辻村深月のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ作中、宇宙飛行士の女性が学生たちに向けて「好きという気持ちを大切に」と語るシーンが、響きました。
大人になるにつれて、子どもの頃のように無邪気に何かに打ち込むことは難しくなり、どうしても「将来の役に立つか」という視点で物事を選びがちになります。けれど、もっと自由でいい。たとえ趣味であっても、自分のなかの「好奇心」を何より大切にしようと思わせてもらいました。
また、休部を申し出た円華に対し、顧問がかけた言葉も忘れられません。
コロナ禍という誰も経験したことのない世界で、「今はしょうがない」と割り切って諦めることもできたはず。しかし顧問は、高三のこの1年間は二度と戻らない、人生に一度きりのかけがえのない時間だからこそ、諦めてほしくないと伝えます。
彼らが「スターキャッチコンテスト」をリモートで開催し、かけがえのない経験や仲間を見つけたように。
この先どんな未来が待ち受けていたとしても、その時々で自分にできる最大限の選択をしていきたい、と強く思わせてくれる素敵な一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ辻村深月作品。
「傲慢と善良」が良かったので、リンクする所があると聞いて読みました。
全体的には、サスペンス要素とか、辻村作品に多いどんでん返し(?)的な展開も少ないし、平坦な物語に思えます。面白かった!とテンション上がる感じではないかもしれません。
また、早苗は弱かったり、いっぱいいっぱいだったりして、正直、あまり好きなタイプの主人公ではありませんでした。
ただ、何となく、読んで良かったなーと感じます。
それは、「逃げること」について、自分の視野が広がったように感じるからです。
ぼくは、それなりに安定した生活を送れているし、自分の環境には不満はありません。でも、だからこそ、今の居場所ではないどこかで、自分が生きていることは想像がつきません。
もし、何かが起こって、今の生活に乗り越えられない脅威を感じたら。僕は、追い詰められて、どこにも逃げられないと絶望するでしょう。
でも、それは僕の思い込みであって、本当は、この青空の下のどこにだって、逃げることができる。そこで生きていく事だって、きっとできる。
早苗と力がそうしたように。
僕は早苗のキャラはあまり好きではなかったけれど、弱い彼女が様々な土地で生き抜く姿を見せてくれるからこそ、感じるところがあるし、学ぶところがある。
きっと、自分も、追い詰められれば本当は弱いだろうけど。でも、それでも、生きていけるんですね。
各地での出来事は平坦で地味だけど、生きることは地味で地道な事です。だからこそ、良い物語になっているとも思います。
この物語はロードムービーでもあって、特に別府は顕著だけど、観光というか、その土地の魅力を感じる描写が多いですよね。
単純に知識として面白いけど、それだけじゃなくて。この世界の広さを本当に体感するには、そういう土地の空気感とか、文化とかを味わう体験が大事なのだろうと思います。
だから、辻村さんは、こうした描写を大切にされたのかなと感じました。
僕は、美術館が好きでよく旅行に行きますが、あんまり観光地は回らないし、その土地のものも食べず、コンビニで済ませたりしちゃいます。
それって、すごく勿体無いことをしているなと思いました。もっと旅をして、この世界の広さを感じて生きたいし、どこにでも行けるんだと、そう感じれる自分になっていきたいと思いました。
面白い、とは違うから、評価は少し厳しめにつけたけど、良い小説だったなと思います。 -
Posted by ブクログ
私のとっておきの一冊は、辻村深月さんの『ぼくのメジャースプーン』です。
恥ずかしい話ですが、辻村深月さんを読んだのはまだ2作目でした。1作目の『本日は大安なり』は一気読みするほど感動しましたが、この作品は重いテーマゆえ、なかなか読み進めることができませんでした。ところが、小学4年生の主人公が最後に下した決断は、64歳の私にはまったく予想外で、見事に騙されました。小学生ならではの純粋さと、その裏に潜む残酷さを垣間見たような気がして、読後感は決して良いものではありませんでした。
それでも、最後に秋先生が犯人に向かって「でなければ、お前は―」と言いかけて言葉を切る場面には唸らされました。その先を読者に委ねる手法が見事で、読後もその言葉が頭から離れません。
この作品は、私にとって「読み終えてから始まる読書」の面白さを教えてくれた、とっておきの一冊です。 -
Posted by ブクログ
復讐とは誰の、何のためのものなのか。
凄惨な事件を起こし、たくさんの命を、心を奪った犯人に、相応しい罰とは何か。
罰を与える側の罪とは。
人は自分のためにしか泣けない、というフレーズがあったが、泣く以外の全ての行動や感情も、同じく自分のためでしかないのではないか、と考えさせられた。
しかし、罪のない純粋な小学生に、こんなにも重たいものを負わせるとは、、、
私の語彙力ではこの小説の深さを正確に言語化できない。
とりあえずグロ耐性がなく、子供が可哀想な目に合うのが苦手な私にとって、これは手を出してはいけない小説だった。笑
けど最後まで読んでしまったのは、逃げてはいけないと思わせるような、辻村深月さんの文章力ですね。
これから読む方は、心が健康な時に読むようにしていただきたいものです。