矢野隆のレビュー一覧
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戦場での殺しを生業とし、国を渡り歩く「蛇衆」が、リーダーの出生の秘密と、ある国の兄弟間の諍いと戦にまきこまれ、知らず危機に巻き込まれていく、というストーリー。
最初は面白そうだったのに、最後はリーダーや仲間の敵打ちで死地につっこみ、結局一番下っ端しか生き残らず「おれが一人で頑張るぜ」みたいなラストになり、なんだかよくあるようなパターンに終わっちゃったなぁという印象。
よく言えば人間臭い、悪く言えば良くも悪くもプロがこんなんでいいのか?という感じ。
プロも人ってことなのか、なんだかんだで蛇衆も未熟だったのか。
あるいは、「蛇衆」が大切だからこその弱さだったのか。
まぁでも思っていたより楽しめ -
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ネタバレ最も短期間で読み終えた小説!!(これは悪い意味ではなく、あまりに読みやすく、そして面白かったが故に早く読み終えた。)
この小説を一言で例えるなら、『ゲーム世代の時代小説』と言ったところだろう。おそらく、若い世代で、時代小説を好んで読む人間は、『歴女』か『時代もの好き』以外では、少ないだろう。
”何か面白い文庫ないかな?”と言って、まず時代小説を手にする人は少ないはず。でもこれは例外。
初めて時代小説を読むなら、まずこの『蛇衆』を勧める。
まず、主人公たちは、最強に強い戦場の殺戮集団6人。それぞれが、得意の武器を持ち敵をなぎ倒していく様は、戦国無双を彷彿させる。そして、それぞれが、異なった過去を -
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戦百景八作目は、大阪夏の陣。前作からの続編です。それはそう。
なんといっても、真田信繁の家康本陣強襲が白眉。後藤又兵衛の最期も死場所を得られた故の滅びの美しさはありますが、信繁の無謀が乾坤一擲の一撃になる様は、迫力と覚悟が魅せる昂りが凄まじいです。
戦略を戦術でひっくり返すことは難しく、それ故に古今稀なることとして歴史に残るのでありますが、その困難を知るからこそ、成し遂げる寸前まで達した真田の一撃が心を撃ちます。
秀吉が朝鮮出兵をせずに、国内の安寧に勤めていればこの結果はなかったのだろうか。五大老をはじめとした大大名の力を削っていって、豊臣家の中央集権化を進めていれば、という妄想はアリなの -
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戦百景七作目は、大坂冬の陣。戦国の終わりを告げる徳川と豊臣の戦いです。
戦国の終わりという言い方でいいのだろうか。室町→安土・桃山→江戸、足利→織豊→徳川のどちらとしても、しっくりこないような気がする。
夏と冬の陣を終えたことで、徳川政権が強固に盤石になり、およそ二百五十年続いた平穏な時代の始まりになったことを考えると、戦乱が続いた戦国時代の終わり、という言い方は通りがいいのだろうな、とは思います。
家康の執念から始まった豊臣を滅ぼすためだけの戦。方広寺の鐘銘問答は、大坂冬の陣扱ったどの作品を読んでも、言いがかりなんだよなぁ、というやれやれの気持ちになります。ただ、その言いがかりを強行する -
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戦百景六作目は山﨑の戦い。前作本能寺の変からの続編。秀吉と光秀の天王山の一戦です。
光秀が燃え尽き症候群になってしまっているのが、至極残念。衝動で信長へ謀反を仕掛けてしまった、というのは数ある光秀像でもなかなかの残念さでは。
そもそも、戦百景の信長自身に天下統一を前に覇気を失ってしまった見窄らしさが伺えるようになってしまい、それを嫌った光秀が己の理想像を押し付けたゆえの謀反だったのですよ。かつての覇気溢れる信長でなくなってゆくことを嫌った光秀自身が、急激に衰えてゆく精神を隠せないというのは、非常に残念。己の理想を追い求めるということが、戦百景の光秀の人生の目標で、その中に天下統一というものは -
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戦百景五作目は本能寺の変。明智光秀が起こした日本史上最大の謀反劇。もちろん、主人公は織田信長と明智光秀。この二人が交互に章を重ねてゆきます。
最も注目されるのは、やはり光秀が謀反に至った理由か。
主君として担いだ信長が、己の理想とする存在から離れていったために背いた、というのが大きな理由となっています。
そこまでの流れで、光秀が武将としての理想を掲げていたかなぁ、というのが違和感として残りました。足利義昭に対しては、武将としての理想ではないと見限った場面はありましたが、それを信長に求め心酔している、というような描写は強くなかったように読後として残るので、やはり謀反の理由としてはしっくりこない -
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戦百景四作目は川中島の戦い。武田信玄と上杉謙信の龍虎の戦いです。一番有名な一騎打ちの場面は四度目です。通算の戦いは第五次までありますが、四度目以外は小競り合い程度なんですね。小学生の頃かな、川中島の戦いを初めて知ったのは。その時は、この有名な場面がある一大決戦を五回もやったの⁉︎という驚きにあふれていました。
まあ、信玄頑駄無と謙信頑駄無の元ネタというとこから入ったのですが。
そもそも信玄じゃなくて晴信、謙信じゃなくて政虎で表記されています。上杉謙信の名前変わり過ぎ問題なんとかしてくれないものか。作劇の都合上で、謙信で統一とかいうものもあるかと思いますが、読みやすさをとるか史実準拠なのかのせめ -
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ネタバレ 購入済み
沖縄にも豊臣秀吉がいた。血脈、後楯もない底辺の民が自らの力と強運で頂点を極めた物語だ。概ね史実に基づいているようで驚くばかりだ。金丸の表裏を描きだしているが、民のために自ら王を目指すあたりはいささか理解がついていかない。今一度読み返してみたい。
いずれにせよ彼の王朝は明治維新まで続く。金丸は弟を大事にしたのに対し、秀吉は病で弟を失い後継の甥を殺し結果豊臣家は短命に終わった。境遇が同じでも金丸の方が一枚上手ということか。 -
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平安最強の武士・源為朝。作者らしい猛々しい武人として彼の数奇な人生が描かれているが、人物造形や戦いの動機がイマイチ。『鬼神』では人間ドラマとバトルのバランスが良かっただけに少し残念。
例えば、九州で太宰府に乗り込むときさただ力を放出したい駄々っ子でありながら強さだけで統率していたという違和感。その為朝が京に戻った途端、父に従い、上皇や左大臣に従う汐らしさを見せる。その過程が描かれず、ここにも違和感。強い相手(義朝)と戦いたいという彼を貫く軸は変わっていないのだろうが、史実とキャラのギャップが大きく、説明が足りないように感じられた。九州〜京に戻る過程に何かあっても良かったと思う。
最後の伊