中山七里のレビュー一覧
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ネタバレ2011年刊の古い本だが、その年の「このミステリーがすごい!」の選出に残った本。
連続猟奇殺人が埼玉県飯能市で発生する。殺害方法は多様だがすべて常軌を逸するやり方。
捜査にあたる小手川。手がかりのない中、容疑者の絞り込みのため、精神障害を持つ人間を当たり始め、障害を持つ若者とその治療に当たる理学療法士と知り合う。しかし、殺人は続き…
狂気の殺人が続いた地元。その次第にいらだち、恐怖のために爆発に至る過程など筆力でぐいぐい読ませる。最後、真犯人との対決は、このシチュエーションなら謎解きにとどまらず緊張感が落ちない、という設定になっている。 -
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絶望に翼はいらない――人は、強さで飛び立つ。
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中山七里さんといえば、警察・検察・弁護士など“法を扱う主人公”のイメージが強いですが、『翼がなくても』はその枠を抜け出した力強い一冊でした。
オリンピックを目指していた沙良が、交通事故で片足を失い、人生そのものが折れたように思えるところから物語は始まります。ミステリー要素やどんでん返しの緊張感ももちろん健在ですが、今回はそれ以上に、“喪失から立ち上がる人間の物語”としての厚みが際立っています。
苦しみ、怒り、恨み、そして再起。沙良の歩みは決して平坦ではなく、その姿が読者の胸を強く揺さぶります。中山作品の常連キャラである犬養刑事や御子柴弁 -
Posted by ブクログ
2022年9月~2023年6月に連載されていたそうで、バッチリコロナ禍中のお話でした。登場人物は中山七里ワールドで繋がっているものの、これだけで読んで大丈夫。週刊春潮の副編集長、志賀倫成目線で話が進みます。反ワクチン路線の記事を書き、部数が伸びているけれど、はたしてそれが正しいのか足元が揺らぐ志賀、高校からの悪友で医師の伊達にも反ワクチンの記事で何人の人間が未接種故に罹患して死に至ると思ってるのかと言われたりしますが、売れているため報道の流れは変えられず…。
そんな中、反ワクチン団体(カルト宗教っぽい動きあり)が伊達の病院に押しかけ、騒動中に殺人事件が起こります。
ワクチンの有効性をまともに -
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Posted by ブクログ
信念は揺るがない――“棄民”と“司法”が激突する、魂の法廷サスペンス。
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中山七里さんの作品はどれも緻密で重厚ですが、『能面検事の死闘』もその中でも特に印象に残る一作でした。シリーズを通して登場する能面検事・不破俊太郎は、一見冷徹に見えながらも、内に強い正義感と信念を秘めています。今回もまた、その不動の姿勢が、社会の“闇”と激しくぶつかり合います。
中山七里さんの作品に出てくる登場人物たちはどれも一癖ありながら、自らの信念を貫く強さを持ち、その生き様が物語に深みを与えています。彼らは社会的には「不適合者」とされながらも、近くにいる人間にはちゃんと理解され、尊敬される――そんな関係性の描