中山七里のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
短編集ということで軽く読めるかと思って手に取ってみた
ものすごく
読み応えのあるお話ばかりだった
どれも面白かったけど
特に心に残るのはやっぱり読んだシリーズのキャラクターが登場するお話
特に
「4/19その日、山崎岳海は」
この山崎岳海は私がとっても大好きなシリーズ
「御手洗弁護士シリーズ」に時折登場するキャラクターで
いつも飄々としているイメージが強いのに
そんな人でもこうなるのかぁ~
と思ったお話
「平和と希望と」
この作品に登場するのは
形成外科医の新条要
「さよならドビュッシー」に登場する先生
自分の信念を貫いているところが読んでいてスキッとする
「盆帰り」
には「ヒポクラテスシリーズ」の光崎先生が
名前だけですが登場する
これだけでも読んでいてとっても楽しかった
シリーズだけではなくて
こうやって他の時に少し違う横顔みたいな姿が
見られることが嬉しかった
もちろんどの物語も
短編ながら読んでいて引き込まれるし
多分他のシリーズに登場するキャラクターであろう
物語を垣間見て
そのシリーズに興味を持ったことも…
物語ではないけど
初めて中山七里さんのエッセイを興味深く読ませていただき、とっても楽しかった
凄く盛りだくさんな一冊だった…… -
Posted by ブクログ
ネタバレカエル男の続編。犯罪を犯したものの刑法39条により無罪となる仕組みを主軸とした作品。前回は39条により無実となった人間が、カエル男として活動したかったものの、実際は自分の身請け人がカエル男として活動していたことに不満を持ったまま終わった。本作品はその続きとして、新たなカエル男が活動する話。前回同様に主軸は39条。確かに本作品のように悪用されるケースは問題だと感じるが、本当に精神異常の人物が犯罪を犯したとした場合、罪を償う意識すらない人間に罰を与える意味があるのか、罰を受けたから出所していいのかは考えさせられる。罪の意識と罰を受けるからこそ社会に帰ってくるのであって、39条がないと罪の意識も罰の意味もわかってない人間を社会に返すことになる。いずれにせよ、最悪なのは本作に出てくるような社会を形成している法律を悪用する頭のいい人間なのだと感じた。それにしても、より深く39条の意義を考えさせるためなのか、相変わらずグロい描写が多い…
-
Posted by ブクログ
ネタバレ爽やかな話かと思っていたので、立ち上がりから不穏な事件のオンパレードで驚いた。中山七里だもんなあ。そりゃそうか。
ピアノの描写が続くけど、きっちり謎解きもあり、これぞ音楽ミステリー感じ。
火事にあい、祖父と従姉妹を亡くした少女。全身やけどの少女は、莫大な遺産を相続し、命を狙われながらもピアノで立ち上がる。というストーリー。
けっこうピアノ描写で油断していたのでラストには驚いた。そうだった!これミステリーだった!!
岬先生のシリーズ数冊出ていて気になるけど、どうもこの作家さんと相性が悪そうで、どうも目が滑って頭に入ってこないんだよなあ。もう1冊読んでみて考えようかなあ。 -
Posted by ブクログ
『アポロンの嘲笑』を読んで――
国家の正義と「命」を護る刑事の決断
------------
第1章:事件のはじまり
東日本大震災が発生した直後の福島県です。激しい余震と放射能の恐怖が渦巻く、未曾有の混乱のただ中が舞台となっています。
福島第一原発の作業員である金城純一(かねしろ じゅんいち)が刺殺される事件が発生します。
警察は、同じく原発作業員で同僚の加瀬邦彦(かせ くにひこ)を容疑者として逮捕しました。
------------
第2章:逃走と原発への接近
福島県警石川警察署の仁科忠臣(にしな ただおみ)刑事が加瀬邦彦を移送する途中、大きな余震が発生します。
その混乱に乗じて邦彦は脱走してしまいます。
邦彦が逃げて向かった先は、危機的状況にある「福島第一原発」でした。
自らも東日本大震災で息子が行方不明になっている仁科刑事は、命がけで邦彦を追跡します。
なぜ邦彦は危険な原発を目指すのか?
爆弾テロの懸念も浮上する中で緊張感が高まります。
------------
第3章:本当に「護るもの」とは何か
容疑者である加瀬邦彦は、過酷な境遇を生き抜くなかで出会った大切な存在(恋人やその家族)を護るために行動していました。
極限状態の中で、人間が最後に本当に「護りたい」と願うものは何なのかを深く考えさせられます。
国家や警察組織、あるいは東京電力などは、「混乱を防ぐ」「社会の安全を維持する」という大きな建前を掲げます。
しかしその裏には、保身や事故の隠蔽、組織を守るための本音が見え隠れします。
巨大な組織が語る「正義」の冷酷さと歪みが浮き彫りになります。
自身も被災し、行方不明の息子を想う傷を抱えながらも、仁科刑事は現場で泥臭く足掻きます。組織の「駒」としてではなく、目の前にいる一人の人間(加瀬邦彦)に向き合い、真実と命を護ろうとする仁科刑事の姿に強い正義の情熱を感じます。
------------
第4章:タイトルの意味と結び
「アポロン」とは?
ギリシャ神話に登場する「太陽の神」であり、光明や秩序の象徴です。
また同時に「遠矢射る神」として、人々に疫病や災いをもたらす荒ぶる神でもあります。
本作においては、人類に莫大なエネルギー(太陽の恩恵)をもたらすと同時に、一瞬で大災害と放射能をもたらす「原子力」の象徴として描かれています。
------------
「嘲笑」とは?
人間が「科学の力で安全にコントロールできる」と過信していた原子力は、自然災害の前にあっけなく暴走しました。
人間の浅はかな過信や、巨大な組織・国家が掲げる誇大で空疎な正義を、神(アポロン=原子力・圧倒的な自然)が高笑いしながら見下ろしているかのような皮肉と絶望を表しています。
------------
第5章 読み終えて
事件の真相が明らかになった時、「アポロンの嘲笑」というタイトルの持つ切なく重い意味が胸に迫ります。
国家や組織の理屈に翻弄されながらも、大切なものを護ろうと懸命に生きた人々の姿は、私たちに「真の正義や護るべきものとは何か」を深く問いかけてきます。
-
Posted by ブクログ
おじいさんとルシアの遺体が判別できなかった火事や、大事な家族を亡くしたはずなのに「家族の傷み」がどこか淡々と削ぎ落とされている不自然さ……。
そのドライな違和感に終始胸騒ぎが止まりませんでした。「岬さん、一番怪しいのでは……!?」と疑ったり作中で「アベック」という少し懐かしいワードが出てきて「中山先生、表現が古い!」とクスッとしたりもしながら、ハラハラとページをめくりました。
全身大火傷を負いながらも壮絶なリハビリと猛レッスンに耐える遥。作中で心に刺さる「不幸な顔を作るのは簡単で笑った表情は難しい」という名言や、1809年にナポレオンにウィーンが占領されていたという時代背景とともに語られるベートーヴェンの『皇帝』、そして美しいドビュッシーの旋律。音楽描写の迫力と深みには圧倒されます。
ある程度ミステリーを読んでいる身としては何となく分かってしまう場面も多く(初心者感覚でもう読めません)、途中で感じていた違和感からラストの展開はある程度予想がついたものの、伏線が綺麗に回収されて真相へと着地していく流れはやはり爽快でした!
著者の執筆当時の裏話(クラシックに詳しくなく、ドビュッシーを知らなかったこと)にも驚かされますが、歴史・音楽・ミステリーが見事に融合した、第8回『このミス』大賞の名作でした! -
Posted by ブクログ
作家刑事毒島シリーズの2作品目。毒島さんが作家になる前の刑事時代を描いた、いわばエピソードゼロ的な一冊でした。得意の取り調べでは、相手の自己顕示欲や承認欲求を見抜いたうえで、一番触れられたくない部分を容赦なくえぐっていきます。
『「あの賢しらな女の頭がどんな構成になっているのか知りたかっただけなんだよね。…彼女の部屋を眺めた時、本棚に並んでいた書籍は全部チェックしてあるんです。それで読書傾向と知能レベルも大体見当がつく。不明だったのはただ一点、彼女が何を信奉しているかでした。さて、第二ラウンドのゴングを鳴らすとしましょうかね。」-五 自業自得-』
印象的だったのが、部屋の本棚から人物像を分析するシーン。本棚はその人の知能だけでなく、「何に価値を置き、何を信じているか」まで明らかにしてしまう場所なんだと気づかされました。思わずハッとして自分の本棚を回顧してみましたが、食いしん坊で知能レベル文系全開なのを見抜かれて、私一人が冷や汗をかくことになりそうです(;´∀`)。
嫌な奴なのに目が離せない、毒島刑事の真骨頂が詰まったミステリーでした!
2026.10 -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公の春原瑠衣は捜査一課の刑事。
父親が勤めるヤマジ建設の従業員が立て続けに事故死に見せかけて殺害される事件が発生。瑠衣の父親もその標的となる。被害者が仕入、経理の責任者、そして父親は現場責任者であったことから、会長の山路が指示した工事費の水増しによる裏金問題が絡むと見た瑠衣は捜査を続けようとするが、政治的な権力や、被害者が身内であることから、捜査続行を阻まれる。
ハングマンはどこで登場するのかと思いきや、被害者の葬儀で出会った私立探偵・鳥海がハングマン。ということにだいぶ後半になってから気がついた。
事件自体は重たい内容であるものの、比較的ライトなタッチで読みやすい。
ダークヒーローものとして続編も面白そう。一方で、ハングマンの動機が弱いことと、瑠衣があまりにも簡単に復讐に手を染めてしまったことが引っかかり、⭐︎4つ。