あらすじ
クラスメイトの稚拙な行動の理由。忘れ得ぬ在りし日の祖母の姿。他人のものばかり欲しがるあの子。いるはずのない住人の気配。甘やかに秘密を分かち合う二人の女。宿命的な死に蝕まれた村。妻と別れた男に訪れた非日常。言い訳はいらない。もう、とりつくろえない。隠された真実に気づかせてくれる珠玉の作品集。(紙書籍版と異なり、本電子版には「金色の風」は収録されておりません。あらかじめご了承下さい)
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Posted by ブクログ
8つの短編小説を集めた素晴らしい1冊でした。少しゾクッとするミステリーも素晴らしいですが、個人的には2作目の金色の風が好きです。
何かをしたくてもがきながら、悩み、泣き、人と出会い、走りながら自分の中の真理というか気持ちに気付くシーンがたまらなく好きです。「泣きたいほど苦しくて、やめたくて、どうしてこんなことをやっているんだろうと思って。そう、なにもかも同じで、繰り返しだ。わたしたちは同じことを繰り返す。」何度も何度も読み返したくなる作品でした。
Posted by ブクログ
目次
・降霊会
・金色の風
・迷宮の松露
・甘い生活
・未事故物件
・ホテル・カイザリン
・孤独の谷
・老いた犬のように
ホテルを舞台にした連作短篇なのかなと思ったら、それぞれ個別の作品だった。
小さな悪意と混じりけのない正義のどちらが人を追い詰めるのか(降霊会)
報われなかった努力の中にも自分にとって大切な核はあった(金色の風)
など、ちょっとダークなものから、じんわり沁みてくる作品まで。
万年筆のインクを買う時「松露」を見つけて、なんとなく緑系の色なのかと思ったら、黒味の強い青だったので驚いたことがある。
『迷宮の松露』の松露は和菓子の名前なのだけど、知ってるつもりで全然わかっていないことって結構あるよね。
一番ミステリ色が強いのは『未事故物件』。
まさかそんなことが行われていたとは!
『赤毛連盟』を想起させる作品。
Posted by ブクログ
短編集、結構好きな雰囲気の話が多め。
海外が舞台の話もあり、自分も今月末から海外なのでどこか別の国に行こうかなと思いながら読んだ。
・降霊会 ★★★★
主人公が悪だと思ったらさらにその主人公が悪で悪を返すみたいなドス黒い展開が非常に良き!
超短い話なのに1発目から、この本おもろいかも!と思えた。
・金色の風 ★★★
パリが舞台。あんまりパリに住みたくはないけどヨーロッパ生活が懐かしい。
チェコ人の女の子とゴールデンレトリバーの走る姿が爽やかな印象の話。
・迷宮の松露 ★★★
モロッコが舞台の話。
モロッコで暮らすのも悪くなさそう。と思いながら読んだ。
主人公が京都でおばあちゃんと暮らすシーンが素敵。
・甘い生活 ★★★★★
人の物が欲しくなる主人公の話。
こんな歪んだ人、周りにいたら嫌やけど本で読む分には大好き。
すげー嫌な奴なのが良き!
・未事故物件 ★★★★★
面白くて夢中で読んだ。ホラーかと思ったら人間が一番怖いパターン!面白かった!!
・ホテル・カイザリン ★★★
素敵なホテルの話。
ホテルの部屋や雰囲気が素敵で良かった。
・孤独の谷 ★★★
変わった風土病の話。
面白かったけど、ちょっとインパクトに欠けた。
・老いた犬のように ★★★
熟年離婚した作家が主人公の話。
実は主人公のモラハラが原因で離婚したようだが、これって以外によくある話なのかも、、と思った。
Posted by ブクログ
どの話も面白かったです!
ホラー、ミステリ、イヤミス…ジャンルは違えどゾクっとする短編集で今の季節にぴったり。
「甘い生活」「未事故物件」「ホテル・カイザリン」の怖さが特に好き。
「金色の風」は他の七編とは趣が違って、犬好き(ですよね?!)な近藤さんならではの逸品。自分もベガになって走ってるようで爽快でした。
Posted by ブクログ
なんとなく後味の悪い余韻が残る話の多かった8編の短編集。
以前読んだことのある短編もあって懐かしかった。
中でも読んでいて心地よかった『金色の風』『迷宮の松露』が印象深い。
『金色の風』
「苦しさは、堪えるのではなく、ただ受け止めて、そういうものだと思う」
パリの街並みを観ながらのフルマラソン。マラソンを人生とシンクロさせて、苦しさを受け入れる余裕と自分のペースをコントロールできる冷静さを手に入れた彼女の強さに清々しい思いでいっぱいになった。
『迷宮の松露』
いくら全てを忘れるためとはいえ、帰国する予定を決めずに海外に滞在するのってすごい。しかも有名な観光地ではないなんて、私にはとても無理。
いつも完璧だった祖母に対する憧れと勝手な思い込み。日本では気付けなかった祖母の姿を冷静に振り返ることができて本当に良かった。和菓子の松露は私も初めて知った。