今の季節にぴったり。
「甘い生活」「未事故物件」「ホテル・カイザリン」の怖さが特に好き。
「金色の風」は他の七編とは趣が違って、犬好き(ですよね?!)な近藤さんならではの逸品。自分もベガになって走ってるようで爽快でした。
Posted by ブクログ
巻頭とラストの語り手が男性なのはわざとか?カイザリンは女性だけど。
「金色の風」の姉妹のバレエダンサー『テレプシコーラ』のヒロイン姉妹を思い出した。お母さんがバレエ教室主催なのも同じだし。
デーツのお菓子って近藤さんの他の作品にも出ていたよね。近藤さんの好きな味なんだな。
「孤独の谷」はちょっと三津田信三っぽい。最近読んだからどう思ったのかな。
自分のもの何でも欲しがる妹がいたら、しかもその妹が美人だったら、嫌だろうな。
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人はみな、多かれ少なかれ満たされない思いを抱えて生きている。ただ、その思いとどんな向き合い方をするかの選択で人生は違ってくる。
その「選択」がもたらしたものを描く8つの物語。
◇
今日は学園祭当日だ。僕は久しぶりに校門を潜った。
高校2年で実行委員を務める僕は学園祭の中心メンバーとして運営に当たるはずだったが、家庭の事情で昨日までの1週間を欠席したためほとんど手伝えなかった。
エントランスに来た僕は壁に貼られたポスターに気がついた。ポスターには「降霊会、行います」と書かれていて、死んだペットの降霊をしますと、小さな字で付け加えられている。責任者は宮迫砂美となっていた。
砂美は僕の幼馴染であり、家族同士顔見知りだ。優等生の砂美は教師ウケがよいため、僕が休んでいる間の急な申請にも関わらず、催しは許可されたらしい。
茶番だとは思うのだけれど、この企画を立てた砂美の意図が気になった僕は降霊会に参加することにした。
外光が遮断された理科準備室には長方形のテーブルがあり、その周りに椅子が8脚置かれている。
その1つに座るのがイタコを務めるエレナというゴスロリ風の女子で、僕を含め7人の参加者が席に着くと照明が消された。
進行役の女生徒が、手にした蝋燭で以て参加者それぞれの前に立てられた蝋燭に火を灯していく。そして最後にエレナの前にある大きめの蝋燭に火を灯すと、進行役の女生徒は最初の降霊希望者を募る呼びかけをした。
1年生らしい女生徒がおずおず手を挙げ、2ヶ月前に死んだウサギを呼び出してほしいと言う。
了解したエレナは、全員に隣の生徒と手を繋ぐよう指示した。そして手と手が繋がるのを見届ると、エレナは呪文を唱えはじめ……。
(第1話「降霊会」) ※全8話。
* * * * *
ミステリーあり、サスペンスあり、ホラーあり、ヒューマンドラマありのバラエティ豊かな短編集でした。
第1話「降霊会」(28㌻) は見事などんでん返しミステリーで、攻守ところを変えていく終盤の心理戦がなんともおもしろい。でも、これはほんの序ノ口です。
個人的にはヒューマンドラマ仕立ての話が気に入りました。
特に、8話中で最も紙数を費やした第2話「金色の風」(56㌻) が希望と再生を感じさせる作りで、個人的に好みに合っていました。
もちろん、第3話「迷宮の松露」(24㌻) もよかったですし、表題作の第6話「ホテル・カイザリン」(32㌻) も意外な結末まで用意されていておもしろかった。
でも、2番目のお気に入りとしては第7話「孤独の谷」(28㌻) を挙げたいと思います。
「孤独の谷」はオカルト色の強いホラー作品で、超短編なのを感じさせないほど読ませます。
あとは、軽いサスペンスホラー仕立ての第4話「甘い生活」(28㌻) と、第5話「未事故物件」(24㌻) もうまくまとめられていたと思います。
各話はいろいろなジャンルに味つけされているのですが、満たされない思いを抱える主要人物が岐路に立ったときに何を選択したかでどんな人生を迎えることになるのか、というテーマに基づいて書かれているので、統一感のある作品集になっています。
近藤史恵さんという作家のオールマイティぶりがわかる作品でもあるので、近藤さんの作品を初めて読む方にはお勧めです。
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8編からなる短編集。
失ったものと手に入らなかったもの。
それぞれの主人公たちのラストが後悔ただならぬレベル。
知らなかったらよかったのに。
知っていたらよかったのに。
後味の悪い終わり方が多い中で、2つはほっとする。
てっきりホテルに関係する内容かと思ったら、短編の題名から取ったものだった。
サイコっぽい人物も何人かいて、ぞぞっとする。
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とあるホテルを訪れる人々の連作短編かと思ったらさにあらず。
喪失がテーマの短編集。
ザラつきヒンヤリするものの中で
「金色の風」が爽やかに吹き抜けた。
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ホテル・カイザリンを舞台にした短編集かと思ったらそれぞれ違う作品だった!
私が好きなのは…
『金色の風』
バレエダンサーの夢を諦め、パリに降り立った夕(ゆう)…
これまでの努力は無駄だったのか…
そんな彼女の前を風のように走り抜けていくブロンドのポニーテールの女性とお揃いの金色の毛を揺らすゴールデン・レトリバー
彼女たちに出会い、ランニングを始め
美しいパリの街並みを走り出す夕…
「パリマラソンに挑戦しよう!」
そしてある日…
虹の橋を渡った愛犬を思い出して、涙、涙…
『未事故物件』
東京で念願だった一人暮らしを始めた初美…
しかし上の部屋から朝の4時に洗濯機の音が響き渡る
寝不足が続き堪りかねた彼女は、不動産会社に事情を説明するが、上の部屋は空だという…
そんな時、初美と同じ状況で行方不明になった女性がいるという話を聞き…
おっー!こんな手があるのか!
とゾクゾク…
確かにこれは事故物件より怖いわ…
みなさま気をつけて…
どの作品にもある隠された真実に
びっくりしたり、涙したり、なぜ?と思ったり…
それぞれに楽しめる作品で一気読みでした…
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8話の短編集
降霊会
高校の学園祭で行われた降霊会
それは一人の男子生徒を糾弾するためだったが・・・
金色の風
パリにやってきた女性と、犬を伴ってランニングする女性が知り合った
迷宮の松露
モロッコで道に迷った日本人夫婦に声をかけられて、祖母が好きだった松露について思い違いをしていたと知った
甘い生活
昔から他人の持ち物が欲しくなるタチだった
遊びに来た友人が持っていたボールペンは心を奪った
これが一番好きな話だった
ほかに、未事故物件 ホテルカイザリン 孤独の谷 老いた犬のように
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なんとなく後味の悪い余韻が残る話の多かった8編の短編集。
以前読んだことのある短編もあって懐かしかった。
中でも読んでいて心地よかった『金色の風』『迷宮の松露』が印象深い。
『金色の風』
「苦しさは、堪えるのではなく、ただ受け止めて、そういうものだと思う」
パリの街並みを観ながらのフルマラソン。マラソンを人生とシンクロさせて、苦しさを受け入れる余裕と自分のペースをコントロールできる冷静さを手に入れた彼女の強さに清々しい思いでいっぱいになった。
『迷宮の松露』
いくら全てを忘れるためとはいえ、帰国する予定を決めずに海外に滞在するのってすごい。しかも有名な観光地ではないなんて、私にはとても無理。
いつも完璧だった祖母に対する憧れと勝手な思い込み。日本では気付けなかった祖母の姿を冷静に振り返ることができて本当に良かった。和菓子の松露は私も初めて知った。
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短編集で読みやすかった。
ミステリーの短編かと思ったが、中には違う話も入っていて、普段読まないような話もあり、面白かった。
少し前向きになれるお話「金色の風」「迷宮の松露」は気に入りました笑
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今まで読んできて近藤さんらしくない作品がちらほら
最初に見た作品なんか、胸糞が酷くてこれはひどい!これはひどい!と憤慨してました
が、その次の話で全てを許し、これが近藤さんだと思えました
他の話も不穏だったり、モヤっとしたり
しかし、最初の話ほど胸糞悪いものはありません………
そして、2番目の話が一番良かった
薄暗くなりたい時に読むのがおすすめ
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なんとなく『甘い生活』は読んだことあるなあと思ったらアミの会で読んだのか。他人のものを欲しがるとロクな目に合わないな。『金色の風』『迷宮の松露』あたりが良かった。
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これまで、近藤史恵さんの小説は割と前向きさわやか系、旅系も多いイメージで、この本もタイトルから旅行とか関係する作かなと想像して読みはじめました。
が、自分のイメージとは違い、イヤな感じを残す作品の方が多い短編8作品でした。
ストーリーは、それぞれ興味深く一気読みでした。
Posted by ブクログ
※
降霊会
金色の風
迷宮の松露
甘い生活
未事故物件◉
ホテル・カイザリン◉
孤独の谷◉
老いた犬のように◉
普段は見えていないけれど、
日常生活の向こうにある危うい世界。
ざわりとした感覚に言葉にできない面白みと
中毒性がある。
Posted by ブクログ
勝手に長編だと思い込んでいて最初の交霊会がのちのち関わってくるかと思いきやそんなことはなかった。
バレエ姉妹の話。主人公が新たなやりがいやアンナとベガの出会いも素敵だった。
パリの美しい街なみ文章から伝わってきた。
ここからの短編は通勤時にもさくっと読めて、落ちもしっかりしていたからとても読みやすかった。
「甘い生活」は私自身も妹に搾取されてきたのですごく姉に共感してしまった。主人公の性格の悪さ、ずる賢さにとても気分が悪くなった。最後の展開は自業自得だね。
「未事故物件」はオカルトの類いかと思いきや・・・。怖かった。
タイトルの「ホテル・カイザリン」は少し切ないお話。
冒頭の事情聴取を読み終えてから再読すると、さらに切ない・・・
もう少し二人のエピソードを深堀して読みたくなった。
このホテルの魅力も伝わってきて宿泊したくなった。
Posted by ブクログ
近藤史恵さんの著書はこれで2作目。こういうのも書くんだーというのが率直な感想。少し背筋がゾクっとするような短編を集めた作品でした。文章は読みやすくて好印象。他の作品ももっと読みたくなった。
Posted by ブクログ
ホテル・カイザリンの物語かと思っていたけど、「ホテル・カイザリン」のお話と他7つ、全く毛色の違った全8篇の短編集。
どのお話も読みやすく、展開が気になり、ついつい読み進めてしまう面白さがあった。
好きだったお話は「金色の風」と「迷宮の松露」で、海外の雰囲気をイメージしながら、前向きな気持ちで読み終われる感じが好きだった。
他のお話も面白くはあったけど、暗い気持ちになるお話で、個人的にはあまり好みではなかった。