水生大海のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ大きな事件が起こるような作品ではないけれど、日常の中にある小さな悩みや人とのつながりが丁寧に描かれていて、すごく面白かった。読んでいると心が落ち着くような作品で、また読み返したいと思ったし、薬膳にも興味が湧いた。
読んでいて、この前読んだ『僕とおじさんの朝ごはん』の「ご飯の食べ方は人生の向き合い方に似ている」という言葉を思い出した。なんのために生きているんだろう、と思うこともあるけれど、美味しいご飯を食べることも、生きる理由の一つなのかもしれないと思ったし、そういう料理を作れる人は本当に素敵だと思った。
この作品に出てくる料理は、豪華さや派手さよりも、「相手や自分の体を思って作る」という温かさがあって、そこにすごく魅力を感じた。雨森やおばあちゃんの料理には、ただ栄養を満たすだけではない、“相手を大切に思う気持ち”が込められている感じがして、そこがこの作品の好きなところだった。
また、住人たちの悩みを薬膳や会話から少しずつ読み解いていく雨森の推理シーンも面白かった。相手をよく見ているからこそ気づけることがたくさんあって、ただの料理小説ではなく、人との向き合い方も描かれている作品だと思う。
特に1番最後の話が好きだった。最後に出てきた主人公のお母さんが、直接わかりやすい言葉で愛情を伝えるわけではないけれど、態度の端々からちゃんと娘のことを思っているのが伝わってきて、その距離感がすごく良かった。派手な感動ではないけれど、温かい話で印象に残った。
良い人だけ出てくるわけじゃなくて、そう簡単に希望通りにならないのも現実的で良かった。
最後の章とかでもっと雨森自身の過去や話が出てくるのかと思っていたけれど、そこはあまり語られなかった。続編が出たらぜひ読みたい。
もし一人暮らしをすることになったら、こんな食堂が近くにあったらいいなと思ったし、なくても、自分で誰かの体や気持ちを考えながら料理を作れる人になりたいと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ水生大海、読むのは二作目。嘘にまつわる短篇。嫌ミスだったら、そうだと知っておきたかった…
01 妻は嘘をついている
02 まだ間に合うならば
03 三年二組パニック
04 家族になろう
05 あの日、キャンプ場で
どの話も嘘が登場する。
01の話を読んだ後、あー、この後どうすんだよ、と思ってしまう。私も凡人で才能が無いので、この主人公の男の方が気持ち的には分かるのだ。そして娘さんも多分だけど母親の有能さを受け継いでいるのではあるまいか。頭下げて尻に敷かれて生きていくのが一番いい暮らしできると思う。
02の話は何となく先が見えた。自分が有名になったから、相手が慕ってくれるから、こういうことをやってもいいだろうという気持ち悪い考えを抱く人はいる。自分と他人の境界が曖昧なんじゃないかと思う。個人的には間に合ったほうに一票。
03 言った、言わないって水掛け論でこじれる話、学生時代ならよくあることだと思う。心美ちゃんはまだ反省して謝ってくれたからマシなほう。彩芽ちゃんのことを大事な友人だと思っていた優唯ちゃんは賢いし、格好いいな。
04 これはキツい。もう義母の恨みの晴らし方が酷い。一番、恨まなくてはならないのは夫だろうに。そして夫は一番倒れてはダメなところで倒れるし、主人公の男を罵倒するんじゃなくて、恥をかいてでも娘と主人公の男の関係を話すべきだったのに。主人公の男は話すだろうか。私なら話さず、手紙を燃やしてしまうと思う。
05 この作品が一番、自分もついてしまいそうな嘘だと思った。置き去りっていうけど、常習犯みたいなことやってたら、そりゃ置き去りにされても文句言えないよな。しかもみんなバイトとかも入っているんだし。お金も持っていて、バスもある、と分かっていて、以前にも勝手に帰ったっていう前科があるなら、私もおいていくと思う。そしてこれも、この後どうなったか、を読者が想像するパターンだが、私は主人公助かった、ほうに賭けたいな。
嫌ミスの中では嫌さは中程度だと思う。芦沢央ほど強烈だとは、私は思わなかった。でもやさしい嘘ではどれもない。ほぼほぼ自分を守る嘘か、人を傷つけるための嘘だ。あ、02だけやさしい嘘が含まれているか。
最近、映画で「祈りの幕が下りる時」やそれにまつわるドラマ「新参者」を見たのもあって嘘、というものを考えることが多かったので、いろいろ思考があっちいったりこっちいったりしてしまった。嘘はできればつかないでいたいよな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ初読みの作家さん。
連作短篇。陽向は美大の時の友達、瑠璃の結婚式の二次会に招かれて、仲間だった乙羽、未緒、千奈と会う。瑠璃は絵から離れて玉の輿に乗ったようだ。現在無職の陽向は学生の頃にあった赤い扉の謎を推理する…
第一話 六年前の赤い扉(陽向視点)
第二話 純白の誓いの後で(瑠璃視点)
第三話 瑠璃色のプレゼント(未緒視点)
第四話 瞳を緑色に染めて(叶恵視点)
第五話 暗い海に射す青は(陽向視点)
で構成される。第一話は陽向の性別をミスリードしているのかな、と感じた。第二話と第三話でギャラリーストーカーというものが出てくる。そんなものがいるのか、と驚いた。現在のイラストレーターの事情に詳しいわけではないので、パトロンが現在にもたくさんいるのかどうか、分からないが、Instagramには自分の作品を売り込む動画が溢れるほど流れているから、いるところにはいるのだろう。絵師と呼ばれる人がXで話題になっていたこともあったし。
個人的にはこのような女性グループのごちゃごちゃした感情の小説は好きな方だ。自分の立ち位置はどの人に似ているかな、なんて考えるのも好きだ。しかしこの小説の中には自分に似たと思えるものはなかったな。やはり業界が特殊だからだろうか。
叶恵よりも怖いと感じたのは乙羽だ。そう思ったのは私だけではないと思う。こんな友人いたら精神的疲労が酷そう。
陽向がのめり込んだ絵本と思われる(参考文献にも書かれていた)酒井駒子さん絵の「赤いろうそくと人魚」。私も大好きな絵だ。哀しい話だから子どもに何度も読み聞かせよう、とは思わないのだけれど、凄く印象に残る絵だった。