矢野隆のレビュー一覧
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山で鬼として育ち、武人であった父と同じ道を歩むため、下山し都へ。源頼光の近習として。
ある日、鬼の噂を耳にする。その一方で神の棲まう山である大江山では食糧たる獣たちが姿を消す。
里の長である朱天は仲間達のため、盗みを働く決断を下す。
頼光四天王の一人。坂田金時。そう。マサカリ担いだ金太郎の物語である。
大江山の鬼退治は能や歌舞伎でも演目になっている。この大江山の里の長こと、酒を呑む童子、酒呑童子。
源頼光は『御伽草子』などで化け物、妖怪退治の第一人者となっているが、本作では、随分な爽やか大将として登場。
菅原道長のクズ具合と安倍晴明の矮小さ具合が中々に良いキャラとして成立。
日の本の国も -
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緊急事態宣言の中、令和二年のGWに読んだ歴史小説です。何も活動のできなかったGWでしたので、読書だけが楽しみでした。
この本は有名な本能寺の変を題材にしていますが、7人の武将の立場から見た形でストーリーが展開しています。新しい歴史小説の形で楽しいです、事件現場の空から中継を見ている感じです。
以下は気になったポイントです。
・源頼朝の鎌倉幕府も、足利尊氏の室町幕府も、どちらも憎悪と野心をたぎらせた親族と家臣達が互いに憎しみ合いながら敵と戦っていた。だからこそ彼らは幕府を開けた(p67)
・肩衝(かたつき)とは肩の部分が尖った茶入れで、楢柴は初花肩衝、新田肩衝と並び「天下三肩衝」と称され -
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矢野隆という作家は、合戦シーンや勢いのある描写に定評があるのかと思っていたが、本作は各人物の心情変化にスポットを当てており、重厚な心理小説の形を取っている。
多くが殿軍を務める戦国武将を描くが、いずれもその大役を疎み、弱気で臨むという姿が、当たり前ではあるものの、新鮮で面白い。
①禿鼠の股座:秀吉の金ヶ崎の退き口。弱気の秀吉が、己への自信を根拠に反転するという心情変化が面白い。股間の「モノ」と心情を連動させる辺り、非常に作者らしい。
②夢にて候:長篠の戦いでの馬場信春の殿戦。回想が多く、小説世界に入りにくかった。
③勝政の殿軍:賎ヶ岳の戦いの柴田勝政の殿戦。頭で賢く考えるが、思い通りに -
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本能寺を主題に沿えた、7作家によるアンソロジー。
実行者は明智光秀であるが、その動機あるいは黒幕については、いまだに諸説紛々。
本作では、葉室麟著『鷹、翔ける』は、明智光秀の家臣斎藤内蔵助こそ、変を起こした随一の者としている。
木下昌輝著『幽斎の悪采』では、細川藤孝の謀を示唆する。
天野純希著『宗室の器』は、宗室の独白で信長への思惑が語られる。
裁判などで分かるように、事実の裏にある真実や当事者の心理などを正確に明らかにすることは、現代の事件においてさえ困難を極める。まして、過去の歴史上の事件など。
だからこそ、あれやこれやと、作家の想像力を刺激するのだろう。読者にとっても、歴史小説を読む楽し -
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書きつくされたテーマだけに
川中島の合戦はあまりにも有名で書きつくされたテーマだけに、これだけの気鋭の作家を並べても「どこかで見たこと読んだことのある視点」と思えてくるのが残念。各作者の中で乾緑郎の作品が印象に残った。