矢野隆のレビュー一覧
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平安最強の武士・源為朝。作者らしい猛々しい武人として彼の数奇な人生が描かれているが、人物造形や戦いの動機がイマイチ。『鬼神』では人間ドラマとバトルのバランスが良かっただけに少し残念。
例えば、九州で太宰府に乗り込むときさただ力を放出したい駄々っ子でありながら強さだけで統率していたという違和感。その為朝が京に戻った途端、父に従い、上皇や左大臣に従う汐らしさを見せる。その過程が描かれず、ここにも違和感。強い相手(義朝)と戦いたいという彼を貫く軸は変わっていないのだろうが、史実とキャラのギャップが大きく、説明が足りないように感じられた。九州〜京に戻る過程に何かあっても良かったと思う。
最後の伊 -
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戦百景三作目は関ヶ原の戦い。
石田三成率いる西軍と、徳川家康率いる東軍。いや、西軍総大将は毛利輝元でしょ、と言われそうですが名目上の総大将は置いといて、です。作中も石田三成が主人公の形ですしね。
政治官僚であって、軍人でなかった石田三成。そういうイメージで描かれがちですが今作の三成は一味違う。
政略・戦略ともに家康を追い詰め、薄氷の上を歩かせ続けます。最後の最後まで、小早川秀秋が裏切る寸前まで、どちらに転ぶかわからない状況を作り上げることができた、むしろ西軍優勢の状況を作り上げた三成の手腕が際立ちます。
それでも、大義よりも個人の心情を優先する感覚が理解できないというこれまでの三成のイメー -
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ネタバレ(2023日)
映画ノベライズ
信長と濃は夫婦となった。
しかし、弱味を見せられぬ二人は、お互いの気持ちを誤解したまますれ違っていく。
同じ目線で物事を捉え、対等に話せる二人は共に歩めたはずなのに…
素直になれない夫婦が、すれ違いと共に歩む覇道物語。
(同じ脚本家の)大河ドラマの信長との差別化なのか、こちらの信長はイメージが違って戸惑いました。(むしろ大河ドラマの信長でも良かったような…?)
信長は、ハイスペックで無敵の魔王であってほしい。
逆に、女子であることを悔しく思う程に気の強い濃姫に惹かれました。
気が強くないと、きっと魔王の妻なんてできない。
でも、私が今まで見た小説やド -
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戦百景2作目は桶狭間の戦い。日本三大奇襲の一つ。他の二つは厳島と河越だったかな。他の二つよりも圧倒的な知名度の桶狭間。日本史上でも屈指の知名度を誇るのではないでしょうか。教科書にも必ず載っていますしね。
桶狭間といえば、豪雨の中の急襲が名場面。最初にこれを知った時には、いくらなんでも雨の中とはいえ、気づくもんじゃなかろうかと持ったものです。いや、台風の中ならまだしも、梅雨時の一時的な豪雨で?と。局所的に降ることもないだろう、という疑問も大いにありました。
その思いが覆ったのは最近のゲリラ豪雨。雨の接近遭遇の恐ろしさを知ることとなりました。夕立ぐらいしか知らなかった自分には、想像ができていなか -
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大河ドラマと合わせて読みました。
歴史は勝者が作るとはよく聞く話ですが、正史はそうなのだろうなとつくづく思います。そして、それだけではなく、歴史とは解釈なのだなと深く思います。特に歴史小説を読んだ後には。そして、このようなアンソロジーを読むと、一編ごとに少しずつ変わっていく(あるいは観点を変えていく、ずれていく)解釈が実に面白いものです。
一冊の長編を読み通すのも面白いのですが、これはある観点からの物語を深くしていくことだと思います。アンソロジーには多観点から読み解いていく、そして、一編ずつを積み重ねて一冊の流れを読み解いていく楽しみがあります。
私は背表紙に「高田崇文ほか」とあったので購入し